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02 自我の目覚め
やばい。
あんなことを思い出したせいで、大変なことになっていた。パンツが・・・。
とりあえず、トイレに行って穿き替えよう。
ポーチや学校へもっていくショルダーにはいつも万一のための替えを入れてある。それを持って席を立とうとしたら、
「詩織さん?」
背の高い、大人な男の人が、テーブルの向こう側に立って、落ち着いた微笑を浮かべていた。
レナはそういう趣味はなかったから読んだことはないが、クラスにハマっている子がいた。その子が、ボーイズラヴのアニメのキャラクターをスマートフォンの待ち受けにしているのをチラっと見たことがある。優しくて、なよってて、気が弱い方が、「される」方。反対に、ちょっとゴツくて、ちょっと乱暴で、気が強い方が、「する」方。そして、どっちも、イケメン。目の前の三十代っぽい男の人は、後者風味だった。
「サキです。お待たせしちゃったかな」
あんなにイヤらしいことを言ったり命令してきたから、もっと、脂っこい中年の人を想像していた。ビジネスマン風でも、チャラい遊び人風でもない。学生というには年齢が上だし、会社をリタイアするには若すぎる。
一体、何者なのだろう。
都会的で洗練された物腰が、グレーのフィットしたスーツを着て、真っ白なショートカラーのシャツの胸元が少し開き、浅黒く日焼けした肌が覗いていて、髪は短くカットされ、精悍な印象を与えていた。
レナは黙って頭を下げた。
「ここ、いいですか?」
サキさんはレナに丁寧に同意を得て席に着くと、何度も水を運ばせてしまっているウェイトレスさんがやって来るなり短くコーヒーを頼み、後はただ、じーっとレナを見つめた。正直、辛かった。
早くパンツを穿き替えたかったし、先刻から何杯も飲んだ水のせいで、用も足したかった。そんなレナの苦境を知ってか知らずか、依然サキさんはただじっと黙ってレナを見つめて来る。
オーダーしたコーヒーが運ばれてきたのをきっかけにして、トイレに行こうと口を開きかけたとき、サキさんは、こう言った。
「どうしてそんなに赤い顔をしてるの? 熱でもあるのかな」
再び顔が火照った。
「・・・いえ、大丈夫です」
「それなら、いいけれど」
サキさんはコーヒーを一口飲んでテーブルの上で緩く手を組むと、そのまま身を乗り出して来た。
「そんなに構えないで。気持ちはわかるけど。でも、僕らの話の内容はあまり人に聞かれたら困るんじゃないの? もっと、こっちに寄ってよ」
仕方なく、ベンチシートに浅く座り直し、その分、サキさんに近づいた。
「僕が今、何を考えてるか、わかる?」
「・・・いいえ」
レナは正直に答えた。
「思った通り、っていうか、思った以上っていうか。詩織は、素晴らしい、可愛い女の子だなって。そう、思ってる」
さらに顔が。
「もしかして、僕を待ってる間、この前の電話でのエッチのこと、思い出してたんじゃない?」
サキさんはそう言って悪戯っぽく、笑った。
レナは思わず左右を見た。
左側は空席だったが、右側には、主婦の二人連れが時折甲高い笑い声を交換し合っていた。聞こえてしまったかと、不安になったが、大丈夫のようだ。
サキさんの言った意味が、わかった。
「詩織。本当に、イッてたね、あの時」
あの、電話でのエッチの夜は、アブなかった。感極まって、立て続けに何度も痙攣したレナは、机にかけた両足を突っ張り過ぎてしまい、そのまま後ろにひっくり返った。大きな物音がした。エクスタシーの後の余韻に浸るどころか、強か打ちつけた背中と頭を気遣う暇もなく、急いでパジャマを身に着け、階下から上がってくる両親の足音や、隣の部屋の弟の襲来に備えなけれなならなかったからだ。
案の定、真夜中の騒音に何事が起きたかと母と弟とが戸口にやって来た。間一髪で間に合い、レナはドアを開けた。
「どうしたの。夜中に何やってるの」
「姉ちゃん、誰かと電話してたよ」
年子の弟、ヨウジはいつも余計はことを言う。
「ゴメン。友達と電話しながらストレッチしてたら、ベッドから落ちた」
母は、ほんとにもー人騒がせな娘だと言いながらプンプン下に戻って行ったが、
「どーせ彼氏とテレフォンセックスでもしてたんじゃね」
ヨウジがさらに余計なことを言うので、
「うるさい。さっさと寝ろ。彼女イナイ歴イコール年齢のくせに!」
無理矢理追い出し、ドアを背中でホールドした。
足音が遠のき、弟の部屋のドアがバタンと音を立てたので、ホッとしてベッドに倒れ込んだ。体中の酸素が抜けるぐらいの溜息をついた。でも、それで新たな自分を知った。
あんなに深くイッた割に機敏に危機に対応できた自分は意外にタフだったのだな。それに、自分は意外に命令されたり強制されたりするのが好きなんだな。
ハッとして慌ててスマートフォンを取り上げたが、もう通話は切れていた。パソコンに取りつくと、メールが来ていた。
サキさんからだった。
「大丈夫だったかい? 君は案外、目覚めが速いかもしれないね」
それから。
再びレナから連絡をし、今日の逢瀬に繋がった。
「詩織」
サキさんはレナに呼び掛けた。シルクよりももっとゴージャスな、ビロード? それよりも、しっとりとした、でも確かな強さの、柔らかな鞣革。そんな艶やかな、でも、しっかりとした低音が、サキさんの口から発せられる度に、レナの股間が反応してしまう。
ああ、ヤバい。
レナは、耐えた。
「君の思いは受け取ったよ。僕のプレイを受けてみたいんだね」
レナは、頷いた。
「でも、ちょっと不安がある、と。それも、よくわかるよ。でもね。君はたぶん、少し誤解してるんじゃないかな」
「何を、ですか」
「SMをさ」
サキさんはどぎつい単語を辺りを憚ることなく口にした。
「ちょっと、説教臭くなるけど、確かに、この世界は縛ったり叩いたりってのがある。写真で君が見た通り、僕は女の子たちを縛って、叩いて、犯す」
レナは再び周囲を見回した。右側の主婦たちはまだ自分たちのお喋りに夢中だった。後ろも、高いグリーンのせいでよくわからないが、レナ達に聞き耳を立てている様子はなかった。サキさんはキョロキョロするレナを面白そうに眺めて、続けた。
「あのね、サディズムとかマゾヒズムてのは、そんな単純なものじゃないんだ。僕は叩くのが面白いから叩いてるんじゃないんだよ。彼女たちも、ただ叩かれるのが嬉しいんじゃないんだ」
ごくり。
レナは唾を飲み込んだ。
「彼女たちは、自分の内にある、自分の知らない自分を引き出して曝け出させてくれるのが、嬉しいんだ。人間て、もともとそういうもんなのさ。長い間に、抑え込まれてたそういう欲望を吐き出したいという願いは、実は、誰でも持ってるものなんだ。
僕は、彼女たちのそういう願望を叶えてあげるのが、快感なんだ。彼女たちが、抑え込んでいた自分を曝け出して悦ぶ顔を見るのが、僕の快楽なのさ」
だんだんボーっとしてきた。サキさんにも、それがわかったのかも知れない。
「さ、講義はこれくらいにして、実技に移ろう。実際にやってみて、詩織が自分で判断すればいい。僕は、来る者は拒まないし、去る者は追わない。いつ始めたって、いいし、いつ辞めても構わない。どうする?」
