行員由奈の災難

MIKAN🍊

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13.共犯者

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「それにしても偉いわ南川さん。そんな目に遭ってるのに毎日休まず仕事にも出て。私だったらとっくに寝込んでる」
保子は心底そう思った。
「私も不思議なんです。最初は怖かったけどそのうち何ていうか。色見本を使われたあと何もされなかった事の方が気になって。そしたら気持ちに余裕が出てきて」
「ゲイなのかしら?」
保子は声をひそめた。
「私も疑いました。でもそれはないと思います。私を見て何度も興奮してましたから」
由奈は照れ臭そうに言った。

「それで私聞いたんです。例によって課長が懺悔室に私を呼び出した時に」
「4つ目の願い事?」
「そうです。400万円の束を隠したのは課長じゃないですか?って」
「どういう意味?」
「私ドジだけど400万円の束をシュレッダーにかける程間抜けじゃありません。でも確かに400万円消えてしまった。あの時慌てずにシュレッダーの中を見ていればと思いました。ずっと疑問だったんで思い切ってカマをかけてみたんです」
「シュレッダーのダストボックスを確かめてさえいれば切り刻まれた札束などない事に気がついたって事?」
「そうです。課長は本当にうまいんです。何というか言葉巧みなんです。人の心理に突け込むのが上手なんでしょう。暗示に掛けられたっていうか」

それはそうだろう。言葉だけで若い女に陰毛の色検査をし、剃毛させたうえ秘所を露出させた。挙げ句の果てに小水を紙コップに採らせ茶と混ぜ支店長に飲ませたのだ。
「あなたもしかして菅課長に惹かれていったの?」保子はおそるおそる尋ねた。
「どうなんでしょう。私はそれまでミスや失敗ばかりで声を掛けてくれるのは安西さんだけでした。他の人はみんなシカト。私の存在なんてまるで無いみたいに扱われて。私は安西さんみたいに綺麗じゃないし、仕事が出来るわけでもない。課長に腕をつかまれて懺悔室に入ってからはまるで物語の主人公になったようでした。課長は私の性格を見抜いて始めから私を利用するつもりだったんでしょう」
「やっぱりあなたしっかりしてるわ…」

菅は懺悔室に内側からロックをかけ椅子に掛けた。そして由奈と向き合った。
「でも証拠は何もない」
「やっぱり」由奈は自分の勘が当たっていた事を知った。
「仕事には向き不向きがあります。南川さん。あなたは事務処理が苦手なだけなんですよ。私も似たようなものです。いろいろ嫌な思いをさせましたね。これが最後の願い事です」
菅は和かに笑った。
「やってくれますね?」
由奈は「どんな願い事でしょう。内容によってです」と答えた。

「何故?なぜまだ課長の願い事をきく必要があるの?」保子には理解出来なかった。
菅は始めから由奈を陥れるつもりだったのだ。400万円の損失もないに違いない。
「うーん。難しいな。スリルを味わった共犯者だからでしょうか。私、あれほど充実感を感じたのは銀行に入って初めてでした」
そんなものだろうか。この子はマゾっ気があるのかも知れない… そして菅が根っからのサディストだとしたら…

「4つ目の願い事は何だったの?」保子は聞いた。

「人に会って欲しいと言われました」
菅はいつになく真剣な眼差しだったという。
「それだけ?」由奈は拍子抜けした。
「それだけです。もう毛を剃ったりパンティーを脱ぐ必要もありません」
菅はキッパリ言った。
「あなたへの願い事はこれで最後です」と。

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