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1章
44.依頼……?
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案内されたのは、壁に取り付けられている大きなコルクボードの前。ギルドの入り口から見ると、右側の壁だ。
「Gランクはここね」
ランクごとに区切られているボードの、Gランクのところを見ると……。
薬草採取、小型で危険の少ない動物や魔物の討伐、地域のゴミ拾い……も、まぁ、よしとしよう。
「結構、色々……あるんだな」
『シウーの乳搾りを手伝ってください!報酬はアイスクリーム』とか、『求む!チェリーの収穫お手伝いさん!お仕事の後はチェリーパイを食べよう!』とか。
「おい、このアイスクリームとはなんだ!」
「あたし、チェリーパイ食べたーい!」
「私は、こっちのママレード……」
依頼って言うか、体験会だな。全員食べ物目当てだし。
「へー。面白いっすね」
「最初は普通に収穫の手伝いをしてたんだけどね。子どもが行くと、依頼主さんが色々くれたみたいで。結局、報酬として払う金額は少なくして、食べ物だったり、小物だったりを依頼主さんに直接もらうようになったのよ。依頼料も銅貨三枚くらいね」
「安っ!パン一個くらいの値段じゃないっすか」
チコルさんとミゲリオさんの会話を勝手に聞く。
なるほどね。
形式的に依頼料はもらうけど、多分依頼主もそんなに困ってないんだろう。子どもに色々経験させてあげたいっていう大人の気持ちが作った『依頼』なわけだ。
隣のFランクの依頼を見ると、同じような収穫手伝いの依頼が貼ってある。そっちは多分、正式な依頼だ。依頼書もきっちり書いてある。
「で……」
『なんか依頼を受けるのか』と聞こうとしたが、既にケンカ勃発してる。
「アイスクリーム!」
「チェリーパイ!」
乳搾りと、収穫な?
傍でネリーがオロオロしてるし、ルマは呆れ顔でため息吐いてる。
アレクもラミも、良くも悪くも自分の意見はハッキリ言う。言い合いになるのは大抵この二人だ。
ったく……。
「じゃあ、ネリーが言ってたママレードでいいじゃん」
「「よくない!」」
即答かよ。
めんどくせー。
乳搾り、収穫、ママレードの依頼書を読む。ママレードのやつは依頼書って言うか、『ジャム作り体験』って書いてあるけど。
「早めに行っといた方がいいのも、特にないな」
この世界全体の話なのか、この国だけなのか、あるいはこの領地が特殊なのか、詳しいことはさっぱり分からんが、旬の食べ物ってのがない。常に実をつけているわけではないが、大抵の植物、穀物、その他諸々は、一年中いつでも栽培出来るらしい。
収穫期、とか言うのがないから、依頼の期間も特に定まってない。
「確かに、これならどれが先でも大丈夫だね。それが一番困るけど……」
隣に来ていたルマに『そうだよなー』と返しながら、解決方法を考える。
考える、って言ったって、こうなった場合の対処法は一つだよな。
「ジャンケンしたら?」
ルマは『おぉ!いいじゃん』と言い、ネリーも頷いてくれた。が。
「何っ!貴族である僕が優先されるのではないのか!」
「冒険者に身分は関係ないってば!実力主義って言ってたでしょ?」
「……っ!だ、だが、ジャンケンなんて、運だろう!」
どうしてもアイスクリームが食べたいらしい。自分が負ける可能性のある提案は、受けたくないんだろう。
だが、俺は優しくないぞ。
「運も実力のうちって言うじゃん?」
だからちゃっちゃと決めてくれ。
アレクは『うーんー』と唸っているが、ラミは既にジャンケンで決める気らしい。『早くして!』とキレかけている。
「いーい?最初はグーよ?パーなんか出したら握った拳で殴るからね!」
「お、おう……」
ラミの気合いが入った、と言うか入り過ぎて過激になった発言に、アレクも若干引いてる。
「ラミちゃん……殴っちゃダメだよ」
「本当に殴りはしないわよ」
ラミがそう言うが、ルマはあんまり信じてないらしい。
「本当に殴りそうだからネリーも言ってるんだよ……」
俺もそう思う。
