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鴨島のカラス
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毎年11月上旬に開かれる徳島市の狸まつりは、例年タチノー全校狸が二日間の日程で残留組と参加組に分かれ、一日ずつ参加するのが恒例だ。
参加組が今時ファッションのシャレオツな高校生に化けると、よれよれの作業服や芋ジャージ姿の残留組が1日2往復のバス停まで見送る。残留組はそのまま畑に山に直行だ!
狸祭り当日の江口駅は、イケてる高校生の集団がわちゃわちゃ群がり、地元のじじばばの微妙な視線を浴びながら徳島行きの汽車に乗り込む。
二日目参加組のラグビー部は、汽車には乗らずにカラスに化け、日の出とともに学校から一路徳島市へと飛んでいった。うへえ無駄に元気やなあいつらホンマ、と呆れ顔の教員たち。
汽車組が会場の藍場浜公園につくと、
……なんと人間が狸に化けよるでないで!
しかしまあ、何ともぞうらいな化け方や。子どもらが寄ってきてはパンチやらキックやら浴びせてくる。ほんまに市内の子はがいやなーー。
ほなけんど、あんまり可哀想やし、同じ狸のよしみで助けたらなアカン。そう言うと野球部のキャプテンはさくっとモノホンの狸に戻って公園中を駆け回る。子どもらはバチもんの狸などに目もくれず、キャプテンを追わえてくる。
そのうち警備員やら会場整理に駆り出された市役所職員やら警察官やらが、網やら罠やら持ち出し大騒ぎし始めたので、キャプテンはビックリ仰天。新町橋の下に隠れると今度は鳩に化けて神社の境内に紛れ込み、人目を避けて再び人間に化け直す。さすが化学(バケガク)の成績も常に上位キープの模範生だ。
「おい、ラグビー部来とるか?」
林業科の先生が、辺りを見回しながら聞いてきた。
「おかしいなあ、どこで油売っとんのやろ?」
ステージでは、本日最大のイベントが佳境を迎えている。
すると遠くから、黒っぽい一団が近づいてきた。くちゃくちゃの髪の毛からは水をかぶったみたいに汗がしたたり、頭からは湯気が上がっている。
グラウンドコートはカラスの糞とカギ裂きだらけ、顔の引っ掻き傷にはお揃いの絆創膏。
「ラグビー部! 遅いやんか。もう終わるでよ」
「どないしたん?」
ラグビー部の話は以下の通りーー
秋晴れの空を気持ちよく飛び、いい気分で汽車を追い越し、狸まつり一番乗りや! と部員一同、カアカアと雄叫びを上げながら……鴨島駅前に差し掛かった。ちょっと休もうか、と駅前の菊人形のあたりに降りたのが……運のつきやった。
地元のカラスがわらわら集まって
「おまはんらどこから来たんや?」
と凄む凄む。三野町と答えると
「なんしにそんな遠くから来たんで? まさか、わいらのシマにアヤつけに来よったんちゃうか?」
とカラスどもは黒い羽をバタバタさせながら息巻く。
「ちゃいますがな、わいらは太刀野山農林の生徒…」
とキャプテンが答えるや、鴨島のカラスの大将は
「なんやおまはんら、ヤマの狸か? よう化けたな、見事なもんじゃ」
とひと睨み。
「狸公が、なめくさったまねさらして、おいみんな、こいつらいてまえ!」
……かくして化けの皮をはがされ、大きな羽と鋭い嘴・爪で徹底的に袋叩きにされ、その上木の葉のお金も根こそぎカツ上げされてしもうた、というわけじゃ。
タチノーフィフティーンは、すごすごミマ百貨店跡まで退却、ずたぼろのグラウンドコート姿のラガーマンに化け直し、早速被害を駅の交番に訴え出た。
おまわりは絆創膏だけ渡すと、狸とカラスのもめごとは民事不介入やけん、本署の管轄外やとぬかしやがった。
仕方ないから、カラスに追わえられ嫌というほど糞かけられながら、鴨島から藍場浜公園まで走ってきた、というわけだ。
先生たちは呆れて、帰りは雀に化けてもんてこい、と言いながら狸の絵のついたイベ限定大判焼きを一個ずつ奢ってやっていた。もちろん、木の葉のお金でな。
参加組が今時ファッションのシャレオツな高校生に化けると、よれよれの作業服や芋ジャージ姿の残留組が1日2往復のバス停まで見送る。残留組はそのまま畑に山に直行だ!
狸祭り当日の江口駅は、イケてる高校生の集団がわちゃわちゃ群がり、地元のじじばばの微妙な視線を浴びながら徳島行きの汽車に乗り込む。
二日目参加組のラグビー部は、汽車には乗らずにカラスに化け、日の出とともに学校から一路徳島市へと飛んでいった。うへえ無駄に元気やなあいつらホンマ、と呆れ顔の教員たち。
汽車組が会場の藍場浜公園につくと、
……なんと人間が狸に化けよるでないで!
しかしまあ、何ともぞうらいな化け方や。子どもらが寄ってきてはパンチやらキックやら浴びせてくる。ほんまに市内の子はがいやなーー。
ほなけんど、あんまり可哀想やし、同じ狸のよしみで助けたらなアカン。そう言うと野球部のキャプテンはさくっとモノホンの狸に戻って公園中を駆け回る。子どもらはバチもんの狸などに目もくれず、キャプテンを追わえてくる。
そのうち警備員やら会場整理に駆り出された市役所職員やら警察官やらが、網やら罠やら持ち出し大騒ぎし始めたので、キャプテンはビックリ仰天。新町橋の下に隠れると今度は鳩に化けて神社の境内に紛れ込み、人目を避けて再び人間に化け直す。さすが化学(バケガク)の成績も常に上位キープの模範生だ。
「おい、ラグビー部来とるか?」
林業科の先生が、辺りを見回しながら聞いてきた。
「おかしいなあ、どこで油売っとんのやろ?」
ステージでは、本日最大のイベントが佳境を迎えている。
すると遠くから、黒っぽい一団が近づいてきた。くちゃくちゃの髪の毛からは水をかぶったみたいに汗がしたたり、頭からは湯気が上がっている。
グラウンドコートはカラスの糞とカギ裂きだらけ、顔の引っ掻き傷にはお揃いの絆創膏。
「ラグビー部! 遅いやんか。もう終わるでよ」
「どないしたん?」
ラグビー部の話は以下の通りーー
秋晴れの空を気持ちよく飛び、いい気分で汽車を追い越し、狸まつり一番乗りや! と部員一同、カアカアと雄叫びを上げながら……鴨島駅前に差し掛かった。ちょっと休もうか、と駅前の菊人形のあたりに降りたのが……運のつきやった。
地元のカラスがわらわら集まって
「おまはんらどこから来たんや?」
と凄む凄む。三野町と答えると
「なんしにそんな遠くから来たんで? まさか、わいらのシマにアヤつけに来よったんちゃうか?」
とカラスどもは黒い羽をバタバタさせながら息巻く。
「ちゃいますがな、わいらは太刀野山農林の生徒…」
とキャプテンが答えるや、鴨島のカラスの大将は
「なんやおまはんら、ヤマの狸か? よう化けたな、見事なもんじゃ」
とひと睨み。
「狸公が、なめくさったまねさらして、おいみんな、こいつらいてまえ!」
……かくして化けの皮をはがされ、大きな羽と鋭い嘴・爪で徹底的に袋叩きにされ、その上木の葉のお金も根こそぎカツ上げされてしもうた、というわけじゃ。
タチノーフィフティーンは、すごすごミマ百貨店跡まで退却、ずたぼろのグラウンドコート姿のラガーマンに化け直し、早速被害を駅の交番に訴え出た。
おまわりは絆創膏だけ渡すと、狸とカラスのもめごとは民事不介入やけん、本署の管轄外やとぬかしやがった。
仕方ないから、カラスに追わえられ嫌というほど糞かけられながら、鴨島から藍場浜公園まで走ってきた、というわけだ。
先生たちは呆れて、帰りは雀に化けてもんてこい、と言いながら狸の絵のついたイベ限定大判焼きを一個ずつ奢ってやっていた。もちろん、木の葉のお金でな。
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