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本編
涼介くんだけの
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「わ~、ふにゃふにゃだ…ちっちゃいね、涼介くん」
洸希は生後3ヶ月の赤ちゃんを目の前に、涼介と釘付けになっている。
「ママ~、あかちゃんかわいいねえ」
今日は洸希の高校の同級生が子供を産んだということで、出産祝いも兼ねてお家にお邪魔している。
妊娠中も何度か高校の頃のいつメンと集まって食事をしていたが、涼介と会わせるのは今日が初めてになる。
「かわいいね、涼介くんにもこんな頃があったんだねえ」
目の前の小さい赤ちゃんから、僅か4年でここまで成長すると思うと不思議な気持ちになる。
「涼介くんもまだまだちびっこだよ~、今のうちにたくさんママに甘えときな~」
同級生の怜花が涼介のほっぺたをぷに、と触ると、涼介の中に隠れていた何かが芽を出した。
「ほんとにかわいかったな~、泣いてるだけでもかわいかったね。それにミルクもあげさせてもらえて良かったね」
涼介と電車に揺られながら、洸希はそんなことを口にする。
赤ちゃんに触れるのは末弟の陽日以来で、産まれた時には家を出ていたので帰るたびに成長している姿を見ては癒されていた。
「ん~、ママ抱っこ」
涼介は洸希の話を上の空で聞き流すと、眠そうに目を擦って洸希に手を伸ばした。
「ねんねするの?いいよ、お靴脱ごっか」
いつもなら横にこてん、と頭を傾けて寝るはずの涼介が、珍しく外で抱っこをせがんだことに違和感を覚える。
まあ、久しぶりの遠出で疲れただけだろう、と洸希は涼介の背中を優しくトントンしながら猛スピードで過ぎ去る夕焼けに染った街を眺めていた。
「あーんして~」
帰宅後、今日は久しぶりの1人を満喫していた京の話を聞きながら、洸希はいつも以上に甘える涼介の世話をしていた。
「ほら、あーん」
涼介用のスプーンにカレーを乗せ、涼介の小さい口へ運ぶ。
涼介はあーんと口を開けて洸希が運んできたスプーンをぱく、とくわえ、美味しそうにもぐもぐと咀嚼した。
「涼介、それじゃママが食べられないだろ」
京は最初の一口目だけ甘えているのだと思っていたが、どうやら全部食べさせてもらう気らしい涼介に注意した。
西條家の方針はできることは自分で、甘えたい時だけ少し手伝ってもらう、というもので、できることを全てやってもらうのは親の手が空いている時だけだ。
「やーだ、ママあーんして」
京の注意など聞く耳持たず、涼介は洸希の腕にすがりついて甘えた。
「今日は赤ちゃんを見たから自分も甘えたくなっちゃったんだよね」
洸希は俗に言う"赤ちゃん返り"になったのだと悟った。
一般的には弟や妹ができた時になるものだが、涼介は今日会った赤ちゃんを抱いてミルクをあげる洸希を見て嫉妬したのだろう。
それを言葉にはしないが、この様子を見るに間違いないだろう。
洸希はそれがなんだか嬉しくて、嬉々としてお世話をする。
赤ちゃんの頃から育てられなかった分、赤ちゃんに戻りたいという欲は叶えてあげたい。
そしてそれを自分に求められている事実に喜んでいた。
「ぎゅーして」
いつもよりはやめに布団に入ると、涼介は洸希にピタリとくっついた。
「いいよ、ぎゅーしようね」
ぎゅー、と全身で抱きしめると、涼介は洸希の胸に耳を当てて心音を聞いた。
「ママだいすき」
「ママも、涼介くんだいすき。ママは涼介くんだけのママだからね」
頭をよしよし、と撫でると、しばらくして規則正しい呼吸が聞こえてきた。
洸希は小さな手を握ると、いつまでもこの幸せが続きますように、と心の中で静かに願うのだった。
洸希は生後3ヶ月の赤ちゃんを目の前に、涼介と釘付けになっている。
「ママ~、あかちゃんかわいいねえ」
今日は洸希の高校の同級生が子供を産んだということで、出産祝いも兼ねてお家にお邪魔している。
妊娠中も何度か高校の頃のいつメンと集まって食事をしていたが、涼介と会わせるのは今日が初めてになる。
「かわいいね、涼介くんにもこんな頃があったんだねえ」
目の前の小さい赤ちゃんから、僅か4年でここまで成長すると思うと不思議な気持ちになる。
「涼介くんもまだまだちびっこだよ~、今のうちにたくさんママに甘えときな~」
同級生の怜花が涼介のほっぺたをぷに、と触ると、涼介の中に隠れていた何かが芽を出した。
「ほんとにかわいかったな~、泣いてるだけでもかわいかったね。それにミルクもあげさせてもらえて良かったね」
涼介と電車に揺られながら、洸希はそんなことを口にする。
赤ちゃんに触れるのは末弟の陽日以来で、産まれた時には家を出ていたので帰るたびに成長している姿を見ては癒されていた。
「ん~、ママ抱っこ」
涼介は洸希の話を上の空で聞き流すと、眠そうに目を擦って洸希に手を伸ばした。
「ねんねするの?いいよ、お靴脱ごっか」
いつもなら横にこてん、と頭を傾けて寝るはずの涼介が、珍しく外で抱っこをせがんだことに違和感を覚える。
まあ、久しぶりの遠出で疲れただけだろう、と洸希は涼介の背中を優しくトントンしながら猛スピードで過ぎ去る夕焼けに染った街を眺めていた。
「あーんして~」
帰宅後、今日は久しぶりの1人を満喫していた京の話を聞きながら、洸希はいつも以上に甘える涼介の世話をしていた。
「ほら、あーん」
涼介用のスプーンにカレーを乗せ、涼介の小さい口へ運ぶ。
涼介はあーんと口を開けて洸希が運んできたスプーンをぱく、とくわえ、美味しそうにもぐもぐと咀嚼した。
「涼介、それじゃママが食べられないだろ」
京は最初の一口目だけ甘えているのだと思っていたが、どうやら全部食べさせてもらう気らしい涼介に注意した。
西條家の方針はできることは自分で、甘えたい時だけ少し手伝ってもらう、というもので、できることを全てやってもらうのは親の手が空いている時だけだ。
「やーだ、ママあーんして」
京の注意など聞く耳持たず、涼介は洸希の腕にすがりついて甘えた。
「今日は赤ちゃんを見たから自分も甘えたくなっちゃったんだよね」
洸希は俗に言う"赤ちゃん返り"になったのだと悟った。
一般的には弟や妹ができた時になるものだが、涼介は今日会った赤ちゃんを抱いてミルクをあげる洸希を見て嫉妬したのだろう。
それを言葉にはしないが、この様子を見るに間違いないだろう。
洸希はそれがなんだか嬉しくて、嬉々としてお世話をする。
赤ちゃんの頃から育てられなかった分、赤ちゃんに戻りたいという欲は叶えてあげたい。
そしてそれを自分に求められている事実に喜んでいた。
「ぎゅーして」
いつもよりはやめに布団に入ると、涼介は洸希にピタリとくっついた。
「いいよ、ぎゅーしようね」
ぎゅー、と全身で抱きしめると、涼介は洸希の胸に耳を当てて心音を聞いた。
「ママだいすき」
「ママも、涼介くんだいすき。ママは涼介くんだけのママだからね」
頭をよしよし、と撫でると、しばらくして規則正しい呼吸が聞こえてきた。
洸希は小さな手を握ると、いつまでもこの幸せが続きますように、と心の中で静かに願うのだった。
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