32 / 52
32 六条の御息所
スミレさんの赤い爪がレナの汗ばんだ喉をフェザータッチしながら耳たぶを弄る。
「『六条の御息所』知ってるよね?」
「・・・いいえ」
「『源氏物語』だよ。
源氏の大臣の年上の愛人。宮廷の貴婦人。源氏の大臣の正妻に嫉妬して、彼女が源氏の子を出産している間に嫉妬が凝り固まって怨念になり、怨念が生き悪霊になって正妻をとり殺してしまう・・・」
レナの丸顔の輪郭をなぞるように、彼女の爪が伝う。
「わたし、見てたんだ、ここで。あなたとサキさんが、丸一日中、プレイしてるのを・・・」
スミレさんに促され、立ち上がったレナのワンピースの背中のジッパーがゆっくりと下ろされる。
「他のスレイヴのプレイも見たけど、こんな気持ちになることはなかった。あなたとサキさんのだけは、違ったの。
悔しかった。八歳も年下の小娘に、大切な、最愛の男を取られるなんて、って」
なんて言ったらいいか、わからなかった。ただ、されるまま、脱がされるままになっていた。他に、どうしようもなかった。
「あんなにも、サキさんに愛してもらっている、あなた。
そして、大好きな男と別れ、好きでもない、尊敬も出来ない男と結婚し、身体を委ねなければならない、わたし・・・」
ブラジャーが取り去られ、彼女の指が汗ばんだレナの肌を降りて行く。
「最後に場所を変えたのは、たぶん、わたしに見られたくなかったんだと思う。見せたくなかったんだ、って。サキさんの、その、思いやりが、辛かったよ・・・」
オーバーオールを床に落とし、Tシャツを脱ぎ棄て、スミレさんはもう一度レナに口づけした。
「今日、ホテルにあなたを迎えに行くまで、わたし『六条夫人』だった。怨念のカタマリだったんだよ。それなのに、あっけらかんと現れたあなたを見て、拍子抜けしちゃった。
だって、あんなに送ったわたしの生き悪霊、全然届いてないんだもん。それどころか、あんなに激しかったサキさんのプレイの後に、またまた年下の男の子手懐けて舐め犬にするわ、大男の柔道部のおっきいの咥え込むわ、でしょ?
サキさんにLINE送ったでしょ。あれ、全部転送されてきてるから」
カッと顔が赤くなった。
「敵わないなと思ったよ。
サキさんはたぶん、あなたのそういうところが気に入ったんじゃないかなって、思った。汗びしょびしょになってる。おいで、洗ってあげるよ」
スミレさんの手はサキさんのよりも優しく、かつ確実にレナの性感を掘り起こし、昂らせた。
熱い湯に打たれながら、背後からのキスと指の責めが続く。スミレさんの舌がレナのそれに絡み、追おうとすると逃げる。そのもどかしさがレナの股間を疼かせ、掘り起こされたクリトリスを震わせる。
「おもしろいし、わかりやすい。レナって、責めて欲しいところ、自分から開くんだね。脇とか、耳とか、こことか」
「ああん。・・・ああっ!・・・いいっ!」
「どこが、いいの?」
「クリ、気持ちいいです。ああっ、そんな、ああっ、ダメっ・・・」
「ふふっ。レナって、かわいいね」
アンティークのベッドの上で、レナは存分に責められた。
柔らかな舌が身体中を這い回る。サキさんのよりも繊細な動きが、快感を彼との時とは別の色に染め上げてゆく。クリトリスへの舌の責めに耐えていると、彼女の脚がレナの視界に入る。美しい、緑の石が煌めくピアスに飾られ、刺激されて大きくなった他の女性のクリトリスを、初めて見た。
「わたしのも、愛して」
迷うことなく、舌を這わし、舐め上げ、舐め回す。
初めての、女性とのセックス。
サキさんを知る前なら、身震いして拒否しただろう。彼との濃厚なプレイのお陰で、新たな扉を押すハードルが急激に下がっていた。
しかも、相手はそれより前から毎日のように眺め、オナニーのお供にし、憧れていた女王のような存在だった。拒否などできようもないし、する気もない。むしろ積極的にその美しさとテクニックとに魅かれ、自ら埋もれて行った。
上になったスミレさんの乳首からぶらさがるピアスの冷たい感触が、レナの腹をくすぐる。彼女の白い太腿に舌を這わせ、ついばみ、また這わせる。
こんなに自然で、甘美で、淫靡な快感があることを、レナは初めて知った。
目の上で、成熟したラビアを飾る緑の石から露が落ちる。それを舌で舐めとりながら、ああ。早く自分もピアスを施してもらいたい・・・。思いをつのらせる。
ゆっくりとやって来た絶頂は、何度も寄せては引き、引いては寄せて、レナを真っ白に漂白した。
