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ボーンネルの開国譚2
二章 第五話 自由の行方
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そういえば、ゼグトスはバーガルで何をしてたんだろう。まだ会ってからそんなに経ってないけど、それにしても何を考えているのかがはっきりとは分からないなあ。私のことを大切にしてくれてるっていうのは感じるけど、どうして私の所に来てくれたんだろ。
そんなことを考えているとゼグトスと目が合った。それに応えるかのようにゼグトスは嬉しそうな顔をしてニッコリとこちらを見て笑う。
「ジン様、どうされましたか?」
「······いいや、なんでもないよ」
でも、ただ一つ言えることがあるのならゼグトスは信頼できるし、ゼグトスは私を信頼してくれる。まあいいや、それだけで十分か。
「そういや思ったんだが、ギルゼンノーズってバーガルみたく誰でも入れてくれんのか?」
「ゲルオードに言えばなんとかなるだろ」
「そ、そういやそうだったな。鬼帝と知り合いだったか」
バーガル王国を出てしばらく歩くと徐々に足元の地面から緑は消えていき乾いた土が目立つ地形となった。ギルゼンノーズ特有の痩せた土だ。
「おそらく、ここはもうギルゼンノーズの中だな」
「ギーグまではもうすぐダヨ。魔物も少しずつ強くなってキタネ」
ボルは襲ってきたAランクのガーグナイトの首筋を掴み地面に叩き潰しながらそう言った。
そうして魔物に襲われつつも少し進んでいくと何やら大きな建造物のようなものが見えてきた。近づいてよく見てみるとその周りはすでに荒れて使われていないような門が立っていた。
「あ、これ我の封印されてた門だ。懐かしいものだな」
「へえこれが閻魁門か」
「はくりょくない」
「まあそう言うなパールよ。この門は我がいたからこそ威厳があったのだ。我がいなくなった後ではまあこうなっても仕方ないのう」
そう、閻魁が解放された後、力を完全に失った閻魁門からは以前まで纏ったような禍々しい雰囲気も感じられず、魔物は門のすぐ近くにまできていたのだ。
「あっ! 我思い出したぞ。鬼幻郷はこの門から入れるのだ」
すると突然、閻魁が思い出したようにそんなことを言い出したのだ。
「ほう、なら話ははやいな。それでどう行くんだ?」
「うーん······あっ!、違うか······うーんなんだったかのう······分からん」
「だろうな、じゃあとりあえずはギーグに行くか」
その後もしばらく歩いているとようやく話をしている鬼の姿が見えてきた。そして親子のように見えたその鬼は閻魁をみると驚いて腰を抜かし、子どもの鬼は母親に抱きついて怯えていたのだ。
「ん? なぜ怖がるのだ。今の者が我の姿を知っているはずがないのだがな」
「見た目だろ」
「あはは、まあ確かに小さい子は怖がるね」
「あっアレ」
そう言ってボルが指さした方向には何やら奥が透けて見えるような赤い結界が見えた。
「あれはおそらくゲルオードの奴の結界だな。簡単には入れんぞ」
「ということはあそこがギーグってことだね」
もう少し近づいていくと、その赤い結界は全体に妖力を纏っておりただならぬ防御力を誇っていることが分かった。
「これは······」
入り口付近でその結界から透けて見えるギーグはまるで別世界のようであり竹林が広がって、静謐かつ幻想的な風景が広がっていた。
「問題はこっからどうやってゲルオードを呼ぶかだな」
「我が妖力を解放してやろうか?」
「やめろ、余計にややこしくなる······とは言ったもののどうしたものか」
「首都ギーグに何か用か?」
するとそこに、硬そうな鱗の鎧を着た屈強な鬼族の男が話しかけてきた。
「ああ、鬼幻郷への行き方の聞き込みがしたくてな。どうすれば入れる?」
男はしばらく考えるように押し黙り口を開いた。
「まあそうだな······では俺のことを倒してみせろ。そうすれば入れてやるぞ。まあ鬼族の俺が相手であるから多少の力を示せれば認めてや······」
そうカッコよくセリフを言い終える前に男の意識は突然プツリと途切れる。
「大丈夫?」
いつの間にか倒れていた男は心地のいい声で目を覚ました。
「ここは、どこだ? 俺は······俺か」
「いつまで寝転んでいる。約束通り入れてもらうぞ」
「く、まあ仕方ない。一度言ってしまったのだからな。それにお前の力は十分見せてもらった。お前たちも通れ」
そう言ってその男が首にかけていた赤い宝石のようなものを結界に翳すと入り口部分の結界にだけ大きな穴が空く。
「割とあっさり入れてくれんじゃねえか、さてはいい奴だなお前」
トキワの言葉に男は首を横に振る。
「鬼族にとって他者を認めさせたければ力を示すことのみだ。そして今回コイツはそれを示した。そこに何の問題もない」
すると突然、話を聞いていた閻魁は男の前までやってきた。
「お前、名は?」
「アバンだが」
「アバンよ、その心意気、大いに結構。だが······お前は本当にそれでよいのか?」
「何?」
アバンは上から見下ろされた状態で閻魁をジッと睨む。
「お前はこのままその考えに縛られているようではこの先何も為し得んぞ。そこに待っておるのは一つのつまらぬ信念を守ってきたという満足感ではなく、もっとこうしておけばよかったという後悔だけだ」
「ッ······」
「自分の意志も願いも無しに迎える現実などつまらんだろ。ならば抗え。抗って抗って、たとえその結果全てを失ったとしても我はそちらを選んだぞ」
そう、それは自分の思うように生き、ゲルオードに歴然とした力の差を見せつけられながらも挑むことを諦めなかった閻魁だからこそ言えた言葉であった。
「お前······」
「それに我は今······いや、何でもない。まあそういうことだ、ではなアバンよ」
そう言って閻魁たちはその場を後にして首都ギーグに入るのであった。
そんなことを考えているとゼグトスと目が合った。それに応えるかのようにゼグトスは嬉しそうな顔をしてニッコリとこちらを見て笑う。
「ジン様、どうされましたか?」
「······いいや、なんでもないよ」
でも、ただ一つ言えることがあるのならゼグトスは信頼できるし、ゼグトスは私を信頼してくれる。まあいいや、それだけで十分か。
「そういや思ったんだが、ギルゼンノーズってバーガルみたく誰でも入れてくれんのか?」
「ゲルオードに言えばなんとかなるだろ」
「そ、そういやそうだったな。鬼帝と知り合いだったか」
バーガル王国を出てしばらく歩くと徐々に足元の地面から緑は消えていき乾いた土が目立つ地形となった。ギルゼンノーズ特有の痩せた土だ。
「おそらく、ここはもうギルゼンノーズの中だな」
「ギーグまではもうすぐダヨ。魔物も少しずつ強くなってキタネ」
ボルは襲ってきたAランクのガーグナイトの首筋を掴み地面に叩き潰しながらそう言った。
そうして魔物に襲われつつも少し進んでいくと何やら大きな建造物のようなものが見えてきた。近づいてよく見てみるとその周りはすでに荒れて使われていないような門が立っていた。
「あ、これ我の封印されてた門だ。懐かしいものだな」
「へえこれが閻魁門か」
「はくりょくない」
「まあそう言うなパールよ。この門は我がいたからこそ威厳があったのだ。我がいなくなった後ではまあこうなっても仕方ないのう」
そう、閻魁が解放された後、力を完全に失った閻魁門からは以前まで纏ったような禍々しい雰囲気も感じられず、魔物は門のすぐ近くにまできていたのだ。
「あっ! 我思い出したぞ。鬼幻郷はこの門から入れるのだ」
すると突然、閻魁が思い出したようにそんなことを言い出したのだ。
「ほう、なら話ははやいな。それでどう行くんだ?」
「うーん······あっ!、違うか······うーんなんだったかのう······分からん」
「だろうな、じゃあとりあえずはギーグに行くか」
その後もしばらく歩いているとようやく話をしている鬼の姿が見えてきた。そして親子のように見えたその鬼は閻魁をみると驚いて腰を抜かし、子どもの鬼は母親に抱きついて怯えていたのだ。
「ん? なぜ怖がるのだ。今の者が我の姿を知っているはずがないのだがな」
「見た目だろ」
「あはは、まあ確かに小さい子は怖がるね」
「あっアレ」
そう言ってボルが指さした方向には何やら奥が透けて見えるような赤い結界が見えた。
「あれはおそらくゲルオードの奴の結界だな。簡単には入れんぞ」
「ということはあそこがギーグってことだね」
もう少し近づいていくと、その赤い結界は全体に妖力を纏っておりただならぬ防御力を誇っていることが分かった。
「これは······」
入り口付近でその結界から透けて見えるギーグはまるで別世界のようであり竹林が広がって、静謐かつ幻想的な風景が広がっていた。
「問題はこっからどうやってゲルオードを呼ぶかだな」
「我が妖力を解放してやろうか?」
「やめろ、余計にややこしくなる······とは言ったもののどうしたものか」
「首都ギーグに何か用か?」
するとそこに、硬そうな鱗の鎧を着た屈強な鬼族の男が話しかけてきた。
「ああ、鬼幻郷への行き方の聞き込みがしたくてな。どうすれば入れる?」
男はしばらく考えるように押し黙り口を開いた。
「まあそうだな······では俺のことを倒してみせろ。そうすれば入れてやるぞ。まあ鬼族の俺が相手であるから多少の力を示せれば認めてや······」
そうカッコよくセリフを言い終える前に男の意識は突然プツリと途切れる。
「大丈夫?」
いつの間にか倒れていた男は心地のいい声で目を覚ました。
「ここは、どこだ? 俺は······俺か」
「いつまで寝転んでいる。約束通り入れてもらうぞ」
「く、まあ仕方ない。一度言ってしまったのだからな。それにお前の力は十分見せてもらった。お前たちも通れ」
そう言ってその男が首にかけていた赤い宝石のようなものを結界に翳すと入り口部分の結界にだけ大きな穴が空く。
「割とあっさり入れてくれんじゃねえか、さてはいい奴だなお前」
トキワの言葉に男は首を横に振る。
「鬼族にとって他者を認めさせたければ力を示すことのみだ。そして今回コイツはそれを示した。そこに何の問題もない」
すると突然、話を聞いていた閻魁は男の前までやってきた。
「お前、名は?」
「アバンだが」
「アバンよ、その心意気、大いに結構。だが······お前は本当にそれでよいのか?」
「何?」
アバンは上から見下ろされた状態で閻魁をジッと睨む。
「お前はこのままその考えに縛られているようではこの先何も為し得んぞ。そこに待っておるのは一つのつまらぬ信念を守ってきたという満足感ではなく、もっとこうしておけばよかったという後悔だけだ」
「ッ······」
「自分の意志も願いも無しに迎える現実などつまらんだろ。ならば抗え。抗って抗って、たとえその結果全てを失ったとしても我はそちらを選んだぞ」
そう、それは自分の思うように生き、ゲルオードに歴然とした力の差を見せつけられながらも挑むことを諦めなかった閻魁だからこそ言えた言葉であった。
「お前······」
「それに我は今······いや、何でもない。まあそういうことだ、ではなアバンよ」
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