ヤミレスノオキナ

ペロスタッペン

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ノーメンマスク

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 ダダダダダダ⋯⋯
 「はっ、夢か!」
戦場の光景か今でも目に浮かんで瞼の裏にも焼き付いている。空爆も何もない平穏な夜にも落ち着いて寝ていられないのだ。私はノーメンマスク、戦後初の日本人ヤミレスラー。子供たちに夢を持たせるため、そしてもちろん日々の食料を得るため日本人ヤミレス団体に入った。そしてまず日本を元気付けようということで日本らしい姿をと思いつき、東京にいる知人の能面師に簡単な面を作ってくださいと頼みこんだのだが出来上がったのが白い髭を生やした爺さんの面だった。なんでも"翁"(おきな)といって大変めでたい面なのだそうだ。せっかく作っていただいたので、それを被ってずっと今まで出ている。ビルマでは粗末な武器での正確な狙撃からか敵兵にハゲ鷹がいると恐れられていたらしい。ハゲ鷹が爺さんになってもなんら変わらない。どころか子供人気は全くと言っていいほど無かった。
 「どや、ヤミレスには慣れたか?」
 興業主のAである。
 「まだまだです、いくらめでたい面でも子供たちはそんなこと知りませんから」
 「気にせんでええ、じきにガキどもも爺さんが好きになるさかい」
 「そんなもんですかね?」
  「せや!今度ガキども集めてヤミレス教室やったらどや?」
 
 Aの考えは的中した。子供たちは日に日に集まり、ノーメンマスクの認知度も上がっていった。子供たちと触れ合うにつれて、分かってはいたがまず裕福な子は一人もいない。その日暮らしの子供たちがヤミレスを見にきていたのだ。そこで私はヤミレス教室に来た子供たちに自分の技の全てを教えることにした。技と言ってもレスリングの技ではない。戦地の最前線で培った"生き残る"ための技だ。
 「いいな、絶対農家や民家などを襲うために技を使うな」
 「はい」
  
 しかし全員が全員賢い子供とは限らず、ただ一人民家に押し入ろうとする悪童がいた。
 「馬鹿な奴だ、これで一生楽して暮らせる」
  この子供、仮にBは習ったばかりの足さばきで音も立てずに庭から侵入しサッと横目で蔵の鍵を確かめた。大きい南京錠が掛かっている、鍵がないとまず開かないだろう。しかしBには関係のないことだった。頃は夕どき、晩飯の食卓を一家で囲む団欒のその時に一人の身も知らないみすぼらしい子供が入ってきたから大変である。
 「オイ、なんだお前は!」
 「きゃーっ、お父さま助けて」
 「ん?なんだその頭は」
 ハハハハハハハハハハハハ⋯
 「実に面白い、晩飯ても食っていきたまえ」
 これこそ私の生き残るための技、ズル剥け禿げ頭である。農家も民家もギリギリの生活をしているので笑わせるまではいいが絶対モノをせびってはいけないと子供たちに言い聞かせていたのだ。

―終わり―
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