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キッカケは人それぞれ
竹刀と私の包帯と
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「すまん、天音。定期テスト、ほぼ零点だったわ」
「バカじゃないの!?」
昼休み、天音から屋上に呼び出された私は、テストの点数を聞かれたので何も偽ることなく答えた。
答えたら、罵倒された。
「うるせぇな……お前と違って勉強が出来ないんだよ、私は」
「私だって出来ないけど、出来るまでやれば出来るんだよ!」
「お前の脳筋理論を人に押し付けんな。殺す気か」
至近距離で叫ばれて耳が痛い。
「というか、あなた最近何をしてるの……?」
「え……何ってなんだよ」
天音は、口で答える代わりに私の右手の甲を軽く叩いた。
「痛ぇ!!」
あまりの痛さに、みっともないくらい声が出てしまった。屋上で本当に良かった。
「何すんだよ!」
「なんで最近のあなたはこんなに痣だらけなのよ!」
「そんなことねぇよ!」
「違うと言うなら、もう一回手の甲を叩くからね?」
「あーあー、あんなに暴力反対とか言ってた人がすることか? お前のポリシーはどこに行ったんだよ」
もっと言い返してやろうかと思ったが、天音が手を振り上げたので静かにすることにした。
「あなた……私言ったよね? テストの点数が悪かったら退学だって」
「言ったな」
「あなた、今回悪かったんでしょ?」
「ほぼ零点だった」
凄く情けないものを見るかのように私を蔑んでくる。本当に博愛主義者だったのだろうか。よっぽど偽ってたんだな、こいつ。
「まぁ良いわ。退学しても仲良くしましょう」
「勝手に話を進めんなよ」
どこから説明しようか考えていると、屋上の扉からあの元気なバカが勢いよくやってきた。
「猪川さんいる~?」
「お、良いタイミングだわ。ナイス高梨!」
「あ、もしかして猪川さん、天音ちゃんをイジメてるな~?」
「逆だ、逆。私が虐められてるんだよ」
「おぉ、それはレアケース」
「ちょっと! そうやって適当なこと言って……!」
「あながち嘘でもないだろ? それより、高梨が私に何の用だ?」
「そうそう。先生が呼んでるよ。職員室まで来いってさ」
「霧島か。おっけ、行くわ」
ちょうどいい。これ以上、天音の小言を聞いてたら耳がいくつあっても足りないからな。
「じゃ、あとは任せたぞ、高梨」
「え? うん……何を?」
特に説明もせず、私は屋上を後にした。
「何を任せられたの……私は……」
疑問符を浮かべる高梨に、感情の行き先を失った天音が顔を真っ赤にしながら肩を掴む。
「高梨さん、ちょっと愚痴を聞いてほしいんだけど」
「あ~…………任せられたの、これか」
高梨は全てを理解して、諦めるのだった。
☆
「え、猪川さん、剣道部に入ったの?」
「うん。てか、そもそも剣道の推薦で入学したみたいだから、学力テストの成績よりも部活の成績で退学になるところだったんだってさ」
「学力テストはどうでもいいってこと……?」
「まぁどうでも良い、までは言わなくても、剣道の成績よければ二の次でもって感じなんだと思う」
「実力主義もここまで行くと異常ね……」
「よほど強いんだろうね。猪川さん」
実は、猪川さんが剣道で有名らしいことをさっき知ったのだ。
先生が私に猪川さんを探すように頼んだ時『あいつの剣道が』とか『最近練習きてくれた』とか『初めての試合で勝った』とか、最近の様子と一緒に昔の武勇伝も教えてくれた。
あの夜のことが、猪川さんにとって良い方向に転がっていったのだろう。
そして、天音ちゃんにも。
「そっか……じゃあ、あの痣は剣道の練習で……でも、それならそうと言ってくれればいいのに」
「う~ん。言わないんじゃないかな?」
あの人、天音ちゃんにはいつまでも強がってそうだし。
「どうしよう……酷い事しちゃったかな……」
こんなに心配性だし、そりゃ言わないよね。
「ま、普段から猪川さんも酷い事言ってたりするし、良いんじゃない? 仲良くて」
「仲良しって何だろう……」
ある程度孤独だった人がコミュニケーションに対して本気で悩んでいる。
これ、猪川さんも悩んでそう。だとしたら面白いな。
「今度練習でも見に行く?」
「え、でも猪川さん嫌がりそうじゃない?」
「嫌がるだろうけど、行こうよ!」
きっと気付かないんじゃないかな。真剣過ぎて。
「行くなら、何か差し入れを持っていきたいな……」
「私はもう決めてるよ」
「何を持っていくの?」
「自作の竹刀」
「何を言っているの……?」
「いやいや、かなり実用的で良いと思うんだけど」
「私、そんな技術ないし……」
天音ちゃん、めちゃくちゃ悩んでる。
お菓子とかで良いはずなのに。
「あ、じゃあ私は包帯を持っていこう! あんだけ怪我ばかりしてるし、治療まではいかなくとも、保護も兼ねて私が看てあげよっと!」
「おぉ……」
どうしよう。止めるべきかな。
…………ま、良いか。天音ちゃんらしいし。
「博愛だねぇ」
「そうでもないよ」
天音ちゃんは大空に向かって大きく伸びをして、笑った。
「友達って、そういうものでしょ?」
「そうかもね」
私も釣られて笑った。
これからも、楽しい人たちに囲まれた高校生活になりそうだね。
良い天気だった。放課後、みんなでパフェでも食べに行くか。
「バカじゃないの!?」
昼休み、天音から屋上に呼び出された私は、テストの点数を聞かれたので何も偽ることなく答えた。
答えたら、罵倒された。
「うるせぇな……お前と違って勉強が出来ないんだよ、私は」
「私だって出来ないけど、出来るまでやれば出来るんだよ!」
「お前の脳筋理論を人に押し付けんな。殺す気か」
至近距離で叫ばれて耳が痛い。
「というか、あなた最近何をしてるの……?」
「え……何ってなんだよ」
天音は、口で答える代わりに私の右手の甲を軽く叩いた。
「痛ぇ!!」
あまりの痛さに、みっともないくらい声が出てしまった。屋上で本当に良かった。
「何すんだよ!」
「なんで最近のあなたはこんなに痣だらけなのよ!」
「そんなことねぇよ!」
「違うと言うなら、もう一回手の甲を叩くからね?」
「あーあー、あんなに暴力反対とか言ってた人がすることか? お前のポリシーはどこに行ったんだよ」
もっと言い返してやろうかと思ったが、天音が手を振り上げたので静かにすることにした。
「あなた……私言ったよね? テストの点数が悪かったら退学だって」
「言ったな」
「あなた、今回悪かったんでしょ?」
「ほぼ零点だった」
凄く情けないものを見るかのように私を蔑んでくる。本当に博愛主義者だったのだろうか。よっぽど偽ってたんだな、こいつ。
「まぁ良いわ。退学しても仲良くしましょう」
「勝手に話を進めんなよ」
どこから説明しようか考えていると、屋上の扉からあの元気なバカが勢いよくやってきた。
「猪川さんいる~?」
「お、良いタイミングだわ。ナイス高梨!」
「あ、もしかして猪川さん、天音ちゃんをイジメてるな~?」
「逆だ、逆。私が虐められてるんだよ」
「おぉ、それはレアケース」
「ちょっと! そうやって適当なこと言って……!」
「あながち嘘でもないだろ? それより、高梨が私に何の用だ?」
「そうそう。先生が呼んでるよ。職員室まで来いってさ」
「霧島か。おっけ、行くわ」
ちょうどいい。これ以上、天音の小言を聞いてたら耳がいくつあっても足りないからな。
「じゃ、あとは任せたぞ、高梨」
「え? うん……何を?」
特に説明もせず、私は屋上を後にした。
「何を任せられたの……私は……」
疑問符を浮かべる高梨に、感情の行き先を失った天音が顔を真っ赤にしながら肩を掴む。
「高梨さん、ちょっと愚痴を聞いてほしいんだけど」
「あ~…………任せられたの、これか」
高梨は全てを理解して、諦めるのだった。
☆
「え、猪川さん、剣道部に入ったの?」
「うん。てか、そもそも剣道の推薦で入学したみたいだから、学力テストの成績よりも部活の成績で退学になるところだったんだってさ」
「学力テストはどうでもいいってこと……?」
「まぁどうでも良い、までは言わなくても、剣道の成績よければ二の次でもって感じなんだと思う」
「実力主義もここまで行くと異常ね……」
「よほど強いんだろうね。猪川さん」
実は、猪川さんが剣道で有名らしいことをさっき知ったのだ。
先生が私に猪川さんを探すように頼んだ時『あいつの剣道が』とか『最近練習きてくれた』とか『初めての試合で勝った』とか、最近の様子と一緒に昔の武勇伝も教えてくれた。
あの夜のことが、猪川さんにとって良い方向に転がっていったのだろう。
そして、天音ちゃんにも。
「そっか……じゃあ、あの痣は剣道の練習で……でも、それならそうと言ってくれればいいのに」
「う~ん。言わないんじゃないかな?」
あの人、天音ちゃんにはいつまでも強がってそうだし。
「どうしよう……酷い事しちゃったかな……」
こんなに心配性だし、そりゃ言わないよね。
「ま、普段から猪川さんも酷い事言ってたりするし、良いんじゃない? 仲良くて」
「仲良しって何だろう……」
ある程度孤独だった人がコミュニケーションに対して本気で悩んでいる。
これ、猪川さんも悩んでそう。だとしたら面白いな。
「今度練習でも見に行く?」
「え、でも猪川さん嫌がりそうじゃない?」
「嫌がるだろうけど、行こうよ!」
きっと気付かないんじゃないかな。真剣過ぎて。
「行くなら、何か差し入れを持っていきたいな……」
「私はもう決めてるよ」
「何を持っていくの?」
「自作の竹刀」
「何を言っているの……?」
「いやいや、かなり実用的で良いと思うんだけど」
「私、そんな技術ないし……」
天音ちゃん、めちゃくちゃ悩んでる。
お菓子とかで良いはずなのに。
「あ、じゃあ私は包帯を持っていこう! あんだけ怪我ばかりしてるし、治療まではいかなくとも、保護も兼ねて私が看てあげよっと!」
「おぉ……」
どうしよう。止めるべきかな。
…………ま、良いか。天音ちゃんらしいし。
「博愛だねぇ」
「そうでもないよ」
天音ちゃんは大空に向かって大きく伸びをして、笑った。
「友達って、そういうものでしょ?」
「そうかもね」
私も釣られて笑った。
これからも、楽しい人たちに囲まれた高校生活になりそうだね。
良い天気だった。放課後、みんなでパフェでも食べに行くか。
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