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深夜
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エリーはいつものように夜を待っていました。
夜になると、エリーは令嬢になることができるのです。
寝室の窓から顔を出して、肌寒い風を感じていました。
冷たく感じるほど、自分が美しい女性に変わっていくと心得ていました。
「あっ、今日も王子様がいらっしゃる……」
エリーの見つめる先には、夜の散歩を楽しむ王子様の姿がありました。
「王子様、王子様!」
エリーは必死に叫びました。王子様はエリーを見つけて手を振りました。
「あっ、今日も笑顔で手を振ってくださった!」
エリーはいつも、このまま美しい女性でいられるように、と願いました。でもそれはかないません。王子様が散歩を終えてお城へ帰られるころ、つまり、東の空がほのかに赤みがかったころですが、エリーは夢から覚めてしまいます。
「なんて美しい娘なんだろう」
王子様はエリーを自分の妻にしようと考えていました。しかしながら、公式にアプローチをすると、何かと騒がしくなるので、極秘のうちに進めようと思っていました。
社交界のパーティーで接触を試みたのですが、エリーの姿はどこにもありませんでした。年頃の女性ならば、良き婚約者を見つけにやってくるはずです。
「こういうのは好きじゃないのかな?」
王子様の周りには、様々な思惑が渦巻いていました。王子様一人で決められることではありません。エリーと婚約することは非常に困難でした。
「直接、家を訪れるのが早いか?」
王子様はエリーの家を訪れることにしました。いつもの散歩の時間を大幅に早めて、昼過ぎに訪れました。
「ごめんください」
王子様が玄関の前で何度か家の主人を呼びました。しかしながら、現れたのは老婆でした。
「どちらさまですか?」
老婆は王子様に尋ねました。
「この家に大層美しい娘がいるはずなんですが……」
「大層美しい娘……ああっ、エリーのことですか?彼女ならいませんよ。彼女は夜まで帰ってきませんから。この家には私しかいませんよ」
「そうですか。わかりました」
王子様は仕方なく帰りました。
「王子様、ごめんなさい。本当は私がエリーなんです」
老婆は静かに涙を流しました。
「私を……エリーを愛してくださるなら、それで結構です。でもそれは叶わない恋であることをご承知おきください……」
夜になると、エリーは令嬢になることができるのです。
寝室の窓から顔を出して、肌寒い風を感じていました。
冷たく感じるほど、自分が美しい女性に変わっていくと心得ていました。
「あっ、今日も王子様がいらっしゃる……」
エリーの見つめる先には、夜の散歩を楽しむ王子様の姿がありました。
「王子様、王子様!」
エリーは必死に叫びました。王子様はエリーを見つけて手を振りました。
「あっ、今日も笑顔で手を振ってくださった!」
エリーはいつも、このまま美しい女性でいられるように、と願いました。でもそれはかないません。王子様が散歩を終えてお城へ帰られるころ、つまり、東の空がほのかに赤みがかったころですが、エリーは夢から覚めてしまいます。
「なんて美しい娘なんだろう」
王子様はエリーを自分の妻にしようと考えていました。しかしながら、公式にアプローチをすると、何かと騒がしくなるので、極秘のうちに進めようと思っていました。
社交界のパーティーで接触を試みたのですが、エリーの姿はどこにもありませんでした。年頃の女性ならば、良き婚約者を見つけにやってくるはずです。
「こういうのは好きじゃないのかな?」
王子様の周りには、様々な思惑が渦巻いていました。王子様一人で決められることではありません。エリーと婚約することは非常に困難でした。
「直接、家を訪れるのが早いか?」
王子様はエリーの家を訪れることにしました。いつもの散歩の時間を大幅に早めて、昼過ぎに訪れました。
「ごめんください」
王子様が玄関の前で何度か家の主人を呼びました。しかしながら、現れたのは老婆でした。
「どちらさまですか?」
老婆は王子様に尋ねました。
「この家に大層美しい娘がいるはずなんですが……」
「大層美しい娘……ああっ、エリーのことですか?彼女ならいませんよ。彼女は夜まで帰ってきませんから。この家には私しかいませんよ」
「そうですか。わかりました」
王子様は仕方なく帰りました。
「王子様、ごめんなさい。本当は私がエリーなんです」
老婆は静かに涙を流しました。
「私を……エリーを愛してくださるなら、それで結構です。でもそれは叶わない恋であることをご承知おきください……」
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