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関ケ原六
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■■■■…………
西軍がぼろ負けしてしまったのでは、この関ヶ原にいても仕方ない。落ち着いて戦場の片づけを始めた東軍に、完全に包囲されて全滅するだけだ。
ぐるっと見回してみる。眼前の福島隊、その向こうに松平隊と井伊隊、北側には黒田隊。戦いが進んでいるあいだに移動して来たのか、思いがけず近いところに徳川殿の本隊も揃っている。
都の方角を見ても、そちらも大軍が移動していてどこが誰やら……。
島津義弘が本陣に戻ったと聞いて、別部隊を指揮していた島津豊久や山田有信も集まってきた。
豊久が発言した。
「この通りですので、もう戦の勝敗はよろしいでしょう。あとは我ら自身がどうするかだけの問題です」
「……うむぅ」
山田ができる事を数え上げる。
「一つ、逃げる。その場合はどう逃走するかもあります。一つ、ここで東軍相手に全滅するまで戦う。一つ、無茶を承知で敵本陣に居る徳川殿の首を取りに行く」
「迷ってしまうのぅ……」
せっかく関ケ原まで来たけど、我が島津は出番が無かった……。
ならば全滅するまで戦って武士の一分を通すのも悪くはないが、勝敗が決まって掃討戦に移行した後にそれをやってものぅ……これではあの世で家久に会っても、合わす顔が無いのぅ。
「このままでは、島津の名が泣くのぅ……」
義弘が顔を上げると、豊久はじめ主だった皆が見ている。
「うむ、ここは儂が決めねばならぬのぅ……」
とるべき方針は……。「よし、三十六計……じゃのぅ」
「決まりましたか」豊久が尋ねると。
「のぅ……後の世で“さすが島津”と言われるには……、並ではいかんのぅ」
義弘は地図を見て、ビィュ~~ト、一本の道を指さした。
「戦略的撤退を行なう。ただし、家康の度肝を抜く逃げ方をするのじゃ……」
義弘の示した経路を見て、重臣たちはそれぞれに呻き声を漏らした。
「殿、これは……」と中馬重方が尋ね。
「……なるほど」と有信が呟き。
「ありかもしれませんね」と豊久が頷いた。
「いや……、面白い」と新納忠増が話すと。
「実はこれを取って持って来たのじゃ。徳川の連中に、我が島津の逃げ足を披露してやるのぅ」
義弘は軍配を掲げた。
「儂らは逃げるのじゃ……前へ!」
義弘の号令一下。
のちに「島津の退き口」と語り草になる……日ノ本史上もっとも苛烈にして、暴走の敵中突破が始まった。『関ケ原の戦い』は、東軍の勝利で幕を閉じた……かに見えた。
太陽が中天を過ぎるころには西軍はほぼ一掃され、徳川に味方した各大名は落ち武者狩りに移行している。主戦場の跡地には、なぜか戦闘中に全く動かなかった島津勢の他は組織的な抵抗は残っていなかった。そんな一種気が緩んだ状態の、まさにその時。その島津軍が、いきなり動き出した。
近江方面の道が空くまで待機していた福島隊の足軽は、不意に上がった雄叫びを耳にして雑談を止めた。
「なんじゃ?」
「まだ敵が残っとったか?」
残っていたにしても、大した数の敵ではないはず。すでにここまで勝敗がついた中では、破れかぶれの突撃など自殺行為でしかない。……と、思っていた瞬間が福島勢にもありました。
「いったいどこの敗残兵だ」
「死体のフリして隠れとけば命は助かったのになあ」
そんな事を言いながら額に手をかざして遠くを眺めた兵が、驚愕で凍り付いた。
「さっ…さ…」
「ん? おい、どうした?」
「どこの負け犬じゃ?」
