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第19話:友の死
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「もうすぐ春だな、サスケ。」
「わんわんわん♪」
私はサスケを連れて散歩をしていた。
山城と化した我が家、周囲を一緒に歩くだけでサスケは喜んでくれる。
山田の城下町も本格的になりつつあった。
我が家から見下ろす景色はいつ見ても不思議なものだ。
芳野城を陥落させた私たちはほぼ宇陀をまとめつつあった。
残るは宇陀秋山城の秋山直国ぐらいである。
ただ秋山は龍王山城の十市家との争いに精一杯の状況。
こちらに害を及ぼさない限り、干渉することはないだろう。
ただ三好三人衆の後ろ盾を得た筒井家の逆襲で大和の国は混沌化の一途を辿っていた。
十市家も秋山家も同じ松永の傘下でありながら敵対を続け、筒井家と十市家も長年の敵同士である。
「殿、檜牧から島様が来られましたぞ!!」
「おお、わかった。すぐに行きますと伝えて。」
「はっ!!」
伝えにきたのは高井義成。かつて沢家に滅ぼされた土豪の出だそうだ。
最近は仕官したいという人たちが多いが、その中でも逸材だった。
刀、槍、弓の全てに心得があり、特に弓に関しては義輝や景兼が絶賛する程の腕をもつ逸材である。
大広間では清興が待ち受けていた。
義輝、景兼も同席している。
「最近ですが、都祁の方で不穏な動きがあるようですぞ。」
清興が言う。
「都祁の吐山光政か。」
景兼は首をひねる。
「更に戒場にも同様の動きが見られます。」
戒場・・・宇陀の国人戒場範家ですか・・・。
松永方ですが、こちらに攻めてくる意思はなかったはず。
「景兼、どう思う?」
「吐山と戒場を合わせても我らに太刀打ちできないでしょう。」
私の声に景兼は即答するも、
・・・何故だ・・・悪い予感がする・・・。
「景兼、不安要素があるなら言ってください。」
「殿、少しお時間をいただきます。」
景兼は席を離れた。
吐山と戒場の軍勢を合わせても檜牧を守る清興の兵のみで対処できよう。
ならばどうなのだ・・・秋山か?
秋山が攻めてきたとしても高山殿が対処される。
ただ・・・何か悪い予感がするのだ。
「誰かおらぬか?」
景兼が呼ぶと一人の侍がやってきた。
「六兵衛のところに向かうと殿にお伝えしておくのだ。」
そう言い残すと景兼は馬を飛ばして井足に向かった。
山田城の城下町にて
「冬でも温かいね♪ここは。」
美佳は楓の鍛冶場にいた。
「もうすぐ春よ・・・でもここはいつも夏だけどね♪」
楓は汗を流しながら鉄を打っている。
火照った身体、紅潮した顔は真剣そのもの。
だが、その様子を見つめていた美佳はいやらしい顔で言った。
「楓、なんかエロいんですけど。」
「!?」
「男だったらイチコロだね・・・いいわ・・・。」
「何、何言ってんの?」
「あたしも手伝うの・・・そそられた♪」
「無理だって火傷するって!!」
二人はもつれ合って倒れる。
「だから危ないって・・・」
「ゴメン、熱くなって頭がおかしくなったかも・・・」
そのとき
「美佳様、おられますか!!」
一馬が鍛冶場に入って来た。
「!?」
美佳と楓のもつれ合っている姿を見て鼻血を吹き出し卒倒する。
「これ・・・誤解されるヤツよ・・・。」
楓が美佳を睨む。
「ゴメン・・・」
手を合わせて謝る美佳だった。
「誤解だからね・・・勘違いしないでよ。」
「わかっております。」
美佳と一馬は城へと歩いていた。
「パパもあたしに何の用があるんだろね・・・」
美佳の独り言。
そんな美佳の横顔を見つめる一馬
ああ・・・さっきのは絶対に忘れないでおこう・・・
「な・・・何? あたしをじっと見つめて・・・?」
「申し訳ございません・・・」
「何よ?」
すると一馬の顔つきが変わった。
美佳の左手を掴むと壁ドンをする。
「・・・!?」
動揺する美佳の耳元で一馬はささやいた。
「俺のオンナになれって・・・」
美佳は顔が真っ赤になる。
すると一馬は笑い出した。
「ハハハ、冗談でございます。」
「何よ・・・何よそれ!!」
キレた美佳が一馬に詰め寄っていくも
「間違えました・・・私の嫁になってください♪」
「・・・ふざけんな~!!」
逃げる一馬を追いかける美佳。
その様子を九兵衛がずっと見ていた。
なんだよ・・・あれ・・・おかしいだろ・・・
俺の方が美佳様を・・・
九兵衛は唇を噛み締めながら遠くの二人に背を向けた。
大広間にて
「どうしたのパパ?」
「美佳に頼みたい事があるんだ。」
その様子を見つめる九兵衛。
「・・・」
九兵衛の美佳への視線がおかしいのに気づく一馬。
「美佳に私の留守を頼みたい。」
「えっ・・・パパどこに行くの?」
美佳が私に詰め寄ってくる。
「吉野の小川弘栄殿のところに行ってくる。一馬、義成。お供してください。」
小川弘栄は吉野にて大きな勢力を持つ丹生川上神社の神主だ。
神主でもあり領主でもある。
書状でのやり取りは繰り返しているが、実際に会わないといけないだろう。
しかし、その間に事態は風雲急を告げる・・・
芳野城では友照が直々に出向いて城の改修を始めていた。
そこに、
「殿!! 敵の奇襲でござる・・・。」
1人の兵が駆け込んでくる。
「秋山か!!」
「はい、秋山の軍勢がこちらに迫ってきております。」
「やはりな・・・兵を回せ!!」
友照の号令で高山軍が動き出す。
「私も行くぞ、馬を!!」
友照が馬に乗ろうとすると
「大変ですぞ、十市が・・・十市の軍がこちらに攻めてきてますぞ!!」
更に1人の兵が駆け込んできた。
「秋山と十市が手を結んだというのか!!」
友照の動きが止まった・・・そのときだった。
「ぐ・・・グアッ・・・」
駆け込んできた兵が友照を背後から刺していた。
更にもう1人の兵も友照に襲い掛かる。
「殿ォォ!!」
近くにいた家臣がその兵を斬り捨てる。
高山家家臣の神谷与五郎久高だ。
更に返す刀でもう1人の兵も斬りつけるも・・・
「クッ・・・」
その兵は素早い動きで躱した。
「忍びか・・・!! 曲者ぞ!! 皆の者であえ!!」
久高の声に家臣団や兵たちが集まってくるも、その兵は素早い動きで攪乱しながら逃げていく。
「逃がすかァ!!」
「も・・・もう良いぞ・・・与五郎・・・。」
友照は地面に倒れ伏す。
「殿ォォォ!!」「なんということじゃァァァ!!」
家臣団の悲痛な叫びが響き渡る。
「皆の者・・・よ・・・よく聞け・・・。」
友照は最後の力を振り絞り声を出す。
「高山の家はや・・・山田殿に・・・ジ・・・ジュストは・・・まだ小さい・・・山田殿のも・・・下ならば・・・。」
「殿ォォォーッ!!」
高山飛騨守友照、霊名ダリオ、享年34歳で非業の最期を遂げた。
正史よりも約30年早い死であった。
「撤退だ、退け!! 沢城に退くぞ!!」
久高は涙をこらえながら大声で叫ぶ。
高山軍は沢城へ帰還した。
高山友照暗殺の報はすぐさま宇陀全域に伝わった。
山田城大広間にて
「・・・なんということだ・・・。」
義輝は茫然と立ち尽くしている。
「そ・・・そんな・・・シゲちゃんに会いに行く。」
美佳は大広間を飛び出していった。
「僕も!!」
岳人も続く。
「・・・馬を出します。」
九兵衛も後を追った。
「秋山と十市が手を結ぶ・・・そういうことか・・・」
早馬で帰ってきた景兼は拳を握りしめてうつむく。
「・・・みなさん・・・。」
その様子を心配そうに朋美が見つめていた。
吉野への旅に出たばかりの私にも急使がやってきた。
「な・・・なんということだ・・・。」
私は頭の中が真っ白になった。
戦国時代にタイムスリップしてから出来た友人の赤埴信安と高山友照。
会社にもここまで波長が合うヤツらはいない。
特に友照はまだ知り合ってわずかなのに誇りにさえ思える存在だった。
井足城の城主となった六兵衛は友照暗殺の報を聞き涙する。
すぐに動くべきか・・・島殿は・・・島殿の心中は・・・
檜牧城の清興は怒りに震えていた。
「兵を出すぞ・・・芳野城を奪還する。高山殿の敵討ちじゃ!!」
家来たちが必死になだめているも
「敵を・・・敵討ちをさせてくれ・・・頼む・・・。」
清興は力なく座り込んだ。
畠山を離れ、筒井を離れ、路頭に迷っていた私と我が一族を客将として招いてくれた恩・・・。
山田大輔の家来になる際も快く送り出してくれた恩・・・。
まだ何も・・・何も返せておらぬ・・・
「俺は高山殿に何のお返しもできておらぬのじゃァァ!! ウオォォ!!」
清興の悲しい叫びに家来たちもただ涙するだけであった。
芳野城内にて
「まさか、このような日がくるとはのう直国殿。」
満面の笑みを浮かべ酒を飲むのは十市家当主である十市遠勝。
「これで弾正様も少しは溜飲が下がるじゃろうな。」
一息に酒を飲み干すのは秋山家当主の秋山直国。
「次はどうしますかのう?」
遠勝は直国に酌をする。
「お、すみませぬな・・・そうですな。筒井と山田をぶつけますかな。」
直国の眼光が鋭くなる。
遠勝は手をパンパンと二回叩くと
「お呼びで・・・」
1人の男が現れた。友照を暗殺した忍びだった。
「幻柳斎、筒井と山田を争わせたいのじゃが・・・やれるか?」
「御意・・・お時間はいただきますが。」
その男、幻柳斎は姿を消した。
「九鬼幻柳斎・・・あまりに危険な男であるが故に、九鬼を追放された元九鬼忍軍頭領でしたかな。」
直国が言う。
「使える者は使う・・・使えなくなれば・・・コレじゃて。」
遠勝はうなずくと首を斬るジェスチャーをした。
大和の国で大きな動乱が巻き起こっていく・・・その始まりであった。
「わんわんわん♪」
私はサスケを連れて散歩をしていた。
山城と化した我が家、周囲を一緒に歩くだけでサスケは喜んでくれる。
山田の城下町も本格的になりつつあった。
我が家から見下ろす景色はいつ見ても不思議なものだ。
芳野城を陥落させた私たちはほぼ宇陀をまとめつつあった。
残るは宇陀秋山城の秋山直国ぐらいである。
ただ秋山は龍王山城の十市家との争いに精一杯の状況。
こちらに害を及ぼさない限り、干渉することはないだろう。
ただ三好三人衆の後ろ盾を得た筒井家の逆襲で大和の国は混沌化の一途を辿っていた。
十市家も秋山家も同じ松永の傘下でありながら敵対を続け、筒井家と十市家も長年の敵同士である。
「殿、檜牧から島様が来られましたぞ!!」
「おお、わかった。すぐに行きますと伝えて。」
「はっ!!」
伝えにきたのは高井義成。かつて沢家に滅ぼされた土豪の出だそうだ。
最近は仕官したいという人たちが多いが、その中でも逸材だった。
刀、槍、弓の全てに心得があり、特に弓に関しては義輝や景兼が絶賛する程の腕をもつ逸材である。
大広間では清興が待ち受けていた。
義輝、景兼も同席している。
「最近ですが、都祁の方で不穏な動きがあるようですぞ。」
清興が言う。
「都祁の吐山光政か。」
景兼は首をひねる。
「更に戒場にも同様の動きが見られます。」
戒場・・・宇陀の国人戒場範家ですか・・・。
松永方ですが、こちらに攻めてくる意思はなかったはず。
「景兼、どう思う?」
「吐山と戒場を合わせても我らに太刀打ちできないでしょう。」
私の声に景兼は即答するも、
・・・何故だ・・・悪い予感がする・・・。
「景兼、不安要素があるなら言ってください。」
「殿、少しお時間をいただきます。」
景兼は席を離れた。
吐山と戒場の軍勢を合わせても檜牧を守る清興の兵のみで対処できよう。
ならばどうなのだ・・・秋山か?
秋山が攻めてきたとしても高山殿が対処される。
ただ・・・何か悪い予感がするのだ。
「誰かおらぬか?」
景兼が呼ぶと一人の侍がやってきた。
「六兵衛のところに向かうと殿にお伝えしておくのだ。」
そう言い残すと景兼は馬を飛ばして井足に向かった。
山田城の城下町にて
「冬でも温かいね♪ここは。」
美佳は楓の鍛冶場にいた。
「もうすぐ春よ・・・でもここはいつも夏だけどね♪」
楓は汗を流しながら鉄を打っている。
火照った身体、紅潮した顔は真剣そのもの。
だが、その様子を見つめていた美佳はいやらしい顔で言った。
「楓、なんかエロいんですけど。」
「!?」
「男だったらイチコロだね・・・いいわ・・・。」
「何、何言ってんの?」
「あたしも手伝うの・・・そそられた♪」
「無理だって火傷するって!!」
二人はもつれ合って倒れる。
「だから危ないって・・・」
「ゴメン、熱くなって頭がおかしくなったかも・・・」
そのとき
「美佳様、おられますか!!」
一馬が鍛冶場に入って来た。
「!?」
美佳と楓のもつれ合っている姿を見て鼻血を吹き出し卒倒する。
「これ・・・誤解されるヤツよ・・・。」
楓が美佳を睨む。
「ゴメン・・・」
手を合わせて謝る美佳だった。
「誤解だからね・・・勘違いしないでよ。」
「わかっております。」
美佳と一馬は城へと歩いていた。
「パパもあたしに何の用があるんだろね・・・」
美佳の独り言。
そんな美佳の横顔を見つめる一馬
ああ・・・さっきのは絶対に忘れないでおこう・・・
「な・・・何? あたしをじっと見つめて・・・?」
「申し訳ございません・・・」
「何よ?」
すると一馬の顔つきが変わった。
美佳の左手を掴むと壁ドンをする。
「・・・!?」
動揺する美佳の耳元で一馬はささやいた。
「俺のオンナになれって・・・」
美佳は顔が真っ赤になる。
すると一馬は笑い出した。
「ハハハ、冗談でございます。」
「何よ・・・何よそれ!!」
キレた美佳が一馬に詰め寄っていくも
「間違えました・・・私の嫁になってください♪」
「・・・ふざけんな~!!」
逃げる一馬を追いかける美佳。
その様子を九兵衛がずっと見ていた。
なんだよ・・・あれ・・・おかしいだろ・・・
俺の方が美佳様を・・・
九兵衛は唇を噛み締めながら遠くの二人に背を向けた。
大広間にて
「どうしたのパパ?」
「美佳に頼みたい事があるんだ。」
その様子を見つめる九兵衛。
「・・・」
九兵衛の美佳への視線がおかしいのに気づく一馬。
「美佳に私の留守を頼みたい。」
「えっ・・・パパどこに行くの?」
美佳が私に詰め寄ってくる。
「吉野の小川弘栄殿のところに行ってくる。一馬、義成。お供してください。」
小川弘栄は吉野にて大きな勢力を持つ丹生川上神社の神主だ。
神主でもあり領主でもある。
書状でのやり取りは繰り返しているが、実際に会わないといけないだろう。
しかし、その間に事態は風雲急を告げる・・・
芳野城では友照が直々に出向いて城の改修を始めていた。
そこに、
「殿!! 敵の奇襲でござる・・・。」
1人の兵が駆け込んでくる。
「秋山か!!」
「はい、秋山の軍勢がこちらに迫ってきております。」
「やはりな・・・兵を回せ!!」
友照の号令で高山軍が動き出す。
「私も行くぞ、馬を!!」
友照が馬に乗ろうとすると
「大変ですぞ、十市が・・・十市の軍がこちらに攻めてきてますぞ!!」
更に1人の兵が駆け込んできた。
「秋山と十市が手を結んだというのか!!」
友照の動きが止まった・・・そのときだった。
「ぐ・・・グアッ・・・」
駆け込んできた兵が友照を背後から刺していた。
更にもう1人の兵も友照に襲い掛かる。
「殿ォォ!!」
近くにいた家臣がその兵を斬り捨てる。
高山家家臣の神谷与五郎久高だ。
更に返す刀でもう1人の兵も斬りつけるも・・・
「クッ・・・」
その兵は素早い動きで躱した。
「忍びか・・・!! 曲者ぞ!! 皆の者であえ!!」
久高の声に家臣団や兵たちが集まってくるも、その兵は素早い動きで攪乱しながら逃げていく。
「逃がすかァ!!」
「も・・・もう良いぞ・・・与五郎・・・。」
友照は地面に倒れ伏す。
「殿ォォォ!!」「なんということじゃァァァ!!」
家臣団の悲痛な叫びが響き渡る。
「皆の者・・・よ・・・よく聞け・・・。」
友照は最後の力を振り絞り声を出す。
「高山の家はや・・・山田殿に・・・ジ・・・ジュストは・・・まだ小さい・・・山田殿のも・・・下ならば・・・。」
「殿ォォォーッ!!」
高山飛騨守友照、霊名ダリオ、享年34歳で非業の最期を遂げた。
正史よりも約30年早い死であった。
「撤退だ、退け!! 沢城に退くぞ!!」
久高は涙をこらえながら大声で叫ぶ。
高山軍は沢城へ帰還した。
高山友照暗殺の報はすぐさま宇陀全域に伝わった。
山田城大広間にて
「・・・なんということだ・・・。」
義輝は茫然と立ち尽くしている。
「そ・・・そんな・・・シゲちゃんに会いに行く。」
美佳は大広間を飛び出していった。
「僕も!!」
岳人も続く。
「・・・馬を出します。」
九兵衛も後を追った。
「秋山と十市が手を結ぶ・・・そういうことか・・・」
早馬で帰ってきた景兼は拳を握りしめてうつむく。
「・・・みなさん・・・。」
その様子を心配そうに朋美が見つめていた。
吉野への旅に出たばかりの私にも急使がやってきた。
「な・・・なんということだ・・・。」
私は頭の中が真っ白になった。
戦国時代にタイムスリップしてから出来た友人の赤埴信安と高山友照。
会社にもここまで波長が合うヤツらはいない。
特に友照はまだ知り合ってわずかなのに誇りにさえ思える存在だった。
井足城の城主となった六兵衛は友照暗殺の報を聞き涙する。
すぐに動くべきか・・・島殿は・・・島殿の心中は・・・
檜牧城の清興は怒りに震えていた。
「兵を出すぞ・・・芳野城を奪還する。高山殿の敵討ちじゃ!!」
家来たちが必死になだめているも
「敵を・・・敵討ちをさせてくれ・・・頼む・・・。」
清興は力なく座り込んだ。
畠山を離れ、筒井を離れ、路頭に迷っていた私と我が一族を客将として招いてくれた恩・・・。
山田大輔の家来になる際も快く送り出してくれた恩・・・。
まだ何も・・・何も返せておらぬ・・・
「俺は高山殿に何のお返しもできておらぬのじゃァァ!! ウオォォ!!」
清興の悲しい叫びに家来たちもただ涙するだけであった。
芳野城内にて
「まさか、このような日がくるとはのう直国殿。」
満面の笑みを浮かべ酒を飲むのは十市家当主である十市遠勝。
「これで弾正様も少しは溜飲が下がるじゃろうな。」
一息に酒を飲み干すのは秋山家当主の秋山直国。
「次はどうしますかのう?」
遠勝は直国に酌をする。
「お、すみませぬな・・・そうですな。筒井と山田をぶつけますかな。」
直国の眼光が鋭くなる。
遠勝は手をパンパンと二回叩くと
「お呼びで・・・」
1人の男が現れた。友照を暗殺した忍びだった。
「幻柳斎、筒井と山田を争わせたいのじゃが・・・やれるか?」
「御意・・・お時間はいただきますが。」
その男、幻柳斎は姿を消した。
「九鬼幻柳斎・・・あまりに危険な男であるが故に、九鬼を追放された元九鬼忍軍頭領でしたかな。」
直国が言う。
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