婚約破棄された令嬢は海に愛される

月夜の庭

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序章

神様に会う

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同級生に殺された後、目覚めたら真っ白い空間にいた。

何も無い空間だけが広がっていた。


自分を見ると全身が傷だらけで、白いノースリーブのワンピース1枚で裸足だった。

ワンピース……薄い。


小学生の私でも、少し恥ずかしい。


私の目の前に女性が現れる。

金髪美女…………あの人の妹を思い出させる容姿に、眉間に皺が寄るのが分かる。

関係無いのは、その優しく眼差しで分かる。


『こんにちは』


これでも引きこもりの腐女子だったから、嫌でも分かる………この人は神様だ。

神話の偽物では無く、本物だ。


でも、敬う気にはなれなかった。


「何?」

突き放し多様な返事になってしまう。


『え?』

キョトン顔が可愛くて、余計に心がささくれる。

「要件は何?」


『…………』


「私は今更………神様なんかに期待はしないわ。慈悲の心とか、無償の愛とか言う奴が1番嫌いよ。偽善は結構よ。何かの打算無しに呼ばれるとは思っていないわ」


すると神様は、頭を下げた。


『申し訳ございませんでした』


「は?」

謝罪されるとは思っていなかった。


『本来なら傷付いていた魂に自然治癒させた挙句、新しい人生に影響が出るほど傷が治り切っていない方を転生させるなんて、ありえない行為なんです』


「でも私は」


『なんの救済処置も無く、放ったらかしにしていい魂ではなかったのに、見守り担当が存在を見過ごし、転生担当の者が確認しなかった事を代表して心から謝罪致します』


あの苦痛は罰とかじゃなくて、ミスだったんだ。


どこかホッとする。


「私は人を愛した事を神様にまで否定されたのかと思っていました」


『違います!美しい魂が、酷く傷付けられるなんて、あってはならない事です』


「今の私は、美しくは無いわ」


あの人が愛してくれた私じゃない。


『いいえ。貴女は傷付けられても、怒りや憎しみに支配される事はありませんでした。強く………とても美しい魂です』


ニッコリ微笑みながら、私の両手を握り締めていた。


一瞬だけ、神様の眉毛が動いたのを見逃さなかった。


「回りくどい事は止めて。私に何かさせたいんでしょう?謝罪は罪悪感を軽くしたいからよね。要件だけ話して」


ゆっくり両手を引き抜いた。


『振り払ったりしないのですね』


「…………」


『今は癒されてください』


「…………誰が?」


『もちろん貴女が………ポセイドンに』


それは愛してくれた人が、神話になった時の名前。


海洋神として伝わった愛しい人。


『ポセイドンは、私利私欲に塗れた世界に転生しました。ですが、その世界の闇の中で光を見いだせずに、幼くして死にました。実は貴女の処刑の後、復讐の鬼と化した彼の魂は深く傷付いていましたので、その影響が出ていました』


復讐?


『彼は………自分の妹さんに、貴女に掛けた物と同じ薬品を浴びせかけたのよ。運が良かったのか悪かったのか、頭には掛からなかったけど。それでも手足の肌は爛れてしまったの』



「あの優しい人が………信じられない。私なんかの為に」



私を想いを復讐していた事実を聞かされ、不思議と嬉しいとは思えなかった。

それよりも、優しい彼が人を傷付けるなんて、信じられなかった。



『それに激怒した両親に処刑されたのよ。薬品のプールに落とされて』


あまりの事実に涙か溢れる。


『転生して………前世の記憶がある妹に殺されたわ』


妹さんに復讐された?


『彼の周りの女性を……片っ端から傷付けていったの。それに激怒して抗議した彼を殺した』


なんて醜い。


『前世の傷が残ったまま転生した彼を見つけたのは、水の精霊王でした。彼を保護した精霊王は水の力で癒しました。彼もまた精霊として生きています』


「話の流れからすると、精霊に癒されろって事ね」


『はい。魂の癒し方は複数存在します。ですが、貴女には直接的で確実な方法で癒されて欲しいのです』


「はぁ?」


直接的で確実な方法って?と考える私の背後から、ふわりと何かが私を包んだ。



まるで水の塊がピッタリと肌に張り付く感じにゾクゾクする。




『彼は…………私が管理する世界で、海の精霊王をしています』



まとわりつく何かが、精霊王である彼が放った水のベールに似た力なのだと理解した時には、神様の姿はなく、海の匂いがする彼の腕に抱き締められていた。



首だけ振り向くと、出会った頃の姿をした精霊王の目から涙が溢れていた。


『会いたかった。メデューサが本来の美しい姿で転生出来るように、癒してあげよう』




「メルビン………メルビン·ポセイドンなの?」


『やっと見つけた』


「やっと?」



彼は微笑みながら、私を抱き上げた。
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