アヤカシバナシ『小説版』

如月 睦月

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生涯忘れる事はないでしょう

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大きなデパートでアルバイトをしていた時の話です。
私は生き物が好きだったので、移動願いを出したわけではないのですが、
何となく上が察したのかペット用品担当になりました。

売り場では今まで死にまくっていた1匹100円の金魚を
環境改善により死ななくさせたどころか、売れ残りの金魚の
巨大化に成功し、500円~1.000円の値段をつけても売れたりした。
売りものじゃないらんちゅうを立派に育てて、
らんちゅうマニアが10万だすから譲ってと言われるほど、
死んだペットコーナーを活性化させました。
要するに死んでいたのではなく生き物への愛が無い人が
担当してもダメって事ですよええ。

そんな功績が認められ、イベント的な企画もやってみてもいい
と言われるようになりまして、社員に指示して動かすバイトと言う、
特殊な立ち位置になった(笑)

ある夏の日、カブトムシ成虫1匹300円と言う企画を出した。
これは価格破壊も良いところだとは思うが、ポイントは
自分で好きなカブトを選んで捕まえて連れていける、
いわゆる『ふれあい広場』的な企画。
当然ながら虫かご持参等チラシに謳うが、
飼育ケースや飼育セット、付随するグッズも売る。
300円で済ませるお客様はほとんどいないだろうと言う読み。
上からも人集めになるし面白いのでは?と言う事でGOが出た。

早速試しに300匹を発注し、入荷を待つ数日の間に
当日のマイクパフォーマンスの原稿や、売り場を作った。
この頃から手描きの看板などをやっていたので、
バイトはバイトでもワンランク上のバイトとして
一目置かれていたようです(笑)

数日後、5段くらいの木枠で、全面に針金にビニールを被せた
網が張られたものが1つ届き、おがくずを布団にして
カブトムシが300匹入荷しました。
1段毎に扉もついており、グラグラもしないしっかりした木枠。
『このまま売り場で使えるじゃん』
そう思い、その日は閉店間際から準備をし、
明後日に備え、バックルームにカブトムシの木枠を置いて帰宅した。

翌朝、早朝に餌をあげなきゃと思い、出勤時間よりも早く出社。
時間は午前8時頃だったと思います、開店は9時なので
まだまだ清掃の方々が頑張って売り場を磨いている時間。

バックルームに到着すると、やたらと売り場が騒がしい。
なんだろうと売り場に出ると、真っ黒い丸が音を立てて
ブブブブブブブ!と無数に飛び回っているではないですか!
それを捕獲するために清掃の方々が大慌て!

地獄絵図って表現がぴったりだった。

『大変!カブトムシ逃げてるよ!』

『ええ??黒いデカい虫がたくさん入ってきたとかじゃないの?』

バックルームに戻って木枠を確認すると、
針金の網がラジオペンチで掴んでぐるぐる回して
ねじ切った跡が数か所に。
つまり角を差し込んで自らが回転して針金をねじ切ったのでしょう、
なんたるパワーか!と嬉しくて嬉しくてキャッキャした。

まさにカブトデスロール。

恐らく全部だろうとしか言いようがないのだが、
全館に声をかけて人手を集め、小1時間かけて無事回収。

なんとかカブトムシ祭りを迎えた。
結果は大盛況で生体販売のモデル店となりました。

それから数日後、売り場でキャァ!!!!と悲鳴が上がったので、
雑貨コーナーに走ると、シャンプーの上にカブトムシが1匹いた。
生き残っていたのだね。

300円で私が買い取り、帰りに森に逃がしてあげました。

この面白くもすさまじい大惨事、
生涯忘れる事はないでしょう。

もしかしたらあの中に、数百年生きたカブトムシがいたりして。
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