様子がおかしいのに気が付いた仲間が声をかけると、固まっていた足軽が小刻みに震え始める。そして出せる限りの大声で叫んだ。
「さっ……薩摩が出たぞぉ!」
怒涛に迫りくる津波か地響きとともに巻きあがる雪崩の襲来であった。
そんな恐怖心いっぱいの警告に、周囲の者たちも一瞬で青ざめた。
「なんだと!?」
「薩摩じゃ! 薩摩が動き始めた!」
大慌てで叫びあう人の波は、一気に拡散していく。
「離れろぉ! また化け物が飛んで来るぞっ!」
「こっち来んなぁっ!」
小太郎の《言霊》の成果は、半日経った今も十分な影響を及ぼしていた。
仇敵石田三成相手の完勝。その事実に気を良くしていた福島正則は、不意に自分の陣の中で巻き起こった騒動に眉をひそめた。
「なんだ、なんだ……? 俺はもう、祝杯で頭が一杯なんだがな」
軽口を叩きつつも猛将は機敏に動き、高さを稼ぐために愛馬に飛び乗った。兵が騒ぐ原因を確かめねばならない。だが、それは彼の致命的な失策だった。
「押せい!」
「「「「「うおぉぉ~~!」」」」」
島津豊久の指揮する先鋒隊の突撃は、周囲をゆるく囲んでいた包囲網に一気に突破口を開いた。
それまで激戦のあいだ、全く動かなかった島津軍。それが急に走り出し、警戒していたつもりの福島兵たちも意表を突かれて逃げ惑う。
そして気迫で敵を追い散らした先鋒に続き、島津義弘の率いる本隊、さらに伊勢・新納隊、山田・長寿院隊と続く。島津軍の、戦場からの大脱走が始まった。
義弘が一人で馬に乗っていたところに、馬にまたがった福島と、兵たちの頭越しにちょうど目があった。
「あっ、あれは……」髭の武将が、馬の上で目を丸くしている。
義弘はその武将に見覚えがあった。「あれは福島じゃのぅ!」
せっかく関ケ原でばったり会ったのに、素通りするのも申し訳ない。
「ちょっと右に寄ってくのじゃ! 福島殿に挨拶していくかのぅ!」
義弘の指示は先頭に伝えられ……。
「今、敵の福島隊に『挨拶』していくのですね……?」
何かを誤解した豊久が号令を発し、島津軍は一斉に右に回頭した。
馬上に上がると、混乱のもとはすぐに分かった。
「島津が動いた! あ奴ら、今まで何もしなかったのになぜ……」
すでに他の西軍諸隊が敗れ去った以上、今さら島津が反撃したところで意味はない。
歴戦の福島と言えど、なぜこの期に及んで島津がやる気を出したのかがさっぱり分からない。
「……今頃逃げ場がないと悟って破れかぶれになったか? 死兵の相手は厄介だな」
絶望で自棄になって突っ込んで来る敵は、守るものがないだけに相手をすると手ひどく損害を受けることもある。今まで戦闘に参加していなかった分、島津兵はまだ指揮系統も死んでいない。
「奴らの進路を開けろ! 正面から戦うな、受け流せ!」
狂戦士と化した千余の兵と、まともにぶつかっては大怪我をする。いったん避けて見逃し、あちらが逃走に成功して『生への執着』が出たところで追撃した方が良い。実戦経験の豊富な福島はそう踏んだのだが……。
「構え!撃て撃て撃てぇ! 、進め進め進めぇ前進せよ、!」
まさか、せっかく逃げ道を開けてやったはずの島津軍がわざわざ突っ込んで来るとは……福島はいくさ上手がゆえに、予想外の行動をとる島津の対処を誤った。
「はぁっ……おい、なぜこっちに来る?」
福島隊は当然ながら、大将である福島左衛門尉の周りが一番守りが固い。ところがそれをものともせず、島津隊はわざわざそこをめがけて突っ込んでくる。
「くそっ、踏みとどまれ!敵の行軍を抑えこめ!持ちこたえろ!」
配下を叱咤激励するが、すでに一回戦勝に酔ってしまった兵たちは死ぬ覚悟ができていない。ただでさえ島津兵の精強ぶりは語り草なのに、それが真正面から突撃して来る恐ろしさたるや……。
腰砕けの福島兵を蹴散らし、島津軍は無人の荒野を行くかのごとくに突っ込んでくる。その中心で、義弘がニコニコしながら。
「左衛門尉! 儂は今から帰るからのぅ!」
「そんな事を、いちいち言いに来なくていぃ~い……」
「それは失礼じゃろぅ。挨拶は大事じゃからのぅ……後から怒られては叶わんからのぅ」
「Time(時間)・Place(場所)・Occasion(場合)をわきまえろっ!」
「まあ、そういうことでのぅ……」
義弘と福島の怒鳴り合いにいきなり横から口を挟んだ豊久が、妙に嬉し気な笑顔で槍を振り上げ……。「これにて失礼致します、っと!」 横殴りに振るった槍の柄で、福島を馬上から弾き飛ばした。
◇◇◇◇
ついに、天下に王手をかけた。
隠忍自重、好機を待つこと幾年月。恐ろしい太閤はすでに亡く、対抗できるような大勢力は軒並みいなくなった。そして今、彼を抑え込もうと謀った官僚の者どもも自滅して果てた。
ついに来た自分の時代に感無量の家康は、これまでの苦しい道のりにしばし思いを馳せていたが……なんだかおかしな騒ぎを耳にして我に返った。
「なんじゃ。 せっかく儂が感慨に浸っておったのに……」
気分を害してぶつくさ言う家康の元に、慌てた側近が駆け寄った。
「殿!」
「お、どうした平八郎。なぜ旗本どもが騒いでおる」
「それが……」
武勇並ぶ者なしとまで言われた家康の右腕が、戦闘中も見せなかった厳しい顔になっている。
「島津勢がいきなり突進をはじめ、ものすごい勢いで攻めかかって来ております」
「今頃!? どこへ?」
呆気に取られて質問した家康に、至極真面目な顔で平八郎は答えた。
「ここへ、です」
「ななっな~~にぃ……急いで槍衾を作れ!」
本多平八郎の怒声に、周囲の旗本たちが一斉に島津と主徳川のあいだに割って入って方陣を作る。さすがに忠勇無比を謳うたわれる徳川の旗本衆は練度が違う。あっという間に林立した槍の列が、陽光を反射して一斉に煌めいた。
「何が来ようと決して通すな!」
「「「「「おぉ!」」」」」
そう。たとえ鬼神であろうと島津であろうと。
十重二十重に家臣達が周りを囲み守りを固めていく中、家康は床几に腰を下ろして爪を噛んだ。
「島津は福島が監視していたはずではなかったのか!?」
「いきなり本陣を踏みつぶされ、福島隊はさっきから姿が見えません」
「油断するからじゃ、あの馬鹿が……!」
そんな事を今言っても仕方ない。徳川本陣は猛烈な勢いで突進してくる島津勢に槍を向け、衝突の瞬間を待ち受けた。
わずかな時間で針鼠のごとくに槍を突き立て、迎撃態勢を整えていく徳川軍。その動きを見て、島津兵児の先頭を走る島津豊久は舌打ちした。
「ちっ!あれは抜けぬか……」
このままぶつかって突破するには、さすがに彼我の兵力に差があり過ぎる。全兵力を擦潰すつもりで突撃しても、家康には届きそうにない。
それに、さすがにそこまでするつもりはない。義弘だけは無事に脱出させねばならないからだ。
今ここで全員討ち死にするわけには行かなかった。
豊久は二番隊に居る義弘を振り返った。
「どうします? 伯父上」
「これ以上は近くに寄れないのぅ、……なら仕方ないのぅ」
甥に聞かれて、義弘も唸った。
「薩摩の誇る武将家久の嫡男、島津又七郎を内府殿に見せたかったのじゃがのぅ……」
「来るぞー!」
見張りの叫ぶ声で、徳川の本陣に緊張が走る。
彼らが待ち構える中、押し寄せてくる島津兵が一気に突入を……して来なかった。
旗本衆の目の前をかすめるように、島津兵がわずかに進路をそらして横へとずれて行く。
「むむっ! 何故じゃ!?」
その不可解な動きに家康が思わず腰を浮かしたところで、本陣の前に一騎駆けの若武者が近づいてきた。
「「「「「えぇ~~っ!」」」」」
何が起きているのか理解できず、呆然とする彼らのまえで……馬上から身を乗り出し豊久が、家康に向かって大きく手を振った。
「徳川殿!俺が薩摩の色男、島津又七郎豊久じゃ!以後お見知り置きくだされ~~。失礼いたしました。」
それが済んだ島津軍はそのまま、何事も無かったかのように走り去った。
「な、なんだったんだ? 今のは……」
「助かった……のか?」
前をかすめただけで何もせずに去っていく島津兵。茫然自失の徳川軍は呆気に取られてその背中を見送った。
家康と本多平八郎も思いは同じだ。
「……今のは、いったい何じゃったんじゃ?」
「突っ込んでくるかと思ったのですが……」
どんどん小さくなる、島津の後ろ姿。どうやら戻ってくる様子はない。
奴らはこれで脅威ではなくなった。家康と平八郎はびっしり額いに浮かべていた冷や汗を拭う。
「何はともあれ、危機は脱したか……」
「やれ、一安心ですな」ホッと一息ついて、二人は強張った顔に笑みを浮かべた。
正直、勝利に気が緩んでいたのは家康たちも同じだ。虚を突かれて焦ったが、すんでのところで“勝ち”を落とさずに済んだ。
「はははっ、なんじゃ今のは。脅かしおって」
「あれはいったい何がしたかったのでしょうね……」
これで戦場関ケ原に敵はいなくなった。とはいえ勝利者にはまだまだやることは多い。勇戦した各武将をねぎらわなくてはならないし、敵勢力は畿内の実権をいまだ押さえている。逃げた西軍の追跡、都や大坂を戦い無しに接収するのも急ぎだ。
「さて、掃討戦に一段落ついたら、ご助力願った大名たちの戦果報告を受けようかの」
「それが良いですな。連中も早く手柄を認めてほしくて、うずうずしているでしょう」
東軍に参加した大名たちには協力する思惑がある。当然、それぞれ徳川に訴え掛ける機会を今か今かと待っていった。
そこまで話が進んだところで。脇に控えていた使い番伝令兵がおそるおそる主人たちに尋ねた。
「あのぅ……」
「なんじゃ!……今、色々考え中じゃ」
「島津は追撃しないでよろしいので……」
「「………」」
「そうじゃ!」
「どいつもこいつも何をしている……早く追わぬか!」
二人も人のことは言えない。
「各隊に伝令を飛ばせ! 島津を逃がすな!」
平八郎の怒鳴り声に、本陣は再び大騒ぎになった。
徳川本陣からの緊急指令を受けた大名たちの反応は様々だった。
ただ。催促されて直ちに追撃に移ったのは、家康の四男・松平忠吉と岳父・井伊直政……だけだった。つまり身内だけである。家臣ではなく協力関係にある東軍の武将達は、ここで死んだら得られるものが何もない。元も子もなくすことは避けなければならなかった。
「この戦い自体の勝敗は決まった……」
「石田は潰した……」
「もう消化試合だ」
「今から大怪我したくない」
総じて言えば、「なにも余計なことはしなくても……」という感じ。
「なんであやつら、この局面で急にやる気がなくなったんじゃ」
家康の問いに、報告をまとめた平八郎が首を横に振った。
「いえ、やる気がなくなったわけではありません。小早川に北国勢を含めた部隊が近江方面への追撃は続けておりますし、佐和山城攻めは今日、今からでもと非常に戦意は高いです」
「ということは?」
「つまりですね」
平八郎が島津の陣があった辺りを指した。
