緑の手のキトル〜平和に世界を救ってやろうじゃないの〜【完結保証】

斉藤りた

文字の大きさ
2 / 112
アルカニア王国編

ブランを落ち着かせて寝かせた後、こっそり家を抜け出した。
あ、逃げる為じゃないよ。
今逃げたら私の代わりにブランが奴隷になっちゃうもん。
とりあえず今は緑の手が何を出来るのか調べなきゃね。

月明かりの下、家から見えないようにこっそり畑まで出てきた。
畑にはところどころにしおれた草が生えてるだけで、野菜らしきものは見当たらない。

「緑の使い手様が居なくなって土地が枯れた」って言ってたよね、確か。
って事は、土地とか植物に関する力なのかな?

自分の手をじっと見てみても、何も起こらない。
とりあえず・・・畑の土を触ってみる。

土の良し悪しなんか分からないけど、全然収穫が出来ないって言ってたから栄養がない土なんだろうなぁ~。
じゃあこの土を栄養たっぷりにする力とか?
でもそれなら茶色の手だな。
って事は、植物を育てる力?肥料的な?

そういえばこの世界でちゃんとした野菜とかって見た事ないなぁ。
もし今ここで農業やるとして、作るなら何が良いんだろう?

とにかくすぐに収穫出来て、お腹いっぱいになる物がいいよね。
じゃあ主食になってるもの?
本当はお米食べたいけど、収穫までに時間かかるよね。
お水もいっぱい必要だし、今は無理だな。

麦も今作ってるけど、あんまり収穫できてないんだよね。だから私が売られるんだし・・・。

あと主食になりそうなのっていうとお芋?
ん?
こっちに生まれてからの記憶でも、お芋系の食べ物食べた事ない気がする。
お芋って収穫までも早くて痩せた土地でも育ちやすいって聞いた事あるけど・・・じゃがいもとかって無いのかな?

じゃがいも良いよね。
一個あれば増やせるし、茹でても揚げても蒸しても焼いても美味しいし・・・あぁダメだ、お腹空いてきた。
考えながら畑の中をウロウロしてたら、畑の端っこまで来てた。

ダメだダメだ、お腹は空いたけどまずはこの力の使い方を見つけなきゃ。
トボトボと最初に土を触ってた場所に戻ると・・・

「あれ?」

さっきは無かった苗?草?が生えてる。
畑にある他の野菜は萎れてるのに、これだけイキイキとしてるし、葉っぱもツヤツヤだ。

「これは・・・アレだな。私のおかげだな!」

だってどう見たって違和感のある綺麗な緑の存在感。
間違いなく私のおかげでしょう!

でも、私ってばどうやってこれを生やしたんだろう?
手を畑にかざして声を出してみる。

「はぁぁぁぁぁぁぁ」

・・・何も起こらないよね、そりゃ。

「もぉ~どうやるのさ~・・・」

しゃがみ込んで頭を抱え、横の苗を見る。
あれ?この葉っぱ、何か見覚えが・・・

何だっけ、何か前に冷蔵庫の野菜室の奥で、放置してたやつ・・・

「あ~!」

思わず大声が出て手で口を塞ぐ。

じゃがいもだ!
袋から転げたやつが冷蔵庫の奥に残ってて、気が付かないウチに発芽して葉っぱまで生えてたんだっけ。

・・・いやズボラだな、前世の私。
まぁそれはいいや。

って事は、じゃがいもの事考えてたからじゃがいもが生えてきたって事?!
恐る恐る、苗の茎を持って上に引っこ抜こうとするが、なかなか抜けない。この身体栄養足りてなさそうだもんね。

今度は両手両足を使って上に引っ張る。引っ張・・・

ズボッ

抜けたぁ!
抜けた苗の根っこには、芋、芋、芋、芋・・・え、こんなに出来るもんなの?スキル使ったから?

わかんないけど、めっちゃ出来てる!
やっぱりじゃがいもだ!
すっご!!15個くらいはありそう。
小さいのも数えたらもっとあるんじゃない?

え、って事は?
すぐ食べられる野菜!なんだ?!えっと、えっと・・・ミニトマト!!

両手を畑にかざして強く願う。
スキル!出ろ!私はお腹が空いてるんだ!!

ぎゅっと閉じた目をそっと開けると、土の中から可愛い双葉がピョコっと顔を出した。

「うはっ!」

変な声が出ちゃった。

みるみるうちに本葉が出て、ニョキニョキと空に向かって成長する。
待ち遠しいと思う間もなく、目の前にはプルンプルンの真っ赤なミニトマトがたくさん。

「はわわわ・・・」

そんな声出ないと思うじゃん?
ホント、極限までお腹空いて目の前に美味しそうな食べ物が出てきたら、変な声が出ちゃうんだって。

もうね、そこからは無我夢中。
両手でちぎって、右手で食べながら左手でちぎって、左手で食べながら右手でちぎって、の繰り返し。

気が付いたらミニトマトの実はなくなってた。

「はぁ~っ・・・」

お腹いっぱい、とまではいかないけど、大満足!
全身にリコピンが駆け巡ってる気がするわ。リコピンが何か忘れたけど。

しかし、考えたらその植物が出てくるのかぁ~。
便利だね。
ブランが言ったみたいに、世界中がこの畑みたいな痩せた土地ばっかりなら、この力はすごく役に立つだろうな。

でもまずは目下の問題。
売られて奴隷になるのを阻止しつつ、ブランが売られるのも避けなきゃ。

どうしようかなぁ~・・・
まずはこの力の事は黙って、売られてここを出て行くのは決定だな。

この力が父母にバレるのは絶対ダメだ。他の人の事とか考える余裕も無さそうだし、自分達の為だけに使わせようとするだろう。

コツ、と足にじゃがいもが当たる。
そっか、バレちゃダメならこのじゃがいもはどうしよう。

なんとかしてブランにあげたいな。
朝こっそり渡してみようかな。

で、明日奴隷商?に売られたら、たぶんどこかに運ばれるよね。
私一人だけって事はないだろうし、他の人もいるなら逃げてもバレにくいかもしれない。

よし、そうしよう!
力の事は黙って、ブランにこっそりじゃがいもあげて、売られて、途中で逃げる!
スキルもあるからきっと大丈夫。

無事に逃げ切ってやろうじゃないの。
感想 1

あなたにおすすめの小説

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

まったく知らない世界に転生したようです

吉川 箱
ファンタジー
おっとりヲタク男子二十五歳成人。チート能力なし? まったく知らない世界に転生したようです。 何のヒントもないこの世界で、破滅フラグや地雷を踏まずに生き残れるか?! 頼れるのは己のみ、みたいです……? ※BLですがBがLな話は出て来ません。全年齢です。 私自身は全年齢の主人公ハーレムものBLだと思って書いてるけど、全く健全なファンタジー小説だとも言い張れるように書いております。つまり健全なお嬢さんの癖を歪めて火のないところへ煙を感じてほしい。 111話までは毎日更新。 それ以降は毎週金曜日20時に更新します。 カクヨムの方が文字数が多く、更新も先です。

転生後はゆっくりと

衣更月
ファンタジー
貧しい集落で生まれたリリは、生まれた瞬間から前世の記憶があった。 日本人特有の”配慮”に徹した赤ん坊を演じていたことで、両親から距離を置かれた挙句、村人からも「不気味な子」として敬遠されることに…。 そして、5才の誕生日に遠くの町に捨てられた。 でも、リリは悲観しない。 前世の知識チートは出来ないけど、大人メンタルで堅実に。 目指すは憧れのスローライフが出来るほど、ほどほどの守銭奴としてリリは異世界人として順応していく。 全25話(予定)

【完結】子爵令嬢の秘密

りまり
恋愛
私は記憶があるまま転生しました。 転生先は子爵令嬢です。 魔力もそこそこありますので記憶をもとに頑張りたいです。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!

ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。 退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた! 私を陥れようとする兄から逃れ、 不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。 逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋? 異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。 この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

できない子に転生しましたが、家族と食卓があれば十分です ―人間不信だった私が、ゆっくり育つ異世界生活―

愛朱ひいろ
ファンタジー
人の顔色ばかり伺い、心を壊した26歳の会社員女性。 彼女は死後、異世界で「できない子」として転生する。 魔法は使えない。 体は不器用で、成長も人より遅い。 前世の記憶のせいで、人と関わることが少し怖い。 けれどこの世界には、 見守り支えてくれる両親と、 あたたかい食卓があった。 泣いて、つまずいて、できないことに落ち込みながら、 彼女は少しずつ「できないままでも、生きていていい」と知っていく。 これは、 最強でもチートでもない主人公が、 家族と食事に支えられながら、ゆっくり育ち直す 生活密着型・異世界転生×成長×グルメファンタジー。 ……の、予定です。 毎日更新できるように執筆がんばります!