王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321

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その1

 妹のルカが死んだのは、ちょうど私が第二帝国との戦いの指揮を執っていたころだから、一年前の話になる。

 私の父が統治する第一帝国は、第二帝国と戦いを繰り返していた。私は戦争に反対であったが、強さを欲する父は市民の犠牲を顧みず、ただひたすら戦った。私も王子として第二帝国との戦いに参加しなければならなかった。

 実のところ、私には兄が3人いたのだが、みな戦死した。私は戦士として最弱なのに、なぜか生き残った。父によれば、己の弱さを知る者のみが生き残れるのだそうだ。なるほど、私は窮地に追いやられるといつも逃げていた。それでもって父にこっぴどく叱られた。王を継ぐ資格がないと言われた。私は正直言って、そんなことはどうでもよかった。

 私が戦いから帰還すると、真っ先に駆けつけてきたのはルカだった。

「お帰りなさい、お兄さま!お怪我はありませんか?」

 ルカは私のことをよく心配してくれた。ああっ、そうだ。一つだけ守りたいものがあった。それは他ならぬルカだった。私が戦いに赴く理由は、この国を守り、ルカが不自由なく暮らせる世界を壊さないことだった。

 私が25歳の誕生日を迎えた日、父が突如婚約話を打ち明けてきた。私は興味がなかった。しかしながら、これも運命だと半ば諦めた。ルカは…………私の婚約を自分のことのように喜んでいた。ルカが笑っているのだから、まあいいかと思った。

 私の婚約相手はキャシーだった。父の古い知り合いの娘だった。容姿は驚くほど端麗であった。同時に、自分には王子という肩書がなければ絶対に不釣り合いだと思った。

「キャシーと申します。王子様、よろしくお願い申し上げます……」

「ああっ……こちらこそ」

 今だかつて、異性と話したのは母とルカだけだった。見知らぬ女性といきなり話をするのは難しかった。

「何を緊張しておるのだ!」

 父は私の肩をポンと叩いた。緊張をほぐすつもりだったのかもしれないが、私には逆効果だった。

「キャシー殿、せがれをよろしく頼みますぞ!」

 父は今までで一番上機嫌だった。

「はいっ!よろしくお願いいたします!お父様!」

 こうして私とキャシーの婚約生活が始まった。

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