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磯陰
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ここに住む者たちは少し変わっている。
生まれたばかりの者は全員両性なのだ。
子孫を残す為の苦痛や子育ての大変さを嫌がる種族の苦肉の策なのであろうが、決闘して負けた方が子供を産める体に変化する。
今、広場で決着が着いた二人は幼なじみだった。
生まれ落ちて、気付いた時には隣にいるのが当たり前だった。
まさかユエが自分にそんな感情を持っているなんて、ソルは思ってもいなかったのだ。
ユエは頭脳にも容姿にも恵まれた男である。
あまり見た事のない色合いの、キラキラ輝く水色の髪に中性的な顔立ち、深海の色の瞳。
透明感のある白い肌に細くとも鍛えられた肉体。
皆に頼られる程の知識を持ち、仲間には平等を貫く。
誰もが聡明で美しいユエに子供を産ませたいと考えていた。
だから成人したら力のある者と形式だけの決闘をして、守られて子を成し、幸せに一生を全うできれば良い。
ソルは幼馴染という感情以上にユエを愛していたからこそ、それがユエの幸せだと考えていた。
自分だけがユエにそういった想いを持っていると思っていた。
しかし、ユエは成体になったのと同時にソルに決闘を持ち掛けてきた。
ユエも小さな頃からソルだけを見てきたのだ。
ソルはユエよりも体が大きくて、ソルと言う名前の通り明るく優しく、懐の深い男だった。
ゆらゆらと揺れる紅い髪、精悍な顔つき、褐色の肌に日の光のような金色の目。
いつも自分より仲間を大事にする、そんな姿は皆の憧れだった。
もしソルが男性体になればたくさんの者と番い、子を成すだろう。
だけど、ユエはソルを自分だけのものにしたかった。
自分だけを見て欲しいという、ほの暗い想いに捕らわれていた。
今まで貫いていた平等なんて、この想いの前では泡沫のように消えてしまう。
「ソル、俺の子を産んで。」
気付いたときには広場で皆が見守る中、決闘を申し込んでいた。
ソルはユエが自分を求めてきた喜びに内心震えていた。
半ばあきらめていたユエが自らやって来たのだ。
「全力で受けてやるよ。」
いまさら断ってユエが望まない者に渡す気などない。と考えながら、ソルは冷静を装って申し入れを受けた。
ユエは強かった。
戦う姿もとても綺麗だった。
大小織り交ぜて技を繰り出し、一回り大きいソルに負けないだけの体力も持っている。
なのに戦いが長引いてくると感情が昂ぶるのか、掴みかかってくる姿は必死になり、技が掛かけられれば泣きそうな顔になりながらも食らいついてきた。
突きを薙ぎ、足を刈る。
時には腕で体を庇い、蹴りを繰り出してきた。
技を交わしながら、ソルはそんなに自分を欲するユエが愛しいと思ってしまった。
子供を産む側になるのは怖いけれど、ユエの子供なら良いな。等と決闘の最中にも関わらず考えてしまったのが不味かった。
油断した瞬間、あっと言う間に体を寄せられて、足を払われ、地面に組敷かれる。
そして、素早く体に乗り上げて押さえられた。
「はぁ、ソル・・・俺のものだ・・・。」
ユエは息も絶え絶えに耳元で囁き、皆の前でソルに深くキスをして見せた。
体がさらに密着して、ユエの昂ぶった下半身がソルの足にゴリっと当る。
その瞬間、ソルはお腹の奥がズクンと疼いた。
そして負けを認めたのだった。
見ていた者は、大喝采である。
ユエが自分より体の大きいソルを長い戦いの末に倒したのだから。
皆が激励する中、ソルは大人しくユエに手を引かれていった。
・・・これから俺はユエに抱かれる。
小さな頃から好きだった、美しいユエに。
これからの事を考えていると、ソルの身体に変化が訪れた。
身体が怠くなり、お腹の奥がぎゅっと掴まれたような感じになる。
終いにソルはユエに凭れ掛る様になりながら、予めユエが用意していた巣へ運ばれた。
巣へ横たえられた時にはソルは身体が熱くて、ユエが欲しくて仕方がなくなっていた。
ペニスが小さくなり、股の間からヌルヌルした液が溢れ、ペニスを受け入れられる身体へと変化していく。
一方ユエはいつの間にかペニスが大きくなり、中性的だった雰囲気から一転、男らしいフェロモンを撒き散らし、ソルを誘った。
「ユエ・・・ユエ・・・もっと近くに来て。」
最初は自分たちの変化を冷静に見ていたユエだったが、自分が発するフェロモンで発情したソルがグスグスに蕩け、紅い髪を乱し金色の瞳を潤ませ、自分を求めているのを見て、ついに理性を飛ばして唇を重ねた。
「ソル、愛してる。やっと俺のものに出来た。
もう離さないからね、ずっとソルだけと番うから。」
「本当?嬉しい・・・」
キスだけで妊娠してしまうのではないかと、ソルが思ってしまう程のねっとりしたキスを繰り返す。
ユエの手がソルの体を這い回り、やがてソルの秘所へ辿り着いた。
足を優しく開き、ユエは変わってしまったそこをソルも確認するように導いた。
ソルは少し戸惑ったが、確認してみてユエのせいで、ユエの為に自分が変わったのが嬉しいと笑った。
それを見てユエも嬉しくなり、ソルに覆い被さって性器をねっとりと舐めあげた。
ソルもユエの性器を見つけ、口に含み溶かすように舐めた。
産む側は身体の全てが性感帯になってしまうのだろうか。
以前は聞き齧った、受け入れる時の痛みと言うものが怖かったのに、ソルはユエから与えられる行為の全てが気持ち良くて、あっさりとユエを胎内へ受け入れる事ができた。
それを怖がっていたのを知っていたユエが、時間を掛けてソルの身体を開いたのも功を奏したのだろう。
ユエはソルが怖がらないように優しく、優しく抱いた。
ソルは体の奥へユエが与える快感に夢中になった。
もうユエの事しか考えられなくなる。
ユエも、柔らかくて、自分に絡み付いて離さないソルに夢中になって精を注ぎ続けた。
子供が宿るまで、何日かかっただろうか。
やがてソルの発情が終わり、体内にある卵が受精した事が判った。
この世界では発情が終わると男性側の体は元に戻り、再び決闘を受ける事が可能になる。
そして今の番と分かれて、別の者と番う事が出来るようになるのだ。
ユエは再び沢山の者から決闘を申し込まれたが、全て断った。
ユエは約束通り、生涯をソルだけに捧げた。
その為にソルに決闘で勝ったのだから、どんなに望まれても他の者には靡く筈がなかった。
それよりも決闘に使う力をソルや子供たちを守る為に使いたかった。
ソルは一生に一度の産卵で子供がたくさん授かった。
ユエに似ている子もソルに似ている子もいて可愛かった。
皆、直ぐに成長して離れて行ってしまったけれど、ソルにはユエがいるから寂しくなかった。
子育てが終わると寿命が近い。
今度は最後を迎える為に二人で巣に篭った。
ある日、「こんなに愛し合える相手に出会えたのは奇跡だ。」と、ユエが言った。
それにはソルも素直に頷いた。
出会った時から、お互いに隣に居るのが心地良かった。
変な意地を張って離れ離れにならなくて本当に良かった。
愛してる、愛してる・・・
抱きしめあう身体がだんだん動かなくなり、お互い無口になって行ったが、朽ちて海の藻屑になるまで離れる事はなかった。
生まれたばかりの者は全員両性なのだ。
子孫を残す為の苦痛や子育ての大変さを嫌がる種族の苦肉の策なのであろうが、決闘して負けた方が子供を産める体に変化する。
今、広場で決着が着いた二人は幼なじみだった。
生まれ落ちて、気付いた時には隣にいるのが当たり前だった。
まさかユエが自分にそんな感情を持っているなんて、ソルは思ってもいなかったのだ。
ユエは頭脳にも容姿にも恵まれた男である。
あまり見た事のない色合いの、キラキラ輝く水色の髪に中性的な顔立ち、深海の色の瞳。
透明感のある白い肌に細くとも鍛えられた肉体。
皆に頼られる程の知識を持ち、仲間には平等を貫く。
誰もが聡明で美しいユエに子供を産ませたいと考えていた。
だから成人したら力のある者と形式だけの決闘をして、守られて子を成し、幸せに一生を全うできれば良い。
ソルは幼馴染という感情以上にユエを愛していたからこそ、それがユエの幸せだと考えていた。
自分だけがユエにそういった想いを持っていると思っていた。
しかし、ユエは成体になったのと同時にソルに決闘を持ち掛けてきた。
ユエも小さな頃からソルだけを見てきたのだ。
ソルはユエよりも体が大きくて、ソルと言う名前の通り明るく優しく、懐の深い男だった。
ゆらゆらと揺れる紅い髪、精悍な顔つき、褐色の肌に日の光のような金色の目。
いつも自分より仲間を大事にする、そんな姿は皆の憧れだった。
もしソルが男性体になればたくさんの者と番い、子を成すだろう。
だけど、ユエはソルを自分だけのものにしたかった。
自分だけを見て欲しいという、ほの暗い想いに捕らわれていた。
今まで貫いていた平等なんて、この想いの前では泡沫のように消えてしまう。
「ソル、俺の子を産んで。」
気付いたときには広場で皆が見守る中、決闘を申し込んでいた。
ソルはユエが自分を求めてきた喜びに内心震えていた。
半ばあきらめていたユエが自らやって来たのだ。
「全力で受けてやるよ。」
いまさら断ってユエが望まない者に渡す気などない。と考えながら、ソルは冷静を装って申し入れを受けた。
ユエは強かった。
戦う姿もとても綺麗だった。
大小織り交ぜて技を繰り出し、一回り大きいソルに負けないだけの体力も持っている。
なのに戦いが長引いてくると感情が昂ぶるのか、掴みかかってくる姿は必死になり、技が掛かけられれば泣きそうな顔になりながらも食らいついてきた。
突きを薙ぎ、足を刈る。
時には腕で体を庇い、蹴りを繰り出してきた。
技を交わしながら、ソルはそんなに自分を欲するユエが愛しいと思ってしまった。
子供を産む側になるのは怖いけれど、ユエの子供なら良いな。等と決闘の最中にも関わらず考えてしまったのが不味かった。
油断した瞬間、あっと言う間に体を寄せられて、足を払われ、地面に組敷かれる。
そして、素早く体に乗り上げて押さえられた。
「はぁ、ソル・・・俺のものだ・・・。」
ユエは息も絶え絶えに耳元で囁き、皆の前でソルに深くキスをして見せた。
体がさらに密着して、ユエの昂ぶった下半身がソルの足にゴリっと当る。
その瞬間、ソルはお腹の奥がズクンと疼いた。
そして負けを認めたのだった。
見ていた者は、大喝采である。
ユエが自分より体の大きいソルを長い戦いの末に倒したのだから。
皆が激励する中、ソルは大人しくユエに手を引かれていった。
・・・これから俺はユエに抱かれる。
小さな頃から好きだった、美しいユエに。
これからの事を考えていると、ソルの身体に変化が訪れた。
身体が怠くなり、お腹の奥がぎゅっと掴まれたような感じになる。
終いにソルはユエに凭れ掛る様になりながら、予めユエが用意していた巣へ運ばれた。
巣へ横たえられた時にはソルは身体が熱くて、ユエが欲しくて仕方がなくなっていた。
ペニスが小さくなり、股の間からヌルヌルした液が溢れ、ペニスを受け入れられる身体へと変化していく。
一方ユエはいつの間にかペニスが大きくなり、中性的だった雰囲気から一転、男らしいフェロモンを撒き散らし、ソルを誘った。
「ユエ・・・ユエ・・・もっと近くに来て。」
最初は自分たちの変化を冷静に見ていたユエだったが、自分が発するフェロモンで発情したソルがグスグスに蕩け、紅い髪を乱し金色の瞳を潤ませ、自分を求めているのを見て、ついに理性を飛ばして唇を重ねた。
「ソル、愛してる。やっと俺のものに出来た。
もう離さないからね、ずっとソルだけと番うから。」
「本当?嬉しい・・・」
キスだけで妊娠してしまうのではないかと、ソルが思ってしまう程のねっとりしたキスを繰り返す。
ユエの手がソルの体を這い回り、やがてソルの秘所へ辿り着いた。
足を優しく開き、ユエは変わってしまったそこをソルも確認するように導いた。
ソルは少し戸惑ったが、確認してみてユエのせいで、ユエの為に自分が変わったのが嬉しいと笑った。
それを見てユエも嬉しくなり、ソルに覆い被さって性器をねっとりと舐めあげた。
ソルもユエの性器を見つけ、口に含み溶かすように舐めた。
産む側は身体の全てが性感帯になってしまうのだろうか。
以前は聞き齧った、受け入れる時の痛みと言うものが怖かったのに、ソルはユエから与えられる行為の全てが気持ち良くて、あっさりとユエを胎内へ受け入れる事ができた。
それを怖がっていたのを知っていたユエが、時間を掛けてソルの身体を開いたのも功を奏したのだろう。
ユエはソルが怖がらないように優しく、優しく抱いた。
ソルは体の奥へユエが与える快感に夢中になった。
もうユエの事しか考えられなくなる。
ユエも、柔らかくて、自分に絡み付いて離さないソルに夢中になって精を注ぎ続けた。
子供が宿るまで、何日かかっただろうか。
やがてソルの発情が終わり、体内にある卵が受精した事が判った。
この世界では発情が終わると男性側の体は元に戻り、再び決闘を受ける事が可能になる。
そして今の番と分かれて、別の者と番う事が出来るようになるのだ。
ユエは再び沢山の者から決闘を申し込まれたが、全て断った。
ユエは約束通り、生涯をソルだけに捧げた。
その為にソルに決闘で勝ったのだから、どんなに望まれても他の者には靡く筈がなかった。
それよりも決闘に使う力をソルや子供たちを守る為に使いたかった。
ソルは一生に一度の産卵で子供がたくさん授かった。
ユエに似ている子もソルに似ている子もいて可愛かった。
皆、直ぐに成長して離れて行ってしまったけれど、ソルにはユエがいるから寂しくなかった。
子育てが終わると寿命が近い。
今度は最後を迎える為に二人で巣に篭った。
ある日、「こんなに愛し合える相手に出会えたのは奇跡だ。」と、ユエが言った。
それにはソルも素直に頷いた。
出会った時から、お互いに隣に居るのが心地良かった。
変な意地を張って離れ離れにならなくて本当に良かった。
愛してる、愛してる・・・
抱きしめあう身体がだんだん動かなくなり、お互い無口になって行ったが、朽ちて海の藻屑になるまで離れる事はなかった。
応援ありがとうございます!
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