どこでもいっしょ

吉田美野

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1(中学生編)

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「そういえば笠原くん、委員会って?」
「ああ。俺、風紀委員なんだ。あ、そうだ、明日登校点検だから、気をつけてね」
「登校点検?」
「そう、月に一回、抜き打ちで服装検査があるんだ」
「えっ、抜き打ち?」
 だったら今、育巳が花也に情報を漏らすのはマズイんじゃないか、と心配になった。しかし花也が何か言う前に、育巳が「他の皆には内緒だから」といたずらっぽく笑って見せる。

「いいの?」
「抜き打ちって言っても、年間で大体の時期は決まってるし。日向くん転校してきたばっかりでまだ何もわからないだろ。だから今回は特別。うちの学校結構校則にはうるさいから気をつけてね」

 そう言われてみれば髪の毛を染めている生徒は見当たらないし、スカートを短く切ってしまっているような生徒もいない。東京の中学よりも、ずっと校則が厳しそうだ。

 そのあとも育巳はいろいろとこの学校のことを教えてくれた。昨日は育巳以外のクラスメイトにもたくさん囲まれてしまい、あまり話ができなかったのだ。
 育巳は、矢継ぎ早に花也を質問攻めにするようなことはせず、学校行事のこと、クラスメイトのこと、先生達のこと、たくさんの話を聞かせてくれた。

 育巳もときどき花也自身のことを尋ねたが、花也がおろおろしたり、返答に詰まったりしても急かすようなことはしない。相槌を打ちながら熱心に話を聞いてくれる。
 花也は嬉しくなって、兄の光也と違って友達がなかなかできないこと。やっとできた親友と今回の転校で離れ離れになってしまったことなどを育巳に打ち明けていた。

 育巳はその話を聞いたあとで、にっこり笑って言った。
「でもこれで日向くんの悩みはひとつ解決だよ。だって俺たち、もう友達でしょ」


 そのうちに段々と廊下が騒がしくなり、ポツポツと生徒が登校しはじめた。亜依が教室に入ってくると、「おはよ!」と花也に満面の笑みを向ける。

「笠原とすっかり仲良くなったみたいね。私も仲間に入れてほしいな~」
 昨日はずいぶん緊張してたみたいだし、と言われて、花也はオロオロと視線をさまよわせた。
「ご、ごめん。僕、すごく人見知りで……」
 しかし亜依は陽気に「いいのいいの、これから打ち解けてくれればいいんだから」と笑った。花也もホッとしたように微笑んで見せた。

 育巳はその様子を見て少し残念に思った。
 自分が一番親しくなれた……と思ったのも束の間。しかし友人を作るのが苦手だと、深刻そうに、そして悲しそうに打ち明けてくれた彼のことを思えば、親しい友人が増えるのはいいことだ。彼が嬉しいと自分も嬉しい、と育巳は自身を納得させた。


「もうっ、響さん、やめてくださいよー!」

 段々と賑やかになってゆく教室の中でも、一際賑やかな声がして花也は教室の入り口に注目した。現れたのは、じゃれあうようにして歩いてくる少年ふたりだ。
 花也は思わず、あっと声をあげた。

 小柄な生徒の方は、くりくりのどんぐりのような目に、低くて小さい鼻はどこか愛嬌があった。眉をハの字に下げて、困っているようだが、どこか嬉しそうでもある――そんな少年を羽交い絞めにしているのは、上履きの色が赤色だから、学年はひとつ上の二年生だ。柔らかそうな色素の薄い髪、猫のような大きな目。甘い香りがする。


 花也は、彼が現れた瞬間、ああ、この人・・・だ、と思った。
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