「今度のお使い。あなたも一緒に行くからね」
「・・・はい」
ヴァギナに侵入した舌が蠢く。レナに吸われた濃いピンクのクリトリスがヒクヒク動き、濡れそぼったラビアのピアスを蠢かせ、妖しい光を放つ。
「届ける荷物、あなただから」
「・・・え?」
「行く日が決まったら、前の日にエステ、予約するね。全身、磨いてもらいなさい」
荷物・・・。何かをする、というより、何かをされるために届けられる、自分。そのために、磨いておけ、と。
「私が今言えるのはそれだけ。その日が来たら、あなたが知るべきことを教えてあげる」
レナの両脚が抱えられ、上げさせられ、屈曲する。股間が天井を仰ぐ。舌がクリトリスやヴァギナを弄び、アナルにまで侵入する。
「おもちゃあげるから、ここも、なるべく馴染ませておきなね」
異性であるサキさんやトオルに見られるよりも激しく羞恥を煽られる。
来るべき日に何かをされる。その「何か」のなかに、アナルセックスもふくまれるということだ。その異様な快感に、悶えた。
二人して全裸のまま、キッチンに立ったまま、バゲットを切ってはブルーベリーやバターを塗ってかぶりつく。警備員に運転された車が爆音を轟かせて帰って来た。車がガレージに収められているのが見える。
「チップあげなきゃ。レナ、そのバッグに財布入ってるから。一枚あげてきて」
裸のままでですか。とは、もう言わない。趣味の良いスミレさんのレザーのバッグから、財布というよりはカードとチップのためのお札を入れておく小さなバッグのような革製品を取り出し、開いた。
一万円札と百ドル札がある。
「どっちですか?」
「ここは、日本だよ」
バゲットをモグモグしながら、スミレさんは、言った。
あらかじめ四つに折りたたんである一万円札を抜いて、戸口に行った。ドアを開けると、中国系の、制服をきちんと着こなした若い青年が石段を上がってくるところだった。レナを見て意外そうな顔をしたが、足元から視線をあげてきて目が合うとニッコリと微笑んだ。キーと引き換えにレナが立てているチップをすっと抜くと、
「アリガドゴジャマシタ」
と踵を返して立ち去った。
「ここに来ると彼に預けるの、車。ガソリン入れて洗車してくれる。彼、上手いよ、洗うの。とっても・・・」
スミレさんはそう言ってニヤニヤ笑い、舌を出してゆっくりと唇についたジャムを舐め回した。
オーバーオールの胸元から、時折揺れる乳首のピアスが見える。テーブルの上には部屋のカギとピンク色のアナル用のおもちゃがある。スミレさんはおもちゃを茶色い紙袋に入れてくれた。
「えーと、部屋の鍵、おもちゃ、スマホ、渡したよね。漏れは、ないかな、部屋の住所、地図に入力したね? 他には、無いね。これでよしと」
スミレさんは気の抜けかかったペリエを一口飲んだ。.
「いろいろ、ありがとうございます」
新しいアパートまで斡旋してくれたことに礼を言った。
「部屋、気に入るといいけど」
「あのう・・・」
「ん?」
「秘書って、お給料でるんですか」
「でるよもちろん」
「どのくらいですか」
「サキさんから、聞いてない?」
「・・・はい」
「そうか。わたしは、十分の一、もらってる。サキさんのね」
「・・・そんなに。・・・年に一千万円ですか・・・」
はあ? という表情でスミレさんはレナを睨んだ。
「・・・あなた、サキさんの年収、知らないの? 彼、なんて言い方してた?」
「・・・普通の年収一千万円のサラリーマンが十人束になっても稼げない額、って」
「それ、年収じゃないよ。十人束になって定年まで働いても稼げない額、それをもう得ている、って、そういう言い方、してなかった?」
「・・・え?」
「単純に、ちょっと有り得ないけど、ボーナスも入れて年収一千万の人が四十年会社で働いたとするでしょ。生涯で約四億円。十人なら四十億。それを上回る額を、僕はもう得ているって、そう言ったと思うよ、サキさんは。彼が今の雇い主の下で働き始めて十年。十で割って、さらに十で割った数字がわたしの年棒というわけ。
レナがサキさんの秘書として一人前になれば、そのくらいもらえるんじゃないの」
頭が、クラクラしてきた。
「とりあえず、お金には困らないでしょ。カード、もらってるんだし。アパートの家賃はこっちから振り込むから気にしなくていいよ。というかさ、いずれあなたがその管理をしなくちゃいけないの。わかる?
