特攻の令嬢達 ~最強の7人の不良達が公爵令嬢に転生して異世界を救う話~

石崎楢

文字の大きさ
50 / 51
第3章:水晶の門

第47話:傀儡の王子達

ジーク帝国第2の都市、セヴェウス。
帝都ジークアルダより北に300キロに位置する巨大なオアシスの町。
そして第1王子アリ・ジーク派の拠点でもあります。
その中心部に建てられているセヴェウス城。

「お姉様・・・今です。」
「ええ・・・わかっているわ。」

城内へと忍び込む2つの影がありました。
エンジェルウィッチ家の護衛メイドのヴィッキーとデビー姉妹です。

「見張りは?」
「みんな眠っている。」

そこに更に2人の黒装束の男達の姿。
エンジェルウィッチ家執事のリデルとロウズ。
執事達の中でも群を抜く実力者達です。
この4名はアリ・ジークの動向を探っています。



アリ・ジーク。
ジーク帝国第1王子、既に年齢は40歳。
武人として知られており、かつてはイェスパー・インフレイムと幾度となく激戦を繰り広げたとのこと。
その時点で実力が飛び抜けていることが分かります。
ただ政治面では極端な軍国主義を提唱しているため、国民からの人望はかなり低いようです。



これは・・・ヤバいモノを見てしまったかもな・・・


セヴェウス城の地下奥深くの祭壇。
石像の前にて祈りを捧げる1人の男の姿。
その男の背中からは翼、頭には山羊のような角が生えてきているのです。

アリ・ジークは魔族・・・

その光景を隠れて見ている1人の男。

マジかよ・・・


アリ・ジークの周りには次々と魔族達が姿を現わしていました。

「アリ・ジークよ。あの異能持ちの聖女の動向は如何に?」

石像から声が聞こえてきます。

「魔神サバト様、全ては私の思惑通りでございます。」

アリ・ジークは跪くと笑みを浮かべました。

「ブラッケンドに奪われる前に必ずあの聖女を我がモノにせねば・・・わかっているな?」
「あの出来損ないの弟・・・カリムに出し抜かれることはまず在りませぬ。」
「我が眷属になれた貴様と不適合の愚弟・・・我に仕える貴様と無能なブラッケンドの下僕と化した者、どちらが人間界の長に相応しいか・・・期待しておるのだぞ。」
「ははッ!!」


おいおいおい・・・やっとのことでここまで辿り着いていきなりこれか・・・
ったく・・・可愛い妹の頼みだから引き受けたっていうのにとんだ貧乏くじ・・・
・・・いや・・・
これはとんだ大当たりだぜ・・・
SSSランクへの昇格のとんでもねえ近道だっつうこと♪



隠れて見ていた男、『ニンジャマスター』アイト・ブラックスミス。
メタリアム王国のギルド『陽炎の門』所属のSSランク冒険者です。
生き別れになった妹を探してガガク国からやって来たのは5年前。
その妹とは『首斬り』チエ・ブラックスミス。



「今更・・・コロス!!」
「や、やめろ・・・お兄ちゃんはただオマエに会いたくて・・・うおッ!?」


再会の際の出来事はギルド界隈では伝説になっております。
本気で殺しにかかっているチエ。
しかもその攻撃を全て受け流した挙げ句、


「うぐぅ・・・な・・・なんで・・・なんで今更・・・」


天才と名高かったチエを簡単に押さえ込んだアイト。


「俺は・・・ただ・・・オマエを探して何年も・・・」
「あたしは・・・汚れているんだ・・・数え切れないぐらい人を殺している・・・」
「すまない・・・俺がもっと早く・・・」


そこからずっとあまり良くない兄妹関係が続いていました。
チエから拒否されて『蒼玉の箱庭』ではなく、王都から200キロ離れたメタリアム第2の都市グローリーのギルド『陽炎の門』に所属せざるを得なかったのです。
そしてその実力で数々の困難なミッションをクリアし、SSランクまであっという間に上りつめたのです。



気配を完全に消すこと・・・無になることなど造作もねえ・・・
もっと情報を得ねえとな・・・


そんなアイトの姿にアリ・ジークや魔人達は気付いておりません。
ただ1つの存在を除いて・・・


ほう・・・凄まじき強者・・・この魔人共が束になっても敵わない人間とは・・・
まあ・・・良い・・・これは聖女を釣る良い餌になりそうだ・・・


石像の眼は確実にアイトの姿を捉えていたのでした。




所変わってジーク帝国第3の都市カルナファル。
西部の拠点で在る城塞都市でマカーム王国との国境に位置します。
そして第2王子カリム・ジーク派の拠点なのです。


「いらっしゃいませ!! ガガクやシージンの珍しい骨董品がいっぱいですわよ!!」

1人の和装の美女が露天商をしています。
その美貌と愛想の良さで大盛況のようです。

「おい、そこの露天商。少し話がある。」
「あら・・・兵隊さん達。きちんと許可は取っておりますわよ。」
「いいから来い。」

その美女は衛兵2人に連れて行かれてしまいました。

「これは賄賂の請求だろ・・・」
「あの姉さんも可哀想に・・・」

人々の声が聞こえる中、一軒の酒場に連れて行かれた美女。
その口元が緩みます。

「どうだ? 城の様子は。」
「警戒が厳重なのはカリム王子の周辺のみです。」

その美女はハウンド隊長のチエ・ブラックスミスでした。
衛兵に扮しているのはハウンドのライノ・ドーマンとフォーリー・テイラー。
そして酒場のマスターに扮しているのは同じくハウンドのハーヴェイ・ランダー。
カルナファルにはハウンドの精鋭達が入り込んでいました。

「それにしてもまだ一度もカリム王子を見たことがありません。」
「公務の場にもこの数ヶ月一度も姿を見せていないとのことです。」

ライノとフォーリーの言葉。

「なるほど・・・病か第1王子による暗殺を恐れているか・・・」
「それとも良からぬ事を企てているからですな。」

チエの言葉を遮るようにハーヴェイが言いました。
ヴァンゲリス帝国との戦いで多大な犠牲を払ったハウンド。
部隊長制が維持できなくなり、再編を強いられました。
ニール・トライアンフから隊長を譲り受けたチエ。
ハーヴェイ達3人は元部隊長という実力者達。


正直、大先輩達を部下扱いするのはかなり気が引けるんだけど・・・


「何とかカリム王子の動向を探らなければ・・・」



しかし、そんなチエ達の思惑を通り越して現状は最悪の状態でした。
カルナファルの城内奥深くの一室。

「グギャブルル・・・」

1体の異形の魔物が鎖に繋がれています。
人の顔ですが、身体からは手が6本、脚が4本、そして尻尾が2本。
まるで龍のような鱗に全身は覆われていました。

「また・・・上手く適合できなかったのか・・・」

そこに姿を現わしたのは魔神ブラッケンド。

「どうにも魔石とのシンクロ率が低すぎるようで・・・」

白衣の研究員姿の魔人達が呆れ顔で異形の魔物を見つめます。

「まるでキメラだな、カリム・ジーク。」
「グガガガガ!!」

冷たい視線を投げかけるブラッケンドに対し、怒りを露わにする異形の魔物。
それは魔神の眷属になれなかったジーク帝国第2王子カリム・ジークの成れの果てだったのです。


おのれ・・・魔族め・・・


カリム・ジーク本人の意識は残っておりますが、既に人の言葉を発することは出来ない状態。

「まあ・・・あの愚かなサバトに踊らされている第1王子よりはマシだろう。このまま人としての意識を失えば罪を感じることもあるまい。あのアリ・ジークは・・・哀れだ。」

ブラッケンドはそう言うとカリムの頭を撫でました。

「!?」

圧倒的なオーラの前にカリムは思わず震えると大人しくなります。


く・・・クソが・・・愚かな兄と俺は同じだ・・・
しかし・・まだこの国にはアイツがいる・・・


そんなカリムの脳裏に浮かぶ1人の若者の姿。


アーデル・アヴェスタ・・・
いや・・・我が弟・・・アデル・ジーク・・・
この国の未来を唯一託せる者・・・


鎖に繋がれたカリムを残してブラッケンドと魔人研究員達は去って行きました。

「・・・」

残っているのはカリムへの食事係を任されている奴隷の少女。


王族が奴隷に哀れみの眼差しを向けられているか・・・


カリムが顔を動かして合図すると奴隷少女は紙とペンを持ってきます。
何かを書き記すカリム。
奴隷少女はそれを読むと力強く頷きました。



翌朝・・・

「ギャルルル・・・」

荒れ狂うカリム。
その眼前には奴隷少女の衣服の切れ端が墜ちていました。

「遂に自我が崩壊し始めたか・・・カリム・ジーク。奴隷を喰らうとはな!!」
「人間は醜いのう。」

魔人研究員達の嘲笑が続く中、


頼むぞ・・・セシリア・・・


カリムは祈っていました。
奴隷少女セシリアが城を上手く脱出出来ることを。

感想 0

あなたにおすすめの小説

【第2章完結】最強な精霊王に転生しました。のんびりライフを送りたかったのに、問題にばかり巻き込まれるのはなんで?

山咲莉亜
ファンタジー
 ある日、高校二年生だった桜井渚は魔法を扱うことができ、世界最強とされる精霊王に転生した。家族で海に遊びに行ったが遊んでいる最中に溺れた幼い弟を助け、代わりに自分が死んでしまったのだ。  だけど正直、俺は精霊王の立場に興味はない。精霊らしく、のんびり気楽に生きてみせるよ。  趣味の寝ることと読書だけをしてマイペースに生きるつもりだったナギサだが、優しく仲間思いな性格が災いして次々とトラブルに巻き込まれていく。果たしてナギサはそれらを乗り越えていくことができるのか。そして彼の行動原理とは……?  ロマンス、コメディ、シリアス───これは物語が進むにつれて露わになるナギサの闇やトラブルを共に乗り越えていく仲間達の物語。 ※HOT男性ランキング最高6位でした。ありがとうございました! ※完結後、三人称一元視点に変えて全話改稿する予定です。規約を確認してから決めますが、こちらも残したいと思っています。

追放された味噌カス第7王子の異種族たちと,のんびり辺境地開発

ハーフのクロエ
ファンタジー
 アテナ王国の末っ子の第7王子に産まれたルーファスは魔力が0で無能者と言われ、大陸の妖精族や亜人やモンスターの多い大陸から離れた無人島に追放される。だが前世は万能スキル持ちで魔王を倒し英雄と呼ばれていたのを隠し生まれ変わってスローライフを送る為に無能者を装っていたのだ。そんなルーファスはスローライフを送るつもりが、無人島には人間族以外の種族の独自に進化した先住民がおり、周りの人たちが勝手に動いて気が付けば豊かで平和な強国を起こしていく物語です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ガチャで領地改革! 没落辺境を職人召喚で立て直す若き領主

雪奈 水無月
ファンタジー
魔物大侵攻《モンスター・テンペスト》で父を失い、十五歳で領主となったロイド。 荒れ果てた辺境領を支えたのは、幼馴染のメイド・リーナと執事セバス、そして領民たちだった。 十八歳になったある日、女神アウレリアから“祝福”が降り、 ロイドの中で《スキル職人ガチャ》が覚醒する。 ガチャから現れるのは、防衛・経済・流通・娯楽など、 領地再建に不可欠な各分野のエキスパートたち。 魔物被害、経済不安、流通の断絶── 没落寸前の領地に、ようやく希望の光が差し込む。 新たな仲間と共に、若き領主ロイドの“辺境再生”が始まる。

没落ルートの悪役貴族に転生した俺が【鑑定】と【人心掌握】のWスキルで順風満帆な勝ち組ハーレムルートを歩むまで

六志麻あさ
ファンタジー
才能Sランクの逸材たちよ、俺のもとに集え――。 乙女ゲーム『花乙女の誓約』の悪役令息ディオンに転生した俺。 ゲーム内では必ず没落する運命のディオンだが、俺はゲーム知識に加え二つのスキル【鑑定】と【人心掌握】を駆使して領地改革に乗り出す。 有能な人材を発掘・登用し、ヒロインたちとの絆を深めてハーレムを築きつつ領主としても有能ムーブを連発して、領地をみるみる発展させていく。 前世ではロクな思い出がない俺だけど、これからは全てが報われる勝ち組人生が待っている――。

魔力0の貴族次男に転生しましたが、気功スキルで補った魔力で強い魔法を使い無双します

burazu
ファンタジー
事故で命を落とした青年はジュン・ラオールという貴族の次男として生まれ変わるが魔力0という鑑定を受け次男であるにもかかわらず継承権最下位へと降格してしまう。事実上継承権を失ったジュンは騎士団長メイルより剣の指導を受け、剣に気を込める気功スキルを学ぶ。 その気功スキルの才能が開花し、自然界より魔力を吸収し強力な魔法のような力を次から次へと使用し父達を驚愕させる。

神様の手違いで、おまけの転生?!お詫びにチートと無口な騎士団長もらっちゃいました?!

カヨワイさつき
恋愛
最初は、日本人で受験の日に何かにぶつかり死亡。次は、何かの討伐中に、死亡。次に目覚めたら、見知らぬ聖女のそばに、ポツンとおまけの召喚?あまりにも、不細工な為にその場から追い出されてしまった。 前世の記憶はあるものの、どれをとっても短命、不幸な出来事ばかりだった。 全てはドジで少し変なナルシストの神様の手違いだっ。おまけの転生?お詫びにチートと無口で不器用な騎士団長もらっちゃいました。今度こそ、幸せになるかもしれません?!

ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜

西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」 主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。 生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。 その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。 だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。 しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。 そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。 これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。 ※かなり冗長です。 説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです