小説家お兄さんの家で養われることになった話

出会い〜恋人になるまで

痛い

それから俺は、毎日のように後ろを準備していた。
時間はいつもあやふやで、朝起きてすぐの時もあれば、夜寝る前ということもある。
この前なんて、執筆部屋から出てきたかと思えば無言で俺を押し倒し、家事を中断させられた。
セックスを覚えたての高校生みたいに、それはもう、何度も何度も。
だから、常に後ろを綺麗にしておかねばならなかった。
正直キツイ。
準備は自慰のように気持ちがいいものでは無いし、何よりめんどくさい。
店でしてた時は、毎日というわけではなかったし、こうして何度も準備をしなければならないことはなかった。
「しの」
掃除機をかけていると、後ろから名前を呼ばれる。
「ん？どうしたの？」
見ると、榊さんの手にはコンドームの箱と、ローション。
このローションも、もう3本目だ。
コンドームだって、毎日買いに行かされる。
「…するの？」
俺が聞くと、榊さんは言うまでもないだろ、といった顔で近づいてきた。
キスはなし。
ハグは、たまにある。
でも、好きな人と、愛のない行為をするのはしんどい。
「は…ん…」
ソファーの背に手をつかされ、後ろ向きでナカを慣らされる。
まだお昼なのに。
「んぁ…だめ…立ってらんな…いっ…」
ゆっくりと、榊さんのペニスが押し込まれた。
内蔵が圧迫され、とても苦しい。
「あっ…はぁ…」
エプロンが汚れないように裾を掴む。
苦しい。
最初のように痛くはないけれど、苦しいのは変わらない。
榊さんのは、結構大きい。
何十人ものお客さんとセックスしてきた俺が見ても、大きい方だと思う。
「だっ…めぇ…いやっ…あっ」
後ろから身体を覆われ、ぴったりとくっつく。
奥まで挿入されたまま、ピストンはない。
「あ、あ…や…なんで…」
ぐりぐりと奥を擦られる感覚に、足が震えた。
そのまま、前を触られる。
「え…あっ…ん…んぅ…だめぇ…やぁ…」
小さくて、皮を被ってるから恥ずかしいのに…。
先端をいじられ、先走りが榊さんの手を濡らす。
｢うぅ…はぁ…もうやぁ…だめ…」
後ろ手に榊さんの身体を押すけれど、全く力が入らない。
そのままソファーに倒れ込み、更に重圧をかけられる。
気持ちいい。
でも、苦しい。
こうやって身体を重ねる度に、好きと嫌いと気持ちいいと苦しいが混濁していく。
もはやその境界線が見えなくなっていく。
俺は、榊さんがすき。
榊さんは、俺を好きじゃない。
だから、痛い。苦しい。切ない。
自然と涙が溢れた。
気持ちいいのに、幸せなのに、堪らなく痛い。
「しの、痛いか」
うん、うん、と頷くと、榊さんは俺のナカから出ていった。
「…なんで、やめないでよ」
榊さんの服を掴んで引き止める。
でも、もう終わり。
榊さんは俺の身体を拭いて、また執筆部屋へと戻って行った。