30 / 240
ジンとロードの過去編
第三話 怒りの鉄槌
しおりを挟む
一方、ジンたちが転移する少し前のニュートラルド。
そこには大きく低い笑い声があたりに響いていた。
「グハハハッ!足りんは!もっと殴らせろッ!もっと潰させろッ!」
叫びながら斧を振り回して暴れ回るのはログファルドという獣人の男であった。ログファルドの鍛え上げられた筋肉は激しく隆起し、そこから振り下ろされた斧は辺りの地面を抉りとる。
「ログファルド、あまり辺りを荒らしすぎるな。全て壊しても意味がない」
「チッ、わかったよ。にしても一気に隠れやがったな」
ニュートラルドにいる意思は皆がフィリアのように人間の姿をしている。そしてすぐ近くの森の中でフィリアの仲間である『意思』、バイルド、キュートス、鳴々は隠れていた。
「フィリアは無事ですかね。僕たちを逃すために······」
「大丈夫だバイルド。今はフィリアを信じよう」
「でもフィリア、私を守って大怪我した」
鳴々という幼女は悲しそうに下を俯いていた。鳴々はまだ生まれたばかりの『意思』である。三人ともジンたちの住む世界でいずれも役目を終えた後、完全に記憶を失いニュートラルドに転生したのだ。
「ですがもう何人かは捕まり、無理矢理に『意思のある武器』にさせられているのを見ました。私たちはフィリアを信じて待つしかありません」
するとそこに木々が倒れていく音が聞こえた。
「まずい! 逃げるぞ······」
キュートスがそう言った瞬間、激しい衝撃とともにキュートスの体が遠くまで吹っ飛び、鈍い音を立てて地面に倒れ込んだ。
「「キュートスッ!!」」
バイルドと鳴々の目の前には金色の毛並みが少し混ざった黒い豹が威嚇するように二人を睨んでいた。
「見つけたぞ、肉片!」
その黒豹は人間の言葉を話したのだ。
「逃げろ! 俺は無事だ!」
キュートスは頑丈な体をしているため耐久力は高く、かろうじて意識は消えることはなかった。
その豹の名前はケルスタイト、豹の姿と人間の姿、どちらともになれる特殊な個体なのだ。すると突然、ケルスタイトは大きく周りに向かって吠える。
「離れますよ! 鳴々!」
バイルドと鳴々はその場を離れようとしたが、二人の目の前に強力な5つの魔力が現れた。
「ここにいたか。さっさと従えばよいものを」
ヘルメスは魔力を隠すことなく全開させ周りを威圧する。
「キュートス!?」
キュートスは二人を守るように目の前に立ちはだかった。
「逃げろ、時間は稼ぐ」
それを聞いてログファルドはからかうように軽く笑った。
「お前本気かぁ? お前ごとき10秒も立ってらんねえよ」
「ログファルド、殺してはいけませんわよ。目的を忘れてはいけません」
「そうであるぞ、お主はもっと頭を使わねばならん」
その人物はタスネという女とゼルファスという年老いた老人であった。
「チッ、わかってるわ。だが、痛めつけるのはいいだろ?」
そう言ってギラリと睨まれたキュートスは構えた。
キュートスはログファルドに重たい拳をいれられる。
「······グハッ!!」
「「キュートス!!」」
「おっと、逃がしませんわよ」
バイルドと鳴々の前にタスネが立ち塞がる。
そして一発、もう一発と抉り取られるような拳がキュートスの意識を徐々に薄れさせていく。頑丈な体はたやすく傷付けられ体のあちこちで骨が折れるのを感じる。
(俺は······どうなってもいい。ただこの二人は! 俺の大切な······友人だけは)
普段寡黙なキュートスという男は誰よりも優しい『意思』であった。
(意識が······消えてしまう。頼む、耐えてくれ、俺の体ッ)
「誰······も、傷付けさせないッ」
キュートスは今にも消えてしまいそうな意識をかろうじて保ち、耐える。
「ケッ、割と耐えられんじゃねえか」
そう言ってログファルドは拳を強く握った。
「キュートス! もうやめて!!」
鳴々の叫ぶ声を気にすることなく、完全に意識を刈り取るかのような一撃がキュートスの顔面目掛けて繰り出される。
「ーロスト、解除」
「······!?」
辺りにガンっという重たい音が広がった。
ログファルドの一撃はキュートスに当たることなく、逆にログファルドが顔を歪ませながら強烈な音とともに地面に叩き潰されたのだ。そして衝撃波は止まることなく、地面はさらに抉られ、周りに大きなヒビが広がってゆく。そして衝撃の中心でログファルドは白目をむいて完全に気絶していた。
「ログファルドが一発で!?」
「キュートス!!」
タスネが驚きを隠せないでいる中、フィリアはボロボロになったキュートスのもとに慌てて走っていった。
「キュートス、ごめんなさい」
「フィリア······か、よかった」
バイルドと鳴々も駆けつけてキュートスはなんとか意識を保ちフィリアが治癒魔法をかけていた。
その光景を見て赤い血を拳につけたクレースが完全にブチギレた顔でヘルメスたちを睨んだ。
「こいつらが······何をした?」
その声にケルスタイトは寒気を感じ、タスネとゼルファスは息を呑んでその声を聞いた。
「これは、想定外だな」
ヘルメスは少し驚くような素振りを見せながらも落ち着いた様子を見せていた。
ブチギレていたのはクレースだけでない。常人なら腰を抜かすような視線でジンたちもヘルメスたちに眼を飛ばす。
「場所を変えるか」
そう言ったヘルメスが指をパチンと鳴らすと足元が光りだした。
「ジン!!」
クレースの伸ばした手は届かずその瞬間その場にいたものは全員そこから姿を消してしまったのだ。
そこには大きく低い笑い声があたりに響いていた。
「グハハハッ!足りんは!もっと殴らせろッ!もっと潰させろッ!」
叫びながら斧を振り回して暴れ回るのはログファルドという獣人の男であった。ログファルドの鍛え上げられた筋肉は激しく隆起し、そこから振り下ろされた斧は辺りの地面を抉りとる。
「ログファルド、あまり辺りを荒らしすぎるな。全て壊しても意味がない」
「チッ、わかったよ。にしても一気に隠れやがったな」
ニュートラルドにいる意思は皆がフィリアのように人間の姿をしている。そしてすぐ近くの森の中でフィリアの仲間である『意思』、バイルド、キュートス、鳴々は隠れていた。
「フィリアは無事ですかね。僕たちを逃すために······」
「大丈夫だバイルド。今はフィリアを信じよう」
「でもフィリア、私を守って大怪我した」
鳴々という幼女は悲しそうに下を俯いていた。鳴々はまだ生まれたばかりの『意思』である。三人ともジンたちの住む世界でいずれも役目を終えた後、完全に記憶を失いニュートラルドに転生したのだ。
「ですがもう何人かは捕まり、無理矢理に『意思のある武器』にさせられているのを見ました。私たちはフィリアを信じて待つしかありません」
するとそこに木々が倒れていく音が聞こえた。
「まずい! 逃げるぞ······」
キュートスがそう言った瞬間、激しい衝撃とともにキュートスの体が遠くまで吹っ飛び、鈍い音を立てて地面に倒れ込んだ。
「「キュートスッ!!」」
バイルドと鳴々の目の前には金色の毛並みが少し混ざった黒い豹が威嚇するように二人を睨んでいた。
「見つけたぞ、肉片!」
その黒豹は人間の言葉を話したのだ。
「逃げろ! 俺は無事だ!」
キュートスは頑丈な体をしているため耐久力は高く、かろうじて意識は消えることはなかった。
その豹の名前はケルスタイト、豹の姿と人間の姿、どちらともになれる特殊な個体なのだ。すると突然、ケルスタイトは大きく周りに向かって吠える。
「離れますよ! 鳴々!」
バイルドと鳴々はその場を離れようとしたが、二人の目の前に強力な5つの魔力が現れた。
「ここにいたか。さっさと従えばよいものを」
ヘルメスは魔力を隠すことなく全開させ周りを威圧する。
「キュートス!?」
キュートスは二人を守るように目の前に立ちはだかった。
「逃げろ、時間は稼ぐ」
それを聞いてログファルドはからかうように軽く笑った。
「お前本気かぁ? お前ごとき10秒も立ってらんねえよ」
「ログファルド、殺してはいけませんわよ。目的を忘れてはいけません」
「そうであるぞ、お主はもっと頭を使わねばならん」
その人物はタスネという女とゼルファスという年老いた老人であった。
「チッ、わかってるわ。だが、痛めつけるのはいいだろ?」
そう言ってギラリと睨まれたキュートスは構えた。
キュートスはログファルドに重たい拳をいれられる。
「······グハッ!!」
「「キュートス!!」」
「おっと、逃がしませんわよ」
バイルドと鳴々の前にタスネが立ち塞がる。
そして一発、もう一発と抉り取られるような拳がキュートスの意識を徐々に薄れさせていく。頑丈な体はたやすく傷付けられ体のあちこちで骨が折れるのを感じる。
(俺は······どうなってもいい。ただこの二人は! 俺の大切な······友人だけは)
普段寡黙なキュートスという男は誰よりも優しい『意思』であった。
(意識が······消えてしまう。頼む、耐えてくれ、俺の体ッ)
「誰······も、傷付けさせないッ」
キュートスは今にも消えてしまいそうな意識をかろうじて保ち、耐える。
「ケッ、割と耐えられんじゃねえか」
そう言ってログファルドは拳を強く握った。
「キュートス! もうやめて!!」
鳴々の叫ぶ声を気にすることなく、完全に意識を刈り取るかのような一撃がキュートスの顔面目掛けて繰り出される。
「ーロスト、解除」
「······!?」
辺りにガンっという重たい音が広がった。
ログファルドの一撃はキュートスに当たることなく、逆にログファルドが顔を歪ませながら強烈な音とともに地面に叩き潰されたのだ。そして衝撃波は止まることなく、地面はさらに抉られ、周りに大きなヒビが広がってゆく。そして衝撃の中心でログファルドは白目をむいて完全に気絶していた。
「ログファルドが一発で!?」
「キュートス!!」
タスネが驚きを隠せないでいる中、フィリアはボロボロになったキュートスのもとに慌てて走っていった。
「キュートス、ごめんなさい」
「フィリア······か、よかった」
バイルドと鳴々も駆けつけてキュートスはなんとか意識を保ちフィリアが治癒魔法をかけていた。
その光景を見て赤い血を拳につけたクレースが完全にブチギレた顔でヘルメスたちを睨んだ。
「こいつらが······何をした?」
その声にケルスタイトは寒気を感じ、タスネとゼルファスは息を呑んでその声を聞いた。
「これは、想定外だな」
ヘルメスは少し驚くような素振りを見せながらも落ち着いた様子を見せていた。
ブチギレていたのはクレースだけでない。常人なら腰を抜かすような視線でジンたちもヘルメスたちに眼を飛ばす。
「場所を変えるか」
そう言ったヘルメスが指をパチンと鳴らすと足元が光りだした。
「ジン!!」
クレースの伸ばした手は届かずその瞬間その場にいたものは全員そこから姿を消してしまったのだ。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる