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ぬらりひょんの憂鬱
ぬらりひょんの憂鬱 一
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「文河岸お悩み相談所は、こちらでよろしいですか」
俺の視界の半分が、巨大な禿頭で遮られている。
「私、ぬらりひょんと申します」
8月の終わり。午前0時。
明らかに人ではないナニカが玄関口に立つには、申し分のない季節だ。
いくら営業時間を決めていないとはいえ、真夜中に突然の来客は困る。
寝室から出たばかりの俺は、寝巻がわりの甚平の紐を結びながら応えた。
「この時間のご相談は、予約が必要なんですが……」
「承知しております。文河岸玲さんはおいででしょうか」
「文河岸は自分ですが、予約を承った覚えは……」
「おや、猩々殿から伺ってはおりませぬか」
「猩々さん? いいえ、何も……」
またあのじじいか。
営業部長だとか勝手に役職を名乗った挙句に、連絡もなくホイホイと仕事回してきやがって。
――まったく、とんだ狸野郎だ。いや、猿か。
と、不意に寝室のドアが開く。
ドア越しに顔をのぞかせたのは、俺の秘書兼同居人の小梅だった。まだ少しあどけなさの残る顔立ちで、乱れた長めの黒髪をくしくしと手で梳きながら、着崩れた浴衣の襟を手で合わせている。
その指には俺のスマートフォンを挟んでいた。
「玲ちゃーん、なんかスマホにメール……? きゃっ、失礼しましたっ」
俺にスマホを手渡した小梅は、ぬらりひょん氏の姿を見たとたん、慌てた様子で部屋に引っ込んだ。その様子にぬらりひょん氏が申し訳なさそうな声を出す。
「すみません、お楽しみでしたか」
「いや、まだこれから……くっそ、今更送ってきやがった」
メールは、件の営業部長からだった。
内容は“今夜客が行くからよろしくね”だけである。
どうしろってんだ。
スマホから目を離し、軽いため息を漏らした俺は、とりあえずぬらりひょん氏を招き入れることにした。
「たった今確認いたしました。お入りください。――文河岸お悩み相談所へようこそ。私達は、人間社会に馴染めないお客様を助け、支援します」
――――
「で、ご相談というのは」
応接室にぬらりひょん氏――長いな、“ぬら氏”でいいか――を案内し、ソファに座らせる。
いつもの様に髪を後ろでまとめ、いつもの大正浪漫風味のメイド服に着替えた小梅が、いつもの様にお茶を出してくれる。
その彼女は俺の隣にちょこんと座り、盆を抱えてニコニコしながら、額に青筋を立てていた。さっきの房事を邪魔されたことを怒っているようだ。
そのくせ俺の甚平の裾をモジモジと触ってくるのがあざと可愛い。
「はい。その前に、あなた方は私のことをどれくらいご存知ですか?」
「あなたのこと、というと、つまり」
「ぬらりひょんについて、ってこと……?」
小梅の言葉にぬら氏が小さく頷いた。
俺が小梅を促すと、彼女は手で小さくOKサインを作り、背面のホワイトボードの前に立った。
「じゃあ、知っていることを挙げてみようか。良し悪しに関係なく挙げていくので、一通り出るまでは何もおっしゃらないでくださいね」
「承知しました」
「じゃああたしからいくね」
そう言った小梅は、くるりとボードに向き、ペンを持つ。
「妖怪の総大将……と」
「お、いきなりきたか。んじゃ、百鬼夜行の先頭」
「よそのおうちに勝手に上がってご飯を食べる」
「たとえ気付かれても気にされず、タバコ吸ったりしてる」
「頭が大きい、長い」
「ハゲ散らかしている」
「なんかヌラリとしてる感じ」
