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45 温泉
それからは、なるべく質問をしないようにした。
サキさんという男はやることなすことみんな謎めいていて、それが真実なのかウソなのか、わからなくなる。
たぶんあれはテストだったんじゃないだろうか。
スレイヴ全員をあのスイートに呼んだという一件のことだ。
じゃあそれは一体何のために? サキさんは謎めいてはいるけれど、何の意味もなく行動をしたりはしない。その時は謎めいていても、後になって、「あれはこういう意味だったのか」ということがわかる。みんながそれを理解するころにはもう、彼はまったく別の部屋で、別の事をしている。
それとも、後腐れなく関係を清算するための、芝居とか。
今まで高級外車を乗り回し、湯水のように金を使い、目くるめく性感の虜にさせてくれた人が、突然無一文になり、性的不能になる。その二点のみで付き従っていた女たちは普通は背を向ける。そうでなかったスレイヴが二人いたというのが問題だ。あの自分とサキさんだけの、プレイではなく、女と男として愛し合った夢の空間で、レナがしたような、熱い行為を・・・。
な? やっぱり駄目だったろう。こんな僕はもう忘れて、新しい道に踏み出すべきだ・・・。
恐らくはそんな言葉に送り出されてあの部屋を出て行ったのだろう。その女たちの方が利巧だったのかもしれない。
「僕はその気にならないと勃起しない」
かつてサキさんはそう言った。
だとすると、その、不能を治そうとした女には耐えられても、レナにはアブなかったのでは? もう少しで、勃起してしまいそうだったのでは? その気になってしまいそうだったのでは・・・? だから、焦って、レナを乱暴に放り出し、怒りだした、フリをしたのでは?
自分は唯一、サキさんの思い通りにいかない女なのかもしれない。そう考えると、少しは溜飲が下がる。なんといっても、自分は「史上最強で空前絶後の大バカ女」なのだから。
明け方近くになっても、レナは全く眠くなかった。
もう、オールディーズは終わっていて、サキさんは鼻歌だけでそれを楽しんでいた。
「この辺りで、山に入るか。温泉、あるといいねえ」
太平洋に流れ込む大河沿いに北上し、手近のガソリンスタンドで給油し、道沿いにあった、タクシードライバーやトラックの運転手たちが黙々と食事しているニ十四時間営業の牛丼屋で朝定食を食べた。
「なんか、いいな。ずっと前からこういうことがしたかったんです♡」
レナはサキさんの丼に卵を割ってあげながら、その思いを口にした。
「そうか。こんなのが良かったんだ・・・」
「うん♡」
何故か、ハートマーク付きの会話になっていた。
「やっぱりお前、可愛いけど、・・・バカだわ」
昼前に、その温泉街に着いた。
あたりから硫黄の匂いが立ち込め、そこここから湯気が立ち昇る、典型的な温泉街。旅館が点在し、そこらに土産物店が鬻ぎ、足湯の東屋があり、酔客相手の射的場や、今は時代遅れになったストリップ劇場の朽ちた看板が錆びている。そんな鄙びた温泉宿の街だった。四方は南アルプスの南端の山々に囲まれ、その辻に立つだけで心が和らいでゆく。
「こんにちはー。今日明日、部屋、ありますか。予約はしてません」
適当に入った旅館のカウンターで、サキさんはそう呼ばわった。カウンターの上とその周辺に様々な地元の民芸品やらルート案内の地図やらイベントのパンフレットやら招き猫の置物が並んでいる、ごく普通の小さな旅館だった。
暖簾の奥の帳場から四十絡みの和服の女性が出て来て応対してくれた。
「いらっしゃいませ。おひと部屋でよろしいですか」
「はい。夫婦で、ぶらっと、来たもんですから」
「そうですか」
夫婦・・・。
レナの中に、じん、と来るものがあった。
「もう少し経つと紅葉も綺麗だったんですけどねえ・・・」
宿帳を勧めながら、女将は言った。
「本当にぶらっと、です。日頃忙しくて・・・。急に仕事がヒマになったもんですから、たまには女房孝行でもと・・・」
「あら、いい旦那さん。奥さんもお若くてねえ・・・。いいですねえ」
レナはサキさんの記入する宿帳を盗み見た。岬 敏則 麗奈。達筆で、書き込まれていた。トシノリ、かあ。きっと本名じゃ、ないんだろうなあ・・・。
「あいにく、お昼はご用意できませんけどねえ・・・」
「結構です。荷物を置いたら、少し辺りを散策します。どこか、お勧めの地元の料理を出してくれるお店があれば・・・。アユの塩焼きとか、ないですかね。それと、露天風呂は、ありますか」
宿のはまだ清掃中だった。いくつかの旅館で管理する、共同の天然露天風呂を教えてもらった。
「風呂に入って、ゆっくり汗を流して、その辺ブラブラするか」
部屋に荷物を置き、さっそく浴衣に着替えてそこへ行った。
小路を十分ほど、川の上流に向かって下駄を鳴らした。両側を紅葉しかけている木々に囲まれ、川のせせらぎがすぐ真下にあり、小さな脱衣所があるほかは、特に遮蔽物もない。少し目を上げれば、遠くではあるけれど、まばらなカエデの木を透かして川沿いの車道からも丸見えの、大きな石で囲っただけの湯の溜まりから盛んに湯気が上がっていた。天然の、源泉は六十度くらいの硫黄泉だと看板にはあった。
いちおう、脱衣所だけは男女が別れてはいたけれど、湯船はひとつしかない。脱衣所の前にも、申し訳程度に看板があった。
「刺青した人はダメだってさ。ピアスはいいらしい。堂々と入るか」
旅館から貰って来た木札を脱衣所の前にかける。これで入浴料を支払っていることを示すわけだ。
まだ紅葉のシーズンには早い。客はレナ達の他にはいなかった。いたとしても、レナは動じなかったろう。浴衣を脱ぎ、下着も脱ぎ、タオルを手にして若い肉体を隠すことなく、濡れた岩場を降りた。
サキさんはもう、にごり湯の中にいた。その隣に、添うた。川の水で薄められてはいるのだろうが、ちょっと熱めだ。彼は目を瞑り、岩に頭を預け、もう、湯を楽しんでいた。その端正な顔を眺めながら、身体を沈めた。身体を寄せ、肌をつけた。
濁り湯の中で、彼の手がレナの手を取り、自分の股間に導く。そこは、盛大に勃起して硬度を高めていた。
彼と同じように頭を岩に預け、澄んだ秋晴れを見上げ、周囲の山々から聞こえて来る野鳥の囁きと、湯の溢れる音に耳を傾けながら、男の勃起をゆっくりと扱いた。
やっぱり・・・。
「ウソつき」
レナは、股間を扱かれつつ、うっすらと額に汗を浮かせながらもゆったりと天然の湯を楽しんでいる男の横顔を睨んだ。
さすがのレナも、そこでことに及ぶわけにはいかなかった。
なんだよ、来たばっかなのに、と笑う男の手を強引に引いて、宿に戻る、足元の悪い道を呪いながら、レナは急いだ。
たぶん男女を問わず今、レナは日本で一番ムラムラしている十七歳かもしれない。もうひと月以上もこの男の肉棒とはご無沙汰だった。しかも、この数日、不安と焦燥とに苛まれ、卑猥な妄想をしながら、それに耐えてきた。今、レナの目は欲望を漲らせてギラギラしているに違いない。
セックスを覚えたてのサルに変貌した男子高校生が、処女を彼に捧げて間もないものの、快感を覚え始め、恥じらいながらも期待に胸をときめかせている女子高生の腕を引いて学校の体育倉庫に連れ込む・・・。レナには自分がしようとしていることがそんな風に見えた。
だたし、男の方は胸をときめかせてはおらず、どちらかというと、レナを揶揄い、弄んでいる。だから余計に、頭に血が昇り、その分、ムラムラが、増す。自殺をしに来たと男は言う。だが、そんなことは、二の次三の次だ。今は一刻も早く、男を・・・。
早く部屋に行かねば。部屋に入るなり、この男の唇を奪い、押し倒し、股間にむしゃぶりつき、跨り、ぎゅうぎゅうに締め上げ、犯してやりたい・・・。
「あら、お早かったですね。お湯はいかがでしたか」
女将に声を掛けられた。
「いやあ。せっかくの天然の露天風呂だから、もう少し楽しみたかったんですが、コイツが・・・」
まさか、本当のことを言うんじゃないでしょうね。セックスしたいと言って、とかって・・・。
言っても、いいけど。と、レナは思う。もうそんなことも、どうでもよくなった。
「腹が減ったと煩いもんですから・・・」
赤の他人にサキさんがそんなことを言うわけがない。そんな常識さえわからなくなるほどに、レナは、飢えていた。声を掛けてきた女将を呪った。
女将は一枚のパソコンでプリントアウトしたらしいパンフレットを示した。
「ちょっと先にイワナやアユの塩焼きの美味しい食堂があります。それとね、その近くからこの辺りの旅館が共同で運営する名勝巡りのツアーバスが出ます。一時間ちょっとのツアーで、最終が二時ですから、お昼を召し上がってからでも参加できますよ。この旅館の名前を言えば無料で乗れます。今日はどこもお客さんが少ないですから、予約は要らないでしょう。お召し替えは要らないですよ。浴衣のままでどうぞ。肌寒くなるといけないですから、丹前を・・・」
旅館が貸してくれた丈の短い丹前を羽織り、悶々と、アユの塩焼き定食山菜の天ぷら付きをつつき、少しビールを飲みながら、ずっとサキさんを睨みつけていた。レナの気持ちを知ってか知らずか。彼は塩焼きの身をほぐしては口に運び、美味しそうに、食べている。
「いいなあ。こーんなにゆっくりした旅行って、何十年ぶり、いや、初めてかも知れないよ。どうした。腹減ったろう。どんどん食えよ」
そう言って嘯くサキさんを、どうしてくれようかと、鼻息を益々荒くする。
さっき旅館を出る時、女将に
「お夕食はどうされますか」と尋ねられた。今日はお客さんが少ないですからお部屋食も出来ますが、と。
当然、お部屋食。それしかないと思っているレナの気持ちを踏みにじるかのように、サキさんは、
「広間の方が、いいですね」と答えてしまっている。
どうして? 早く、二人きりになりたいのに・・・。
店の前に、温泉街の名前が描かれたマイクロバスが停まっていた。
レナ達の他には、大学生か、それより少し上かのカップルがいて、既に乗車してあまごとを囁き合いながらいちゃいちゃしていた。さっさと乗り込んでゆくサキさんを追って、渋々ステップに足をかけた。
まだシーズンではないにしても、それでも高地の紅葉は山々の所々を彩り始めていていて、バスがくねくねと山道を登るにしたがってその彩を増していった。
カップルは後ろの席で早くもイチャイチャ度をグレードアップしていったが、サキさんは運転席のすぐ後ろの二人掛けにレナを誘い、温泉街の半纏を着た運転手が時折ヘッドセットで辺りの案内をする合間に親し気に話しかけたりしていた。
「絶景ですねえ。いやあ、来るの早すぎたなあ、もうちょっと遅ければ全山紅葉見れましたねえ」
「そうですねえ。あと、一週間ぐらいですかねえ・・・」
運転手はそう言ってバックミラーで応じたが、その端の方で少しレナと目が合うと、イヤらしく目尻を下げた。
サキさんの手が丹前の裾を捲り上げて浴衣の合わせをくぐり、太腿の間に侵入し、指先がピアスをしたフードこじ開けようとする。レナは袖でそれを隠した。
こんなところで・・・。だったらツアーなんか止めて部屋でしてくれればいいのに!
努めて顔に出ないようにはしたが、窓外を流れる風景に集中しながらも、快感がこみあげ、鼻息が荒くなり、何度も舌なめずりをしてしまう。
「このカーブを超えたところの景色が最高ですよ。ダムの全景が、目に飛び込んできますからね」
「・・・ほお、・・・ダムですか」
サキさんの指が、止まった。
巨大なダムの下で、濛々たる水煙を上げる放水を見物した後、バスはさらに山を登り、堤体の東の突端、美しいダム湖を見下ろす高台の駐車場に停まった。
その案内板に書いてあるような事柄を喋る運転手に耳を傾けつつ、展望台に上り、澄んだ湖面を見晴かす手摺にもたれた。
カップルは展望台には来たものの、どうしてもバスの中でのイチャイチャがいいらしく、早々に引き返していった。
「水深はどのくらいあるんですか」
