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第35話 空の覇者ドラゴン ①
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明朝、エンゲルの街を出発した俺達はその後、大した情報を得られないまま、グワン村、ダゴス砦、アップルトンの街、サザンの街とパールロードをひたすら西に向かって日数だけ消化している。
ここまでの旅で分かった事が一つ。
どこの街や村に行っても聖騎士団は人気があり歓迎してもらえる事だった。
やはり、命を賭して皇民を護る存在と言う事はどこの住人も理解している。
サザンの街から先はアレクサンドリア高原に入ったが、サザー村、サザー砦を超えても言われている魔物にも遭遇せずに良い意味で肩透かしを食らっていた。
この辺りは放牧が盛んな地域で牧草が丘陵地帯に広がり、非常にのどかな雰囲気漂う場所だ。
サザーと呼ばれる地域では何組かの牛飼いや羊飼いの放牧してる様子が見れた。
丘には風車小屋が点在しており時折吹く風を動力にして「クルクル」と羽根を回している。
昨夜の宿屋でのルークの話によると、次に到着予定のククル村は羊の乳から作るチーズが絶品でそれを鍋に入れ溶かしながら食材を溶かしたチーズに絡めて食べるのが絶品だそうだ。
そんなククル村の事を考えていた時の事だった。
思いがけずに先導してるルークが馬を止めた。
最初は村に着いたのかと思ったが車窓からの風景を見るに違うようだ。
「羊飼いが魔物に襲われています」
ルークは馬車に駆け寄ると遠くの丘陵を指さしている。
指し示す方向を見ると、米粒ほどの大きさなのだが、何かが丘陵を駆け下りている姿が目に飛び込んできた。
距離がまだ遠いので、はっきりとは分からないがどうやら何かから逃げているようだ。
しかし、馬に乗りながらあんな遠くのものを見つけるルークの目はかなり良い。
恐らく見通しは良い場所とはいえ数キロ先だからだ。
遠くに目の焦点を合わせていると、徐々に見えてきた。
先頭はロバみたいな乗り物に乗ってる。
恐らくルークの言ってる羊飼いだ。
その後ろを、白い羊達が数十、いや百近くついて逃げて来ているようだ。
その羊飼いと羊の隙間を縫うようにして黒い生物が追いかけていた。
「ワーウルフが襲ってるようです」
先日訪れたエンゲルの酒場で聞いた野生の狼が魔物化したものだ。
だが、ワーウルフは羊達を襲うわけでもなく全速力で丘陵を駆け下りてきている。
終いには先頭の羊飼いの馬もどきを抜いている。
どうやら、ワーウルフも何かから逃げているようだ。
そこに、耳を塞ぎたくなるような鳴き声、いや咆哮がした。
その音は甲高く遠く離れたこちらまで威嚇し震えあがらせる類いの叫喚だ。
その咆哮の主は丘の稜線から浮かび上がるように地平線上に現れた。
「ド、ドラゴンだ。ヤバい俺達も逃げないと焼かれる」
ルークがその姿を確認した途端に叫んだ。
まだドラゴンは数キロ先に見えるだけだが、その気になれば数十秒でこちらまで飛んでくる事が出来るだろう。
だが、まだドラゴンは幸いな事にこちらには気がついていない。
どうやら、ドラゴンは羊を捕食する為に空から狙いを定めてるようだ。
元々はワーウルフの獲物だったのだろう。
だが今は横取りする形で羊の群れを襲うつもりなのだ。
ワーウルフにしても相手が悪すぎる。下手をしたら羊もろとも食われてしまう。
だからワーウルフも必死に逃げている。
しかも、最悪な事に飛んでいるのは三匹いるのだ。
「わー、ヤバい、ヤバいだばさ」
こちらも目が良いのだろう、ドーラが有り様を見て呟いている。
「あいつらがパラメキアのシャングリラ城を焼き尽くしたドラゴンですよ。襲った時より更に大きくなったような気がします」
遠く離れているとはいえ、鷹や鷲のような猛禽類みたいに小さくはなく翼の生えた巨大な生物が空を舞っている。
しかも悠々と空の覇者の威厳を醸し出し丘陵を下り逃げている獲物の上から咆哮を上げると口から炎を吐き出した。
火炎の威力が強いのだろう、吐かれたブレスの直線上のものは一瞬で焼け野原と化した。
そこにいた生物は黒焦げになり威力で宙を舞う。
その舞い上がった物を待ってましたとばかりに他のドラゴン二匹が鋭い前足で捕むともう一匹が大きな牙を持つ口に入れ肉を噛み砕き捕食していた。
羊であろうとワーウルフであろうと人間であろうとも肉であればお構いなしに腹に入れるようだ。だから、先ほど先頭で逃げていた羊飼いは姿が消えて見えなくなった事から恐らく捕食されたと思われた。
ドラゴンは頭が賢いようで役割分担しながら獲物を狩っているように思えてしまう。
そして、何度も火炎を吐くと瞬く間に丘陵の一つは焼け焦げて生物が住めない灼熱焦土と変わり果てていた。
そんな中、何とか難を逃れた数十の羊とワーウルフ達が丘陵を下りきり、こちらに向かって逃げてきている。
少し距離はあるが、数分もしたら俺達が立ち止まっている場所にきてしまう。
それは即ち俺達もドラゴンの捕食対象になる事を意味する。
そんな光景を目の当たりにして、万が一を考えておかなくてはいけない。
いや、もはや見つかるのは必然的な気もしてくる。
「このままじゃ……。メリル、何とかならないか?」
この状況で取れる手段は二つ。
一つは踵を返して来た方向に全速力で逃げる。