「なんかヒョンとしてる感じ」
言うたびに小梅がホワイトボードを埋めていく。
やがてボードが半分ほど埋まったところで、小梅がこちらを振り返った。
「……こんなところ、かな?」
「だな。総大将の割には小悪党感が否めないが」
一通り書いたところでぬら氏を振り返ると、彼は顔を真下に向け、力なくうなだれていた。
「すみません、つい悪ノリしてしまって」
「ごめんなさい」
一緒になって悪ノリしていた小梅も、ペコリと頭を下げた。
「いえ……いいんです……ただ、面と向かって言われると、ちょっと心に刺さるものが……ぁーもう死んじゃおうかな」
「いやいやいや、落ち着いて。こんなところで死なれちゃ面倒くさい」
「玲ちゃん、本音が漏れてる」
「おっと」
慌てて口を閉じると、ぬら氏はじっとりした目つきで俺を見上げてきた。
メンタルが弱い、も加えておこう。
「……この辺に丁度いい樹海とか滝とかありませんかね」
「ま、まあまあほら、お茶おかわりどうぞ?」
「……いただきます。というか文河岸さん、私を見ても怖がらないんですね」
「ええ、まあ。慣れてますから」
ぬらりひょんはジト目のまま、差し出されたお茶のおかわりをすする。
お気の毒な気もするが、このまま世間話をしていてもラチが明かないので、とりあえず俺は話を進めることにした。
「……で、今日はどんなご相談ですか? 今の質問と無関係ではないんでしょう?」
「え、ええ。……言われた通り、私は誰にも気付かれず、また仮に気付かれても“そこにいるのが当たり前”であるかの様に、誰にもその存在を疑われない。そうやって細々生きてきましたが、実は、問題はそこでして……」
「と、言いますと?」
「……」
「あの、ぬらりひょんさん?」
「……」
急にダンマリかよおい。
すると、俺の隣で小梅が腰を浮かせた気配がした。あ、やばい。
「……ねぇ」
肝心なところで黙り込んでしまったぬら氏に、大人しくしていた小梅が業を煮やしたようだ。
どん、と湯呑みをテーブルに叩きつけるように置き、妖怪の総大将に向かって眉を吊り上げる。
やめなさいよ、せっかく可愛い顔してんだから。
「あのね。ちゃんと正直に話してくれないと、こっちもどうしようもないのよ。……っていうかあたし達の素敵時間を奪ってることに早く気づいてくんないかなじーさん、妖怪の大将だかなんだか知らないけどナメたことしてっと切り刻むよ?」
こわいこわいこわい。こわいよ小梅ちゃん。
ほら、ぬら氏も「ヒッ」とか言って縮み上がってるじゃん。いやそれもどうなのよ総大将。小娘にビビらされて。
「あ、あの、文河岸さん、この娘さんもしかして」
「え? ああそうか。小梅は“種子鋏の付喪神”なんですよ」
種子鋏というのは、種子島で作られている、「刀鍛冶の打った鋏」だ。その独特な刃の反りは、使えば使うほど研ぎ澄まされ、切れ味が落ちることはない。
「しかも逸品、ガチの刀鍛冶の制作で、300年物です」
「ええっ!? 下手すると私と同年代……」
「……切れ味良くってよ?」
「ヒィッ」
付喪神というのは、大事に扱われてきた道具が魂を宿した人外のことだ。
つまり小梅は、うちで代々大事に使われてきた、刀鍛冶の作った鋏が変化した姿である。
その切れ味は推して知るべし。
「まあ、覚醒したのは20年ほど前ですけどね」
「はぁ……」
「所員が失礼いたしました。ですが、彼女がこう言うのも無理はない。妖怪の総大将ともあろう方にこんなことを申し上げるのは恐縮ではありますが」
「違うんです」
「は?」
「違うんです。私は妖怪の総大将でも、百鬼夜行の筆頭でも何でもありません!」
「へ?」
俺と小梅は思わず顔を見合わせる。
どゆこと?
ぬらりひょん氏に視線を戻すと、彼はなんかもう、見せてはいけない感じの顔をしていた。
「余りの! 存在感のなさに! 業を煮やした仲間から! せめて最初くらいは目立てと言われて! 無理やり前に出されたんですぅ! それを見た人間が! 先頭に立っているからっていうだけで! 一番偉いみたいな扱いをしてきて! 知らないうちに総大将ってことになっちゃったんですよおおおお!!」
その顔で号泣するんじゃねえって。
今日イチでホラーな顔になってるから。歪んだ鬼瓦かお前は。
――しょうがねえなもう。
「わかった、わかりました。ほら、このティッシュ使っていいですから」
ビィィィィィィィィム、ズビッズビィッ。
俺からティッシュを箱ごと受け取ったぬらりひょんは、爆音を立てて鼻をかむ。
「うわぁ……」
引いてやるなよ、小梅。
鼻をかみ、ようやく落ち着いた様子のぬら氏は、まだ少し赤い眼でこちらを見つめてきた。まあ、聞けば気の毒な話ではあるけども。
だいぶしょーもない妖怪ではあるが、長年生きているだけあって、眼力は中々のものである。
「これまで私は、目立たないからこそ、なんとか食いつなぐことが出来てきました。……ですがこれでは、現代の人間社会に生きているとはとても言えない」
「そうね、食い逃げ無断宿泊の常習犯だし」
「ぐふっ。……な、なので、私もちゃんとした仕事でお金を稼ぎ、ちゃんとお金を払って家系ラーメンを堪能したいのです!」
あ、家系好きなんですか。ちょっと意外。
「その手伝いをしろ、と。そうなると仕事を探さないといけないな……」
「ていうか、ここまでキャラの濃い人なのに、なんで気づかれないんだろうねー」
「妖怪としての能力、で片付けていいものか迷うわな」
「でも、そうなると接客業なんかは絶対無理だよねー」
「そこです!」
身を乗り出すぬら氏。だから濃いんだってば。
「ど、どこです?」
「気づかれないから就職も出来ない、自力で生計を立てるしかない。かといって手に職があるわけでもない。そこで私、見つけました! 自力で生計を立てて、しかも気づいてもらえるお仕事を!」
そう言って元・妖怪の総大将は立ち上がり、拳を握って宙を見つめ、叫んだ。
「私は! 動画配信者になりたい!!」
……は?
「はあああああああ!?」
俺の視界の半分が、巨大な禿頭で遮られている。
「私、ぬらりひょんと申します」
8月の終わり。午前0時。
明らかに人ではないナニカが玄関口に立つには、申し分のない季節だ。
いくら営業時間を決めていないとはいえ、真夜中に突然の来客は困る。
寝室から出たばかりの俺は、寝巻がわりの甚平の紐を結びながら応えた。
「この時間のご相談は、予約が必要なんですが……」
「承知しております。文河岸玲さんはおいででしょうか」
「文河岸は自分ですが、予約を承った覚えは……」
「おや、猩々殿から伺ってはおりませぬか」
「猩々さん? いいえ、何も……」
またあのじじいか。
営業部長だとか勝手に役職を名乗った挙句に、連絡もなくホイホイと仕事回してきやがって。
――まったく、とんだ狸野郎だ。いや、猿か。
と、不意に寝室のドアが開く。
ドア越しに顔をのぞかせたのは、俺の秘書兼同居人の小梅だった。まだ少しあどけなさの残る顔立ちで、乱れた長めの黒髪をくしくしと手で梳きながら、着崩れた浴衣の襟を手で合わせている。
その指には俺のスマートフォンを挟んでいた。
「玲ちゃーん、なんかスマホにメール……? きゃっ、失礼しましたっ」
俺にスマホを手渡した小梅は、ぬらりひょん氏の姿を見たとたん、慌てた様子で部屋に引っ込んだ。その様子にぬらりひょん氏が申し訳なさそうな声を出す。
「すみません、お楽しみでしたか」
「いや、まだこれから……くっそ、今更送ってきやがった」
メールは、件の営業部長からだった。
内容は“今夜客が行くからよろしくね”だけである。
どうしろってんだ。
スマホから目を離し、軽いため息を漏らした俺は、とりあえずぬらりひょん氏を招き入れることにした。
「たった今確認いたしました。お入りください。――文河岸お悩み相談所へようこそ。私達は、人間社会に馴染めないお客様を助け、支援します」
――――
「で、ご相談というのは」
応接室にぬらりひょん氏――長いな、“ぬら氏”でいいか――を案内し、ソファに座らせる。
いつもの様に髪を後ろでまとめ、いつもの大正浪漫風味のメイド服に着替えた小梅が、いつもの様にお茶を出してくれる。
その彼女は俺の隣にちょこんと座り、盆を抱えてニコニコしながら、額に青筋を立てていた。さっきの房事を邪魔されたことを怒っているようだ。
そのくせ俺の甚平の裾をモジモジと触ってくるのがあざと可愛い。
「はい。その前に、あなた方は私のことをどれくらいご存知ですか?」
「あなたのこと、というと、つまり」
「ぬらりひょんについて、ってこと……?」
小梅の言葉にぬら氏が小さく頷いた。
俺が小梅を促すと、彼女は手で小さくOKサインを作り、背面のホワイトボードの前に立った。
「じゃあ、知っていることを挙げてみようか。良し悪しに関係なく挙げていくので、一通り出るまでは何もおっしゃらないでくださいね」
「承知しました」
「じゃああたしからいくね」
そう言った小梅は、くるりとボードに向き、ペンを持つ。
「妖怪の総大将……と」
「お、いきなりきたか。んじゃ、百鬼夜行の先頭」
「よそのおうちに勝手に上がってご飯を食べる」
「たとえ気付かれても気にされず、タバコ吸ったりしてる」
「頭が大きい、長い」
「ハゲ散らかしている」
「なんかヌラリとしてる感じ」
「なんかヒョンとしてる感じ」
言うたびに小梅がホワイトボードを埋めていく。
やがてボードが半分ほど埋まったところで、小梅がこちらを振り返った。
「……こんなところ、かな?」
「だな。総大将の割には小悪党感が否めないが」
一通り書いたところでぬら氏を振り返ると、彼は顔を真下に向け、力なくうなだれていた。
「すみません、つい悪ノリしてしまって」
「ごめんなさい」
一緒になって悪ノリしていた小梅も、ペコリと頭を下げた。
「いえ……いいんです……ただ、面と向かって言われると、ちょっと心に刺さるものが……ぁーもう死んじゃおうかな」
「いやいやいや、落ち着いて。こんなところで死なれちゃ面倒くさい」
「玲ちゃん、本音が漏れてる」
「おっと」
慌てて口を閉じると、ぬら氏はじっとりした目つきで俺を見上げてきた。
メンタルが弱い、も加えておこう。
「……この辺に丁度いい樹海とか滝とかありませんかね」
「ま、まあまあほら、お茶おかわりどうぞ?」
「……いただきます。というか文河岸さん、私を見ても怖がらないんですね」
「ええ、まあ。慣れてますから」
ぬらりひょんはジト目のまま、差し出されたお茶のおかわりをすする。
お気の毒な気もするが、このまま世間話をしていてもラチが明かないので、とりあえず俺は話を進めることにした。
「……で、今日はどんなご相談ですか? 今の質問と無関係ではないんでしょう?」
「え、ええ。……言われた通り、私は誰にも気付かれず、また仮に気付かれても“そこにいるのが当たり前”であるかの様に、誰にもその存在を疑われない。そうやって細々生きてきましたが、実は、問題はそこでして……」
「と、言いますと?」
「……」
「あの、ぬらりひょんさん?」
「……」
急にダンマリかよおい。
すると、俺の隣で小梅が腰を浮かせた気配がした。あ、やばい。
「……ねぇ」
肝心なところで黙り込んでしまったぬら氏に、大人しくしていた小梅が業を煮やしたようだ。
どん、と湯呑みをテーブルに叩きつけるように置き、妖怪の総大将に向かって眉を吊り上げる。
やめなさいよ、せっかく可愛い顔してんだから。
「あのね。ちゃんと正直に話してくれないと、こっちもどうしようもないのよ。……っていうかあたし達の素敵時間を奪ってることに早く気づいてくんないかなじーさん、妖怪の大将だかなんだか知らないけどナメたことしてっと切り刻むよ?」
こわいこわいこわい。こわいよ小梅ちゃん。
ほら、ぬら氏も「ヒッ」とか言って縮み上がってるじゃん。いやそれもどうなのよ総大将。小娘にビビらされて。
「あ、あの、文河岸さん、この娘さんもしかして」
「え? ああそうか。小梅は“種子鋏の付喪神”なんですよ」
種子鋏というのは、種子島で作られている、「刀鍛冶の打った鋏」だ。その独特な刃の反りは、使えば使うほど研ぎ澄まされ、切れ味が落ちることはない。
「しかも逸品、ガチの刀鍛冶の制作で、300年物です」
「ええっ!? 下手すると私と同年代……」
「……切れ味良くってよ?」
「ヒィッ」
付喪神というのは、大事に扱われてきた道具が魂を宿した人外のことだ。
つまり小梅は、うちで代々大事に使われてきた、刀鍛冶の作った鋏が変化した姿である。
その切れ味は推して知るべし。
「まあ、覚醒したのは20年ほど前ですけどね」
「はぁ……」
「所員が失礼いたしました。ですが、彼女がこう言うのも無理はない。妖怪の総大将ともあろう方にこんなことを申し上げるのは恐縮ではありますが」
「違うんです」
「は?」
「違うんです。私は妖怪の総大将でも、百鬼夜行の筆頭でも何でもありません!」
「へ?」
俺と小梅は思わず顔を見合わせる。
どゆこと?
ぬらりひょん氏に視線を戻すと、彼はなんかもう、見せてはいけない感じの顔をしていた。
「余りの! 存在感のなさに! 業を煮やした仲間から! せめて最初くらいは目立てと言われて! 無理やり前に出されたんですぅ! それを見た人間が! 先頭に立っているからっていうだけで! 一番偉いみたいな扱いをしてきて! 知らないうちに総大将ってことになっちゃったんですよおおおお!!」
その顔で号泣するんじゃねえって。
今日イチでホラーな顔になってるから。歪んだ鬼瓦かお前は。
――しょうがねえなもう。
「わかった、わかりました。ほら、このティッシュ使っていいですから」
ビィィィィィィィィム、ズビッズビィッ。
俺からティッシュを箱ごと受け取ったぬらりひょんは、爆音を立てて鼻をかむ。
「うわぁ……」
引いてやるなよ、小梅。
鼻をかみ、ようやく落ち着いた様子のぬら氏は、まだ少し赤い眼でこちらを見つめてきた。まあ、聞けば気の毒な話ではあるけども。
だいぶしょーもない妖怪ではあるが、長年生きているだけあって、眼力は中々のものである。
「これまで私は、目立たないからこそ、なんとか食いつなぐことが出来てきました。……ですがこれでは、現代の人間社会に生きているとはとても言えない」
「そうね、食い逃げ無断宿泊の常習犯だし」
「ぐふっ。……な、なので、私もちゃんとした仕事でお金を稼ぎ、ちゃんとお金を払って家系ラーメンを堪能したいのです!」
あ、家系好きなんですか。ちょっと意外。
「その手伝いをしろ、と。そうなると仕事を探さないといけないな……」
「ていうか、ここまでキャラの濃い人なのに、なんで気づかれないんだろうねー」
「妖怪としての能力、で片付けていいものか迷うわな」
「でも、そうなると接客業なんかは絶対無理だよねー」
「そこです!」
身を乗り出すぬら氏。だから濃いんだってば。
「ど、どこです?」
「気づかれないから就職も出来ない、自力で生計を立てるしかない。かといって手に職があるわけでもない。そこで私、見つけました! 自力で生計を立てて、しかも気づいてもらえるお仕事を!」
そう言って元・妖怪の総大将は立ち上がり、拳を握って宙を見つめ、叫んだ。
「私は! 動画配信者になりたい!!」
……は?
「はあああああああ!?」
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