婚約破棄された令嬢は海に愛される

月夜の庭

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1人目の自称ヒロイン

自称チートは、ただの無知

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わたくしは抱っこされている女の子に近寄る。


騎士と目が合うと、何故か息を飲んで凝視される。


首を傾げると、顔を赤くして視線を外される。


騎士の腕には、緑色の髪に黄色い目の可愛い女の子が、半べそ状態で抱っこされている。


「こんにちは。わたくしはメデューサよ。貴女の お名前は?」


『………リリ』


「まぁ~リリちゃんって、仰るのね?お名前も可愛らしいのね」


優しく頬を撫で、小さな頭を いい子いい子する。


「………喋った………メデューサ………やっと会えた」


なんかボソボソと呟いたけど、わたくしの耳には届かなかった。


ビックリしている騎士をよく見ると、真っ赤な短髪と目に、目の下から顎にかけて傷がある。



ワイルド系のイケメン騎士です。


日焼けした感じが…………あれ?彼から…微かに海の香りがする?


赤い目を見ていると、抱き着きたい衝動に駆られて困惑する。


彼に気を取られながらも、抱っこしている女の子が、わたくしに向かって手を伸ばしたので、受け止めます。


ギューって、抱き着いてきて、子供特有の甘い香りが鼻をくすぐり、とても暖かい。


優しく背中をさすってあげると、しがみつき泣き出す。


声を殺して静かに。


こんな小さい女の子が、声を殺して泣いている姿に胸が締め付けられる。



「この子は………ゴブリンの巣を一掃した時に、捕えられたいた女性達の中にいました。まだ幼いので乱暴はされていませんが………見ていたかと」


心地よい重低音が耳を擽り、胸をかき乱す。


肌が泡立つ様な感覚を誤魔化す為に、女の子に視線を移す。



ゴブリンは繁殖能力が低く、人間の女性を捕まえては………子孫を残す。


女性達の意思なんて関係ない。


「怖い想いをしたのね」

背中をさすりながら、その小さな頭に頬を擦り寄せる。


「保護はしたのですが………口が聞けなかったんです。名前も、今……知りました」


騎士は悲しそうな顔で、女の子の背中を見詰めている。


「自分の髪が……ゴブリン達とは正反対の為か…………ベッタリ離れなかったんです」


リリちゃんにとって、彼の傍は安全な場所だったけど、安らげる場所では無かったようです。


「食堂の……おばちゃんでも、抱き着か無かったのに」


おや?性別は関係ないのかしら?


「リリちゃん、うちの子になる?」


『うん……ぐずっ………メデューサ様と契約する……ずびっ』


「契約?」


わたくしがビックリしていると、ポンと音を立てて黄緑色のムササビの姿になり、胸を飛び込んできた。


「あっ………色や性別では無く………属性」


「ふふふっリリちゃんは、風の精霊だったのね。しかも生まれたての」


わたくしは風の魔力が、とても強いです。


生まれたばかりのナナちゃんは、赤ちゃんの姿で森で泣いていたら、ゴブリンに拾われたらしく、乱暴される女性達の中に放り込まれ、逃げることも出来ずに、震えていたそうです。


