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番外編、圭吾と零
なんて優しい人なのだろうと思いました
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零はその日、月経によるホルモンバランスの乱れで朝から不調に悩まされていた。
目が覚めると、ああ来たのだな、と悟る。
妊活中ということもあって、その落ち込みは今まで以上だった。
いつもならすっきりと目が覚めてすぐ起き上がれるのに、今日はなんだか身体が重い。
お腹も痛いし、念の為と夜用ナプキンをつけていて正解だった。
新婚で血の着いたシーツを夫に洗ってもらうわけにはいかない。
零は隣で眠る圭吾の肩をトントン、と軽く叩き、
「おはようございます、圭吾さん」
と言った。
朝に弱い圭吾がこれだけで起きるはずはないが、いつものように布団をひっぺがして叩き起こす気力はない。
零はいつも圭吾より30分~1時間早く起きて朝食の支度をしているが、今日はそれができそうもないので自分で用意してもらわなければならない。
「圭吾さん、圭吾さん起きて」
何度か声をかけるうちに身体がしんどくなってきて、つい口調が強くなってしまう。
何度目かの声掛けでようやく目を覚ました圭吾は、零の様子がいつもと違うことに気づいたようだ。
布団にくるまってお腹を押さえる零に驚き、すぐに起き上がる。
「零!どした?お腹痛い?」
結婚して約1ヶ月、こんなにしんどそうな零を見るのは初めてだった。
「ごめんなさい…。生理が来てしまったんです。朝ごはんを用意できていないのでキッチンの棚にあるお惣菜パンを食べてください」
圭吾はこんな時にも自分の朝食の心配をしてくれる零に、自分が情けなく思えた。
すぐにリビングへ行くと、薬箱の中から生理痛に効く薬を取り出す。
箱の裏を見て、食後に飲むものだと確認し鍋に白米と水を入れてお粥を作る。
料理は苦手だが、昔から母が体調を崩した時にお粥を作ってあげていたので、これだけはそれなりに上手く作れるのだ。
出来上がったらすぐに零のいる寝室へそれを持っていき、身体を支えながら起き上がらせる。
辛そうにしてるところ無理やり起こすのは可哀想だが、はやく食べて薬を飲んだほうが楽になるだろうと思ったのだ。
「え?これ、圭吾さんが…?」
零は驚いたように目を丸くした。
料理は苦手と聞いていたので、てっきりお粥も作れないだろうと思っていたのだ。
「美味しいかはわからないけど、俺が作れるのそれくらいだからさ」
木のスプーンを渡すと、零は嬉しそうに
「あたたかい…」
と言ってお椀を両手で包んだ。
ぱく、ぱく、と一口ずつゆっくりと口に運ぶ。
「赤ちゃん、できてなかったんですね」
少し残念そうにそう言うので、圭吾も少し悲しい気持ちになった。
「排卵日を検査したわけじゃないから、今回はタイミングが違ったのかもね。
ゆっくりきてくれるのを待とう」
すぐにできるとは思わなかったが、できていないとも思っていなかった。
結婚してからすぐに妊活を始めて、3日おきに肌を合わせていたのでそのうちのどれかは当たっているだろうと思っていた。
「そうですね。きっとそのうちできますよね」
零がお粥を食べている間、圭吾は一生懸命零のお腹をさすって暖めていた。
ここにいつか、自分たちの子供が宿ると信じて。
「そんなことあったっけ?」
零はゆいを寝かしつけた後、夫婦でお茶を飲みながら懐かしい話をした。
「ありましたよ。あの時、この人はなんて優しい人なんだろうと思ったんです。
それでそのあと、わりとすぐにゆいがきてくれたんですよね」
ゆいが生まれて2年半、零のお腹には新たな命が宿っていた。
「そっか、すぐだったもんね。
悪阻が酷くて零が死んじゃうんじゃないかって本当に怖かったよ」
初めての妊娠で戸惑うことが多く、まだ少し距離のあった2人はそれでより一層夫婦の絆を深めたのだ。
「ゆいの時は特に、吐いてばかりでしんどかったです。
圭吾さんも夜中に何度もシーツを洗ってくれて…。
今回はゆいの時ほど酷くなくて助かりました」
まだ幼いゆいを抱えて、あの時ほど酷い悪阻だったらと思うと震えてしまう。
それでも、きっと圭吾ならどうにかして助けてくれるだろうと零は思った。
目が覚めると、ああ来たのだな、と悟る。
妊活中ということもあって、その落ち込みは今まで以上だった。
いつもならすっきりと目が覚めてすぐ起き上がれるのに、今日はなんだか身体が重い。
お腹も痛いし、念の為と夜用ナプキンをつけていて正解だった。
新婚で血の着いたシーツを夫に洗ってもらうわけにはいかない。
零は隣で眠る圭吾の肩をトントン、と軽く叩き、
「おはようございます、圭吾さん」
と言った。
朝に弱い圭吾がこれだけで起きるはずはないが、いつものように布団をひっぺがして叩き起こす気力はない。
零はいつも圭吾より30分~1時間早く起きて朝食の支度をしているが、今日はそれができそうもないので自分で用意してもらわなければならない。
「圭吾さん、圭吾さん起きて」
何度か声をかけるうちに身体がしんどくなってきて、つい口調が強くなってしまう。
何度目かの声掛けでようやく目を覚ました圭吾は、零の様子がいつもと違うことに気づいたようだ。
布団にくるまってお腹を押さえる零に驚き、すぐに起き上がる。
「零!どした?お腹痛い?」
結婚して約1ヶ月、こんなにしんどそうな零を見るのは初めてだった。
「ごめんなさい…。生理が来てしまったんです。朝ごはんを用意できていないのでキッチンの棚にあるお惣菜パンを食べてください」
圭吾はこんな時にも自分の朝食の心配をしてくれる零に、自分が情けなく思えた。
すぐにリビングへ行くと、薬箱の中から生理痛に効く薬を取り出す。
箱の裏を見て、食後に飲むものだと確認し鍋に白米と水を入れてお粥を作る。
料理は苦手だが、昔から母が体調を崩した時にお粥を作ってあげていたので、これだけはそれなりに上手く作れるのだ。
出来上がったらすぐに零のいる寝室へそれを持っていき、身体を支えながら起き上がらせる。
辛そうにしてるところ無理やり起こすのは可哀想だが、はやく食べて薬を飲んだほうが楽になるだろうと思ったのだ。
「え?これ、圭吾さんが…?」
零は驚いたように目を丸くした。
料理は苦手と聞いていたので、てっきりお粥も作れないだろうと思っていたのだ。
「美味しいかはわからないけど、俺が作れるのそれくらいだからさ」
木のスプーンを渡すと、零は嬉しそうに
「あたたかい…」
と言ってお椀を両手で包んだ。
ぱく、ぱく、と一口ずつゆっくりと口に運ぶ。
「赤ちゃん、できてなかったんですね」
少し残念そうにそう言うので、圭吾も少し悲しい気持ちになった。
「排卵日を検査したわけじゃないから、今回はタイミングが違ったのかもね。
ゆっくりきてくれるのを待とう」
すぐにできるとは思わなかったが、できていないとも思っていなかった。
結婚してからすぐに妊活を始めて、3日おきに肌を合わせていたのでそのうちのどれかは当たっているだろうと思っていた。
「そうですね。きっとそのうちできますよね」
零がお粥を食べている間、圭吾は一生懸命零のお腹をさすって暖めていた。
ここにいつか、自分たちの子供が宿ると信じて。
「そんなことあったっけ?」
零はゆいを寝かしつけた後、夫婦でお茶を飲みながら懐かしい話をした。
「ありましたよ。あの時、この人はなんて優しい人なんだろうと思ったんです。
それでそのあと、わりとすぐにゆいがきてくれたんですよね」
ゆいが生まれて2年半、零のお腹には新たな命が宿っていた。
「そっか、すぐだったもんね。
悪阻が酷くて零が死んじゃうんじゃないかって本当に怖かったよ」
初めての妊娠で戸惑うことが多く、まだ少し距離のあった2人はそれでより一層夫婦の絆を深めたのだ。
「ゆいの時は特に、吐いてばかりでしんどかったです。
圭吾さんも夜中に何度もシーツを洗ってくれて…。
今回はゆいの時ほど酷くなくて助かりました」
まだ幼いゆいを抱えて、あの時ほど酷い悪阻だったらと思うと震えてしまう。
それでも、きっと圭吾ならどうにかして助けてくれるだろうと零は思った。
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