レナは、覚悟を決めた。
というより、もう、その気だった。
あんなに写真を見せられ、あんな快楽を教えられた後ではもう、自分の好奇心を抑えつけられる自信がなかった。ここで決めなければ、絶対後悔する。もう、あんな退屈な日々は、たくさんだ。
「・・・お願いします」
そう、レナは口にした。
「うん。いいよ」
変わらない、落ち着いた態度で、サキさんは頷いた。これで、サキさんの調教を受けることになるのだ。胸が高鳴り、再び股間が反応した。
しかし、その直後の壮絶な要求に、レナはたちまち、調教を志願したことを後悔した。
「じゃあ、さっそく、始めよう。詩織。下着を脱いで。今すぐ。ここでね」
ウソ。
出来るわけない。
「あの、パンツを脱ぐんですか」
囁くように、そう、確かめずにはいられなかった。
「ショーツ」
と、サキさんは正した。
「ぱんつ、ってのは子供の言い方。これからは、下着、あるいはショーツと言いなさい」
レナのボックスは、胸ぐらいの高さとはいえ、壁には囲まれていた。そして、目の高さには小さな観葉が並んでいる。とは言え、ジャケットを脱ぐ、という行為をしているのは、はっきりとわかる。そして、コーヒーショップの座席でジャケットを脱ぐのは、社会的になんら問題はない。
しかし、コーヒーショップでパンツを脱ぐのは、著しく、果てしなく、マズい。
まず、心理的に無理。それに、アクションが目立ちすぎる。スカートをたくし上げて、パンツのゴムに指をかける。ここまではいい。しかし、その後、尻を浮かせて膝まで移動させ、さらに、それを足首まで抜き取らなければならない。そんな不自然な動きは、観葉植物越しでもはっきりとわかる。モタモタしていれば、ウェイトレスさんにも見つかる。曝しものになる。
さらに。それまでのレナの妄想のせいで、パンツはぐっしょりと濡れていた。そんなパンツを。脱ぐんですか? 今、ここで。
絶対、無理。
「トイレじゃ、ダメですか」
縋るような気持ちで、言ってみた。それなら、何とか妥協できる。お願いします。いいよ、と言ってください。レナは、祈った。
しかし、サキさんは、非情過ぎた。
「僕は、ダメとは言わない。でも、その場合は、これ以上の詩織とのプレイは、ない。
これで、終わりだ。僕は詩織のデータを全て消す。お互い、もう、会うこともないだろう。これは、脅しでも、脅迫でもないからね。君が望んだから、僕は今日、ここへ来た。君が望まないなら、僕は帰る。それだけだ。さっき、言った通りだ」
サキさんの声も、表情も、全く変わっていなかった。さらに、
「脱いだ下着はこれに入れて、僕に渡しなさい」
スーツのポケットから、折りたたまれた小さな茶色い紙袋を出し、テーブルの上に、置いた。全て想定済み。レナのそうした反応など最初からわかっている。というよりも、見飽きた。恐らくは、あのブログの写真の女性たちも、皆、この関門をくぐったのだろう。
そういうことか。
レナは、観念した。ハラに気合を、入れた。
「じゃあ、やります」
サキさんはニコニコ顔で、レナを見ていた。
この人は、鬼だ。そう思った。
意を決し、両手で少しずつスカートをたくし上げながら、周りを警戒した。運悪く、空席だった左のボックスにサラリーマンの三人連れが来た。おそらくウェイトレスさんが注文を取りに来るだろう。観客が増えるのは、困る。
レナの手が、止まった。
縋るような、必死の思いで、サキさんを見た。
彼は、怒っていた。目が、
「早くやれ」
そう怒鳴っている。
それでもレナが躊躇していると、荒々しく、顎をしゃくって、催促した。
涙が出た。恥ずかしすぎる。股間が、どうしようもなく疼き、こんな非常事態のレナに追い打ちをかけるように、さらに濡れた。もう、濡れるな。そう、叫びたかった。このままだと湯気が出るんじゃないか。水溜りが出来たらどうしよう。さらに尿意もある。もし、お漏らししてしまったら・・・。
どうしよう・・・。
ええい! もう、ヤケだ。
左のボックス席の男たちが席に着き、ガヤガヤし始めたのを機に、前にかがみ込むフリをして、一気に腰を浮かし、膝頭まで移動させようとした。パンツ、を。ショーツ、を。濡れたショーツが、同じく愛液と汗とでだろう、濡れた尻に張り付いたようになり、上手く抜けてくれなかった。焦っているうちに、
「すいませーん」
男たちの誰かが声を上げ、他の連れたちの視線がややこちらを向き、反対側からは、
「少々お待ちください」
と、ウェイトレスさんの声が。
思い切って一瞬だけ大きく半立ちになり、くるくる丸まって紐のようになったショーツを一気に膝頭まで押し出したのと、ウェイトレスさんが注文を取りに歩いてくるのが同時だった。そこへサキさんが絶望的な一言を。
「あ、すいません」
「少々お待ちください」
正に、真正面で彼女の視線がこのテーブルに、レナに一瞬だけ注がれた。
顔から火が出る。カーッと首筋から上が熱くなる。
お願いです。どうかこれ以上注目を集めないでください。
がっはっはっはっ。
左側の男たちが一斉に笑った。まるで変態なレナを哄笑するかのように。
変態。
そう。
自分は、レナは立派な変態だ。
平和なコーヒーショップの店内で、普通の人々が歓談しコーヒーを味わう場で、衆人の目がある公共の場所で、独り、愛液に濡れた汚いショーツを脱ぎ、イヤらしい秘部を曝そうとしている。膝からふくらはぎの中ごろまで下ろせれば、後は足だけで脱ぎ下ろすことが出来そうだ。顔の火照りと胸の高鳴り。心臓が、苦しい。
「あ、すいません。彼女にコーヒーのお代わりを」
サキさんはワザとウェイトレスさんに用を言いつけ、レナに注目を集めようとする。
「かしこまりました」
恥ずかしい・・・。
もう、ショーツは膝まで下ろしてしまっている。注文を受けて立ち去る前にウェイトレスさんと目が合った。
(このコ、さっきから少しヘン)
(なに、顔赤くしてんのかしら)
(何か、ヤラしいこと、してるんじゃ・・・)
そんなふうに、思われているのかも。
ヤバい。また、濡れて来た。
それに、髪の毛の根元から、額から、胸元や、脇の下。元々汗かきの上に過剰な緊張と不安と羞恥が重なり、大汗をかいていた。サキさんさんは、そんなレナを見て、興奮しているのだろう。ただそれは、一切感じられない。冷静に微笑をたたえたまま、レナを凝視している。
そうだっけ。彼はもう、慣れているのだったな。
こうしていても、仕方がない。
えい。やってしまえ。
一瞬のうちに、レナは右足を少し上げ、伸びきったショーツの紐の輪をふくらはぎまで下ろした。
カチャーン。
「あ、すいません。スプーンを落としました」
「少々お待ちください。代わりのをお持ちします」
来なくていい! 今、来ないで!
カシャーン
焦って、左の膝と右のふくらはぎとの間を繋いでいた紐にたいになったショーツの丸まったのを下ろそうとして膝でテーブルを蹴上げてしまった。コーヒーカップが揺れ、スプーンが踊り、黒い液体がちょっと跳ね出した。周囲の視線を浴びているのがわかる。心臓が、胸から飛び出したがっていた。
それなのに、酷い。
サキさんは落ちたスプーンを靴の先でさらにテーブルの下に滑らせた。
「すいません。あのー、落ちたスプーンが見当たらなくて・・・。テーブルの下かな」
やめて!
そんなことをされたら、ショーツをずり下げているのを見られてしまう。
ウェイトレスさんの靴音が、運命のドアを叩くように頭の中で響いた。
もう、無理・・・。
鼻がツンとした。目の前のサキさんが歪み、レナの瞳から、一筋の涙が、流れて、落ちた。じっとレナを見つめていたサキさんは、口角をゆっくりと引き上げて、笑った。
悦んでいた。喜悦に浸る貌だった。
「あ、ありました。ありました。どーも済みません」
サキさんはウェイトレスさんが来る前に長い腕を伸ばしてスプーンを拾い上げ、彼女に手渡した。
「行儀が悪くて、済みません」
「いいえ。お気になさらずに。ごゆっくり」
一礼して去って行く彼女を見送ると、サキさんは、こう言った。
「その、涙が、見たかったんだ。最高だよ、詩織」
差し出された手に、きちんとアイロンがけされたハンカチがあった。
「よく、頑張ったね」
よかった・・・。これでやっと苦痛から解放される。
何も言えず、黙ってハンカチを受け取り、目頭を抑えていると、
「さあ、ショーツを渡しなさい」
やっぱり。それは、避けては通れないのか。
でも、何かが違った。何かが、変わった。まだ、恥ずかしくはある。でも、もうさほど、苦痛には感じなかった。
レナはサッとかがみ込み、両足のパンプスを脱ぎ、湿ったショーツを脱ぎ去って、確保した。テーブルの上の紙袋を取り、テーブルの下で袋に入れた。何故か、落ち着いて、出来た。
嬉しかった。
人前でショーツを、パンツを、下着を脱ぐ。長い間、人としてしてはいけないと教え込まれた下品な行為。でも、たったそれだけの行為。それが出来たのが、嬉しかった。
じーん。
全身の凝りが解れた気分。
きっと、たぶん、泣いたせいだ。また、涙が溢れた。
「そうだよ」
サキさんは、レナの心を読んでいるかのように、言った。
「泣いたから、だよ。限界まで耐えて、耐えて、耐えきれずに泣いたから。だから、詩織の心が、解放されたんだ。どう、何か感じないかい。快感だろう?」
そうなのか。
「・・・はい」と答えた。
「それがセックスと結びつくと、最高の快感になる。さらに慣れて来るとセックスなしでも同じか、それ以上の快感を得ることが出来るんだ」
こういうことなのか。さっき、サキさんが言ったのは。
「じゃあ、その袋をテーブルの上に置いて」
下で手渡そうと思っていたら、機先を制された。やっぱりな。そう易々と、終わりにしてはもらえないんだな。
諦めて、袋をテーブルに載せた。そこで気付いた。紙の袋にシミが出来ていた。慌てて取り戻そうとしたら、先に取られた。
サキさんは目の前で袋を開いて取り出そうとした。レナの、愛液で汚れたショーツを。あの、女の匂いがしっかりと染みついた、のを。
「やめて下さい」
「だいぶ、濡れてる。凄いな。ぐしょぐしょだ。どこの部分が一番濡れてるのかな。どれ」
もう、顔から出る火は出尽くしたと思っていた。恥ずかしさで、気が変になりそうだった。立ち上がってサキさんから袋を奪い返そうと腰を浮かせかけた。
サキさんはサッと身を引いた。テーブル越しでは、どうしようもない。
この上さらに追い打ちをかけるように、彼は言った。
「もう、出ようか」
「えっ?」
「気持ちのいい、春日和だ。ちょっと、その辺を歩こう。そうしたら、返してあげる」
「え、このままで、ですか?」
「もちろん、そうだよ」
「・・・無理です」
「大丈夫だろ? だって、詩織はノーパンで授業を受けたんだろう」
メールでやり取りしていた折に、サキさんに合わせるために吐いたウソだった。それが、こんな時に災いするとは思わなかった。今更ウソとは言えない。しかし、このままこの短いスカートで通りを歩くなんて。それに、トイレにも行きたかった。
「じゃあ、ちょっとお手洗いに行ってきてからでいいですか」
「ダメだよ。この先に公園がある。そこの公衆トイレまで、我慢するんだ。先に外へ出て待っていなさい」
通りを歩く人々には優しい春の風も、今のレナには厳しかった。
春風は容赦なくレナの裸の股間を撫で、去って行くを何度も繰り返していた。
他人の目が気になる。特に、母親に手を引かれた、子供の目が。その子たちの目の高さは、丁度レナのスカートの裾辺りだ。
「ママ、このおねえちゃん、パンツはいてないよ」
そう、言いふらされたら・・・。
子供の目すら、恐ろしかった。
たまらない。早く出てきて欲しい。
たった数分の孤立が、何時間にも感じられた。
カランコロン。
待ち望むショップのドアのカウベルが鳴る度に、ビクビクしながら振り返っては、落胆する。その繰り返しを何度も、した。
「やあ、待たせたね。トイレに行っていたものだから」
ひどい。
あたしを我慢させておいて、自分だけ・・・。
サキさんは生まれついてのサディストなのだろう。
「さあ、行こうか」
ワザと遠回りの道を歩かされた。それも、大通りに面したペイブメントを。春風だけでなく、車道を疾走する車たち、特に大型ダンプやトラックが通過する度に、風がレナのスカートを煽り、股間を弄る。
サキさんのブログにあった写真。たぶん、一番年上の女の人だろう。その姿が浮かんだ。その女の人は全裸で、豊満な肢体を天井から吊るされていた。豊かな乳房やボリュームのある尻が赤く染まっていた。口には先がバラバラになった鞭の柄を加えさせられていて、モザイクで目はわからなかったが、上で括られた両腕の間から項垂れたり、後ろに反り返った虚ろな口元が僅かに開き、そこから透明なよだれが流れ落ちてライトに光っていた。
被虐の悦び。
サキさんのブログには、そんな文字があった。
「あなたも被虐の悦びに浸ってみませんか」
レナがそのブログのWEBメールを恐る恐るクリックしてから、一か月。今、風に弄られ歩かされている自分が、全裸で釣られて鞭で打たれ弄られる、その女の人に重なっていた。
サキさんは、そんなレナの後ろを歩いている。きっと、自分の、身悶えながら歩く姿を楽しんでいるんだ。レナは、思った。
「そこを左」
「そこは真っすぐ」
ワザと公園から遠ざかるように、ぐるぐると公園の周りを誘導されるレナ。
もう、逆らわなかった。
風が弄る度にスカートを抑えるものの、全裸で釣られて鞭打たれる女の人を想像しながら、股間を外気に曝されて歩かされる自分に、酔いはじめ、再び、濡らしていたのだ。今度は愛液をとどめるものがない。もしかすると、太腿をつたって、垂れてくるかもしれない。
一時間。
コーヒーショップから歩いてほどない公園なのに、そんなにも歩かされた。もう、漏れそうになっていた。それでも、目の前のトイレを素通りさせられ、サキさんは、ベンチにレナを誘った。
「今、どうなっているか、教えなさい」
「何がですか」
「詩織のオ●ンコがどうなっているか、僕に教えて」
レナは正直に言った。
「濡れてます」
「違うよ」
また、サキさんは、レナを咎めた。
「自分の指でオ●ンコを弄って、僕に見せながら、言うんだ。
『詩織はエッチな想像をしながら、ノーパンで散歩して濡らしてしまいました』
言いなさい」
もう逆らわない。そう決めたのだ。それに、早くしないと、我慢の限界を超えそうだった。
目の前を散歩する人々の目を気にしながら、スカートの上にポーチを置き、その下から手を差し入れた。剛毛の奥の泉は今にも決壊して溢れ出そうなほどに、潤っていた。その指を、サキさんに、示した。そして、言った。
「詩織は、エッチな想像を、しながら、ノーパンで、散歩して、濡らしてしまいました」
「これは? この指についている液体は、何かな」
サキさんの目が、何故か、優しく見えた。
「あたしの、愛液です」
「自分のことは、私、あるいは、わたくし。そしてこれは詩織のオ●ンコの、だろう」
また、涙が、流れた。
「これは、わたしの、オ●ンコの、愛液です。濡らしてしまって、申し訳ありませんでした。もう、もう、許してください。 お許しください」
サキさんは、感動したように目をつぶった。
そして、レナを優しく、強く抱きしめた。
大人の男性の香ばしいフェロモンが、レナの鼻腔を刺激した。
「よく出来たね。トイレに行っておいで」
サキさんは、そう言って、微笑んだ。
すぐにトイレに駆け込んだ。便器にかけ、すぐに、放尿した。大量の小水を放出しながら、安堵と諦めと快感を同時に感じた。
鞣革の感触。
レナは既に拘束されていた。サキさんの光沢を放つ鞣革の声。それがそのまま革の手錠になり、レナを後ろ手に縛っていた。だが、それは、今まで経験したことのなかった、甘美な拘束だった。その拘束に、レナは酔っていた。公園の、あまりキレイとは言えないトイレの中で、その酔いが、惨めさを快感に変えた。
レナは顔を覆って、声を殺し、号泣した。
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