「要するに、あの者どもに関わり合いたくないと……」
「それじゃ示しが付かないだろ!」
西軍がぼろ負けしてしまったのでは、この関ヶ原にいても仕方ない。落ち着いて戦場の片づけを始めた東軍に、完全に包囲されて全滅するだけだ。
ぐるっと見回してみる。眼前の福島隊、その向こうに松平隊と井伊隊、北側には黒田隊。戦いが進んでいるあいだに移動して来たのか、思いがけず近いところに徳川殿の本隊も揃っている。
都の方角を見ても、そちらも大軍が移動していてどこが誰やら……。
島津義弘が本陣に戻ったと聞いて、別部隊を指揮していた島津豊久や山田有信も集まってきた。
豊久が発言した。
「この通りですので、もう戦の勝敗はよろしいでしょう。あとは我ら自身がどうするかだけの問題です」
「……うむぅ」
山田ができる事を数え上げる。
「一つ、逃げる。その場合はどう逃走するかもあります。一つ、ここで東軍相手に全滅するまで戦う。一つ、無茶を承知で敵本陣に居る徳川殿の首を取りに行く」
「迷ってしまうのぅ……」
せっかく関ケ原まで来たけど、我が島津は出番が無かった……。
ならば全滅するまで戦って武士の一分を通すのも悪くはないが、勝敗が決まって掃討戦に移行した後にそれをやってものぅ……これではあの世で家久に会っても、合わす顔が無いのぅ。
「このままでは、島津の名が泣くのぅ……」
義弘が顔を上げると、豊久はじめ主だった皆が見ている。
「うむ、ここは儂が決めねばならぬのぅ……」
とるべき方針は……。「よし、三十六計……じゃのぅ」
「決まりましたか」豊久が尋ねると。
「のぅ……後の世で“さすが島津”と言われるには……、並ではいかんのぅ」
義弘は地図を見て、ビィュ~~ト、一本の道を指さした。
「戦略的撤退を行なう。ただし、家康の度肝を抜く逃げ方をするのじゃ……」
義弘の示した経路を見て、重臣たちはそれぞれに呻き声を漏らした。
「殿、これは……」と中馬重方が尋ね。
「……なるほど」と有信が呟き。
「ありかもしれませんね」と豊久が頷いた。
「いや……、面白い」と新納忠増が話すと。
「実はこれを取って持って来たのじゃ。徳川の連中に、我が島津の逃げ足を披露してやるのぅ」
義弘は軍配を掲げた。
「儂らは逃げるのじゃ……前へ!」
義弘の号令一下。
のちに「島津の退き口」と語り草になる……日ノ本史上もっとも苛烈にして、暴走の敵中突破が始まった。『関ケ原の戦い』は、東軍の勝利で幕を閉じた……かに見えた。
太陽が中天を過ぎるころには西軍はほぼ一掃され、徳川に味方した各大名は落ち武者狩りに移行している。主戦場の跡地には、なぜか戦闘中に全く動かなかった島津勢の他は組織的な抵抗は残っていなかった。そんな一種気が緩んだ状態の、まさにその時。その島津軍が、いきなり動き出した。
近江方面の道が空くまで待機していた福島隊の足軽は、不意に上がった雄叫びを耳にして雑談を止めた。
「なんじゃ?」
「まだ敵が残っとったか?」
残っていたにしても、大した数の敵ではないはず。すでにここまで勝敗がついた中では、破れかぶれの突撃など自殺行為でしかない。……と、思っていた瞬間が福島勢にもありました。
「いったいどこの敗残兵だ」
「死体のフリして隠れとけば命は助かったのになあ」
そんな事を言いながら額に手をかざして遠くを眺めた兵が、驚愕で凍り付いた。
「さっ…さ…」
「ん? おい、どうした?」
「どこの負け犬じゃ?」
様子がおかしいのに気が付いた仲間が声をかけると、固まっていた足軽が小刻みに震え始める。そして出せる限りの大声で叫んだ。
「さっ……薩摩が出たぞぉ!」
怒涛に迫りくる津波か地響きとともに巻きあがる雪崩の襲来であった。
そんな恐怖心いっぱいの警告に、周囲の者たちも一瞬で青ざめた。
「なんだと!?」
「薩摩じゃ! 薩摩が動き始めた!」
大慌てで叫びあう人の波は、一気に拡散していく。
「離れろぉ! また化け物が飛んで来るぞっ!」
「こっち来んなぁっ!」
小太郎の《言霊》の成果は、半日経った今も十分な影響を及ぼしていた。
仇敵石田三成相手の完勝。その事実に気を良くしていた福島正則は、不意に自分の陣の中で巻き起こった騒動に眉をひそめた。
「なんだ、なんだ……? 俺はもう、祝杯で頭が一杯なんだがな」
軽口を叩きつつも猛将は機敏に動き、高さを稼ぐために愛馬に飛び乗った。兵が騒ぐ原因を確かめねばならない。だが、それは彼の致命的な失策だった。
「押せい!」
「「「「「うおぉぉ~~!」」」」」
島津豊久の指揮する先鋒隊の突撃は、周囲をゆるく囲んでいた包囲網に一気に突破口を開いた。
それまで激戦のあいだ、全く動かなかった島津軍。それが急に走り出し、警戒していたつもりの福島兵たちも意表を突かれて逃げ惑う。
そして気迫で敵を追い散らした先鋒に続き、島津義弘の率いる本隊、さらに伊勢・新納隊、山田・長寿院隊と続く。島津軍の、戦場からの大脱走が始まった。
義弘が一人で馬に乗っていたところに、馬にまたがった福島と、兵たちの頭越しにちょうど目があった。
「あっ、あれは……」髭の武将が、馬の上で目を丸くしている。
義弘はその武将に見覚えがあった。「あれは福島じゃのぅ!」
せっかく関ケ原でばったり会ったのに、素通りするのも申し訳ない。
「ちょっと右に寄ってくのじゃ! 福島殿に挨拶していくかのぅ!」
義弘の指示は先頭に伝えられ……。
「今、敵の福島隊に『挨拶』していくのですね……?」
何かを誤解した豊久が号令を発し、島津軍は一斉に右に回頭した。
馬上に上がると、混乱のもとはすぐに分かった。
「島津が動いた! あ奴ら、今まで何もしなかったのになぜ……」
すでに他の西軍諸隊が敗れ去った以上、今さら島津が反撃したところで意味はない。
歴戦の福島と言えど、なぜこの期に及んで島津がやる気を出したのかがさっぱり分からない。
「……今頃逃げ場がないと悟って破れかぶれになったか? 死兵の相手は厄介だな」
絶望で自棄になって突っ込んで来る敵は、守るものがないだけに相手をすると手ひどく損害を受けることもある。今まで戦闘に参加していなかった分、島津兵はまだ指揮系統も死んでいない。
「奴らの進路を開けろ! 正面から戦うな、受け流せ!」
狂戦士と化した千余の兵と、まともにぶつかっては大怪我をする。いったん避けて見逃し、あちらが逃走に成功して『生への執着』が出たところで追撃した方が良い。実戦経験の豊富な福島はそう踏んだのだが……。
「構え!撃て撃て撃てぇ! 、進め進め進めぇ前進せよ、!」
まさか、せっかく逃げ道を開けてやったはずの島津軍がわざわざ突っ込んで来るとは……福島はいくさ上手がゆえに、予想外の行動をとる島津の対処を誤った。
「はぁっ……おい、なぜこっちに来る?」
福島隊は当然ながら、大将である福島左衛門尉の周りが一番守りが固い。ところがそれをものともせず、島津隊はわざわざそこをめがけて突っ込んでくる。
「くそっ、踏みとどまれ!敵の行軍を抑えこめ!持ちこたえろ!」
配下を叱咤激励するが、すでに一回戦勝に酔ってしまった兵たちは死ぬ覚悟ができていない。ただでさえ島津兵の精強ぶりは語り草なのに、それが真正面から突撃して来る恐ろしさたるや……。
腰砕けの福島兵を蹴散らし、島津軍は無人の荒野を行くかのごとくに突っ込んでくる。その中心で、義弘がニコニコしながら。
「左衛門尉! 儂は今から帰るからのぅ!」
「そんな事を、いちいち言いに来なくていぃ~い……」
「それは失礼じゃろぅ。挨拶は大事じゃからのぅ……後から怒られては叶わんからのぅ」
「Time(時間)・Place(場所)・Occasion(場合)をわきまえろっ!」
「まあ、そういうことでのぅ……」
義弘と福島の怒鳴り合いにいきなり横から口を挟んだ豊久が、妙に嬉し気な笑顔で槍を振り上げ……。「これにて失礼致します、っと!」 横殴りに振るった槍の柄で、福島を馬上から弾き飛ばした。
◇◇◇◇
ついに、天下に王手をかけた。
隠忍自重、好機を待つこと幾年月。恐ろしい太閤はすでに亡く、対抗できるような大勢力は軒並みいなくなった。そして今、彼を抑え込もうと謀った官僚の者どもも自滅して果てた。
ついに来た自分の時代に感無量の家康は、これまでの苦しい道のりにしばし思いを馳せていたが……なんだかおかしな騒ぎを耳にして我に返った。
「なんじゃ。 せっかく儂が感慨に浸っておったのに……」
気分を害してぶつくさ言う家康の元に、慌てた側近が駆け寄った。
「殿!」
「お、どうした平八郎。なぜ旗本どもが騒いでおる」
「それが……」
武勇並ぶ者なしとまで言われた家康の右腕が、戦闘中も見せなかった厳しい顔になっている。
「島津勢がいきなり突進をはじめ、ものすごい勢いで攻めかかって来ております」
「今頃!? どこへ?」
呆気に取られて質問した家康に、至極真面目な顔で平八郎は答えた。
「ここへ、です」
「ななっな~~にぃ……急いで槍衾を作れ!」
本多平八郎の怒声に、周囲の旗本たちが一斉に島津と主徳川のあいだに割って入って方陣を作る。さすがに忠勇無比を謳うたわれる徳川の旗本衆は練度が違う。あっという間に林立した槍の列が、陽光を反射して一斉に煌めいた。
「何が来ようと決して通すな!」
「「「「「おぉ!」」」」」
そう。たとえ鬼神であろうと島津であろうと。
十重二十重に家臣達が周りを囲み守りを固めていく中、家康は床几に腰を下ろして爪を噛んだ。
「島津は福島が監視していたはずではなかったのか!?」
「いきなり本陣を踏みつぶされ、福島隊はさっきから姿が見えません」
「油断するからじゃ、あの馬鹿が……!」
そんな事を今言っても仕方ない。徳川本陣は猛烈な勢いで突進してくる島津勢に槍を向け、衝突の瞬間を待ち受けた。
わずかな時間で針鼠のごとくに槍を突き立て、迎撃態勢を整えていく徳川軍。その動きを見て、島津兵児の先頭を走る島津豊久は舌打ちした。
「ちっ!あれは抜けぬか……」
このままぶつかって突破するには、さすがに彼我の兵力に差があり過ぎる。全兵力を擦潰すつもりで突撃しても、家康には届きそうにない。
それに、さすがにそこまでするつもりはない。義弘だけは無事に脱出させねばならないからだ。
今ここで全員討ち死にするわけには行かなかった。
豊久は二番隊に居る義弘を振り返った。
「どうします? 伯父上」
「これ以上は近くに寄れないのぅ、……なら仕方ないのぅ」
甥に聞かれて、義弘も唸った。
「薩摩の誇る武将家久の嫡男、島津又七郎を内府殿に見せたかったのじゃがのぅ……」
「来るぞー!」
見張りの叫ぶ声で、徳川の本陣に緊張が走る。
彼らが待ち構える中、押し寄せてくる島津兵が一気に突入を……して来なかった。
旗本衆の目の前をかすめるように、島津兵がわずかに進路をそらして横へとずれて行く。
「むむっ! 何故じゃ!?」
その不可解な動きに家康が思わず腰を浮かしたところで、本陣の前に一騎駆けの若武者が近づいてきた。
「「「「「えぇ~~っ!」」」」」
何が起きているのか理解できず、呆然とする彼らのまえで……馬上から身を乗り出し豊久が、家康に向かって大きく手を振った。
「徳川殿!俺が薩摩の色男、島津又七郎豊久じゃ!以後お見知り置きくだされ~~。失礼いたしました。」
それが済んだ島津軍はそのまま、何事も無かったかのように走り去った。
「な、なんだったんだ? 今のは……」
「助かった……のか?」
前をかすめただけで何もせずに去っていく島津兵。茫然自失の徳川軍は呆気に取られてその背中を見送った。
家康と本多平八郎も思いは同じだ。
「……今のは、いったい何じゃったんじゃ?」
「突っ込んでくるかと思ったのですが……」
どんどん小さくなる、島津の後ろ姿。どうやら戻ってくる様子はない。
奴らはこれで脅威ではなくなった。家康と平八郎はびっしり額いに浮かべていた冷や汗を拭う。
「何はともあれ、危機は脱したか……」
「やれ、一安心ですな」ホッと一息ついて、二人は強張った顔に笑みを浮かべた。
正直、勝利に気が緩んでいたのは家康たちも同じだ。虚を突かれて焦ったが、すんでのところで“勝ち”を落とさずに済んだ。
「はははっ、なんじゃ今のは。脅かしおって」
「あれはいったい何がしたかったのでしょうね……」
これで戦場関ケ原に敵はいなくなった。とはいえ勝利者にはまだまだやることは多い。勇戦した各武将をねぎらわなくてはならないし、敵勢力は畿内の実権をいまだ押さえている。逃げた西軍の追跡、都や大坂を戦い無しに接収するのも急ぎだ。
「さて、掃討戦に一段落ついたら、ご助力願った大名たちの戦果報告を受けようかの」
「それが良いですな。連中も早く手柄を認めてほしくて、うずうずしているでしょう」
東軍に参加した大名たちには協力する思惑がある。当然、それぞれ徳川に訴え掛ける機会を今か今かと待っていった。
そこまで話が進んだところで。脇に控えていた使い番伝令兵がおそるおそる主人たちに尋ねた。
「あのぅ……」
「なんじゃ!……今、色々考え中じゃ」
「島津は追撃しないでよろしいので……」
「「………」」
「そうじゃ!」
「どいつもこいつも何をしている……早く追わぬか!」
二人も人のことは言えない。
「各隊に伝令を飛ばせ! 島津を逃がすな!」
平八郎の怒鳴り声に、本陣は再び大騒ぎになった。
徳川本陣からの緊急指令を受けた大名たちの反応は様々だった。
ただ。催促されて直ちに追撃に移ったのは、家康の四男・松平忠吉と岳父・井伊直政……だけだった。つまり身内だけである。家臣ではなく協力関係にある東軍の武将達は、ここで死んだら得られるものが何もない。元も子もなくすことは避けなければならなかった。
「この戦い自体の勝敗は決まった……」
「石田は潰した……」
「もう消化試合だ」
「今から大怪我したくない」
総じて言えば、「なにも余計なことはしなくても……」という感じ。
「なんであやつら、この局面で急にやる気がなくなったんじゃ」
家康の問いに、報告をまとめた平八郎が首を横に振った。
「いえ、やる気がなくなったわけではありません。小早川に北国勢を含めた部隊が近江方面への追撃は続けておりますし、佐和山城攻めは今日、今からでもと非常に戦意は高いです」
「ということは?」
「つまりですね」
平八郎が島津の陣があった辺りを指した。
「要するに、あの者どもに関わり合いたくないと……」
「それじゃ示しが付かないだろ!」
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