夢追人と時の審判者!(四沙門果の修行者、八度の転生からの〜聖者の末路・浄土はどこ〜)

一竿満月

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水饅頭六

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 吾輩は飛彩である。ご主人の袴着の儀式が外交の場と化したのち、秀吉は島津と長宗我部の力を削ぐため一計を富田一白に授けた。
 四月十日に秀吉が毛利輝元へ九州征伐にあたり全十四ヶ条の「覚」を通達した。安国寺恵瓊・黒田孝高を「筑前検使」とした。
 そして、秀吉が小早川隆景・吉川元春・元長へ大友宗麟の上洛を報じ、九州征伐の準備を命じた。

■■■■…………
「おぉ、貴殿ら、話が弾んでいるようだな」

「これは、富田殿」
 
 一白の方から声を掛けてきたのは、島津の大友領侵攻。そんな理由からだろうと伊集院忠棟は推測する。

「二人とも、同じ物を口にしているのか?」

「当たり年の物です。なかなかいけます」

「そうか、濁りではなく清酒にしておけばよかったか……ところで貴殿ら、関白殿下に挨拶はされたかな?」

「「え~~ぇ、何故ここに関白殿下が……。」
 秀吉にとって数少ない旧知の仲なのが富田一白。年もそう離れていないし、昔から信長の旗本として面識があった。そして、その孫が袴着の儀式を行なうので内々に無理やり参加して来た。
 勿論、富田家のみで行なう予定に、秀吉と秀次が参加してきた所に何故か、島津家の家臣がいるのか……。当然富田家より招待したからである。

 今回の袴着の主賓だ。まずは上司であったり、本家筋のトップであったりといった、来賓が優先して挨拶をする。
 如何に、伊集院と言えど、島津家の家臣。秀吉からすれば敵国の陪臣が挨拶するのは来賓の挨拶が済んでからというのが常識だ。

 ふとみれば、丁度今しがた来賓達の挨拶が一通り終わったようだった。

「そうか。今から挨拶に行くのだが、一緒にどうだ」

「光栄です。ではお言葉に甘えましてご一緒させていただきます」

 社交の場で下の身分の者から声を掛けるのはマナーがなっていないと言われるが、祝いの場での主賓への挨拶は別だ。それに秀次から秀吉に挨拶する分には何の問題も無い。むしろ、挨拶もせずに居た方が、不仲と疑われて要らぬ謀略や風聞が付け入る隙となるだろう。

 関白秀吉と、それを支える者たちが蜜月であることを、諸国の宿老らが居る前で見せつける。これもまた政治の一環だ。
「関白殿下」

「ん? あぁ平右衛門、それに孫七郎と掃部助殿だな」

「はっ、この度の袴着に際しまして、ご丁重なお祝いのお言葉とともに結構なお品を賜り、厚くお礼申し上げます。このうえは、更なる豊臣家発展に一意専心してまいる所存ですので、今後とも倍旧のお引き立てを賜りますようお願い申し上げます。わざわざ我ら一同心よりお祝い申し上げます」
(しまった!まさか…ここで。伊集院の顔がゆがむ……。)
「ありがとう。わざわざ礼などいらぬ、天下泰平、総無事他ならぬ。皆に分って貰えて嬉しく思う」

「天下泰平、我らが御支え申し上げます」

「頼んだぞ。しかし平右衛門、そのように話が進むと、伊集院殿の立場は大丈夫ですか?」

「これはこれは。殿下も御人が悪い」

 挨拶を交わす秀吉と一白。言葉を交わすのはこの二人だ。主賓と来賓の位階の低い者からの直言は、許されるまでは出来ない。或いは秀吉の方から話しかけるか。
 ひとしきり一白と会話した後は、秀吉は気をきかせて伊集院殿に声を掛けた。

「そういえば孫七郎、最近珍しい饅頭を客に振る舞っているそうだな」

「はっ」

「ならば一つ、良いものを見せてやろう」

 そう言って、秀吉子は侍女に指示を出した。あれを持ってこい、と。

 しばらくして持ってこられたのは、五色の水饅頭だった。色とりどりの餡をプルプルの葛で包んだ富士山のような形をしていて、甘い匂いが漂う。不思議なのは、ただ甘いだけではなく別の不思議な香りのする点。蜂蜜でもなく、砂糖でも無い。粉砂糖を焦がした香ばしさの香り。

 これは何だろうと、男たちは首を捻る。

「孫七郎のところでは、水葛餅と呼んでいる饅頭を出しているのだったな」

「はっ、左様です」

「ならば食してみるといい。この水饅頭。貴殿の饅頭とはまた一味違うぞ」

 秀吉から勧められて、食べないで遠慮するのも拙い。秀次は一つ手に取って、笑顔のままで口に入れる。
 富田一白、伊集院忠棟もまたそれに倣う。

「ほう」

「むう」

一様に、唸った。

 食した時に、さっと広がるほろ苦さ。そして、即座にそれを打ち消す甘味。この調和が、餡の香りと共に口いっぱいに充満するのだ。

 ただの饅頭とはまた違う、高位武家にして初めて食す味。饅頭と言えばとにかく甘いというイメージしか持っていない者にとっては、驚きと新鮮さが味わえる一品だった。

「旨いですな、殿下」

「平右衛門の舌には合ったようだな。孫七郎はどうか」

「大変美味しく思います。流石は殿下。当家の饅頭では足元にも及びません」

「ははは、他ならぬ貴殿に言われると嬉しいな。……それで、伊集院はどう思ったか?」

 ピリっとした空気が流れた。

 敏感にそれを感じた伊集院は、居住まいを正して答える。

「関白殿下の饅頭の美味なること、天女が舞い降りたかと思う程にございます」

「そうか」
「はい。私も舌が肥えていると自負する者ですが、この饅頭は生まれて初めて食しました。この様な素晴らしき饅頭を口に出来ましたことは、末代までの誉れと為すところにございます」

 伊集院も口八丁が商売のタネ。褒め言葉に遠慮や躊躇など無い。これでもかとばかりに大げさに褒めまくる。
 それを黙って聞いていた秀吉は、軽く頷いた。

「ふむふむ……それで、実は伊集院に紹介したい者がおってな」

「は?」

「この饅頭を考案した者が、是非とも伊集院に挨拶したいと言っておるのだ。構わんだろう?」

「え、ええ、はい」

 秀吉の顔には、笑みが浮かぶ。ただし、明らかな造り笑顔だ。雲行きが段々と怪しくなってきたことを、伊集院は察する。
 秀吉に呼ばれやってきたのは、少年が一人と壮年の男性。
 その両者を見て、伊集院は顔を真っ青にした。

「伊集院忠棟、元気そうだな」

 壮年の男から掛けられた言葉は、皮肉がタップリ含まれていた。伊集院たる者に自分から声を掛けられる男。富田蔵人高定その人だった。

「くっ、蔵人!!」

「お前が居ると聞いてな、是非とも紹介しておこうと思ったのだ。お前が食べた饅頭を考案した者はこいつだ。……名前は言わずとも分かるだろう?」

 少年と伊集院の目が合う。
 勝気そうで、意思の強そうな少年の目つきには、伊集院が気圧されるだけの力がある。

「な、何故……」

「伊集院殿におかれましては初めてお目にかかります。富田高定が一子、小太郎と申します。
どうやら“伯母ともども“ご丁寧な招待を受けましたので、是非とも御礼を申し上げようと思っておりました」

「馬鹿な、何故ここに居るのだ……」

 伊集院忠棟は見事に狼狽した。
 息子は、伯母と共に隔離したはずだった。上手くいったとの連絡もあったはずだった。にもかかわらず、この場に居る。おまけに、秀吉と親し気にしているのだ。

