79 / 240
ボーンネルの開国譚2
二章 第四十一話 さらなる仲間たち
しおりを挟む
「······お兄ちゃん、私だよ。お兄ちゃんの妹になれて私は、幸せだった」
優しい声でエルムはそっとシキの頭を膝にのせた。そしてシキの幸せそうな笑顔を見てエルムの堪えていた涙は堰を切ったように溢れ出し、シキの頬を濡らした。
「天国で、ゆっくり休んでね。お兄ちゃん」
そして兄を失ったその少女はもう涙を流すことはなかった。
ただその目には覚悟を決めたひとりの少女の意志が浮かんでいたのだ。
—翌日
「ジン様たちには言葉だけでは到底感謝を伝えきれません。今の私たちに出来ることならば、なんでも言ってくださいませ。いいえ、どんなことであってもやらせていただきます」
「いいえ、私たちは特に何もしてないです。ここが救われたのは全部、シキさんのおかげです。お礼なんて貰えません」
「でもよ、シキだけじゃなく、あんたらがここを救ってくれたのは確かだ。もし何か困ったことがあれば、ここにいる全員が力を貸す。本当に感謝する」
イッカクの言葉に他の鬼族のものたちは深々と頭を下げた。
「もし何かあればまた頼れ、ゲルオードにも伝えておく」
そしてエルムは少しもじもじしたようにしてジンの方を見ていた。
「どうしたの? エルム」
「あの、その······」
エルムは何か言いたげそうな顔で下を向いて、何かを決心したかのようにギュッと拳を握った。
「私もッ、一緒に行っていいですかッ!!」
真っ直ぐ輝いた目でエルムはジンにそう言った。
「もちろん、いいよ」
それを聞いてエルムの顔はパアっと輝いた。
「エルム、よかったじゃねえか。ここにもまた来いよ、ガランじいさんは昨日の夜こっそり悲しんでたんだぜ」
「そっ、そうじゃがエルムの決めたことなら仕方ない。ジン様たちに迷惑をかけないようにするのじゃぞ、エルム」
「うん!」
「では、そろそろ私たちは帰る。エルムのことは心配するな」
「何卒、よろしくお願いいたします」
そして大勢の鬼族が見守る中、ジンたちはボーンネルへと帰っていった。
「にしても、だいぶと仲間が増えたな」
「ごめん、わざとじゃナカッタ」
傭兵たちはワイワイとしながらボルの後ろを歩いていた。
「いいや、まったく構わねえぜ。結構賑やかなやつらだな。····ん? アイツらは······」
するとその時、一行の前に空から見覚えのあるものたちが現れた。
「おーいっ! お兄ちゃーん!!」
「おうっ! ミルじゃねえか!!」
その場にはヒュード族のものたちが皆で揃って現れた。
ガルミューラは地面に降り立つとトキワの目の前に立ち少しムスッとした顔でトキワをじっと見つめた。
「その、お前達はこれからどうするんだ?」
「どうするって、これから国に帰るんだよ」
「その········だな。ミルがどうしてもお前とボルについていきたいと言うものだからな······それでッ」
「じゃあお前らも来いよ」
「ッ——!」
「ジン、いいだろ?」
「うん。建物はみんなで建設すれば大丈夫。ヒュード族の人たちも一緒に来てもらお」
「ガハハ、我が全員面倒を見てやろう!」
「お前は見てもらうほうだろ」
「ジン様、魔力波でインフォルさんに平地の確保をお願いしておきました。すぐに皆さんの暮らす場所は用意できるかと」
「さっすが、ゼグトス。それとー、レイ。さっきから気になってたんだけど、その人は?」
レイから少し距離の離れた場所である人物は背中をびくりとさせゆっくりとジンの方を向いた。
「ああ、ギルバルドだ。人見知りなんだが、どうしてか一緒に行きたいと言ったのでな」
「ジン様、どうやら機械兵というものを私に壊されたのが悔しかったようで、昨夜熱心に改善点を聞いてきました。おそらく後々には役に立つと思われます」
「そうなんだ、よろしくね! ギルバルドさん」
「あ、ああよろしく頼む」
「そういえばジン、ヘリアルはどうしたんだ?」
「ああ、ヘリアルなら弟の場所を教えてすぐにそっちに向かったよ」
「もしかしてヘルメスのことか?」
「うん、そうだよ。嬉しそうだった」
するとジンの目の前に誰かが近づいてきた。
「やあ、君がジンかい?」
「べ、ベイン!? お前どうしてこんなところに」
「別にお前に会いにきたわけじゃないよ。僕はベイン、鬼帝ゲルオードの友達さ。ここを救ってくれたみたいだね、感謝するよ」
「そうなんだ、ごめんなさい。閻魁が迷惑をかけたよね」
「なっ、違うぞジン。今回は我がこいつのことを助けたのだ、断じて迷惑などかけておらん」
「はいはい、お礼っていったらなんだけど全員を外の世界に転送するよ」
「ありがとう! 助かるよ!」
「また何かあったら頼ってね、ゲルによろしく」
(ん? ゲル?)
