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偽善者
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大好き……。
王子様は様々な令嬢に、こう囁きます。
私はちょうど100番目みたいです。100番目の奉公人で、気に入ってもらったら子供を孕むことができるとかできないとか……そんなこと、私にはどうでもいいんですけどね。
私は純粋に王子様が好きです。
小さい頃、宮殿で迷子になった私に優しく手を差し出して下さった王子様……。
王子様にとって私は小指のようなものなのでしょう。それでもいい。
胸につかえた恋を伝えて逃げればいい。
私に残された方法はそれだけでした。
「王子様……スピーラと申します……」
私にとって王子様は、神様でもあり、悪魔でもありました。
今ははっきり言って悪魔です。
あの時の面影がありません。
大人になるっていうのはそういうことなんでしょうか?
政略に基づいた戦いと同盟、婚約。
私にはそんな大層なこと、分かりません。あの時の温もりしか分かりません……。
「ベッドルームへ行こう……」
「はい…………」
王子様……。
私のことなんて覚えていませんよね……?
中途半端な寵愛はいらないんです。
私が子供を授かったら……いいえ、何でもないです……。
「スピーラ!あなた……」
お母さまは大層喜びました。王子様の寵愛を受けられるのは一族にとって非常に名誉なことなのです。私の家はそれほど上流ではないので、大きく株を上げることになるでしょう。
「あなたの願いもやっと叶ったわね!」
「はい……お母さま……」
「もうっ!そんなお化けみたいな顔しちゃって!ほら、もっともっと王子様に愛される顔をしなきゃ!ああっ……早くお孫様の顔を拝みたいわ!」
お母さまは子供みたいにはしゃいでいました。
これでいいんだ、と何度胸に言い聞かせたことでしょう。
帝国という大きな社会の枠組みの中で、私は一つの星に過ぎません。淡く輝くお月様に少しでも近づくため……王子様と本当の恋にたどり着く時を夢見て……。
「王子様……私は幸せ者ですね……」
女の涙は必ずしも幸福を意味するわけではありません。
でもそんなこと、王子様には関係ないですものね?
「今日はいつになく魅力的だ……」
いつもいつも同じ顔で同じ体つきなんです……。
抱かれるほど暗闇に堕ちていきます。もうじき来た道を失ってしまいそう。
後悔なんてとっくに忘れました。
みんなが喜んでいるのですから、きっと私も幸せなんです。
王子様……。
恋という贅沢を与えて頂きありがとうございます……。
私に最小限の愛を与え続けてください。
私は貴方に最大限の愛を与え続けますから……。
王子様は様々な令嬢に、こう囁きます。
私はちょうど100番目みたいです。100番目の奉公人で、気に入ってもらったら子供を孕むことができるとかできないとか……そんなこと、私にはどうでもいいんですけどね。
私は純粋に王子様が好きです。
小さい頃、宮殿で迷子になった私に優しく手を差し出して下さった王子様……。
王子様にとって私は小指のようなものなのでしょう。それでもいい。
胸につかえた恋を伝えて逃げればいい。
私に残された方法はそれだけでした。
「王子様……スピーラと申します……」
私にとって王子様は、神様でもあり、悪魔でもありました。
今ははっきり言って悪魔です。
あの時の面影がありません。
大人になるっていうのはそういうことなんでしょうか?
政略に基づいた戦いと同盟、婚約。
私にはそんな大層なこと、分かりません。あの時の温もりしか分かりません……。
「ベッドルームへ行こう……」
「はい…………」
王子様……。
私のことなんて覚えていませんよね……?
中途半端な寵愛はいらないんです。
私が子供を授かったら……いいえ、何でもないです……。
「スピーラ!あなた……」
お母さまは大層喜びました。王子様の寵愛を受けられるのは一族にとって非常に名誉なことなのです。私の家はそれほど上流ではないので、大きく株を上げることになるでしょう。
「あなたの願いもやっと叶ったわね!」
「はい……お母さま……」
「もうっ!そんなお化けみたいな顔しちゃって!ほら、もっともっと王子様に愛される顔をしなきゃ!ああっ……早くお孫様の顔を拝みたいわ!」
お母さまは子供みたいにはしゃいでいました。
これでいいんだ、と何度胸に言い聞かせたことでしょう。
帝国という大きな社会の枠組みの中で、私は一つの星に過ぎません。淡く輝くお月様に少しでも近づくため……王子様と本当の恋にたどり着く時を夢見て……。
「王子様……私は幸せ者ですね……」
女の涙は必ずしも幸福を意味するわけではありません。
でもそんなこと、王子様には関係ないですものね?
「今日はいつになく魅力的だ……」
いつもいつも同じ顔で同じ体つきなんです……。
抱かれるほど暗闇に堕ちていきます。もうじき来た道を失ってしまいそう。
後悔なんてとっくに忘れました。
みんなが喜んでいるのですから、きっと私も幸せなんです。
王子様……。
恋という贅沢を与えて頂きありがとうございます……。
私に最小限の愛を与え続けてください。
私は貴方に最大限の愛を与え続けますから……。
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