小説家お兄さんの家で養われることになった話

それからの二人

お兄さん

今日は久しぶりに、しののお兄さんが遊びに来ることになった。
あれから何度か会っていて、たまに三人で食事に行ったりしている。
「そろそろ来るってー」
しのが連絡を取り合い、あと五分ほどで到着するらしい。
しのは三人でもんじゃ焼きパーティーをすると言って、俺は最近買ったホットプレートを準備するよう頼まれた。
これがなかなか万能で、買った日から一日に一回はこれで食事をしている。
たこ焼きプレートや、焼肉プレートなども付属で、色んな食べ物が作れる。
焼きそばはもちろん、お好み焼きや、たこ焼きプレートで鈴カステラ風のお菓子を作った日もあった。
しのが以前から買おうか悩んでいたので、誕生日プレゼントとして買ってあげたのだが、これは正解だった。
ーピンポーン ♪
インターホンが鳴り、オートロックを解除する。
お兄さんが到着したらしい。
しのは嬉しそうにしている。
かわいい。
二人で下までお兄さんを迎えに行く。
「二人とも久しぶり～。元気そうでよかった」
お兄さんは相変わらず、人の良さが滲み出ている。
しのと並ぶとその空間が一気に和らぎ、暖かい空気に包まれる。
「今日はね、もんじゃ焼きパーティーだよ～」
なにより、しのが嬉しそうで幸せだ。
「おじゃましま…わっ！この子達が例の？」
お兄さんは家に入るなり、ゆずとつきを見てメロメロになっている。
それから三人で手を洗って、少しゆっくりしてからもんじゃ焼きパーティーが始まった。
しのが用意してくれた生地を円の形に盛ったキャベツの山に流し込み、混ぜていく。
やり方は見様見真似で適当だが、まあこんなものだろう。
「じゃーん」
しのはまた、嬉しそうにベビースタアラーメンを持ってきて、それを混ぜた。
「これ、美味しいよね。俺も昔からもんじゃには絶対入れる」
ヘラでジュ、と焦がし、それぞれのお皿に取り分けてさっそく食べる。
「ん、美味いな」
ベビースタアラーメンを入れて食べるのは初めてだが、なかなかいける。
三人でお兄さんの持ってきてくれたお酒を飲みながら、しばらく雑談をしていた。
最近あったこと、俺の小説がドラマ化した話など、色んなことを話した。
「そうだ。今日は二人に、ちょっとした報告があって来ました」
突然、お兄さんは改まって俺らを見る。
「え？」
しのが不思議そうに聞くと、
「実は、今度結婚することになりまして…」
と、少し小っ恥ずかしそうに言う。
「えー！」
しのは立ち上がり、お兄さんを思い切り抱きしめた。
「おめでとう！おめでとう～お兄ちゃん！」
苦しいよ、と言われながらも、しのは嬉しいんだもんっとかわいく言って抱きしめる。
俺までうれしい。
「どんな人っ？どんな人っ？」
俺はしのを落ち着かせ、椅子に座らせた。
「んーと…ちゃんと言ってなかったけど、実は結婚とはちょっと違くてね」
お兄さんは、つまり同性の相手とパートナーシップ制度で結婚に相当する形になるらしい。
とはいえ、それができる場所は限られているため、引越しをすると言う。
そして、今より少し遠くなると言った。
「そっか…遠くなるのは寂しいけど、お兄ちゃんがその人と幸せになるならよかった」
俺はそれまで黙って話を聞いていた。
でもやはり、疑問に思ったことがある。
「…あの、幸せな報告の時に失礼かとは思いますが。
ご両親には…？」
以前から、二人の両親、特に母親は厳しい人だと聞いていた。
その母親に従って生きてきたらしいお兄さんは、ちゃんと認めて貰えたのだろうか。
「…あー、お母さんはだめだった。
最悪縁を切るつもりで挨拶に行ったんだけどね」
やはり、母親には泣かれたらしい。
泣いて、こんなことなら産まなきゃよかったと言われたそうだ。
しのはその話を、悲しそうに聞いている。
「あ、でもね。
俺はこの決断をして、よかったと思ってる。
人生で初めて母親に逆らって、自分の幸せを追いかけた。
二人を見てたら、自分がバカバカしくなってさ。
一度しかない人生、大切にしようって」
お兄さんはそこまで話すと、じゃあ気持ち切り替えて食べるの再開しよ～、と空気を戻してくれた。
「でも、本当によかったね。
相手の人とはどこで出会ったの？」

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しの というキャラの名前で、一個訂正がありましたので、ここで書かせていただきます。
キャラのプロフィールで、
「柚季」の字が希望の「希」になっておりましたが、正しくは季節の「季」です。
今後もよろしくお願いします