どこでもいっしょ

吉田美野

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1(中学生編)

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 光也の声でハッとした。
 慌てて立ち上がると、サバッと派手な音を立ててお湯が跳ねる。その音に負けないように「うん、もう出る!」と叫ぶように返事をした。

 急いで風呂から上がると、食卓には家族全員が揃っていた。
 ダイニングテーブルの真ん中には卓上コンロと大きな土鍋。だしのいい匂いが部屋いっぱいに広がっている。今夜はおでんらしい。

「もう、ハルまで! 髪も乾かさないで、風邪ひくわよ」
 濡れた髪を軽く拭いながら席につく花也に、母が顔を顰めた。隣の光也の髪もまだ濡れている。
「大丈夫大丈夫、部屋ん中あったかいし。それよりお腹空いた!」
「僕もー」

 母はしばらくぶつぶつ言っていたが、腹ペコ男子ふたりの前に無意味だった。
 こんなに大人数で鍋を囲むのは初めての経験だ。腹が満たされる以上に心が満たされるようで、食事が終わる頃には、花也はさっき見かけたお隣の男の子のことなど、すっかり忘れていた。








「いってきまーす」

 朝の空気はつんとしていて冷たい。白い息を吐き出しながら、花也は自転車の荷台に乗った。
「よーし、行くぞー。ちゃんとつかまってろよ」
「うん」

 自転車にくっついて乗るふたりの首にはお揃いのマフラーが巻かれている。
 双子の子を持つ親というのは、何かと揃いにしたがる傾向があるらしいが、二卵性とて双子は双子。光也と花也の母もその例に漏れず、何かと揃いの物を買ってきた。……というのも、数年前までの話だ。最近では、花也の兄離れが必要だと考えているのか、あるいは思春期の男子の気持ちに考慮したのか――それぞれの好みを確認されることが多くなった。
 特に持ち物にこだわりのないふたりは、お揃いのマフラーを使い続けているわけだが。

(……まあ、マフラーなんて別に何でもいいんだけど)

 と考えながらも、ファッションにあまり頓着しない弟でよかったと、安心しているのは光也の方だった。年々ひどくなっている様子の花也の人見知りを、母は心配しているようだったが、光也はさほど問題だと思っていなかった。いつも自分がいっしょにいればいいだけの話だ。何年経っても――例え、マフラーがお揃いじゃなくなっても。

 寒い、寒いと言いながら腰に腕を回し、ぎゅっと抱きついてくる弟を、光也は愛しく思った。

「おーい光也ー! お、ハルちゃんも一緒だ、おはよー!」
 後ろから追いついた大庭が、光也と並べて自転車を走らせる。

「おお、大庭じゃん。はよーっす。部活?」
「おう、朝練。そういうお前らは? まだ部活は入ってないだろ。早くない?」

 大庭はにかっと笑って荷台で寒そうに縮こまっている花也にも「ハルちゃん、おはよう!」と声を掛ける。昨日は返事をしそびれたが、彼の中で〝ハルちゃん〟呼びは決まってしまったらしい。花也は少々ぎこちないながらも「お、おはよう……」と返した。大庭が嬉しそうにへらりと笑う。
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