「じゃあね」
そしてベインの魔法により全員が元の世界に帰っていったのだった。
優しい声でエルムはそっとシキの頭を膝にのせた。そしてシキの幸せそうな笑顔を見てエルムの堪えていた涙は堰を切ったように溢れ出し、シキの頬を濡らした。
「天国で、ゆっくり休んでね。お兄ちゃん」
そして兄を失ったその少女はもう涙を流すことはなかった。
ただその目には覚悟を決めたひとりの少女の意志が浮かんでいたのだ。
—翌日
「ジン様たちには言葉だけでは到底感謝を伝えきれません。今の私たちに出来ることならば、なんでも言ってくださいませ。いいえ、どんなことであってもやらせていただきます」
「いいえ、私たちは特に何もしてないです。ここが救われたのは全部、シキさんのおかげです。お礼なんて貰えません」
「でもよ、シキだけじゃなく、あんたらがここを救ってくれたのは確かだ。もし何か困ったことがあれば、ここにいる全員が力を貸す。本当に感謝する」
イッカクの言葉に他の鬼族のものたちは深々と頭を下げた。
「もし何かあればまた頼れ、ゲルオードにも伝えておく」
そしてエルムは少しもじもじしたようにしてジンの方を見ていた。
「どうしたの? エルム」
「あの、その······」
エルムは何か言いたげそうな顔で下を向いて、何かを決心したかのようにギュッと拳を握った。
「私もッ、一緒に行っていいですかッ!!」
真っ直ぐ輝いた目でエルムはジンにそう言った。
「もちろん、いいよ」
それを聞いてエルムの顔はパアっと輝いた。
「エルム、よかったじゃねえか。ここにもまた来いよ、ガランじいさんは昨日の夜こっそり悲しんでたんだぜ」
「そっ、そうじゃがエルムの決めたことなら仕方ない。ジン様たちに迷惑をかけないようにするのじゃぞ、エルム」
「うん!」
「では、そろそろ私たちは帰る。エルムのことは心配するな」
「何卒、よろしくお願いいたします」
そして大勢の鬼族が見守る中、ジンたちはボーンネルへと帰っていった。
「にしても、だいぶと仲間が増えたな」
「ごめん、わざとじゃナカッタ」
傭兵たちはワイワイとしながらボルの後ろを歩いていた。
「いいや、まったく構わねえぜ。結構賑やかなやつらだな。····ん? アイツらは······」
するとその時、一行の前に空から見覚えのあるものたちが現れた。
「おーいっ! お兄ちゃーん!!」
「おうっ! ミルじゃねえか!!」
その場にはヒュード族のものたちが皆で揃って現れた。
ガルミューラは地面に降り立つとトキワの目の前に立ち少しムスッとした顔でトキワをじっと見つめた。
「その、お前達はこれからどうするんだ?」
「どうするって、これから国に帰るんだよ」
「その········だな。ミルがどうしてもお前とボルについていきたいと言うものだからな······それでッ」
「じゃあお前らも来いよ」
「ッ——!」
「ジン、いいだろ?」
「うん。建物はみんなで建設すれば大丈夫。ヒュード族の人たちも一緒に来てもらお」
「ガハハ、我が全員面倒を見てやろう!」
「お前は見てもらうほうだろ」
「ジン様、魔力波でインフォルさんに平地の確保をお願いしておきました。すぐに皆さんの暮らす場所は用意できるかと」
「さっすが、ゼグトス。それとー、レイ。さっきから気になってたんだけど、その人は?」
レイから少し距離の離れた場所である人物は背中をびくりとさせゆっくりとジンの方を向いた。
「ああ、ギルバルドだ。人見知りなんだが、どうしてか一緒に行きたいと言ったのでな」
「ジン様、どうやら機械兵というものを私に壊されたのが悔しかったようで、昨夜熱心に改善点を聞いてきました。おそらく後々には役に立つと思われます」
「そうなんだ、よろしくね! ギルバルドさん」
「あ、ああよろしく頼む」
「そういえばジン、ヘリアルはどうしたんだ?」
「ああ、ヘリアルなら弟の場所を教えてすぐにそっちに向かったよ」
「もしかしてヘルメスのことか?」
「うん、そうだよ。嬉しそうだった」
するとジンの目の前に誰かが近づいてきた。
「やあ、君がジンかい?」
「べ、ベイン!? お前どうしてこんなところに」
「別にお前に会いにきたわけじゃないよ。僕はベイン、鬼帝ゲルオードの友達さ。ここを救ってくれたみたいだね、感謝するよ」
「そうなんだ、ごめんなさい。閻魁が迷惑をかけたよね」
「なっ、違うぞジン。今回は我がこいつのことを助けたのだ、断じて迷惑などかけておらん」
「はいはい、お礼っていったらなんだけど全員を外の世界に転送するよ」
「ありがとう! 助かるよ!」
「また何かあったら頼ってね、ゲルによろしく」
(ん? ゲル?)
「じゃあね」
そしてベインの魔法により全員が元の世界に帰っていったのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。
だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった
何故なら、彼は『転生者』だから…
今度は違う切り口からのアプローチ。
追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。
こうご期待。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる