74 / 121
靖子と猫ちゃん
しおりを挟む
彼女は靖子、とある施設で清掃の仕事をしている。
160cmほどの身長に色白で茶髪、「女は捨てないっ!」を自分だけの合言葉に毎日筋トレやダンス、ストレッチなどをして自らを磨いている二児の母。武道経験者なので仕事には熱心で、やれることはやりたい!と言う今時めずらしい前向きな意欲の持ち主。
尚、好奇心旺盛。
しかし何でも知りたがる中年特有のアレ・・・ではなく、彼女の場合は真面目な好奇心。
その彼女には仕事を教えてくれた師匠が居るが、今は職場を離れている。
だがSNSを使って常に仕事の相談をしているので、頼もしさは感じているのだった。
今日も仕事が一段落した靖子が詰め所でスマホを取り、ちょっとした疑問を師匠である龍一に相談していた。
『龍一さん、相談があります』
『ほい!どうぞー』
『同僚の新井さんの件なのですが・・・』
靖子には一緒に働く同僚が2人おり、そのうちの一人が【新井】である。
新井は180cmはあるであろう長身の男性で、年齢は55歳程度。社交的ではない性格のせいで、殆ど自分発信で会話はしない。なのであまり彼をよく思うスタッフはいなかった。損していると言えばそうなのだが、世の中にはいろいろな人がいるわけですから責める事はできないのだが・・・と思いつつも、わかっていつつも靖子はその暗さが苦手で自然に距離を置いて仕事をしていた。
『新井さん?あぁ、つまんないでしょ?(笑)』
『ええ、とっても!って言わせないで下さいよ!』
『ごめんごめん、で?』
『あのですね、土曜日はゴミ回収車が早朝8時には来るんですよ、私の出社時間8時半じゃないですか、全く間に合わないんですよね、で、日曜日はゴミ回収休みなので、月曜日の早朝のゴミを入れるまで溜まりに溜まって入らなくなるんですよ、そういうのって早く来てやって良いモノなんですか?新井さんに変に気を遣わせることになりませんかね・・・。』
『単純に言えばイイよ、だけど早出残業つかないからサービスになっちゃう、それを良しとするならって話になっちゃうけどね、上司に相談すればシフトとかで早番作ったりするかもだけど、なら他のスタッフにも同等に早番が付いちゃうわけだし、他の2人が納得してフラットになる・・・かなぁ・・・』
靖子の同僚は2人、一人は新井、もう一人は釜林(かまばやし)。
釜林は160cm程の身長だが、身体の肉づきのせいなのか小さく見える。つやつやの黒髪ボブを後頭部の下の方で一本縛りにした、やたらとチャカチャカ動く元気印の女性。しかしスタッフ間の事に凄く好奇心があり、仕事そっちのけで話し込むこともしばしば。スタッフに問題があっても本人にズバリは言わないのに、靖子や新井の意見に対しては猛烈に反発するのがいつもの事だった、なので靖子は龍一の出した心配要素には100%賛同できた。
『ほっといてゴミ箱溢れさせたら?そしたら上がもう一つ買ってくれるかもよ』
靖子は龍一の、時折繰り出す投げっぱなしのようなテキトー発言も嫌いじゃなかった。しかしながら靖子自身、毎週末のうんざり案件は心底うんざりなのだった。
『いいや、早く来てやります』
『わかった、無理すんなよ』
龍一は止めても聞かない靖子の性格も若干わかっているので、納得できるまでやらせようと言うスタイルだった。
その週末、靖子は朝7時に出社して5階建ての施設のゴミを全て回収し、7時40分に出し終わり、8時10分くらいまで休憩をした。8時20分には新井が来るので3畳くらいの詰め所の空間に彼と2人きりは嫌だったのだ。人をあまり嫌がることをしない靖子だが、新井と2人きりであれば話のきっかけとリードを靖子がやらなければならない、靖子もそれが得意な方ではなかった、が故に新井への苦手意識も高まっていった。
次の週末、また靖子は土曜日出社となった。
先週と同じように午前7時40分にゴミを捨てた。
『ニャー・・・ニャー・・・』
靖子は消えそうな猫の鳴き声を聞いた。
声に集中し、顔を左に傾け、右耳をゴミ箱に向けて目を閉じた。
