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しおりを挟むヌクとコンタクトを取り、転移メンバーだけ先に来てもらうことになった。
道案内と称し、双子達と一時間ぐらい森で彷徨ってもらっている。
「まさか女魔王が改心してたとわな」
事情を話し終えると、リーダーはそう言って豪快に笑う。
「何にせよ朋子が無事でよかったよ」
「ああ本当だな」
花音と友太先輩は安堵する。
「それにしてもラスボスがまさかのシャーロット。ヘンゼルと契約して、新女魔王にゲフッ!!」
何かとてつもない恐ろしいことを愉快に言おうとする峰岸さんを、リーダーは怒り爆発。顔面パンチがお見舞いされた。
「いてて、すまん俺が悪かった。ちょっと面白がってた」
めずらしく峰岸さんは自分に非があると認め、素直に謝罪する。
明日は大雪でも降るんだろうか?
「面白がらないでください。これは現実なんですからね。それにしてもシャーロットって馬鹿だったんだね? レオにバレたら愛想つかされるのにね」
花音も峰岸さんにご一腹らしく小言を漏らした後、シャーロットをさらに幻滅し呆れる。
私もそれには同感。
レオにこのことがバレたら、逆鱗に触れて破滅ルートまっしぐらなんだけれどな。
「恋は盲目って言うからな。それだけレオを愛して、自分だけの物にしたいって思ってるんだろう?」
『なるほど』
経験者は語る。説得力のある言葉に、私と花音はやたらに納得してしまう。
重過ぎる愛情ではあるけれど、それだけ愛せる人に出会えて羨ましい。
「まさかシャーロットは女魔王を復活させたいんじゃ? そして自分が聖女となり女魔王を倒せば、レオとすんなり結婚。めでたしめでたし」
『!!』
突然顔を青ざめた友太先輩の発言に峰岸さんの時とは違い、私だけではなく全員がハッとする。
信じたくないけれど、それだったら全部に説明がつく。
おかしいと思ったんだよね?
考古学には興味ないから参加せず。顔を出すこともしなかった。その辺は正々堂々するのかなと思うことにしたら、実は裏で密かに私の弱みを探っていた。
そして見つけたのは、私の中に女魔王の魂が封印されること。
「もしそれが本当ならば、絶対に許せない。私のありもしない噂をばらまくだけならまだしも、女魔王を復活させるってことは世界を恐怖に陥れることだよね? それで自分が聖女になるって、頭沸いてる」
「そうだな。そもそも聖女は花音なんだから、どう逆立ちしても聖女にはなれないだろう? 花音が聖女だって分かってないのか?」
「直接は言ってませんからね。エミリーを陥れることしか頭にないんですよ」
考えれば考えるほど怒りがグツグツと煮えたぎり、声を荒げて怒りを爆発させる。リーダーと花音も賛同してくれ、最早あきれ返っていた。
そもそも聖女とは聖なる乙女なんだから、こんな歪んだ考えの人が聖女になれるはずがない。
もし花音が聖女だってバレたら、花音にまで害が及ぶのだろうか?
“朋ちゃん、もう限界。これ以上は無理だよ”
“あ、ごめん。もう来てもいいよ。本当に助かった。ありがとう”
ヌクの必死すぎるSOSにこれ以上は無理だと悟り、二つ返事で許可を出し最大級で労う。一時間以上も時間稼ぎをしてくれて助かった。
「レオ達がもうすぐ到着するそうです」
「そうか。シャーロットのことを話すのか?」
「もちろんです」
ここまで来たら甘い考えなどすべて捨てる。でもシャーロットの気持ちもちゃんと代弁する。嘘偽りのない真実を話して、みんなの特にレオの判断を聞く。
私はシャーロットが自分の罪を認めさえしてくれれば、すべて水に流して許す気でいる。さすがに仲良くはしたくない。シャーロットもそれは願い下げだろう。
「そしたら翼が冗談で言ったシャーロットとヘンゼルの共謀説も可能性の一つとして、戦闘の準備をしとかないとな」
「うっ……なんかすいません。もしそうなったら、俺が全責任持ちます」
ため息交じりでリーダーが物騒な可能性を呟けば、峰岸さんは再び肩を落とし謝罪しながら厄介ごとを引き受けてくれる。
このやり取りだけでもさらに気が重くなり、私はどこで選択を間違えてしまったのか悩む。
スキルがスピリチュアルマスターなのに、選択を間違えるなんてどう言うことなんだろう?
……エミリーからしてみれば、正しい選択だった? 私が生きて行くためには、しょうがなかった。
「私は聖女だから、シャーロットの悪しき心を浄化しますね。そしたら元の清純派主人公に戻るんですかね?」
「ゲームだと女魔王を倒して、ハッピーエンドだったからな。可能性は低いだろうな」
私には考えつかなかった最後の望みは、友太先輩の渋い台詞で呆気なく却下されてしまう。
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