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大切な友達だから

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「律、お前は自分が何をやったのかわかっているんだよな?」



 ガヤガヤしてた職員室に少し張り上げた男の声が響く。そこには金髪に青眼の男女が向かい合っている。 


「……わかってるわよ」


 男女の1人、律と呼ばれた黒いリボンにツインテール、見る限り美少女の学生がツンとしながらふてくされた表情を浮かべ、そう答えた途端、


「でも!あたし!どうしても許せなかったの!」

 
キッと怒りを込み上げるように叫ぶ。


「お前の気持ちも分かる。でもさすがに周りの生徒が呼びに来るほどのおおごとを起こすな…仮にもお前は俺の妹なんだしな…問題だけは頼むからやめてくれ」


 もう1人の金髪の男、スーツとネクタイを纏う彼は早瀬綾人。目の前にいる律、一条律の実の兄にして担任教師。
律の言い分にさらに言葉を重ね、早瀬先生は続ける。


「言われてさぞ悔しい思いをしたかもしれないが、そこは我慢して俺に相談とか…」

「何よ?お兄ちゃんが解決できんの?」


 冷たく氷のような律の目が早瀬先生を刺す。


「そんなのやってみないとわからないだろ?」


  律は早瀬先生の広げた手をパシっと叩き、さらにギロッと睨むと


「はぁ……もういいわ。あたし帰る」


「か、帰るって!まだ話終わってないぞ!」


 早瀬を無視してすたすた歩き出す律を追いかけようとするが、


「これ以上話しても無駄!ちゃんと謝ったし、別に謹慎も停学でもないんでしょ?じゃあ話終わり!」
 

振り向いてあっかんべーして、律は職員室の扉を開けてでていった!


「律……」


職員室にため息とともに複雑な思いを抱える早瀬先生の声が漏れた。





それは数時間前の出来事だった。



「あのメガネ優等生まーた男子に媚び売ってめっちゃうざーい!」

「ねぇ、あれわざとやってんのかな?」

「なんか腹立つから間瀬さんに一言言いにいこっかなー」

「いいねーびびらせちゃお!」



  律は女子高生3人がそう話してるのをたまたま聞いてしまった。律は拳をぐっと握り、勢いよく1歩踏み出した。


「ちょっと、あんた達!!!蒼衣に何するつもり!?」


 蒼衣は律の親友の名前だ。
 律の張り上げた大声が廊下に響く。
それからは…


(とにかくあの女たちには腹が立ったから文句言ったけど記憶が曖昧なのよね。気づいたら生徒が周りを囲んでて先生が来て…)


 律は人がいなさそうな校舎の端っこの焼却炉の前の壁にもたれかかった。


(蒼衣のこと悪く言われて許せるわけがないじゃない。でも…お兄ちゃんの顔もあったし、やっぱりまずかったかな…)


「はぁ…やっちゃったわね…」


 大きな後悔のため息と共に額に手を乗せて律は 天を仰ぐ。


「別にりっちゃんが悪いとはアタシは思わないけどね」


「!!!??」


 突然ななめ後ろから聞こえたその声に驚き律は身体を大きく震わせた。


「だって友達の悪口言われたらアタシだって文句言いたくなるもの!」


  近づいて来るその声の先には、高身長でアッシュの髪色のスタイルの良い男子学生がニヤニヤしながら軽く手をふって律を見ている。



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