完結 元エリート刑務官、転移先は異世界のブラック監獄!? 下っ端スタートから囚人たちと更生改革します!』

カトラス

文字の大きさ
9 / 62

第8話 俺流“監獄ルール”提案してみたら、意外と受け入れられた件

しおりを挟む
 帝国査察官クルス・ミラージュが去ったあとも、彼の言葉と視線は俺の中に深く残っていた。



 更生なんて幻想──か。



 確かにこの監獄島・ガランツァは、腐り切った場所だ。囚人たちも、看守たちも、希望を持たぬまま日々をただ耐え、やり過ごしている。



 けれど俺は、メルクのように善良な人間が理不尽に投獄されている現実を知っている。ベルンのように、元は囚人ながらも更生を果たし、現在は看守として働いている者もいる。



 だからこそ、俺なりのやり方で、ここを少しでも変えていきたいと思った。



 ちなみに──帝国査察官とは、帝国政府直属の監察機関に所属する特別官吏である。彼らは帝国内の矯正施設、監獄、養成院、さらには奴隷収容施設に至るまで、その運営状況と実効性を“数値”と“合理性”の観点から監査・評価する役割を担っている。



 更生という理念よりも、犯罪者の再発率や施設の管理効率、経済的コストなどを重視し、非効率と判断すれば容赦なく制度や人員を切り捨てる。それゆえに“鉄面の処刑官”“改革屋”などの異名で呼ばれることもある。クルス・ミラージュは、まさにその代表格だった。



「というわけで、提案があります」



 俺はD棟の食堂で集めた囚人たち──いや、信頼できる数人の囚人たちと向き合っていた。ジリア、メルク、他にも俺の指示を真面目に聞いてくれる者たちだ。



 ベルンは看守として傍らに立ってくれていた。囚人たちとの橋渡し役として、彼の存在は心強い。



「提案? 何だ、今日はパンくずじゃなくてルールの話か?」



 ジリアが椅子に背を預けながら軽口を叩いた。



「いや、今回はちゃんとまじめな話だ。聞いてくれ」



「……へぇ、隼人が真面目に“提案”なんて。面白そうじゃないか」



 ジリアの視線は相変わらず鋭いが、どこか楽しげでもあった。



「正直、このまま毎日暴動寸前で過ごすのは俺も嫌だ。だからこそ、“俺たちでルールを作ってみないか?”って話だ」



「ルール? 俺たち囚人が作るのか?」



 メルクが首を傾げながら問い返す。



「そう。現場で起きてる問題は、現場にいる俺たちが一番よく分かってる。だから、実情に合ったルールを自分たちで決めた方が納得もいくし、守る意識も芽生えると思ってる」



「看守が囚人にルール作らせるなんて、前代未聞だな……」



 ベルンが低く唸るように言った。



「でも、お前が言うなら、聞いてみる価値はあるかもな」



 俺は小さくうなずきながら、あらかじめ用意しておいた紙をみんなに配った。



「これが試案だ」



【試案:D棟生活秩序案】

1.食事は年長順に受け取る(混乱防止)

2.持ち物の貸し借りには許可制を導入(トラブル予防)

3.告発なしの暴力は禁止

4.労働貢献度に応じた優遇措置(洗濯や掃除のローテ見直し)

5.週に一度、雑談と相談の“話し合い”を設ける



「……これ、割とちゃんとしてるな」



 ジリアが目を細めて紙をじっと見つめた。



「要は……俺たちでこの棟を、“まともに”運営してみないか、ってことか」



「その通り。もちろんこれは、所内規則の範囲内だ。クルスみたいな奴が視察に来たら真っ先に潰されるかもしれないけど、今のうちに試してみたい」



「正気か? お前、まだ“更生”とか信じてるのかよ」



 ジリアが皮肉交じりに言うと、俺は少し笑って答えた。



「信じるさ。俺はこの島に来て、メルクやベルンに出会って、それが幻想じゃないって確信したんだ」



 その言葉に、メルクが驚いたように目を見開いた。



「……僕、やってみたいです。隼人さんの案。変えられるなら、少しでも力になりたい」



「オレも賛成だぜ。囚人たちが勝手に暴れて収拾つかないより、ちゃんと自分たちで話し合って決めた方が絶対にいい」



 ベルンの声に力がこもっていた。



「……俺も協力してやるよ。ただし、しくじったら全部お前の責任な」



 ジリアがにやりと笑いながら言った。



「もちろんだ。失敗も全部、俺の責任だ」



 そう言い切ったとき、心の中に小さな決意の火が灯った。



 こうして、“俺流監獄ルール”の試行が始まった。



 小さな灯火かもしれない。



 でも、この監獄で何かが少しでも変わるなら。



 俺は、信じてみる価値があると思っている。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

不遇スキル「わらしべ長者」で殺せぬ勇者 〜魔力ゼロでも無双します〜

カジキカジキ
ファンタジー
 スキル「わらしべ長者」って何ですか? アイテムを手にすると、スキル「わらしべ長者」が発動し、強制イベントになるんです。  これ、止めること出来ないんですか?! 十歳のスキル授与で「わらしべ長者」を授かった主人公アベルは幼い頃から勇者への憧れが強い子供だった、憧れていたスキル「勇者」は引っ込み思案の友達テツが授かり王都へと連れて行かれる。  十三歳になったアベルは自分のスキル「わらしべ長者」を使いながら冒険者となり王都を目指した。 王都に行き、勇者のスキルを得た友達に会いたいと思ったからだ。  魔物との戦争が行われているはずの王都は、平和で市民は魔物なんて全く知らずに過ごしていた。 魔物のいる南の地を目指すため、王立学園へと入学するアベル、勇者になった友達の行方は、アベルのスキルはどう進化して行くのか。 スキルを駆使して勇者を目指せ! ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 扉絵は、AI利用したイラストです。 アベルとニヤ、イヅミのFA大歓迎です!! 描いて下さる絵師さんも募集中、要相談Xにて。

異世界ビルメン~清掃スキルで召喚された俺、役立たずと蔑まれ投獄されたが、実は光の女神の使徒でした~

松永 恭
ファンタジー
三十三歳のビルメン、白石恭真(しらいし きょうま)。 異世界に召喚されたが、与えられたスキルは「清掃」。 「役立たず」と蔑まれ、牢獄に放り込まれる。 だがモップひと振りで汚れも瘴気も消す“浄化スキル”は規格外。 牢獄を光で満たした結果、強制釈放されることに。 やがて彼は知らされる。 その力は偶然ではなく、光の女神に選ばれし“使徒”の証だと――。 金髪エルフやクセ者たちと繰り広げる、 戦闘より掃除が多い異世界ライフ。 ──これは、汚れと戦いながら世界を救う、 笑えて、ときにシリアスなおじさん清掃員の奮闘記である。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界で穴掘ってます!

KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語

神様、ちょっとチートがすぎませんか?

ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】 未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。 本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!  おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!  僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇  ――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。  しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。  自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――  ◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。 へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/ --------------- ※カクヨムとなろうにも投稿しています

キャンピングカーで走ってるだけで異世界が平和になるそうです~万物生成系チートスキルを添えて~

サメのおでこ
ファンタジー
手違いだったのだ。もしくは事故。 ヒトと魔族が今日もドンパチやっている世界。行方不明の勇者を捜す使命を帯びて……訂正、押しつけられて召喚された俺は、スキル≪物質変換≫の使い手だ。 木を鉄に、紙を鋼に、雪をオムライスに――あらゆる物質を望むがままに変換してのけるこのスキルは、しかし何故か召喚師から「役立たずのド三流」と罵られる。その挙げ句、人界の果てへと魔法で追放される有り様。 そんな俺は、≪物質変換≫でもって生き延びるための武器を生み出そうとして――キャンピングカーを創ってしまう。 もう一度言う。 手違いだったのだ。もしくは事故。 出来てしまったキャンピングカーで、渋々出発する俺。だが、実はこの平和なクルマには俺自身も知らない途方もない力が隠されていた! そんな俺とキャンピングカーに、ある願いを託す人々が現れて―― ※本作は他サイトでも掲載しています

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

処理中です...