強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる

文字の大きさ
92 / 152
番外編、圭吾と零

なんて優しい人なのだろうと思いました

しおりを挟む
零はその日、月経によるホルモンバランスの乱れで朝から不調に悩まされていた。
目が覚めると、ああ来たのだな、と悟る。
妊活中ということもあって、その落ち込みは今まで以上だった。
いつもならすっきりと目が覚めてすぐ起き上がれるのに、今日はなんだか身体が重い。
お腹も痛いし、念の為と夜用ナプキンをつけていて正解だった。
新婚で血の着いたシーツを夫に洗ってもらうわけにはいかない。
零は隣で眠る圭吾の肩をトントン、と軽く叩き、
「おはようございます、圭吾さん」
と言った。
朝に弱い圭吾がこれだけで起きるはずはないが、いつものように布団をひっぺがして叩き起こす気力はない。
零はいつも圭吾より30分~1時間早く起きて朝食の支度をしているが、今日はそれができそうもないので自分で用意してもらわなければならない。
「圭吾さん、圭吾さん起きて」
何度か声をかけるうちに身体がしんどくなってきて、つい口調が強くなってしまう。
何度目かの声掛けでようやく目を覚ました圭吾は、零の様子がいつもと違うことに気づいたようだ。
布団にくるまってお腹を押さえる零に驚き、すぐに起き上がる。
「零!どした?お腹痛い?」
結婚して約1ヶ月、こんなにしんどそうな零を見るのは初めてだった。
「ごめんなさい…。生理が来てしまったんです。朝ごはんを用意できていないのでキッチンの棚にあるお惣菜パンを食べてください」
圭吾はこんな時にも自分の朝食の心配をしてくれる零に、自分が情けなく思えた。
すぐにリビングへ行くと、薬箱の中から生理痛に効く薬を取り出す。
箱の裏を見て、食後に飲むものだと確認し鍋に白米と水を入れてお粥を作る。
料理は苦手だが、昔から母が体調を崩した時にお粥を作ってあげていたので、これだけはそれなりに上手く作れるのだ。
出来上がったらすぐに零のいる寝室へそれを持っていき、身体を支えながら起き上がらせる。
辛そうにしてるところ無理やり起こすのは可哀想だが、はやく食べて薬を飲んだほうが楽になるだろうと思ったのだ。
「え?これ、圭吾さんが…?」
零は驚いたように目を丸くした。
料理は苦手と聞いていたので、てっきりお粥も作れないだろうと思っていたのだ。
「美味しいかはわからないけど、俺が作れるのそれくらいだからさ」
木のスプーンを渡すと、零は嬉しそうに
「あたたかい…」
と言ってお椀を両手で包んだ。
ぱく、ぱく、と一口ずつゆっくりと口に運ぶ。
「赤ちゃん、できてなかったんですね」
少し残念そうにそう言うので、圭吾も少し悲しい気持ちになった。
「排卵日を検査したわけじゃないから、今回はタイミングが違ったのかもね。
ゆっくりきてくれるのを待とう」
すぐにできるとは思わなかったが、できていないとも思っていなかった。
結婚してからすぐに妊活を始めて、3日おきに肌を合わせていたのでそのうちのどれかは当たっているだろうと思っていた。
「そうですね。きっとそのうちできますよね」
零がお粥を食べている間、圭吾は一生懸命零のお腹をさすって暖めていた。
ここにいつか、自分たちの子供が宿ると信じて。 

「そんなことあったっけ?」
零はゆいを寝かしつけた後、夫婦でお茶を飲みながら懐かしい話をした。
「ありましたよ。あの時、この人はなんて優しい人なんだろうと思ったんです。
それでそのあと、わりとすぐにゆいがきてくれたんですよね」
ゆいが生まれて2年半、零のお腹には新たな命が宿っていた。
「そっか、すぐだったもんね。
悪阻が酷くて零が死んじゃうんじゃないかって本当に怖かったよ」
初めての妊娠で戸惑うことが多く、まだ少し距離のあった2人はそれでより一層夫婦の絆を深めたのだ。
「ゆいの時は特に、吐いてばかりでしんどかったです。
圭吾さんも夜中に何度もシーツを洗ってくれて…。
今回はゆいの時ほど酷くなくて助かりました」
まだ幼いゆいを抱えて、あの時ほど酷い悪阻だったらと思うと震えてしまう。
それでも、きっと圭吾ならどうにかして助けてくれるだろうと零は思った。
しおりを挟む
感想 3

あなたにおすすめの小説

ある少年の体調不良について

雨水林檎
BL
皆に好かれるいつもにこやかな少年新島陽(にいじまはる)と幼馴染で親友の薬師寺優巳(やくしじまさみ)。高校に入学してしばらく陽は風邪をひいたことをきっかけにひどく体調を崩して行く……。 BLもしくはブロマンス小説。 体調不良描写があります。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

目覚ましに先輩の声を使ってたらバレた話

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
サッカー部の先輩・ハヤトの声が密かに大好きなミノル。 彼を誘い家に泊まってもらった翌朝、目覚ましが鳴った。 ……あ。 音声アラームを先輩の声にしているのがバレた。 しかもボイスレコーダーでこっそり録音していたことも白状することに。 やばい、どうしよう。

主人公のライバルポジにいるようなので、主人公のカッコ可愛さを特等席で愛でたいと思います。

小鷹けい
BL
以前、なろうサイトさまに途中まであげて、結局書きかけのまま放置していたものになります(アカウントごと削除済み)タイトルさえもうろ覚え。 そのうち続きを書くぞ、の意気込みついでに数話分投稿させていただきます。 先輩×後輩 攻略キャラ×当て馬キャラ 総受けではありません。 嫌われ→からの溺愛。こちらも面倒くさい拗らせ攻めです。 ある日、目が覚めたら大好きだったBLゲームの当て馬キャラになっていた。死んだ覚えはないが、そのキャラクターとして生きてきた期間の記憶もある。 だけど、ここでひとつ問題が……。『おれ』の推し、『僕』が今まで嫌がらせし続けてきた、このゲームの主人公キャラなんだよね……。 え、イジめなきゃダメなの??死ぬほど嫌なんだけど。絶対嫌でしょ……。 でも、主人公が攻略キャラとBLしてるところはなんとしても見たい!!ひっそりと。なんなら近くで見たい!! ……って、なったライバルポジとして生きることになった『おれ(僕)』が、主人公と仲良くしつつ、攻略キャラを巻き込んでひっそり推し活する……みたいな話です。 本来なら当て馬キャラとして冷たくあしらわれ、手酷くフラれるはずの『ハルカ先輩』から、バグなのかなんなのか徐々に距離を詰めてこられて戸惑いまくる当て馬の話。 こちらは、ゆるゆる不定期更新になります。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

処理中です...