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出会い〜恋人になるまで
過去
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「榊さん、やっぱり俺、バイト探すから」
しのがこう宣言したのは、心療内科に連れて行ってから4ヶ月が経った頃だ。
最近は情緒不安定気味だったのも改善され、薬も少しずつだが減らせるようになった。
そんな矢先のことで、俺も少し困惑していた。
あれだけ就職活動で傷つき、辛い思いをしてやっとここまできたのに。
「なに馬鹿なことを言ってるんだ」
そう言うと、しのは着ているエプロンの裾を両手で掴んで、俺の目の前まで来た。
「いつまでも榊さんに甘えてるのは嫌」
意志の強さは変わらないが、声は震えている。
「またそう言うか。お前も今の生活に満足しているんじゃなかったのか」
俺は半ば呆れながら言った。
しのの目は、それでも強くこちらを見ている。
「わかった。また前と同じようなバイトを探せばいい。
それならまだ、負担もかからないだろう」
強かった目は、声と同様に震えている。
「…それはできないよ」
ついに俯いてしまう。
そんなに俺が怖いのか。
「この際だから嫌われるの覚悟で話すけど…」
更に俯いて、しのはぎゅ、とエプロンの裾を握った。
「俺、前は…男の人に…そういうことをされるバイトをしてたの」
そういうこと、というのは、そういうことでいいのだろうか。
「それでね、店が風営法…?とかいうのに違反してたみたいで、潰れたの」
しのの目には、涙がいっぱい浮かんでいる。
「ごめんね、気持ち悪いよね…バイトしたら、すぐ出てくから…ごめんね…」
しのは急いで涙を拭いた。
それから、平気なように家事を再開しようとしている。
俺はしのを追いかけ、後ろから抱きしめた。
「え、なに…榊さん…?」
しのは華奢で、かわいらしくて…そりゃあ男なら放っておけないだろう。
店でも評判良かったんだろうな。
それで、なに?そういうことっていうのは、俺みたいな男に身体を触られて、喘いでたって?
「…ちょっと、なんか言ってよ。
あ、なに?榊さんもする?いいよ、お世話になってるし。今更一人や二人増えたって…」
「しの、黙れ」
いいから、もう黙ってくれ。
働いていたのがしのの意思だろうが、そうじゃなかろうが、そうされていたことに変わりはない。
「風呂で準備してこい。必要なものがあれば買いに行く」
もう、この際どうだっていい。
しのが俺にも身体を開けるなら、そうしてもらう。
「…あ、うん。わかった、じゃあゴムとローションだけお願い…」
しのは俺の腕を振り払い、一人浴室へと向かった。
しのがこう宣言したのは、心療内科に連れて行ってから4ヶ月が経った頃だ。
最近は情緒不安定気味だったのも改善され、薬も少しずつだが減らせるようになった。
そんな矢先のことで、俺も少し困惑していた。
あれだけ就職活動で傷つき、辛い思いをしてやっとここまできたのに。
「なに馬鹿なことを言ってるんだ」
そう言うと、しのは着ているエプロンの裾を両手で掴んで、俺の目の前まで来た。
「いつまでも榊さんに甘えてるのは嫌」
意志の強さは変わらないが、声は震えている。
「またそう言うか。お前も今の生活に満足しているんじゃなかったのか」
俺は半ば呆れながら言った。
しのの目は、それでも強くこちらを見ている。
「わかった。また前と同じようなバイトを探せばいい。
それならまだ、負担もかからないだろう」
強かった目は、声と同様に震えている。
「…それはできないよ」
ついに俯いてしまう。
そんなに俺が怖いのか。
「この際だから嫌われるの覚悟で話すけど…」
更に俯いて、しのはぎゅ、とエプロンの裾を握った。
「俺、前は…男の人に…そういうことをされるバイトをしてたの」
そういうこと、というのは、そういうことでいいのだろうか。
「それでね、店が風営法…?とかいうのに違反してたみたいで、潰れたの」
しのの目には、涙がいっぱい浮かんでいる。
「ごめんね、気持ち悪いよね…バイトしたら、すぐ出てくから…ごめんね…」
しのは急いで涙を拭いた。
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それで、なに?そういうことっていうのは、俺みたいな男に身体を触られて、喘いでたって?
「…ちょっと、なんか言ってよ。
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「しの、黙れ」
いいから、もう黙ってくれ。
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「風呂で準備してこい。必要なものがあれば買いに行く」
もう、この際どうだっていい。
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