『ニャーニャー・・・』
ゆっくりと大きなゴミ箱をどかしてみると、ゴミ箱の後ろにボロ雑巾のようになった子猫が一匹居るのがわかった。靖子がゴム手袋で触れると、目を閉じて手に顔を擦り付けてきた。
『ふふ、可愛い・・・お腹空いてるの?なんでそんなにボロボロなの?まっててね』
靖子は詰所からお菓子をいくつか持ってきて子猫に食べさせた。
『連れてってあげたいけどできないの、ごめんね、でも元気出るまでおやつあげるからね』
それから数日、靖子は休憩時間に子猫の面倒をみた。師匠と離れ、若干の寂しさを隠せなかった靖子にとって、子猫の存在は大きくなっていったのです。子猫の存在は釜林にも話したところ『そうなんだ、面倒見てやればいいんじゃない?私は猫苦手だから任せるね』との事だった。
そしてまたやってきた土曜日出勤の日
出社してきた靖子の目にゴミ箱の前にいる新井と釜林の姿が映り込んだ。
とっさに夜勤者の車の陰に隠れた靖子。
午前7時だと言うのに新井がいる?そして本日休みなのに午前7時に居る釜林。
靖子は何処をどう考えても答えが導き出せなかった。
とっさに靖子は師匠の龍一に連絡を入れた。
『今アライとカマ居る、目の前、なんかしてるミエナイ』
急いだ文面だが察した龍一が即返事をくれた。
この勘の良さが靖子との連携の良さでもあった。
『見えなくてもイイから動画撮影しろ』
返事をせずに直ぐに靖子は撮影を始めた。
ビニール袋に黒いモノを入れた新井が袋を縛り、その場に置く。釜林が物置にあったスコップでその袋を何度も何度も叩いているのが見えた。もう一枚袋を用意して叩いた袋を入れ、釜林が更に大きな黒い紙袋に入れると、新井の肩を『じゃ!』と言う挨拶のように叩き、周囲を見回してから普段使ったことない裏道に消えて行った。
スマホを止めると龍一からメッセージがあった『あらいをつめろ』
直ぐに駆け寄った靖子は鼻息荒く、新井に詰め寄った。
『なにやってたんですか?』
『あ・・・いや・・・別に・・・』
いつものように言葉少なく、そそくさと玄関を抜け施設内にその姿を消した。
嫌な予感がよぎった靖子はゴミ箱の裏の子猫を呼んだ。
『ネコ太郎!ネコ太郎!』
声は無く、その姿は段ボールで作ったベッドごと消えていた。
撮影した動画を確認するが残念ながら何もわからなかったので、その動画を龍一に送った。しばらくして龍一から返信が来た。
『袋の中身は動物』
龍一が画像解析とか色々駆使して調べた結果、
袋に透けて見える断末魔の動物の顔が確認できたと言うのだ。
靖子は全てを悟った。
160cmほどの身長に色白で茶髪、「女は捨てないっ!」を自分だけの合言葉に毎日筋トレやダンス、ストレッチなどをして自らを磨いている二児の母。武道経験者なので仕事には熱心で、やれることはやりたい!と言う今時めずらしい前向きな意欲の持ち主。
尚、好奇心旺盛。
しかし何でも知りたがる中年特有のアレ・・・ではなく、彼女の場合は真面目な好奇心。
その彼女には仕事を教えてくれた師匠が居るが、今は職場を離れている。
だがSNSを使って常に仕事の相談をしているので、頼もしさは感じているのだった。
今日も仕事が一段落した靖子が詰め所でスマホを取り、ちょっとした疑問を師匠である龍一に相談していた。
『龍一さん、相談があります』
『ほい!どうぞー』
『同僚の新井さんの件なのですが・・・』
靖子には一緒に働く同僚が2人おり、そのうちの一人が【新井】である。
新井は180cmはあるであろう長身の男性で、年齢は55歳程度。社交的ではない性格のせいで、殆ど自分発信で会話はしない。なのであまり彼をよく思うスタッフはいなかった。損していると言えばそうなのだが、世の中にはいろいろな人がいるわけですから責める事はできないのだが・・・と思いつつも、わかっていつつも靖子はその暗さが苦手で自然に距離を置いて仕事をしていた。
『新井さん?あぁ、つまんないでしょ?(笑)』
『ええ、とっても!って言わせないで下さいよ!』
『ごめんごめん、で?』
『あのですね、土曜日はゴミ回収車が早朝8時には来るんですよ、私の出社時間8時半じゃないですか、全く間に合わないんですよね、で、日曜日はゴミ回収休みなので、月曜日の早朝のゴミを入れるまで溜まりに溜まって入らなくなるんですよ、そういうのって早く来てやって良いモノなんですか?新井さんに変に気を遣わせることになりませんかね・・・。』
『単純に言えばイイよ、だけど早出残業つかないからサービスになっちゃう、それを良しとするならって話になっちゃうけどね、上司に相談すればシフトとかで早番作ったりするかもだけど、なら他のスタッフにも同等に早番が付いちゃうわけだし、他の2人が納得してフラットになる・・・かなぁ・・・』
靖子の同僚は2人、一人は新井、もう一人は釜林(かまばやし)。
釜林は160cm程の身長だが、身体の肉づきのせいなのか小さく見える。つやつやの黒髪ボブを後頭部の下の方で一本縛りにした、やたらとチャカチャカ動く元気印の女性。しかしスタッフ間の事に凄く好奇心があり、仕事そっちのけで話し込むこともしばしば。スタッフに問題があっても本人にズバリは言わないのに、靖子や新井の意見に対しては猛烈に反発するのがいつもの事だった、なので靖子は龍一の出した心配要素には100%賛同できた。
『ほっといてゴミ箱溢れさせたら?そしたら上がもう一つ買ってくれるかもよ』
靖子は龍一の、時折繰り出す投げっぱなしのようなテキトー発言も嫌いじゃなかった。しかしながら靖子自身、毎週末のうんざり案件は心底うんざりなのだった。
『いいや、早く来てやります』
『わかった、無理すんなよ』
龍一は止めても聞かない靖子の性格も若干わかっているので、納得できるまでやらせようと言うスタイルだった。
その週末、靖子は朝7時に出社して5階建ての施設のゴミを全て回収し、7時40分に出し終わり、8時10分くらいまで休憩をした。8時20分には新井が来るので3畳くらいの詰め所の空間に彼と2人きりは嫌だったのだ。人をあまり嫌がることをしない靖子だが、新井と2人きりであれば話のきっかけとリードを靖子がやらなければならない、靖子もそれが得意な方ではなかった、が故に新井への苦手意識も高まっていった。
次の週末、また靖子は土曜日出社となった。
先週と同じように午前7時40分にゴミを捨てた。
『ニャー・・・ニャー・・・』
靖子は消えそうな猫の鳴き声を聞いた。
声に集中し、顔を左に傾け、右耳をゴミ箱に向けて目を閉じた。
『ニャーニャー・・・』
ゆっくりと大きなゴミ箱をどかしてみると、ゴミ箱の後ろにボロ雑巾のようになった子猫が一匹居るのがわかった。靖子がゴム手袋で触れると、目を閉じて手に顔を擦り付けてきた。
『ふふ、可愛い・・・お腹空いてるの?なんでそんなにボロボロなの?まっててね』
靖子は詰所からお菓子をいくつか持ってきて子猫に食べさせた。
『連れてってあげたいけどできないの、ごめんね、でも元気出るまでおやつあげるからね』
それから数日、靖子は休憩時間に子猫の面倒をみた。師匠と離れ、若干の寂しさを隠せなかった靖子にとって、子猫の存在は大きくなっていったのです。子猫の存在は釜林にも話したところ『そうなんだ、面倒見てやればいいんじゃない?私は猫苦手だから任せるね』との事だった。
そしてまたやってきた土曜日出勤の日
出社してきた靖子の目にゴミ箱の前にいる新井と釜林の姿が映り込んだ。
とっさに夜勤者の車の陰に隠れた靖子。
午前7時だと言うのに新井がいる?そして本日休みなのに午前7時に居る釜林。
靖子は何処をどう考えても答えが導き出せなかった。
とっさに靖子は師匠の龍一に連絡を入れた。
『今アライとカマ居る、目の前、なんかしてるミエナイ』
急いだ文面だが察した龍一が即返事をくれた。
この勘の良さが靖子との連携の良さでもあった。
『見えなくてもイイから動画撮影しろ』
返事をせずに直ぐに靖子は撮影を始めた。
ビニール袋に黒いモノを入れた新井が袋を縛り、その場に置く。釜林が物置にあったスコップでその袋を何度も何度も叩いているのが見えた。もう一枚袋を用意して叩いた袋を入れ、釜林が更に大きな黒い紙袋に入れると、新井の肩を『じゃ!』と言う挨拶のように叩き、周囲を見回してから普段使ったことない裏道に消えて行った。
スマホを止めると龍一からメッセージがあった『あらいをつめろ』
直ぐに駆け寄った靖子は鼻息荒く、新井に詰め寄った。
『なにやってたんですか?』
『あ・・・いや・・・別に・・・』
いつものように言葉少なく、そそくさと玄関を抜け施設内にその姿を消した。
嫌な予感がよぎった靖子はゴミ箱の裏の子猫を呼んだ。
『ネコ太郎!ネコ太郎!』
声は無く、その姿は段ボールで作ったベッドごと消えていた。
撮影した動画を確認するが残念ながら何もわからなかったので、その動画を龍一に送った。しばらくして龍一から返信が来た。
『袋の中身は動物』
龍一が画像解析とか色々駆使して調べた結果、
袋に透けて見える断末魔の動物の顔が確認できたと言うのだ。
靖子は全てを悟った。
1
あなたにおすすめの小説
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【時代小説】 黄昏夫婦
蔵屋
歴史・時代
江戸時代、東北地方の秋田藩は貧かった。
そんな中、真面目なひとりの武士がいた。同僚からは馬鹿にされていたが真面目な男であった。俸禄は低く貧しい。娘二人と実母との4人暮らし。
秋田藩での仕事は勘定方である。
仕事が終わると真っ直ぐ帰宅する。
ただひたすら日中は城中では勘定方の仕事をまじめにして、帰宅すれば論語を読んで知識を習得する。
そんな毎日であった。彼の名前は立花清左衛門。年齢は35歳。
娘は二人いて、一人はとめ15歳。もう一人は梅、8歳。
さて|黄昏《たそがれ》は、一日のうち日没直後、雲のない西の空に夕焼けの名残りの「赤さ」が残る時間帯のことを言う。「|黄昏時《たそがれどき)」。 「黄昏れる《たそがれる》」という動詞形もある。
「たそがれ」は、江戸時代になるまでは「たそかれ」といい、「たそかれどき」の略でよく知られていた。夕暮れの人の顔の識別がつかない暗さになると誰かれとなく、「そこにいるのは誰ですか」「誰そ彼(誰ですかあなたは)」とたずねる頃合いという意味で日常会話でよく使われた。
今回の私の小説のテーマはこの黄昏である。
この風習は広く日本で行われている。
「おはようさんです」「これからですか」「お晩でございます。いまお帰りですか」と尋ねられれば相手も答えざるを得ず、互いに誰であるかチェックすることでヨソ者を排除する意図があったとされている。
「たそかれ」という言葉は『万葉集』に
誰そ彼と われをな問ひそ 九月の 露に濡れつつ 君待つわれそ」
— 『万葉集』第10巻2240番
と登場するが、これは文字通り「誰ですかあなたは」という意味である。
「平安時代には『うつほ物語』に「たそかれどき」の用例が現れ、さらに『源氏物語』に
「寄りてこそ それかとも見め たそかれに ほのぼの見つる 夕顔の花」
— 『源氏物語』「夕顔」光源氏
と、現在のように「たそかれ」で時間帯を表す用例が現れる。
なおこの歌は、帖と登場人物の名「夕顔」の由来になった夕顔の歌への返歌である。
またこの言葉の比喩として、「最盛期は過ぎたが、多少は余力があり、滅亡するにはまだ早い状態」をという語句の用い方をする。
漢語「|黄昏《コウコン》」は日没後のまだ完全に暗くなっていない時刻を指す。「初昏」とも呼んでいた。十二時辰では「戌時」(午後7時から9時)に相当する。
「たそがれ」の動詞化の用法。日暮れの薄暗くなり始めるころを指して「空が黄昏れる」や、人生の盛りを過ぎ衰えるさまを表現して「黄昏た人」などのように使用されることがある。
この物語はフィクションです。登場人物、団体等実際に同じであっても一切関係ありません。
それでは、小説「黄昏夫婦」をお楽しみ下さい。
読者の皆様の何かにお役に立てれば幸いです。
作家 蔵屋日唱
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる