マイルームから異世界転移?!二つの世界の力を使って成り上がる

破滅

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窓を開けたら異世界だった

第一話 窓を開けたら、そこは異世界(というお約束)だった

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体温を優に超える40℃の熱波がアスファルトを揺らし、買ったばかりのアイスは見る影もなく溶けていく。まるで巨大なオーブンに放り込まれたような、そんな真夏日の午後。

「……マジで溶ける」

俺、神崎 翔(かんざき しょう)は、額から噴き出す汗を手の甲で乱暴に拭った。

周囲を見渡せば、俺と同じように半袖短パンで暑さに顔をしかめる学生もいれば、全身を硬質のプレートで覆った鎧を纏い、腰には剣や銃器を吊るした者たちが平然と闊歩している。異様な光景。だが、これが俺たちの日常だ。

ここは日本で唯一、一般市民、特に学生の武装が公的に許可された特別行政区――『最峰(さいほう)学園都市』。

かつて平和を誓ったこの国も、国際情勢の緊迫化と技術革新の波に抗えず、限定的ながら戦争の概念を解禁した。この都市は、次代を担う兵士や公的機関の専門家を育成するための巨大な実験場であり、学び舎なのだ。

もちろん、誰もが兵士を目指すわけじゃない。一般的な教養も学べるし、警察官や消防官、研究者への道も開かれている。では、なぜ一般生徒まで武装しているのか?

答えは単純明快、自衛のためだ。日本で唯一の特殊な都市だからこそ、国内外のテロリストに狙われやすい。それに、血気盛んな学生同士が最新鋭の武器で〝喧嘩〟を始めることだって日常茶飯事だ。自分の身は自分で守る。それがここの不文律だった。

この学園都市の生徒は、入学と同時に『マスターランク』という序列に組み込まれる。これは授業の一環である戦闘シミュレーションや、都市内に掲示される『クエスト』をクリアすることで得られるポイントによって変動する。ランクは1から始まり、上限はない。純粋な実力主義。強者と弱者を明確に区別するための、残酷なまでにシンプルなシステムだ。

そして、俺たち生徒が『マスター』と呼ばれる所以――それは、入学時に個々の適性に応じて与えられる、意思を持つ武器智慧武器インテリジェントウェポンの存在だ。俺たちは、その主(マスター)なのだ。

「……という長ったらしい説明は、もう聞き飽きたよな?」

俺の隣を歩く、見た目は中学生くらいの少女に話しかける。腰まで届く滑らかな白銀の髪、吸い込まれそうなほど深い紅の瞳。身長152cmの小柄な体に、シンプルな白いワンピースを纏っている。

彼女こそが、俺の智慧武器――シュタ。

「マスターの思考を先読みするのも私の役割の一つです。ですが、その独り言の癖は、戦闘中の情報漏洩に繋がる可能性を否定できません」

淡々とした、それでいてどこか柔らかな声で返してくる。シュタは人型であり、俺のあらゆる要求に応えてその姿と能力を変える『万能型』。俺の最高の相棒だ。

ちなみに俺、神崎翔は最峰学園高等部の1年で、マスターランクは87。高くも低くもない、ごく平凡な数字だ。同級生には、すでにランク100を軽々と超える化け物もいるが。

「それよりマスター、体温の急上昇を感知。熱中症の危険水域です」
「わかってるって……。こんな中、歩いてられるか! 早く帰ってクーラー効かせた部屋でゲームしたいんだよ!」

我慢の限界だった。俺はシュタに鋭く命令する。

「シュタ、飛行モード!」
「了解。武装解放――飛行武装フライアーマード、展開します」

シュタの体が眩しい光の粒子に分解され、瞬時に俺の体に再構築される。黒を基調とした流線形のスーツが全身を包み込み、背中には翼状のブースターが形成された。

「体力の消耗が激しいから、一気に行くぞ! 超加速トップスピード!!」

足元の地面がわずかに陥没するほどのGと共に、俺の体は空へと撃ち出される。肌を撫でる熱風が、上昇するにつれて心地よい涼風へと変わる。眼下に広がる学園都市の全景を眺めながら、俺は自宅マンションへと一直線に向かった。