明日から毎日ここにきてパソコンで仕事の勉強しなさい。セキュリティーの解除と設定、覚えたね? わたしも時間取れれば来るから」
「毎日来てくれるんじゃないんですか」
「あのね、わたし、もう、結納したの。いろいろあるのよ・・・下らないことが」
そう言ってスミレさんは、目を落とした。
丈の短い、純白のサマードレスを着、お揃いの白いハンドバッグを手に、レナは事務所を後にした。
「もし、よかったら貰って。わたしの夏用の奴隷服。もう、着ないからあげる。置いとくと、辛くなるから捨てようと思ってたの。そのポーチじゃ似合わないから、これも」
紙袋には愛用のポーチとアナル用の淫具が入っている。
来た時と同じように本館を通り抜けてエントランスに出る。黒塗りの高級車の横に、寸分の隙も無い服装のスズキさんが侍立していた。
「お疲れさまでした」
ドアが開けられ、レナは後部シートにおさまった。
「どちらまで行かれますか」
運転席に着いたスズキさんはバックミラー越しではなく、レナを顧みた。
「ここまで、お願いします」
レナの見せたスマートフォンを一瞥すると、
「かしこまりました」
スズキさんはゆっくりと車を発進させた。
「サキさんからもキツく言われてるから、あなたに免許証はあげられない。その代り、スズキさんにお願いしてあなたの専属になってもらったから。ここに通うのもラクでしょ。とりあえず夏休みが終わるまでは、そうして」
試みに、「ログイン」にログインして「5」の数字をクリックしてみた。スミレさんのスレイヴナンバーだ。開くことは開いたが、情報は全て消去してあった。
甘く、終わりのない絶頂の連鎖。レズビアンとはこういうものだったのか。
来た時のあの恐怖の暴走とは大きく違う、ゆったりと走る車の微振動に揺られていると、素晴らしいセックスを振りかえる余裕が生まれた。
あのレイプのような大暴走も、スミレさんに使われる感も、エロかった。サキさんとの、回数こそ少ないが濃厚なプレイたちのお陰で、そうしたものを味わえる「舌」が肥えた気がする。
でも・・・。
トオルの巨根セックスも、ユーヤのエロい舐め犬も、スミレさんとの甘いレズ行為も。全部、サキさんとのプレイ、サキさんに思う存分使われ思うさま蹂躙され貫かれるハードなセックスに比べると月の前の灯。その不在の穴が大き過ぎ、三つが束になっても。その埋め草にすらならない。それを改めて思い知らされるのだった。
どうやら、余計にサキさんに会いたい思いを拗らせてしまったようだ。
新居を確認したら、ヨウジに話して、明日明後日で、引っ越しかな・・・。眠りを誘うような穏やかな揺れが、レナの瞼を下ろさせ、頭を少しずつドアのほうへと誘って行った。
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗@オートスキル第1巻発売中
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
同じアパートに住む年上未亡人美女は甘すぎる。
ピコサイクス
青春
大学生の翔太は、一人暮らしを始めたばかり。
真下の階に住むのは、落ち着いた色気と優しさを併せ持つ大人の女性・水無瀬紗夜。
引っ越しの挨拶で出会った瞬間、翔太は心を奪われてしまう。
偶然にもアルバイト先のスーパーで再会した彼女は、翔太をすぐに採用し、温かく仕事を教えてくれる存在だった。
ある日の仕事帰り、ふたりで過ごす時間が増えていき――そして気づけば紗夜の部屋でご飯をご馳走になるほど親密に。
優しくて穏やかで――その色気に触れるたび、翔太の心は揺れていく。
大人の女性と大学生、甘くちょっぴり刺激的な同居生活(?)がはじまる。