「「最初はグー!ジャンケン……ポン!」」
あれだけ言い合っていたが、ジャンケンは一発で勝負がついた。
「いやぁー!あたしのチェリーパイがぁぁー」
だから、メインは収穫ね。
「やった!アイスクリームが食べられるぞ!」
お前もだ。乳搾りをしろ。
「決まったっすか?」
これが仕事とは言え、待っててくれたミゲリオさんに申し訳ないな。
「チコルさんは受付に戻ったんで、渡しに行くっすよ。依頼書をボードからはがして持ってくっす」
一番最初なので、今日のところはミゲリオさんがやってくれるらしい。
もしかして……。
「依頼の受け方、聞いといてくれた感じですか?」
「まぁ、暇だったんで。しばらく決まりそうになかったじゃないすか」
俺じゃないけど、なんかすいません。
「ありがとうございます」
「いいんすよ。これも仕事のうちっす」
お礼を言うと、ミゲリオさんはニコッと笑って言ってくれた。
なんていい人だろうか。
「あら、やっと決まった?今日は依頼受けないで帰っちゃうんじゃないかと思ったわ」
受付まで依頼書を持って行くと、チコルさんにカラカラと笑われた。
ミゲリオさんが依頼書を渡すと、チコルさんはテキパキと手続きをしてくれた。
「人数は六人でいいのよね?この依頼は日付を指定してもらうものだけど、いつにするのかしら?」
「明日でいいんじゃない?ちょうど学校休みだし」
ルマ君、それはとってもいい案だと思うが……。
「俺、明日は朝から店の仕事あるからなー。なんとか午後だけでも空けられるといいんだけど」
「じゃあ、みんなで迎えに行けばいいんじゃない?」
「ついでに〈アスター〉でお昼ご飯食べるっていうのはどう?」
ルマの意見に、ラミが乗る。
え、ご飯も食べるの?
「いいと思うよ」
「ふん。僕が直々に迎えに行ってやるんだ。感謝しろよ?」
うーん。まぁ、アレクも来るなら、両親もダメとは言わないだろう。
「オッケー。分かった。それでいこう」
「じゃあ、明日の午後っすね」
「はーい。依頼主さんには、こちらから連絡を入れておくわ。地図はこれね。それと、この用紙も持って行って。依頼をきちんとこなしたら、依頼主さんにサインをもらってね」
チコルさんは、地図と用紙をミゲリオさんに渡す。
「依頼達成報告は、達成してから三日以内よ。その時に報酬を渡すことになっているから、忘れずにね」
「了解っす」
これで依頼を受ける時の手続きは終了か。そしたら今日は解散だな。
「明日ねー」
「おー。店で待ってるー」
ギルドを出て、それぞれに家に帰る。
明日、楽しみなんだが、若干不安なのはなんでだろうか。
「Gランクはここね」
ランクごとに区切られているボードの、Gランクのところを見ると……。
薬草採取、小型で危険の少ない動物や魔物の討伐、地域のゴミ拾い……も、まぁ、よしとしよう。
「結構、色々……あるんだな」
『シウーの乳搾りを手伝ってください!報酬はアイスクリーム』とか、『求む!チェリーの収穫お手伝いさん!お仕事の後はチェリーパイを食べよう!』とか。
「おい、このアイスクリームとはなんだ!」
「あたし、チェリーパイ食べたーい!」
「私は、こっちのママレード……」
依頼って言うか、体験会だな。全員食べ物目当てだし。
「へー。面白いっすね」
「最初は普通に収穫の手伝いをしてたんだけどね。子どもが行くと、依頼主さんが色々くれたみたいで。結局、報酬として払う金額は少なくして、食べ物だったり、小物だったりを依頼主さんに直接もらうようになったのよ。依頼料も銅貨三枚くらいね」
「安っ!パン一個くらいの値段じゃないっすか」
チコルさんとミゲリオさんの会話を勝手に聞く。
なるほどね。
形式的に依頼料はもらうけど、多分依頼主もそんなに困ってないんだろう。子どもに色々経験させてあげたいっていう大人の気持ちが作った『依頼』なわけだ。
隣のFランクの依頼を見ると、同じような収穫手伝いの依頼が貼ってある。そっちは多分、正式な依頼だ。依頼書もきっちり書いてある。
「で……」
『なんか依頼を受けるのか』と聞こうとしたが、既にケンカ勃発してる。
「アイスクリーム!」
「チェリーパイ!」
乳搾りと、収穫な?