 つまりは、自分の為したことが完全にバレているということ。

「どうした伊集院殿、顔色が悪いではないか」

「は? いえ、あの、少々疲れが出たのかもしれません。最近風邪気味でして」

 秀吉の言葉に、何とかその場を取り繕うとする。しかし伊集院は気付けない。
 いや、気付いたが遅い。
 自分の周りにいるのが、富田一白、羽柴秀次殿だと言う事に。国内の“治安維持”を担う責任者達だ。
 何故軍家筆頭格の二人がわざわざ自分を連れて挨拶したのか。今更ながら、これが自分を油断させて嵌める罠であったと気付く。

「風邪か。それはいかんな。貴殿にはこれからもやってもらわねばならぬ仕事が山積みだ。おい」

 一白の短い言葉に、いつの間にか武装した千本組の与力が集まっていた。彼女らの目つきは鷹のように鋭く、ちらりとでも不審な動きを見せればぶっ殺すとでも言いそうなほど危険な雰囲気があった。

「伊集院殿を“特別な客室”に連れて行け」

「ははっ」

 特別な客室というのが牢のある部屋であることは、今更言うまでもない。
 一白の命で、千本組の与力二人が伊集院の両脇を抱える。そのまま引きずるようにして連れていく様は、明らかな連行であったが。

「ちょっと待て。」秀吉から連行さえていく伊集院に声が掛けられた。
「平右衛門(一白)。今回の件儂は不問にしたいのだが、駄目か……」
 一白は秀吉の顔見て、何かを察し「関白殿下の考えに思うところがあります故に、この件、不問と思う所存でございます……」

「少しお待ちください。この件、承諾いたしかねます……」と秀次が異を唱えると。

 全く、人の足を引っ張りたがる連中は、幾らでも湧いて出るな。秀吉は、溜息をついた。

「孫七郎。お前に問うてはおらぬ、口を挿むでない。儂は伊集院殿に頼みを聞いてもらう変わりに、今回の件は不問にしたのじゃ……」

 自分が優秀だと自負しながら、周囲の環境の変化に適応できない時。自省出来ない者は、環境を変化させた要因が悪いと責任を転嫁しがちだ。
 農家であれば雨が降らないのが悪いと言い、商人であれば相場が荒れたのが悪いと言い、振られた者は相手に見る目が無いと言う。そして、金脈を失った者は余計なことをした奴が悪いと言う。
 こういう手あいは、決して自分が不作為であったり、適切な行動を怠ったとは考えない。雨が降ってさえいれば全て上手くいっていたと考え、余計な邪魔が無ければ金脈は未来永劫続いたと考える。
 こういう手あいは存外に多い。仮に今は上手く環境に適応できていたとしても、環境が変わればこの手の人間は何時だって湧く。秀吉は伊集院を自分の手駒に出来ると確信したのだ。

「関白殿下、馬鹿と鋏は使いようと思えと申します」

「ははは、お前は年の割に辛辣だな。それに、どうやら俺の思惑も見抜いたか」

 秀吉と小太郎のやり取り。少年は、物おじもせずに秀吉と会話していた。
 その様子に、富田一白と羽柴秀次などは驚くこと頻しきりだ。

「関白殿下の御深慮を、僕如きが見抜くなどとは畏れ多いことです。しかし、御思慮の一端には、今回の件がお役に立てたかと存じます」

「ふむ、ならばここで宣言するか」

 何かしら思惑のありそうな秀吉は、武家たちの目を集めながら部屋の一段高い場所に進んだ。堂々たる姿勢に、何事かと辺りは騒めきだす。

「静まれ」

 短くも低い、良く通る言葉だった。威風をもって周囲を睥睨する様は、一国の覇者として過不足が無い。

「皆に知らせる。大坂城において儂が提示した九州国分案には、肥後半国・豊前半国・筑後一国を大友氏へ返還、肥前は毛利氏にあたえ、筑前は秀吉の所領にすることとしたが、島津がこの九州国分案を拒否して筑後・筑前にまで侵攻した。そして「九州停戦令」に違反したうえに、富田家の嫡子の夫人と孫が、島津の人間によって攫われた」
 武家たちの目が、一斉に富田一白に向く。或いは、高定と小太郎が居る方に目を向ける。
 憮然とした態度で注目を集めているが、一白とて事情はさっき聞いたばかりなのだ。