「はぁ……はぁ……。やっぱ疲れる……けど、地獄を歩くより億倍マシだな……」

数分の飛行で自宅マンションのベランダに着地し、武装を解除する。再び少女の姿に戻ったシュタが、黙って俺の隣に立つ。

自室のドアを開け、むわっと襲い来る熱気を追い出すように、勢いよく窓を開け放った。

その瞬間、俺は息を呑んだ。

「……は?」

窓の外に広がっていたのは、見慣れた学園都市のビル群ではなかった。

どこまでも続くかのような雄大な大森林。空には見たこともない大きさの、二つの月が浮かんでいる。そして、ここはマンションの二階のはずなのに、窓のすぐ下には、苔むした柔らかな地面が広がっていた。

「……なんだよ、これ……」

脳が理解を拒む。誰かの悪戯か? いや、こんな大がかりなVR映像を俺の部屋に投影できる奴なんて、心当たりがない。

「シュタ、状況は?」
「原因不明。ですが、この空間はマスターの部屋と物理的に接続されています。また、大気成分、重力定数、魔力素子の濃度が、既知の地球データと著しく異なります」
「魔力素子……?」
「はい。私たちの世界では観測されない、未知のエネルギー粒子です」

未知のエネルギー。物理法則の異なる空間。そして、このファンタジー全開の景色。

導き出される答えは、一つしかない。

「……異世界、か」

戸惑いと、恐怖と、そして心の奥底から沸き上がってくる、抑えきれない高揚感。俺はごくりと唾を飲み込んだ。

「面白い……。面白くなってきたじゃねえか!」

まずは情報収集だ。

「シュタ、念のため現在地の座標を記録。いつでもこの部屋に戻れるように、マッピングを頼む」
「イエス、マスター。空間座標を固定。マッピングを開始します」

頼もしい相棒の返事を聞き、俺は改めて窓の外に広がる世界を見つめた。
ふと、昔読んだライトノベルの一節が頭をよぎる。

(異世界といえば、アレだよな、アレ……)

心の中で強く、強く念じてみる。

――ステータス、オープン!

すると、目の前に半透明のウィンドウが音もなく現れた。まるで最新鋭のARグラスの表示のように、そこには日本語の文字列が浮かび上がっていた。

神崎 翔(カンザキ ショウ)
種族: ヒューマン
職業: 【訪問者】Lv.1
HP: 100/100
MP: 50/50

スキル:
・剣術 Lv.3
・体術(空手、柔道、ボクシング) Lv.2
・ユニークスキル:
 ・智慧武器(インテリジェントウェポン)
 ・異世界言語理解

スキルポイント: 0

「……うお、マジかよ」

思わず声が漏れる。ゲームでしか見たことのない画面が、現実の景色に重なって見えている。

「シュタ、これを見て何か分かるか?」
「マスターの視覚情報を共有。……これは、この世界における個人の能力を可視化したものと推測されます。レベルとは、この世界で得た経験値の総量でしょう。マスターのレベルが1なのは、まだこの世界で何のアクションも起こしていないためと考えられます」

シュタの冷静な分析に頷きながら、俺は特に気になる項目に意識を集中させた。

職業、【訪問者】。

【訪問者】
異世界からの来訪者に与えられる特殊な職業。
あらゆる職業への適性を持ち、経験値取得率に多大なボーナスを得る。
また、スキルポイントの蓄積により、様々なスキルを習得可能。

「……なるほどな」

成長チート、というわけか。俄然、やる気が沸いてきた。

「よし」

俺は覚悟を決め、窓枠に足をかけた。

「行くぞ、シュタ。俺たちの冒険の始まりだ」

こうして、俺の部屋は二つの世界を繋ぐ唯一の扉となり、俺のありふれた日常は、青春と冒険の物語へと姿を変えたのだった。

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