子持ちの同僚の弁当に口出ししたらなぜか俺がママに任命されました

よる

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本編

包み込むような

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西條が深夜にリビングのソファでテレビを見ていると、林田の部屋の戸がずーっと開き、さっきよりはいくらか顔色が良くなった林田がゆっくりと出てきた。
「ごめん、うるさかった?」
テレビの音はギリギリ聞こえる小さな音にしているが、西條は起こしてしまったのではないかと焦った。
「ううん、目が覚めちゃっただけ」
林田はそのままとぼとぼとソファまで歩いてくると、西條の隣にすとん、と腰を下ろした。
「ちょっとまってて、水分補給しよう」
西條は立ち上がると、冷蔵庫を開けてコップに冷たいスポーツドリンクを注ぎ、林田に持って行った。
林田はありがとうと言って受け取ると、マスクを顎まで下げてごくごくと飲み干す。
「もう一杯もらっていい?」
汗をかいて喉が渇いたのか、西條が2杯目を注ぐとすぐに飲み干してしまった。
「熱測ろうか」
西條が林田の脇に体温計を挟んで測ると、微熱まで下がっていた。
「よかった、だいぶ下がったね」
林田が西條の足の間に座ると、西條が後ろからぎゅう、と抱きしめた。
「さっきね、起きた時、昔のこと思い出したんだ」
林田は西條に包まれながら、数年前のことを話し出す。
「俺が風邪ひいて休んだ日、わざわざ仕事終わりに家に来てくれたでしょ」
まだ2人がただの同僚兼友達だった頃、上司から林田が熱で休んでいると聞き、西條はいてもたってもいられなくなって林田の家に押しかけたのだ。
「ああ、後からもし恋人がいたら修羅場だったな、って反省したよ」
西條は思い返して恥ずかしくなった。
「ふふ、でも嬉しかったなあ。風邪をひいた時って心細くなるでしょ。うちの小さい冷蔵庫に入り切らないくらいたくさん買ってきてくれて、できないなりに頑張ってお粥作ってくれてさ。結局焦がして食べられなかったけど」
西條は林田の家の鍋を使ってお粥を作ろうと試みたが、とんでもないものが出来上がり、林田が力なく笑ったのだった。
「恥ずかしい…。お粥くらいなら作れると思ったのにな。結局いまだにできないし」
西條は林田の肩に項垂れる。
「いいんだよ、いつも完璧な京の唯一苦手なものを、俺が補える。夫夫ってそういうものでしょ?」
林田は西條の頭をわしゃわしゃと撫でる。
「うん、あともうちょっとで西條洸希になるんだもんね。家族3人で婚姻届出しに行こう」
つい先日西條の母親にも結婚の挨拶をしに行ったので、あとはもう籍を入れるだけになった。
挙式は西條も林田も悩んだが、涼介と西條の母親を同じ空間にいさせるのは不安だったのと、2人とも特に強い希望があったというわけでもないので結婚のご挨拶だけ送って挙式代は3人での旅行費にあてることにした。
そして、入籍はその旅行の帰りに行うことになっている。
「うん、楽しみだな~。たくさん思い出つくろうね」
林田はそう言うと、もう一度寝ると言って寝室へ向かった。
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