もう一つは隠れるだ。
だが、こんな見晴らしの良いパールロードだから馬車ごと隠すのは無理だ。
例え道の端に寄せたとしても空からだと丸見えだと思えた。
ここまでの旅で分かった事が一つ。
どこの街や村に行っても聖騎士団は人気があり歓迎してもらえる事だった。
やはり、命を賭して皇民を護る存在と言う事はどこの住人も理解している。
サザンの街から先はアレクサンドリア高原に入ったが、サザー村、サザー砦を超えても言われている魔物にも遭遇せずに良い意味で肩透かしを食らっていた。
この辺りは放牧が盛んな地域で牧草が丘陵地帯に広がり、非常にのどかな雰囲気漂う場所だ。
サザーと呼ばれる地域では何組かの牛飼いや羊飼いの放牧してる様子が見れた。
丘には風車小屋が点在しており時折吹く風を動力にして「クルクル」と羽根を回している。
昨夜の宿屋でのルークの話によると、次に到着予定のククル村は羊の乳から作るチーズが絶品でそれを鍋に入れ溶かしながら食材を溶かしたチーズに絡めて食べるのが絶品だそうだ。
そんなククル村の事を考えていた時の事だった。
思いがけずに先導してるルークが馬を止めた。
最初は村に着いたのかと思ったが車窓からの風景を見るに違うようだ。
「羊飼いが魔物に襲われています」
ルークは馬車に駆け寄ると遠くの丘陵を指さしている。
指し示す方向を見ると、米粒ほどの大きさなのだが、何かが丘陵を駆け下りている姿が目に飛び込んできた。
距離がまだ遠いので、はっきりとは分からないがどうやら何かから逃げているようだ。
しかし、馬に乗りながらあんな遠くのものを見つけるルークの目はかなり良い。
恐らく見通しは良い場所とはいえ数キロ先だからだ。
遠くに目の焦点を合わせていると、徐々に見えてきた。
先頭はロバみたいな乗り物に乗ってる。
恐らくルークの言ってる羊飼いだ。
その後ろを、白い羊達が数十、いや百近くついて逃げて来ているようだ。
その羊飼いと羊の隙間を縫うようにして黒い生物が追いかけていた。
「ワーウルフが襲ってるようです」
先日訪れたエンゲルの酒場で聞いた野生の狼が魔物化したものだ。
だが、ワーウルフは羊達を襲うわけでもなく全速力で丘陵を駆け下りてきている。
終いには先頭の羊飼いの馬もどきを抜いている。
どうやら、ワーウルフも何かから逃げているようだ。
そこに、耳を塞ぎたくなるような鳴き声、いや咆哮がした。
その音は甲高く遠く離れたこちらまで威嚇し震えあがらせる類いの叫喚だ。
その咆哮の主は丘の稜線から浮かび上がるように地平線上に現れた。
「ド、ドラゴンだ。ヤバい俺達も逃げないと焼かれる」
ルークがその姿を確認した途端に叫んだ。
まだドラゴンは数キロ先に見えるだけだが、その気になれば数十秒でこちらまで飛んでくる事が出来るだろう。
だが、まだドラゴンは幸いな事にこちらには気がついていない。
どうやら、ドラゴンは羊を捕食する為に空から狙いを定めてるようだ。
元々はワーウルフの獲物だったのだろう。
だが今は横取りする形で羊の群れを襲うつもりなのだ。
ワーウルフにしても相手が悪すぎる。下手をしたら羊もろとも食われてしまう。
だからワーウルフも必死に逃げている。
しかも、最悪な事に飛んでいるのは三匹いるのだ。
「わー、ヤバい、ヤバいだばさ」
こちらも目が良いのだろう、ドーラが有り様を見て呟いている。
「あいつらがパラメキアのシャングリラ城を焼き尽くしたドラゴンですよ。襲った時より更に大きくなったような気がします」
遠く離れているとはいえ、鷹や鷲のような猛禽類みたいに小さくはなく翼の生えた巨大な生物が空を舞っている。
しかも悠々と空の覇者の威厳を醸し出し丘陵を下り逃げている獲物の上から咆哮を上げると口から炎を吐き出した。
火炎の威力が強いのだろう、吐かれたブレスの直線上のものは一瞬で焼け野原と化した。
そこにいた生物は黒焦げになり威力で宙を舞う。
その舞い上がった物を待ってましたとばかりに他のドラゴン二匹が鋭い前足で捕むともう一匹が大きな牙を持つ口に入れ肉を噛み砕き捕食していた。
羊であろうとワーウルフであろうと人間であろうとも肉であればお構いなしに腹に入れるようだ。だから、先ほど先頭で逃げていた羊飼いは姿が消えて見えなくなった事から恐らく捕食されたと思われた。
ドラゴンは頭が賢いようで役割分担しながら獲物を狩っているように思えてしまう。
そして、何度も火炎を吐くと瞬く間に丘陵の一つは焼け焦げて生物が住めない灼熱焦土と変わり果てていた。
そんな中、何とか難を逃れた数十の羊とワーウルフ達が丘陵を下りきり、こちらに向かって逃げてきている。
少し距離はあるが、数分もしたら俺達が立ち止まっている場所にきてしまう。
それは即ち俺達もドラゴンの捕食対象になる事を意味する。
そんな光景を目の当たりにして、万が一を考えておかなくてはいけない。
いや、もはや見つかるのは必然的な気もしてくる。
「このままじゃ……。メリル、何とかならないか?」
この状況で取れる手段は二つ。
一つは踵を返して来た方向に全速力で逃げる。
もう一つは隠れるだ。
だが、こんな見晴らしの良いパールロードだから馬車ごと隠すのは無理だ。
例え道の端に寄せたとしても空からだと丸見えだと思えた。
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