85 / 240
ボーンネルの開国譚3
三章 第六話 王の資質
しおりを挟む同じ骸族であるクシャルドとコッツはあっという間に意気投合し、新たにできたバーで二人仲良く酒を酌み交わしていた。
「いやあ、一緒にお酒を飲んでくださるとは嬉しいものです」
「いえいえコッツ殿、私も光栄でございます。私よりも長き時を生きられている骸族の方とは初めてお会いしました。それにしてもここは良いところですな、全て皆様の努力の賜物と言ったところでしょうか。」
クシャルドは骸族の中でも長命な存在である。そしてそんなクシャルドは多くの骸族のものから一目を置かれる存在でもあった。しかしながらコッツはクシャルドなど比にならないほどの時を生きているのだ。
「ところで今日はどこへいってらっしゃったのですか?」
「ええ、今日は少しここの骸族がいるものたちのところへ行っておりました。ジン様へのほんの一部の恩返しですが、友好的な関係を築けるように説得していまして······」
「も、申し訳ありません! それは私も行くべきでした」
「いえいえっ! 何をおっしゃいますか。ジン様への恩返しなのです。コッツ殿に頼むわけにはいきません」
「そ、そうですか。ですが何でも相談して下さい、一人で抱え込むのはよくありませんから······それで、どうでしたか」
「······ええ、ここのものたちは古くからの知っておりますので素直に聞いてくれると思ったのですが、ご存知の通り骸族というものはかなり警戒心が大きい種族ですゆえ、少し時間を置かせるつもりです。私も流石に急な話であると思いましたので。ですが明日も明後日もジン様たちの素晴らしさを伝えて参りたいと思っております、そして必ず、ジン様をボーンネルの王へとなるお手伝いをしてみせます。······ですが少なくとも、ジン様はもう私たちの王ですね」
その言葉にコッツは感慨深そうに大きく頷いた。
「······そのように言って頂いて、私も嬉しいです。クシャルドさん、私はですね、ジンさんが生まれてきたその瞬間にこの見えない心臓に誓ったのです。この御方に私の持ちうる全てを捧げようと」
そして少し酔った感じのコッツはなぜか悔しそうな顔をした。
「コッツ殿······?」
「私は幸せ者です。ジンさんやゼフさん、クレースさんやインフォルさん、トキワさんにボルさん、たくさんの優しい方々に囲まれて本当に幸せです······ほんっとうに」
コッツ自分の感情を抑えるように持っていたグラスをギュッと握り締めた。
「私は、長い時を生きてきたつもりです。そして実に多くのことを経験してきました。ただどれだけ時が過ぎようとも、私の人生で一番の後悔というものは変わりません············私は、ジン様の両親を守ることが出来なかった」
「——ッ」
「その後悔があって、私は死んでも死にきれません。もし時を戻せるなら、このちっぽけな私の存在全てを賭ける覚悟など、とうにできています。あの時ほど、自分の無力さを呪った時はありません」
コッツは珍しく怒りの表情を顔に表した。だがその顔は何かを思い出すと、いつもの優しい顔に戻っていった。
「でもね、クシャルドさん。ジンさんは私たちに一切の暗い顔を見せませんでした。それどころか、私たちが暗くならないように私たちに笑顔をくださった。そして同時に生きる希望を与えてくださったのです。きっとジンさんの強さというのは力だけではないのでしょう。勇気、優しさ、思いやり、全てがあの方には備わっている。だから、種族関係なく自然とあの方に皆さんが近づいていく。仲間を信頼し、そして仲間に信頼される。王のあるべき姿というものがジンさんにはあるのです······おっと、少々長話をしてしまいましたね、申し訳ありません」
クシャルドはコッツの話を一言一言噛み締めるように聞いた。
(足りなかった。今までの自分が恥ずかしいほどに)
クシャルドは次の日もそしてその次の日も骸族の元へと行った。そして何度も、止められても頭を下げ続けたのだ。ただ一人の存在のために。長きに渡り築いてきた誇りなどもうどうでもよかったのだ。
(この数日間、あの方の姿を見てきただけで分かった。あの方は自然と皆を笑顔にさせ、皆に勇気を与えてくださる。見れば見るほど素晴らしさが溢れ出してくる。ならば私にできることは、あの方を信じ続けるのみ)
クシャルドの努力の甲斐あって、ボーンネルに住む骸族のものたちは納得してくれた。そしてその偉大な功績を誰にも自慢することなく、敬愛すべきジンのことを少しでも助けられたことにクシャルドは小さな笑みを浮かべたのだった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発
ハーフのクロエ
ファンタジー
アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。
ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主
雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。
荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。
十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、
ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。
ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、
領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。
魔物被害、経済不安、流通の断絶──
没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。
新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。
「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」
まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。
目が覚めたら、婚約破棄されていた。
理由は「地味で面白みがない」から。
泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。
最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。
でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。
厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。
そして就任スピーチで宣言した。
「500人全員の名前を、覚えます」
冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。
悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。
元婚約者は——後悔し始めていた。
婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。
なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。
異世界召喚は7回目…って、いい加減にしろよ‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
『おぉ、勇者達よ! 良くぞ来てくれた‼︎』
見知らぬ城の中、床には魔法陣、王族の服装は中世の時代を感じさせる衣装…
俺こと不知火 朔夜(しらぬい さくや)は、クラスメートの4人と一緒に異世界に召喚された。
突然の事で戸惑うクラスメート達…
だが俺はうんざりした顔で深い溜息を吐いた。
「またか…」
王族達の話では、定番中の定番の魔王が世界を支配しているから倒してくれという話だ。
そして儀式により…イケメンの正義は【勇者】を、ギャルっぽい美紅は【聖戦士】を、クラス委員長の真美は【聖女】を、秀才の悠斗は【賢者】になった。
そして俺はというと…?
『おぉ、伝承にある通り…異世界から召喚された者には、素晴らしい加護が与えられた!』
「それよりも不知火君は何を得たんだ?」
イケメンの正義は爽やかな笑顔で聞いてきた。
俺は儀式の札を見ると、【アンノウン】と書かれていた。
その場にいた者達は、俺の加護を見ると…
「正体不明で気味が悪い」とか、「得体が知れない」とか好き放題言っていた。
『ふむ…朔夜殿だけ分からずじまいか。だが、異世界から来た者達よ、期待しておるぞ!』
王族も前の4人が上位のジョブを引いた物だから、俺の事はどうでも良いらしい。
まぁ、その方が気楽で良い。
そして正義は、リーダーとして皆に言った。
「魔王を倒して元の世界に帰ろう!」
正義の言葉に3人は頷いたが、俺は正義に言った。
「魔王を倒すという志は立派だが、まずは魔物と戦って勝利をしてから言え!」
「僕達には素晴らしい加護の恩恵があるから…」
「肩書きがどんなに立派でも、魔物を前にしたら思う様には動けないんだ。現実を知れ!」
「何よ偉そうに…アンタだったら出来るというの?」
「良いか…殴り合いの喧嘩もしたことがない奴が、いきなり魔物に勝てる訳が無いんだ。お前達は、ゲーム感覚でいるみたいだが現実はそんなに甘く無いぞ!」
「ずいぶん知ったような口を聞くね。不知火は経験があるのか?」
「あるよ、異世界召喚は今回が初めてでは無いからな…」
俺は右手を上げると、頭上から光に照らされて黄金の甲冑と二振の聖剣を手にした。
「その…鎧と剣は?」
「これが証拠だ。この鎧と剣は、今迄の世界を救った報酬として貰った。」
「今迄って…今回が2回目では無いのか?」
「今回で7回目だ!マジでいい加減にして欲しいよ。」
俺はうんざりしながら答えた。
そう…今回の異世界召喚で7回目なのだ。
いずれの世界も救って来た。
そして今度の世界は…?
6月22日
HOTランキングで6位になりました!
6月23日
HOTランキングで4位になりました!
昼過ぎには3位になっていました.°(ಗдಗ。)°.
6月24日
HOTランキングで2位になりました!
皆様、応援有り難う御座いますm(_ _)m
攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】
水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】
【一次選考通過作品】
---
とある剣と魔法の世界で、
ある男女の間に赤ん坊が生まれた。
名をアスフィ・シーネット。
才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。
だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。
攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。
彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。
---------
もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります!
#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
---
追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました
髙橋ルイ
ファンタジー
「クラス全員で転移したけど俺のステータスは使役スキルが異常で出会った人全員を使役してしまいました」
気がつけば、クラスごと異世界に転移していた――。
しかし俺のステータスは“雑魚”と判定され、クラスメイトからは置き去りにされる。
「どうせ役立たずだろ」と笑われ、迫害され、孤独になった俺。
だが……一人きりになったとき、俺は気づく。
唯一与えられた“使役スキル”が 異常すぎる力 を秘めていることに。
出会った人間も、魔物も、精霊すら――すべて俺の配下になってしまう。
雑魚と蔑まれたはずの俺は、気づけば誰よりも強大な軍勢を率いる存在へ。
これは、クラスで孤立していた少年が「異常な使役スキル」で異世界を歩む物語。
裏切ったクラスメイトを見返すのか、それとも新たな仲間とスローライフを選ぶのか――
運命を決めるのは、すべて“使役”の先にある。
毎朝7時更新中です。⭐お気に入りで応援いただけると励みになります!
期間限定で10時と17時と21時も投稿予定
※表紙のイラストはAIによるイメージです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる