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15 清掃員のオバサンからの激励
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清掃員さんは、そうか、と一言呟く。
彼女は、曼珠沙華をきれいだと言ってくれる数少ない人だ。
「変な話を聞いてくれてありがとう」
「別に、変な話だとは思わない。ただ、今まで大変だっただろうなと思ってな。好きな物を、親から否定されるのが一番辛いはずだ。本能から、親には愛してもらいたいものだからな」
「それはもう、慣れたから」
「慣れてないから、今も君の曼珠沙華は血色なんだろう」
清掃員さんは、ズバッと言う。
「君が最初にスキルを開花させた時、きっと曼珠沙華は今よりもっと美しかったはずだ。発色が良く、目が覚めるような赤だったはずだ。最初は、目に、脳裏に、心に焼き付くほど鮮烈に美しかったはずだ」
「……」
「妖艶で、それでもどこか可憐な曼珠沙華。『天上に咲く花』と謳われるに相応しい、炎よりも赤々とした曼珠沙華だったんじゃないか? 今の君の曼珠沙華には魅力が足りない。君が好きな曼珠沙華は、神聖な赤色に輝いているはずだ」
清掃員さんは言う。
「今、君の咲かせる曼珠沙華は人々のイメージから受けた言葉を体現してしまっている。それでは駄目だ。君が咲かせるのだから、君が幼い頃に夢中になった元の曼珠沙華でなくては、スキルも力を発揮できない……――君のスキルはまだまだこんなものじゃないぞ、佐藤桐也」
清掃員さんは、捲し立てるように続ける。
清掃員さんは、スキルについてアドバイスしかできないと断言する。それは清掃員さんがスキルとして植物系スキルを持っておらず、試しに使うこともできないからだ。
清掃員さんが見てきた植物系スキルの使用頻度が高いものを掲示することしかできない。
「最後は君が、君のスキルである『曼珠沙華』を信じるしかないんだ、佐藤桐也――……君のスキルは、『地獄花』と評される花だと思うか?」
違うだろう、と彼女は言う。
「君が最初に見た時、『天上に咲く花』と謳われれば納得したような、そんな美しさを心から感じていたはずだ。全ての人から目を奪うような、そんな『曼珠沙華』を咲かせられるスキルを持っている。例え他人から嫌われても、自分の好きな『曼珠沙華』に誇りを持て。好きなものを否定するような奴の死滅した感性なんかに、君の心と感情まで殺してはいけない。そんな奴なんかと親であろうが軽蔑し、気を許せる友人であろうとも離れろ。好きなものを、とことん好きでいる覚悟を持て。そして、そのスキルを陰らせるな。そうすれば、必ずスキルは君の力になる。このご時世、スキルは君の最たる相棒なのだから」
一瞬、風が吹き付けたように感じた。
次の瞬間、周囲が赤くなっていた。
俺は少ししてから、気付く。
曼珠沙華が一面に咲いている。
おしゃれな清掃員さんの部屋……いや、居住スペースの床に、冷蔵庫に、システムキッチンに曼珠沙華が花畑を築くように咲き乱れている。
「あ、あっ!? す、すみません! すぐにしまいます!!」
「構わない。やはり美しいな、曼珠沙華は。この鮮やかな赤でなくては」
確かに、俺の曼珠沙華は鮮やかな赤色をしていた。
俺が昔、強烈に惹かれて心を奪われた、あの赤い曼珠沙華。
清掃員さんは、床に生えた曼珠沙華を一輪撫でて、根本に手を添える。
「やはり、抜けないな」
「え?」
「君のスキルだからな。君が手折らせてくれないと一輪ももらえないものなんだ。一本と言わず、十本ほど飾りにもらえるだろうか」
清掃員さんは笑う。
「何せ、ダンジョンの中は薄暗くてな。華やかさがまるで無いんだ」
戦闘動画撮影の時、清掃員さんが仲間に見せた、優しいけどちょっと不器用の滲む小さな笑顔だった。
彼女は、曼珠沙華をきれいだと言ってくれる数少ない人だ。
「変な話を聞いてくれてありがとう」
「別に、変な話だとは思わない。ただ、今まで大変だっただろうなと思ってな。好きな物を、親から否定されるのが一番辛いはずだ。本能から、親には愛してもらいたいものだからな」
「それはもう、慣れたから」
「慣れてないから、今も君の曼珠沙華は血色なんだろう」
清掃員さんは、ズバッと言う。
「君が最初にスキルを開花させた時、きっと曼珠沙華は今よりもっと美しかったはずだ。発色が良く、目が覚めるような赤だったはずだ。最初は、目に、脳裏に、心に焼き付くほど鮮烈に美しかったはずだ」
「……」
「妖艶で、それでもどこか可憐な曼珠沙華。『天上に咲く花』と謳われるに相応しい、炎よりも赤々とした曼珠沙華だったんじゃないか? 今の君の曼珠沙華には魅力が足りない。君が好きな曼珠沙華は、神聖な赤色に輝いているはずだ」
清掃員さんは言う。
「今、君の咲かせる曼珠沙華は人々のイメージから受けた言葉を体現してしまっている。それでは駄目だ。君が咲かせるのだから、君が幼い頃に夢中になった元の曼珠沙華でなくては、スキルも力を発揮できない……――君のスキルはまだまだこんなものじゃないぞ、佐藤桐也」
清掃員さんは、捲し立てるように続ける。
清掃員さんは、スキルについてアドバイスしかできないと断言する。それは清掃員さんがスキルとして植物系スキルを持っておらず、試しに使うこともできないからだ。
清掃員さんが見てきた植物系スキルの使用頻度が高いものを掲示することしかできない。
「最後は君が、君のスキルである『曼珠沙華』を信じるしかないんだ、佐藤桐也――……君のスキルは、『地獄花』と評される花だと思うか?」
違うだろう、と彼女は言う。
「君が最初に見た時、『天上に咲く花』と謳われれば納得したような、そんな美しさを心から感じていたはずだ。全ての人から目を奪うような、そんな『曼珠沙華』を咲かせられるスキルを持っている。例え他人から嫌われても、自分の好きな『曼珠沙華』に誇りを持て。好きなものを否定するような奴の死滅した感性なんかに、君の心と感情まで殺してはいけない。そんな奴なんかと親であろうが軽蔑し、気を許せる友人であろうとも離れろ。好きなものを、とことん好きでいる覚悟を持て。そして、そのスキルを陰らせるな。そうすれば、必ずスキルは君の力になる。このご時世、スキルは君の最たる相棒なのだから」
一瞬、風が吹き付けたように感じた。
次の瞬間、周囲が赤くなっていた。
俺は少ししてから、気付く。
曼珠沙華が一面に咲いている。
おしゃれな清掃員さんの部屋……いや、居住スペースの床に、冷蔵庫に、システムキッチンに曼珠沙華が花畑を築くように咲き乱れている。
「あ、あっ!? す、すみません! すぐにしまいます!!」
「構わない。やはり美しいな、曼珠沙華は。この鮮やかな赤でなくては」
確かに、俺の曼珠沙華は鮮やかな赤色をしていた。
俺が昔、強烈に惹かれて心を奪われた、あの赤い曼珠沙華。
清掃員さんは、床に生えた曼珠沙華を一輪撫でて、根本に手を添える。
「やはり、抜けないな」
「え?」
「君のスキルだからな。君が手折らせてくれないと一輪ももらえないものなんだ。一本と言わず、十本ほど飾りにもらえるだろうか」
清掃員さんは笑う。
「何せ、ダンジョンの中は薄暗くてな。華やかさがまるで無いんだ」
戦闘動画撮影の時、清掃員さんが仲間に見せた、優しいけどちょっと不器用の滲む小さな笑顔だった。
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