サキさんはドライバーを捕まえて話し込んでいた。
「そうですねえ」
彼は白髪交じりの短い髪を撫でて、しばし湖面に目を落とした。
「私が生まれた村が、この湖の底にあるんです。そこから見上げたダムのてっぺんまでは、七十メートルくらいあったそうです。でも、年数が経つと埋まるんですよね、ダムってのは。今は、どうでしょうねえ。あれから五十年以上経ちますから、三分の一ほどは、埋まったかも知れませんねえ・・・」
それからしばらく、サキさんは、飽くことなく湖面を見つめ続けた。
「手伝いが来てくれたんで、お部屋食にしておきましたよ。せっかくおいでいただいたんですから、お二人でごゆっくり召し上がっていただきたいですからねえ・・・」
女将、グッジョブ! 思いがけない成り行きに、おもわずレナは心の中で快哉を叫んだ。
「ありがとうございます。妻も、喜びます」
妻、と。サキさんは、言ってくれた。
「お風呂、ご用意できましたから。今日はお客さんがただけですので、男湯でご一緒でもいいですか」
「いやあ、貸し切りですか。贅沢だなあ。運がよかったなあ、レナ」
「お夕食まで、ごゆっくり、どうぞ」
やたー! 神様! ありがとう。
小躍りするようにして、サキさんと湯場へ行った。
昨日から一睡もしていない。たぶん今、自分はめちゃめちゃに、ハイだ。脱衣所で浴衣を脱ぐのに、ドキドキが止まらない。これから死ぬ、と言う男に、欲情が、止まらない。
レナのすぐそばでゆっくりと浴衣を脱ぐ、筋肉質の男の裸体。ああ、どうしよう。たまらなく、濡れてる。
太ったんじゃない、エロくなった。サキさんはそう言ってくれた。
プリプリの、お尻。ムチムチの、太腿。
脱衣所の扉を開け、サキさんを導くように、むわんと湯気の上がる、まだ少し冷ややかな湯場へ足を踏み入れる、レナの全裸の後ろ姿に、欲情してくれているだろうか。
「せっかくだ。露天に行こう」
サキさんに肩を抱かれ、露天に通じるドアを開く。はしたなく、手を伸ばす。もうそこに、雄々しく猛り立った肉棒がある。それを掴み、引いて、もう陽の落ちた山々に囲まれた、薄暗い灯りに浮かび上がる岩に囲まれた湯船の際に立つ。
「キスして」
そっと重ねられたサキさんの唇を、存分に、吸う。待ちきれずに舌を差しいれ、絡める。両手で、サキさんの雄々しいものを扱き、捏ねる。欲しい。たまらなく、欲しい・・・。
「入ろう。風邪をひく」
その場に膝をつき、湯桶で身体を流し、男にもかける。
そして、浸かる。
すぐにサキさんに、添う。まだ冷たい筋肉質が、昂奮して火照った肌に、心地いい。背後から抱かれ、抱きしめられる。
ホテルを出て、どこに行くか訊かれ、温泉と答えたときから、ずっと心にあったイメージの中に今、レナはいた。両腕を上げ、サキさんの首にまわし、振り向いて、またキスを求める。くちょ、あぐ。れろ・・・。イヤらしい唾液の音を、湯口から流れる水音に隠しながら、口の官能を開放する。
温かい湯のなかでは、サキさんの手がピアスの乳首を転がし、乳房を捏ねる。吐息が漏れそうになる。でもそれは、控える。吐息を彼の口の中に吹き込み、漏れるのを防ぐ。当たるゴツゴツのものを尻で扱く。彼の指が股間にも伸び、両脚を大きく広げてそれを迎え入れる。指が、勃起しきって疼くクリトリスをピアスごと弄る。執拗にそこを捏ねまわす。我慢しきれず、またも、サキさんの唇を吸い、舌を絡める。
「欲しいか」とサキさんは訊く。
「欲しい。もう、我慢できない。たまらない・・・」
「まだだ」
昨日、ホテルに会いに行ってからずっと、我慢に我慢を重ね続けてきた。もっと言えば、スズキさんと車で走り回った時から、さらに言えば、あの、スミレさんとの濃厚なプレイから、ひと月以上、二か月になろうとする、長い間。ずっと、ただひたすら、待ち続け、ガマンしていた。
それが今、レナの尻をつついている。レナの手の中にある。
もう、待てない。
サキさんの半身を湯の外に上げ、岩に腰掛けた彼の肉棒に跨ろうとした。
「舐めてくれ」
んんん、もうっ!
これでもかと、その肉棒に食らいつく。それまでに教え込まれた、培ってきたものを、全てつぎ込んだ。舐め回し、舐め上げ、舌をそよがせ、舌でつつき、舌をこじ入れ、唇で吸い、手で扱き、捏ねまわし、喉奥深く、咥え込み、首を振った。
熱い湯と、昂奮で、紅潮しきった顔を蕩かし、レナは奉仕し続けた。
「レナ。・・・欲しい」
すぐに男の身体を這い上がり、跨り、腰を落とした。
「!」
すんでのところで、歯を食いしばって吐息を抑え込む。ゆっくりと、体内に、全て、飲み込み、低く、はああ、と息をつく。男の首を抱きしめ、口を吸う。
「なんて・・・、なんて、やらしいんだ、お前は・・・」
「エロい、でしょ」
「エロ過ぎて、たまらん」
レナは、ゆっくりと、動き出した。堪らずに、人差し指を噛む。
レナの身体の奥にある、無数の襞が全て、レナだった。
洞窟に這入って来た男を大勢で取り囲み、全員が舌で男の身体のあらゆる場所を愛撫した。一人のレナは顔を舐めまわし、もう一人のレナは耳の穴に舌を入れ耳たぶを甘噛みし、数人のレナで輪になり、脇や胸や乳首や背中を舐めまわし、また数人のレナが輪になり、尻や股間や睾丸や尻の穴を舐めまわし、また別の数人のレナが輪になり、両脚を爪先から太腿まで、舐めまわした。そのいくつかの輪が一斉に蠢いて、男を刺激し続けている。あまりの快感に逃れたくなるが、このレナの渦からは逃れられない。
「レナ、頼む。もう、ダメだ・・・」
「何を、してほしいの?」
「出させてくれ」
「中に、出して」
「・・・いやだ」
レナはサキさんの耳の中に命令した。
「ダメ。・・・中で、・・・中に、・・・出して」
耳の襞を舌で弄りつつ、乳首を男の胸の上で転がした。
「こんな男の遺伝子なんか、残さなくていい」
「あたしも一緒に逝く。だから、残らない。だから、出して」
「頼む。頼むから・・・。ああ、もう、ダメだ!」
サキさんの切なそうな顔は、ユーヤよりはるかに情けなくて、萌えた。
「あたしもイク。一緒に、逝く。ずっと、一緒!」
湯の音が、流れる。
レナは深く腰を落とし、奥の奥で、サキさんのを押しつぶし、揉み込み、包み込んだ。二人はひとつになり、静かに、激しく、絶頂した。
レナは子宮の奥に注ぎこまれた熱い樹液を感じ、両脚をピンと突っ張ったのち、弛緩した。サキさんの上体にしなだれかかり、荒い息を吹きかけた。
「バカ野郎。なんでどけてくれなかったんだ!」
「あたしが・・・」
もう、わたしじゃない。あたしは、あたしだ。素の自分でいたかった。
「あたしが、欲しかったの。サキさんのを、どうしても、欲しかったの」
「一緒に死ぬのにか。最大の、無駄だ。バカげてる・・・」
「同じことだよ・・・、サキさん」
タナトスはエロスの対にあるのではなく、中にある。今、サキさんの精を受けたばかりでレナの胎内で死んでも、世に生まれ出でて、生ききって、死んでも、死ぬことには変わりない。早いか遅いかの違いだけた。生を産むのではなく、死の生産行為だ。エロスは、タナトスを包む。どうせなら、どうせそこにあるなら、楽しめばいい。苦痛の延長にタナトスがあるなら、だとするなら、SMというのは、理にかなっている。
レナはカエデさんのように鞭だけでエクスタシーを感じるところまではいかなかったし、スミレさんのように、嫉妬と被虐だけで何度も気をやることも出来なかった。
それなのに、途中のステップを全てすっ飛ばして、いきなりプレイの深奥に到達してしまった。究極のプレイは、自らの死顔でサディストに至高の快楽を与え自らも絶頂する。そして、絶頂の中で自らの生を終えることだと。苦痛から逃れたくて死にたいのではなく、愛する男とどこまでも共に居たい。その結果に、死があるだけだ。そこで、レナのレッスンは終わる。
サキさんはレナを抱えて湯殿の石の床に横たえた。ごつごつした岩が尻の肉に食い込んだが痛くはない。レナの中で、再び肉棒が復活していた。両脚を絡め、いっぱいに迎え入れ、包む。
「キスして。サキさん・・・」
悪魔が憑依していた男は、生身の男となって女の口と股間をゆっくりと愛した。
男の蠢きを余すことなく体内に感じ、貪る。舌を絡め、舌先で舌の表のざらざらと裏側のつるつるを味わう。傘がそこをしつこく刺激して潮が溢れ、肉棒に塗された精液と白濁した愛液の混じった色を洗う。
そして何度も突き入れ、何度も受け入れ、捏ねまわし、締め付け、樹液を導く。男根は一気に膨らみ、精を放つ。
「う、あっ!」
「・・・ああ、いい。・・・また、出てる。熱いのが、・・・サキさんのが、・・・出てるよォ・・・。溢れるゥ・・・。気持ちいいよォ・・・」
静かな絶頂が何度も波になってやってくる。両手を広げ、その波を全て、受け入れた。
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