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1(中学生編)
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しおりを挟む「花也!」
校舎の方から光也の声が聞こえて、花也と上原は同時に振り返った。光也がこちらに駆けてくるところだったが、カバンを持っていない。
「どうしたの、ミツ」
「あのさ、サッカー部の顧問がさ、早速練習参加していかないかって。それで……」
「ああ、わかったよ。じゃあ、僕は先に帰ってるね」
「本当ごめんな!」
「大丈夫」
ばつの悪そうな顔でひたすら謝る光也に、花也は苦笑する。
きっとこれから、光也と帰ることも減るだろう。
自分から勧めたとはいえ、やはり不安だ。視界がふたたびぐらぐらと揺れはじめる。いや、揺れているのは花也の頭だろうか。
「じゃあハルちゃん、俺と一緒に帰ろ」
光也がいなくなった自転車置き場で、上原が言った。
ハッとして、また頭の揺れが止まった。
「え、でも……」
上原は荷台にくくってあった荷物を取り払って前カゴの中に押し込むと、花也の荷物も奪って、同じようにカゴの中に突っ込んだ。
「よし、帰ろう!」
「でも、あの、僕、ひとりで帰れるよ……」
「ひとりで帰れる帰れないじゃなくてさ、俺が一緒に帰りたいの! 途中から乗っけてってあげるからさ!」
陽気に笑う上原に、花也もおずおずと笑みを返した。
自転車を押して歩く上原と並んで歩きはじめてしばらく「そろそろいいかな。乗って?」といたずらっぽく笑う上原に促されるまま、花也は自転車の荷台に跨った。
つかまった上原の肩は光也よりもたくましく、いつも違う手のひらの感触に、不思議な気分になる。
自転車の荷台に乗せてもらいながら、家の場所を説明していると、上原の家は近所であることがわかった。
「あー、あそこだよなあ、あのでっかい松の木がある家! わかったわかった!」と上原は大きな声で相槌を打って、花也を乗せて自転車を軽快に走らせた。
「はーい、到着。ここだよな、ハルちゃんの家!」
自転車で二十分程度の道のりの間を、上原はずっと喋っていて、花也は相槌を打つか、笑うかのどちらかだった。笑い過ぎて頬が痛いくらいで、花也は上原がカゴから引っ張り出したカバンを痛む頬を緩ませて「ありがとう」と受け取った。
「いえいえ。どういたしましてー。俺の家、この道のもうちょっと向こうなんだ。近いっしょ? 五分もかかんないくらい。今度遊びにおいでよ」
「へえ、ほんとに近いんだね? ……うん、遊びに行く」
「うん、じゃあ、約束! じゃあ、また明日な!」
花也が乗っていても乗っていなくても変わらないスピードで、上原は自転車を漕ぎはじめた。
その後ろ姿が見えなくなるまで、花也は上原をその場で見送った。
午後六時を過ぎた頃、埃っぽいジャージ姿のままの光也が帰宅した。
夕食の席で、光也は久しぶりのサッカーについて、生き生きと語っている。そんな光也を見て、思ったほど落ちこまなかったことに、花也自身驚いた。
夕食後、風呂に入っていると、やっぱり光也が入ってきた。
昨日のように豪快に頭と体をいっぺんに洗うと「ちょっと詰めて」と湯船に浸かっている花也を追いやって、光也も一緒に入ってきた。
「今日、ほんとにごめんな」
花也をひとりで帰らせてしまったことを言っているのだろう。
確かに最初は不安で仕方がなかったが、花也は澄ました顔で「別に平気だよ」と答えることができた。上原のおかげだ。彼ともきっと仲良くなれるだろう。
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