ボーンネル 〜辺境からの英雄譚〜

ふーみ

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ジンとロードの過去編

第三話 怒りの鉄槌

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一方、ジンたちが転移する少し前のニュートラルド。

そこには大きく低い笑い声があたりに響いていた。

「グハハハッ!足りんは!もっと殴らせろッ!もっと潰させろッ!」

叫びながら斧を振り回して暴れ回るのはログファルドという獣人の男であった。ログファルドの鍛え上げられた筋肉は激しく隆起し、そこから振り下ろされた斧は辺りの地面を抉りとる。

「ログファルド、あまり辺りを荒らしすぎるな。全て壊しても意味がない」

「チッ、わかったよ。にしても一気に隠れやがったな」

ニュートラルドにいる意思は皆がフィリアのように人間の姿をしている。そしてすぐ近くの森の中でフィリアの仲間である『意思』、バイルド、キュートス、鳴々メイメイは隠れていた。

「フィリアは無事ですかね。僕たちを逃すために······」

「大丈夫だバイルド。今はフィリアを信じよう」

「でもフィリア、私を守って大怪我した」

鳴々という幼女は悲しそうに下を俯いていた。鳴々はまだ生まれたばかりの『意思』である。三人ともジンたちの住む世界でいずれも役目を終えた後、完全に記憶を失いニュートラルドに転生したのだ。

「ですがもう何人かは捕まり、無理矢理に『意思のある武器』にさせられているのを見ました。私たちはフィリアを信じて待つしかありません」

するとそこに木々が倒れていく音が聞こえた。

「まずい! 逃げるぞ······」

キュートスがそう言った瞬間、激しい衝撃とともにキュートスの体が遠くまで吹っ飛び、鈍い音を立てて地面に倒れ込んだ。

「「キュートスッ!!」」

バイルドと鳴々の目の前には金色の毛並みが少し混ざった黒い豹が威嚇するように二人を睨んでいた。

「見つけたぞ、肉片!」

その黒豹は人間の言葉を話したのだ。

「逃げろ! 俺は無事だ!」

キュートスは頑丈な体をしているため耐久力は高く、かろうじて意識は消えることはなかった。

その豹の名前はケルスタイト、豹の姿と人間の姿、どちらともになれる特殊な個体なのだ。すると突然、ケルスタイトは大きく周りに向かって吠える。

「離れますよ! 鳴々!」

バイルドと鳴々はその場を離れようとしたが、二人の目の前に強力な5つの魔力が現れた。

「ここにいたか。さっさと従えばよいものを」

ヘルメスは魔力を隠すことなく全開させ周りを威圧する。

「キュートス!?」

キュートスは二人を守るように目の前に立ちはだかった。

「逃げろ、時間は稼ぐ」

それを聞いてログファルドはからかうように軽く笑った。

「お前本気かぁ? お前ごとき10秒も立ってらんねえよ」

「ログファルド、殺してはいけませんわよ。目的を忘れてはいけません」

「そうであるぞ、お主はもっと頭を使わねばならん」

その人物はタスネという女とゼルファスという年老いた老人であった。

「チッ、わかってるわ。だが、痛めつけるのはいいだろ?」

そう言ってギラリと睨まれたキュートスは構えた。

キュートスはログファルドに重たい拳をいれられる。

「······グハッ!!」

「「キュートス!!」」

「おっと、逃がしませんわよ」

バイルドと鳴々の前にタスネが立ち塞がる。

そして一発、もう一発と抉り取られるような拳がキュートスの意識を徐々に薄れさせていく。頑丈な体はたやすく傷付けられ体のあちこちで骨が折れるのを感じる。

(俺は······どうなってもいい。ただこの二人は! 俺の大切な······友人だけは)

普段寡黙なキュートスという男は誰よりも優しい『意思』であった。

(意識が······消えてしまう。頼む、耐えてくれ、俺の体ッ)

「誰······も、傷付けさせないッ」

キュートスは今にも消えてしまいそうな意識をかろうじて保ち、耐える。

「ケッ、割と耐えられんじゃねえか」

そう言ってログファルドは拳を強く握った。

「キュートス! もうやめて!!」

鳴々の叫ぶ声を気にすることなく、完全に意識を刈り取るかのような一撃がキュートスの顔面目掛けて繰り出される。


「ーロスト、解除」

「······!?」

辺りにガンっという重たい音が広がった。

ログファルドの一撃はキュートスに当たることなく、逆にログファルドが顔を歪ませながら強烈な音とともに地面に叩き潰されたのだ。そして衝撃波は止まることなく、地面はさらに抉られ、周りに大きなヒビが広がってゆく。そして衝撃の中心でログファルドは白目をむいて完全に気絶していた。

「ログファルドが一発で!?」

「キュートス!!」

タスネが驚きを隠せないでいる中、フィリアはボロボロになったキュートスのもとに慌てて走っていった。

「キュートス、ごめんなさい」

「フィリア······か、よかった」

バイルドと鳴々も駆けつけてキュートスはなんとか意識を保ちフィリアが治癒魔法をかけていた。

その光景を見て赤い血を拳につけたクレースが完全にブチギレた顔でヘルメスたちを睨んだ。

「こいつらが······何をした?」

その声にケルスタイトは寒気を感じ、タスネとゼルファスは息を呑んでその声を聞いた。

「これは、想定外だな」

ヘルメスは少し驚くような素振りを見せながらも落ち着いた様子を見せていた。
ブチギレていたのはクレースだけでない。常人なら腰を抜かすような視線でジンたちもヘルメスたちに眼を飛ばす。

「場所を変えるか」

そう言ったヘルメスが指をパチンと鳴らすと足元が光りだした。

「ジン!!」

クレースの伸ばした手は届かずその瞬間その場にいたものは全員そこから姿を消してしまったのだ。
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