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雨宮 魅懸

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一緒にいたい気持ち

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晴れ渡る空の下
気持の良い風が吹き渡る。

卒業式にピッタリな天候だ。


「椎名!ちょっとこっち来て!」

「はいはい、なんでしょうか?」

「今日が終わったら、なかなか会えなくなっちゃうでしょ?だからいっぱい写真撮ろうと思って!」

「なかなか、ね…」


卒業式を終え、あとは帰るだけだが
やはり最後は長くいたいと思うものだ。


笑顔で親友や同じクラスだった人達
後輩や先生、親と…

最後の思い出を沢山撮っていく中
涼香のたまに曇る顔が気になった。


「どうかしたか?」

「ん?何もないよ!」

「ふーん?ならいいけど?」

「…うん」


僅かに悲しげな笑みを見せ
立ち去ろうとする彼女を
思わず腕を掴み引き止めてしまった。


「な、何?」

「ごめん。ただ、何かあったのかって気になったから。」

「いや…うーん…なくはないけど、椎名には言いたくない、かな」

「なんじゃそら。…あ、もしかして?」

「何よ?」

「俺と離れるのがそんなに寂しい?」

「何それ。そんなんじゃないよーっだ!」

まるでいたずらっ子みたいな顔をして
腕を振りほどく涼香。

また、友達の所に行こうとしているのか
また後でね、そう言って手を振っている。


ダメ。今日は…
今日は学生生活最後の日なんだ。
今日だけは涼香と離れたくない。


「待って。」

思わず声が出た。


「ん?何?」

「……」

「何よー?」

「俺とこれからもずっと一緒にいられる方法があるよ」

「ん?…いやいやいや!椎名とはもぅずっと一緒じゃんか!何年同じ所通ってると思ってるの?」

「まぁ、確かにな。でもこれからは違うだろ?」

「…そうだね。」


明らかに表情が暗くなる。
本当は分かりやすい奴なんだよな、こいつ。


「そ、だからこれからも一緒にってこと。」

「何かそれ、プロポーズみたいだね。」

「プロポーズだからね。」

「え!?」

「まぁ、プロポーズは言いすぎだけど、いずれはそうなりたいと思ってるよ。だからさ、涼香。俺と付き合ってください。」



ずっとずっと言いたかったこと。
やっと言えた。

俺の告白を受け、驚き、困惑し、赤面し、涙を流し、嬉しそうに笑った。

うん、返事は涼香の表情で分かるな。


「わた、私も、椎名とずっと…ずっとずっと一緒にいたい…!」

「うん、ありがとう」


色んな顔を見せてくれる愛しい彼女を、そっと優しく、でも強く抱き締めた。











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