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15「わだかまり」
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15「わだかまり」
何者かの来訪に無視を決め込んでいた華名子だが、一向に止まないインターフォンの嵐に流石に根負けし、玄関を開けるとそこには案の定月原が立っていた。
忌々しい気持ちを押さえ込める自身が無いが、観念したように家へ招きいれた。
「悪いけど、今日はオフだから。お構いはしないわよ」
「構いません」
華名子のぶっきらぼうな言葉にもいつも調子で返す月原が気に入らないが、とやかく言っても仕方ない。この娘は元からこうなのだ。人格を矯正するにはもう遅い。
一人であれこれ考えながら、華名子はソファーに腰を下ろした。
「どうぞ、まあ適当に座って。座布団あるでしょ」
本来なら華名子が使っているソファーを差し出すが、今日はそんな気分ではない。月原に机の前に置いた座布団を指さすが、どうにも座ろうとしなかった。
「何しているの? まさか立ったままで話すつもり」
「先生、何故黙っていたんですか」
「何の事」
華名子はしらばっくれようとするが、流石に無理がある。月原は容赦なく追求してくる。
「池内進さんの事です。普通に考えて、一番最初に疑うべき人物じゃ無いですか。何故今まで黙っていたんです? 」
うるさい。何も――
「何も知らないくせに、偉そうな事を言わないでもらえる? あの男は、自分の夢の為に、小さかった私と体の弱かった母を捨てたのよ」
「それが、何の関係があるんですか」
月原の言葉がいちいち胸をざわつかせる。華名子は気づかない内に語気が荒くなっていく。
「私が小学生の頃……十年以上前にあいつは出て行ったわ。それきりよ。ただの一度も帰って来なかった。母が死んだことも知らないでしょう。私もアイツがどこでどうなってるか分からないわ。そんなヤツがどうして今更、私に絵なんか送るっていうの!」
「それは知っている人に聞きましょう。さ、先生支度して下さい」
華名子は深くため息をついた。
「一体、誰――
「愚問ですね。昨日電話でアポはとりました。さ、支度を」
「行かないと、言ったら?」
華名子の挑発的な言葉にも月原はまるで怯む事は無い。
「それは佐々木さんを見殺しにすると言っているのと同じです」
何も答えられない。いや、選ぶべき答えは分かっている。しかし――
「先生とお父さんの間にわだかまりがあるのは分かりました。しかし、それこそ佐々木さんにはまるで関係の無い話です。人の家族のいざこざに巻き込まれて苦しんでいます。そして、助ける事ができるのは先生、あなただけです」
月原を睨むが、その表情は一ミリも動かない。相変わらず、嫌な――
「分かったわ行けばいいんでしょ。すぐに準備するから待ってて」
華名子は観念したように、髪を整えて服を着替えた。食欲は無い。冷蔵庫からミネラルウォータを取りだし、一気に飲み干すと準備完了だ。
月原も静かにその光景を眺めていたようだ。その目に苛立ちを覚えた。
「あなたいつも、そんな感じなの?」
「どういう感じか分かりませんが、先生が見た通りだと思います」
相変わらず可愛くない。
「あなた、友達いないでしょ」
答えは分かりきっている。我ながら大人気ないとかなこは自嘲するが、月原からは意外な答えが返って来た
「いますよ。大切な友達が」
月原はそういうと玄関の方へ行ってしまった。
見栄をはったのだろうか。流石に少し意地悪なことを言ってしまった。しかし、今までのことを考えるとこれ位許してもらっても罰はあたらない。
胸に芽生えた罪悪感を打ち消すような言い訳は浮かんでは消えて行った。
何者かの来訪に無視を決め込んでいた華名子だが、一向に止まないインターフォンの嵐に流石に根負けし、玄関を開けるとそこには案の定月原が立っていた。
忌々しい気持ちを押さえ込める自身が無いが、観念したように家へ招きいれた。
「悪いけど、今日はオフだから。お構いはしないわよ」
「構いません」
華名子のぶっきらぼうな言葉にもいつも調子で返す月原が気に入らないが、とやかく言っても仕方ない。この娘は元からこうなのだ。人格を矯正するにはもう遅い。
一人であれこれ考えながら、華名子はソファーに腰を下ろした。
「どうぞ、まあ適当に座って。座布団あるでしょ」
本来なら華名子が使っているソファーを差し出すが、今日はそんな気分ではない。月原に机の前に置いた座布団を指さすが、どうにも座ろうとしなかった。
「何しているの? まさか立ったままで話すつもり」
「先生、何故黙っていたんですか」
「何の事」
華名子はしらばっくれようとするが、流石に無理がある。月原は容赦なく追求してくる。
「池内進さんの事です。普通に考えて、一番最初に疑うべき人物じゃ無いですか。何故今まで黙っていたんです? 」
うるさい。何も――
「何も知らないくせに、偉そうな事を言わないでもらえる? あの男は、自分の夢の為に、小さかった私と体の弱かった母を捨てたのよ」
「それが、何の関係があるんですか」
月原の言葉がいちいち胸をざわつかせる。華名子は気づかない内に語気が荒くなっていく。
「私が小学生の頃……十年以上前にあいつは出て行ったわ。それきりよ。ただの一度も帰って来なかった。母が死んだことも知らないでしょう。私もアイツがどこでどうなってるか分からないわ。そんなヤツがどうして今更、私に絵なんか送るっていうの!」
「それは知っている人に聞きましょう。さ、先生支度して下さい」
華名子は深くため息をついた。
「一体、誰――
「愚問ですね。昨日電話でアポはとりました。さ、支度を」
「行かないと、言ったら?」
華名子の挑発的な言葉にも月原はまるで怯む事は無い。
「それは佐々木さんを見殺しにすると言っているのと同じです」
何も答えられない。いや、選ぶべき答えは分かっている。しかし――
「先生とお父さんの間にわだかまりがあるのは分かりました。しかし、それこそ佐々木さんにはまるで関係の無い話です。人の家族のいざこざに巻き込まれて苦しんでいます。そして、助ける事ができるのは先生、あなただけです」
月原を睨むが、その表情は一ミリも動かない。相変わらず、嫌な――
「分かったわ行けばいいんでしょ。すぐに準備するから待ってて」
華名子は観念したように、髪を整えて服を着替えた。食欲は無い。冷蔵庫からミネラルウォータを取りだし、一気に飲み干すと準備完了だ。
月原も静かにその光景を眺めていたようだ。その目に苛立ちを覚えた。
「あなたいつも、そんな感じなの?」
「どういう感じか分かりませんが、先生が見た通りだと思います」
相変わらず可愛くない。
「あなた、友達いないでしょ」
答えは分かりきっている。我ながら大人気ないとかなこは自嘲するが、月原からは意外な答えが返って来た
「いますよ。大切な友達が」
月原はそういうと玄関の方へ行ってしまった。
見栄をはったのだろうか。流石に少し意地悪なことを言ってしまった。しかし、今までのことを考えるとこれ位許してもらっても罰はあたらない。
胸に芽生えた罪悪感を打ち消すような言い訳は浮かんでは消えて行った。
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