早く保護されて良かったです。


ちなみに、本来の姿はムササビらしいです。


『うん。メデューサ様は、暖かくて優しくていい匂いです』


「あらあら、可愛い相棒が出来ましたわ」


「……………可愛らしい」



騎士はじーーーっと頬を赤らめながら、ナナちゃんを見ている。


「そうですわね。こんなに可愛らしい精霊だとは思っておりませんでしたわ」


「え……いや………違…………」


ナナちゃんを肩に乗せて、ロゼッタの方を見ると、女の子が地団駄を踏んでいた。


「私は! 騎士団が良いの!」


「あのね………騎士団の方々も暇じゃないのよ?子守りまでさせるなんて、可哀想ですわ」


「これから向かう孤児院の園長は、とても優しく方だから………」


「なんで騎士団で保護出来ないのよ!?」


「孤児院でも託児所でもないからですわ」


「うるさい! あんたは関係ないでしょう!!」


何故か孤児院に行きたくない女の子をロゼッタと金髪の騎士の2人で説得していました。


「ロゼッタ、こちらは解決しましたわ。ナナちゃんは、わたくしの契約精霊になりましたわ」


「あら?可愛らしい精霊ね。こっちは騎士団で保護しろの一点張りで困りましたわ」


この子は、おそらく転生者。


だからこそ、真っ先にロゼッタが声を掛けたのだと思います。


「孤児院に行くくらいなら、冒険者になるわ!もしくは貴族の養女!」


「あのね………子供は冒険者になれないのよ。そもそも冒険者登録は16歳からって決まっているのよ」


呆れ顔でロゼッタが答える。


でも、とは言わないので、連れて帰りたくないようです。


「だったら貴族を紹介しなさいよ!」


「貴女は、何か特技でも有るの?」


貴族の養女になる為に、特技が必要とは聞いたことありません。


まぁ~騒がしい子は、わたくしも避けたいですね。


「魔法が使えるわ」


「「みんな使えるし」」


ロゼッタと同時に突っ込んでしまいました。


この国の人間は、必ず火水風土の四大元素の魔法が使えます。


得意不得意や相性は有りますが、わたくしも風が一番強いだけで、火もおこせるし水を凍らせられます。


「戦えます」


「「「「…………」」」」


この場の全員が言葉を失った。


騎士は選択出来る職業の1種だけど、他の一般市民が無力だという訳ではありません。


一般市民の女性でも自衛出来る程度の戦闘能力が有ります。


ゴブリン等に捕えられた女性達は、魔法拘束や怪我で動けないうちに………何度も襲われ、心が壊れてしまうのです。


魔法と一緒で、得意不得意は有りますけどね。


当然の事ですが、成人女性を誘拐するのは困難です。


その為に戦えない子供の内から誘拐する事も少なくありません。


そして戦闘に特化した騎士団が討伐に向うゴブリンの巣とは、数が増えて統率が取れ始めた集落を意味します。


放っておけば、近くの集落に甚大な被害をもたらす危険が有るからです。


「私には光魔法の素質がある筈です」


あるですか。


ここで、ハッキリ言います。


光や闇魔法は有りますが………特に珍しくありません。


光や闇、無属は、四大元素の掛け合わせで使える魔法の事で、使えない人はいません。


治癒も同様です。


わたくしは隣に居た赤い髪の騎士に、小声で話し掛けた。


「あの………あの子は…どういう経緯で、騎士団にまとわりついているのですか?」


甘い微笑みを浮かべて、わたくしを見詰める騎士に胸がザワつく。


「それが、ゴブリン討伐の帰りに、街の外で見付けたのだが、我々は迷子かと思い、一緒に門をくぐったら…………騎士団の詰所に付いてきて、居座って居るんだ」


確かに……わたくしから話し掛けたけど、なんか距離も近い気がする。

今にも抱き寄せられそうな距離に、内心は戸惑っている。


「保護したチビと一緒に孤児院に連れて行こうとして抵抗されてるんだ」


金髪の騎士が溜息混じりに補足してくれた。


「わたくし………ナナちゃんは可愛いので、精霊でなくても連れ帰るつもりでしたが………あこの子は……………ちょっと」


我儘と言うか………濃いです…濃厚なので遠慮したいです。


「私も、あんな妹とか無理」


「あの………君達は…貴族なの?」


更に小声で金髪の騎士が聞いてきた。


「わたくし達は、ゴルゴン公爵家の者ですわ。お忍びですので内密に、お願い致しますわ」


ね?と首を傾げながら口に人差し指を当てる。


金髪の騎士は無言でコクコクと頷く。


「「「「困(りましたわね)ったな」」」」


4つの溜息が漏れるのでした。
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