王子は婚約破棄を泣いて詫びる

tartan321

文字の大きさ
2 / 39

その2

 ところで、父がキャシーを私の嫁に選んだ理由がどうも釈然としなかったのだが、その答えはキャシーの父にあった。キャシーの父は、私の父が未だ王子であったころ、軍師として作戦の立案に関わっていた。彼の編み出す戦法は、勝ちパターンにはまれば大勝、その代わり、負けパターンにはまれば惨敗という感じだった。ある種のギャンブルである。しかしながら、父は最後までキャシーの父に戦を頼った。

 キャシーの父が突然姿を消したとき、父は大層驚いたという。しかしながら、不思議なことに、それ以降父が戦いで負けることはなかったという。父はキャシーの父を戦の神様と称えた。

 すると、その娘であるキャシーは女神さまになるのだろうか?これは私の推測に過ぎない。しかしながら、キャシーと婚約して、私も戦に勝ち続けた。

 私はキャシーの愛し方を知らなかった。しかしながらキャシーは愛を求めなかった。

「王子がこの世界の覇者になるのを見届けたいのです」

 いつもこんな感じである。夫婦になって何かする……そういうことじゃなくて、キャシーはとにかく私に勝利をもたらすことしか考えていなかった。

 ちょうど一年前、私は第二帝国と戦うことを運命づけられた。我が第一帝国に侵攻の兆しあり、との情報が届けられた。父は私に全てを委ねた。

「この国の運命はお前の手の中にあるのだ」

 父は軍議の場でそう言い残し去っていった。帝国同士という、大きなスケールの戦いを経験したことはなかった。ちんけな田舎村の反乱を鎮めるのが正直やっとだった。そんな私が指揮したところで勝ち目は無かった。

「失礼いたします……」

 軍議で普段耳にすることのない女の声……キャシーだった。

「キャシー様!」

 軍人たちがざわつき始めた。私もキャシーに問いただした。

「どうしたんだ、いったい?」

「王子様。これから夜の契りを結びたく参上いたしました」

 夜の契り……私は一瞬頭が真っ白になった。
 

あなたにおすすめの小説

婚約者から悪役令嬢だと言われてしまい、仕方がないので娼婦になります。ところが?

岡暁舟
恋愛
あらぬ疑いをかけられて、婚約者である王子から婚約破棄されることになった。もう誰も面倒を見てくれなくなったので、娼婦になることを決意する。新たな人生が軌道に乗り始めた矢先のこと、招かれざる客人がやって来た。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

婚約破棄の夜の余韻~婚約者を奪った妹の高笑いを聞いて姉は旅に出る~

岡暁舟
恋愛
第一王子アンカロンは婚約者である公爵令嬢アンナの妹アリシアを陰で溺愛していた。そして、そのことに気が付いたアンナは二人の関係を糾弾した。 「ばれてしまっては仕方がないですわね?????」 開き直るアリシアの姿を見て、アンナはこれ以上、自分には何もできないことを悟った。そして……何か目的を見つけたアンナはそのまま旅に出るのだった……。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

正妻の座を奪い取った公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹のソフィアは姉から婚約者を奪うことに成功した。もう一つのサイドストーリー。

最愛の婚約者に婚約破棄されたある侯爵令嬢はその想いを大切にするために自主的に修道院へ入ります。

ひよこ麺
恋愛
ある国で、あるひとりの侯爵令嬢ヨハンナが婚約破棄された。 ヨハンナは他の誰よりも婚約者のパーシヴァルを愛していた。だから彼女はその想いを抱えたまま修道院へ入ってしまうが、元婚約者を誑かした女は悲惨な末路を辿り、元婚約者も…… ※この作品には残酷な表現とホラーっぽい遠回しなヤンデレが多分に含まれます。苦手な方はご注意ください。 また、一応転生者も出ます。

私は《悪役令嬢》の役を降りさせて頂きます

・めぐめぐ・
恋愛
公爵令嬢であるアンティローゼは、婚約者エリオットの想い人であるルシア伯爵令嬢に嫌がらせをしていたことが原因で婚約破棄され、彼に突き飛ばされた拍子に頭をぶつけて死んでしまった。 気が付くと闇の世界にいた。 そこで彼女は、不思議な男の声によってこの世界の真実を知る。 この世界が恋愛小説であり《読者》という存在の影響下にあることを。 そしてアンティローゼが《悪役令嬢》であり、彼女が《悪役令嬢》である限り、断罪され死ぬ運命から逃れることができないことを―― 全てを知った彼女は決意した。 「……もう、あなたたちの思惑には乗らない。私は、《悪役令嬢》の役を降りさせて頂くわ」 ※全12話 約15,000字。完結してるのでエタりません♪ ※よくある悪役令嬢設定です。 ※頭空っぽにして読んでね! ※ご都合主義です。 ※息抜きと勢いで書いた作品なので、生暖かく見守って頂けると嬉しいです(笑)

婚約者を友人に奪われて~婚約破棄後の公爵令嬢~

tartan321
恋愛
成績優秀な公爵令嬢ソフィアは、婚約相手である王子のカリエスの面倒を見ていた。 ある日、級友であるリリーがソフィアの元を訪れて……。