完結🌟婚約破棄しない王子様α(感想お待ちしてます)

只深

文字の大きさ
21 / 24

21結婚した王子様α

しおりを挟む

「ノア……そろそろ落ち着いたか?」
「僕は落ち着く理由が見つかりません。どうしたらいいのか分からないです!」
「ううむ……」


 氷に覆われた白の窓を擦り、ノアは暖かな室内から外の景色を眺めている。王城の一角にある賓客のための塔に私たちは泊まる事になった。
 前世から何十年……もしかしたらもっとしばらくぶりに再会した二人は、向いの塔で同じ様に窓辺にたたずみこちらに手を振っている。



「リーファさんはとっても強かったですね!衛兵の誰もかないませんでした!」
「あぁ、そうだな。私も剣がなければ危うかった」
 
「……あの二人にタッグを組まれたらフィンも負ける?」
「ノアを守るためになら誰にも屈せぬと言える。ただ、あれはとても厄介だ。曲刀使いと相対した事はあるが、放り投げるとは思わなかった」
 
「本当に……かっこよかったなぁ。ぼくもあんな風にしてみたい。リーファさんに教えてもらえるかな」

「……護身術の範囲なら、教えてもらえる様に頼もう。私も少し、気になる」
「うん!!」 

 

 満面の笑みを浮かべたノアは、窓辺で手を取り合って愛を囁く二人をうっとりと見つめていた。
 そう、衛兵をのしてまで招かれていない王城に侵入してきたリーファは形式上捕縛されている。
 
 ツィルドラ王家は賓客室をあてがったのだから引き離そうというわけではないだろうが、このまま国に帰してしまうわけにはいかない。

 そのため、衛兵や私と形だけの手合わせをした。決して彼女の戦闘興味があったからではない。
 ……そういう事にしておこう。



「そろそろ私の妃と相談したいのだがな。少なくとも、彼らがデシェレトに帰るまでにはツィルドラで何かを証明しなければならない」
「はい!……お二人が国に帰っても問題ないと証明するんですよね?神様が罰を下さないって」


 長椅子に座り込み、自分の額を抑える。

 あの二人を返してやる理由がなければツィルドラからは出られないし、結婚も許されないだろう。
 運命は証明できたとして、神罰が下らないと言う確証。もしくは、下ったとしてそれを挽回できるという確証を示さなければならない。


 ……おかしいな、私たちは駆け落ちをしている最中のはずだったのに。オアシスに滞在した後は祖父、祖母に密かに会ってツィルドラでのんびりするはずだった。何故こうなった?



「今日のところは休んで明日氷壁を見に行こう。私も直に見たことがなく……ノア?」
「…………」

 ノアは窓辺に座ったまま、手に持った地図を真剣な目で眺めている。私の声が耳に入らぬほど集中している様だ。
 いかに暖かい室内だとしても、窓辺は冷える。地図を抱えたノアをそうっと持ち上げて長椅子に座らせた。近くにテーブルとランプを設置して、肩を叩く。

「目が悪くなってしまう。明るいところで見なさい」
「ありがとう。月明かりで見た時にちょっと気付いたんだ。フィン、この地図って傷がついても大丈夫?」

「あぁ、問題ない。これは一般的に流通している地図だからな。印を書いても、破っても構わない」
「わかった」



 テーブルの上の羽ペンを掴み、彼は地図にサラサラと線を書き記す。
ツィルドラのさらに北にあるのは凍てつく大地、人も獣も住めない氷の国だ。誰にも治めることはなく、命はそこに存在しないと言われている。

「これでよし。フィン、昔の地図ってこの部屋にある?」
「……あるが、」
 
「持ってきて!」
「あ、あぁ……」


 真剣なノアの雰囲気に気押されて、部屋に掲げられた古い地図を壁から外す。それをテーブルに広げると、ノアは最近改訂されたばかりの地図を並べて昔の地図との相違点を書き込んで行った。

「――ハッ、これは。なるほど、ツィルドラの氷は……」
「うん!きっと……神様は神罰なんか下していないと思うんだ。そうじゃなければ、僕とフィンが出会うはずなかったでしょう?
 カマルとリーファも、こうして再会している。何度も繰り返された生死の中で決して離れることもなく、ずうっと二人は愛し合っているんだよ」

「…………」


 ノアが書いた地図を眺め、私は彼を抱き上げる。そうだ、いつも私の番は誰も気づかない事に気づく。
『これが定めなのだ』と言う常識を信じず、目の前にある事実を信じる。

 私たちの結ばれた絆と、カマルたちの運命を……何度も巡り合う奇跡を信じたのだ。




「明日、氷壁に行こう。現地を見てみなければ」
「うん。楽しみだな……僕、ツィルドラのお役に立てそう?」
「一年中氷に閉ざされたこの国にも春が来る。ノアは、お祖父様の腰痛を間違いなく和らげ、国に豊かな暮らしを齎すだろう。そして……あの二人も、幸せになれる」

「うん、うん!えへへ……」

 

 私たちはお互いを強く抱きしめ合い、幸せな気持ちに包まれる。あっという間に解決策を見出してしまった私の番は、掠れた声でささやいた。


「今夜は、控えめにしてね」
「……しないつもりだったのに、そう言われると我慢などできないぞ」
 
「ふふ、僕が『我慢して』って言ったことなんてあった?」
「ないな、ダメとは言われるが」


「……わかってるでしょ?ボクの『ダメ』は……」

 ノアの艶やかな唇に親指を当てて、ゆっくりとなぞる。愛らしかった笑みはやがて、蠱惑的な色を浮かべた。
 
shhhシー……口を開くな。それは、ベッドの中で聞かせてくれ」

 
 そそくさとランプの光を消して、ノアを再び抱き上げ、窓辺の横を早足で通り抜ける。横目に見た向いの塔もいつのまにか明かりが消えていた。

 

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

胎児の頃から執着されていたらしい

夜鳥すぱり
BL
好きでも嫌いでもない幼馴染みの鉄堅(てっけん)は、葉月(はづき)と結婚してツガイになりたいらしい。しかし、どうしても鉄堅のねばつくような想いを受け入れられない葉月は、しつこく求愛してくる鉄堅から逃げる事にした。オメガバース執着です。 ◆完結済みです。いつもながら読んで下さった皆様に感謝です。 ◆表紙絵を、花々緒さんが描いて下さいました(*^^*)。葉月を常に守りたい一途な鉄堅と、ひたすら逃げたい意地っぱりな葉月。

「オレの番は、いちばん近くて、いちばん遠いアルファだった」

星井 悠里
BL
大好きだった幼なじみのアルファは、皆の憧れだった。 ベータのオレは、王都に誘ってくれたその手を取れなかった。 番にはなれない未来が、ただ怖かった。隣に立ち続ける自信がなかった。 あれから二年。幼馴染の婚約の噂を聞いて胸が痛むことはあるけれど、 平凡だけどちゃんと働いて、それなりに楽しく生きていた。 そんなオレの体に、ふとした異変が起きはじめた。 ――何でいまさら。オメガだった、なんて。 オメガだったら、これからますます頑張ろうとしていた仕事も出来なくなる。 2年前のあの時だったら。あの手を取れたかもしれないのに。 どうして、いまさら。 すれ違った運命に、急展開で振り回される、Ωのお話。 ハピエン確定です。(全10話) 2025年 07月12日 ~2025年 07月21日 なろうさんで完結してます。

ただ愛されたいと願う

藤雪たすく
BL
自分の居場所を求めながら、劣等感に苛まれているオメガの清末 海里。 やっと側にいたいと思える人を見つけたけれど、その人は……

αが離してくれない

雪兎
BL
運命の番じゃないのに、αの彼は僕を離さない――。 Ωとして生まれた僕は、発情期を抑える薬を使いながら、普通の生活を目指していた。 でもある日、隣の席の無口なαが、僕の香りに気づいてしまって……。 これは、番じゃないふたりの、近すぎる距離で始まる、運命から少しはずれた恋の話。

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー ✻改稿版を他サイトにて投稿公開中です。

契約満了につき

makase
BL
仮初めの恋人として契約を結んだ二人の、最後の夜。

箱入りオメガの受難

おもちDX
BL
社会人の瑠璃は突然の発情期を知らないアルファの男と過ごしてしまう。記憶にないが瑠璃は大学生の地味系男子、琥珀と致してしまったらしい。 元の生活に戻ろうとするも、琥珀はストーカーのように付きまといだし、なぜか瑠璃はだんだん絆されていってしまう。 ある日瑠璃は、発情期を見知らぬイケメンと過ごす夢を見て混乱に陥る。これはあの日の記憶?知らない相手は誰? 不器用なアルファとオメガのドタバタ勘違いラブストーリー。 現代オメガバース ※R要素は限りなく薄いです。 この作品は『KADOKAWA×pixiv ノベル大賞2024』の「BL部門」お題イラストから着想し、創作したものです。ありがたいことに、グローバルコミック賞をいただきました。 https://www.pixiv.net/novel/contest/kadokawapixivnovel24

今からレンタルアルファシステムを利用します

夜鳥すぱり
BL
大学2年の鳴水《なるみ》は、ずっと自分がオメガであることを隠して生きてきた。でも、年々つらくなる発情期にもう一人は耐えられない。恋愛対象は男性だし、男のアルファに会ってみたい。誰でも良いから、定期的に安全に話し相手をしてくれる人が欲しい。でもそんな都合のいい人いなくて、考えあぐねた結果たどり着いた、アプリ、レンタルアルファシステム。安全……だと思う、評価も星5で良いし。うん、じゃ、お問い合わせをしてみるか。なるみは、恐る恐るボタンを押すが───。 ◆完結済みです。ありがとうございました。 ◆表紙絵を花々緒さんが描いてくださりました。カッコいい雪夜君と、おどおど鳴水くんです。可愛すぎますね!

処理中です...