「幸いにして、夫人も孫も無事に逃げ出した。無論、島津の人間を捕まえた上でだ」
 周りの声がざわついた。島津の人間が秀吉国の武家を攫うというのも一大事であるが、それほどのことをしでかすのだ。さぞ準備は入念に行われたはずである。にもかかわらず逃げおおせたというのだ。何があったのか、という興味で騒いでも当然である。

「これは、儂に対する明らかな敵対行為。余はここに宣言する。非道なる行いには相応の酬いを受けさせようと」

 秀吉が拳を振り上げた。
 そしてそのまま気合を込めて振り下ろした。

「島津に対し、宣戦を布告する」
 それは、争いの始まりを告げるものであった。
 秀吉は至急大坂城に戻り、九州征伐にあたり全十四ヶ条の「覚」の作成をさせ、準備に取り掛かった。秀吉が帰った後、小太郎の袴着の儀式も終わり、お客様も帰ると小太郎は離れに籠った。

◇◇◇◇
 
 カタカタ カタカタと音がする。
 真っ暗闇のその闇の、さらに深い闇の中。
 気が付けば少女はそこにいた。
 振り向いても前を向いても、闇は闇。不思議なことに彼女の目には闇の中の全ての物が見えていた。
 何故、闇の中で目が見えているのか。何故、目が見えているのに、暗闇の中にいると思うのか。
 何故か分からず、少女はただそこにいた。

 カタカタ カタカタと音がする。
 暗闇の中、ここはいったいどこだろう。
 少女は危機感とは真逆の安心感を持っていた。先ほどまで感じていた深い闇への恐怖感は既にない。
 真っ暗闇の中だというのに、自分の中から緊張感が出てこない。

 少し強めの風が吹いた。
「……………」
 何か聞こえただろうか。空耳か?
 誰かが話しかけてきたように感じた。

 ぐるりと辺りを見回しても誰もいない。おかしい、誰かが話しかけてきたような気がしたのだが周りには人っこ一人見当たらない。

 風の流れを強く感じるようになっていた。風が頬を撫で、髪を揺らして過ぎて行く。
 出口に向かって流れる風だろう。もしかしたら、随分と出口に近いのかもしれない。

「そうか、出口はそっちか」

「ふふっ……こっちだよ」

 心臓が止まるかと思った。何もないはずの空間から声。
 何気ない独り言の後、風の流れの方向へ進もうとしたら、急に顔の横から声がして飛び上がった。
 だって誰もいなかっただろう。
 驚きすぎて尻餅をついてしまった。
 クッ。

 これまで颯爽と歩いて来ていたのに、残念なお子様みたいな恰好だ。

「えっと……あっちが外だよ」

 すると、急に地面が動き出した。そして、明るい外の世界に出た。何だ?

 巨大な……生き物?

 そう思うや否や、巨大な存在がぬうっと視界に入ってきた。巨大な頭を持つ黒い瞳が私を捉える。
大気と地表を揺るがせて、そいつは俺の目の前にやって来た。ゆっくりと、だが確実に俺の視界を塞いでいく巨大な生物。
 眩いばかりに輝く、人間の子供と鳥がそこにいた。
「だれ?……」
 鳥が子供に向かって「ご主人様。刀の九十九霊が生まれました」と話ていた。
そして、子供が「お誕生日おめでとう……江ちゃん」と声を掛けてくれると豆粒程の私が、輝きながら五寸程度まで大きくなった。
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