傍でネリーがオロオロしてるし、ルマは呆れ顔でため息吐いてる。
アレクもラミも、良くも悪くも自分の意見はハッキリ言う。言い合いになるのは大抵この二人だ。
ったく……。
「じゃあ、ネリーが言ってたママレードでいいじゃん」
「「よくない!」」
即答かよ。
めんどくせー。
乳搾り、収穫、ママレードの依頼書を読む。ママレードのやつは依頼書って言うか、『ジャム作り体験』って書いてあるけど。
「早めに行っといた方がいいのも、特にないな」
この世界全体の話なのか、この国だけなのか、あるいはこの領地が特殊なのか、詳しいことはさっぱり分からんが、旬の食べ物ってのがない。常に実をつけているわけではないが、大抵の植物、穀物、その他諸々は、一年中いつでも栽培出来るらしい。
収穫期、とか言うのがないから、依頼の期間も特に定まってない。
「確かに、これならどれが先でも大丈夫だね。それが一番困るけど……」
隣に来ていたルマに『そうだよなー』と返しながら、解決方法を考える。
考える、って言ったって、こうなった場合の対処法は一つだよな。
「ジャンケンしたら?」
ルマは『おぉ!いいじゃん』と言い、ネリーも頷いてくれた。が。
「何っ!貴族である僕が優先されるのではないのか!」
「冒険者に身分は関係ないってば!実力主義って言ってたでしょ?」
「……っ!だ、だが、ジャンケンなんて、運だろう!」
どうしてもアイスクリームが食べたいらしい。自分が負ける可能性のある提案は、受けたくないんだろう。
だが、俺は優しくないぞ。
「運も実力のうちって言うじゃん?」
だからちゃっちゃと決めてくれ。
アレクは『うーんー』と唸っているが、ラミは既にジャンケンで決める気らしい。『早くして!』とキレかけている。
「いーい?最初はグーよ?パーなんか出したら握った拳で殴るからね!」
「お、おう……」
ラミの気合いが入った、と言うか入り過ぎて過激になった発言に、アレクも若干引いてる。
「ラミちゃん……殴っちゃダメだよ」
「本当に殴りはしないわよ」
ラミがそう言うが、ルマはあんまり信じてないらしい。
「本当に殴りそうだからネリーも言ってるんだよ……」
俺もそう思う。
「「最初はグー!ジャンケン……ポン!」」
あれだけ言い合っていたが、ジャンケンは一発で勝負がついた。
「いやぁー!あたしのチェリーパイがぁぁー」
だから、メインは収穫ね。
「やった!アイスクリームが食べられるぞ!」
お前もだ。乳搾りをしろ。
「決まったっすか?」
これが仕事とは言え、待っててくれたミゲリオさんに申し訳ないな。
「チコルさんは受付に戻ったんで、渡しに行くっすよ。依頼書をボードからはがして持ってくっす」
一番最初なので、今日のところはミゲリオさんがやってくれるらしい。
もしかして……。
「依頼の受け方、聞いといてくれた感じですか?」
「まぁ、暇だったんで。しばらく決まりそうになかったじゃないすか」
俺じゃないけど、なんかすいません。
「ありがとうございます」
「いいんすよ。これも仕事のうちっす」
お礼を言うと、ミゲリオさんはニコッと笑って言ってくれた。
なんていい人だろうか。
「あら、やっと決まった?今日は依頼受けないで帰っちゃうんじゃないかと思ったわ」
受付まで依頼書を持って行くと、チコルさんにカラカラと笑われた。
ミゲリオさんが依頼書を渡すと、チコルさんはテキパキと手続きをしてくれた。
「人数は六人でいいのよね?この依頼は日付を指定してもらうものだけど、いつにするのかしら?」
「明日でいいんじゃない?ちょうど学校休みだし」
ルマ君、それはとってもいい案だと思うが……。
「俺、明日は朝から店の仕事あるからなー。なんとか午後だけでも空けられるといいんだけど」
「じゃあ、みんなで迎えに行けばいいんじゃない?」
「ついでに〈アスター〉でお昼ご飯食べるっていうのはどう?」
ルマの意見に、ラミが乗る。
え、ご飯も食べるの?
「いいと思うよ」
「ふん。僕が直々に迎えに行ってやるんだ。感謝しろよ?」
うーん。まぁ、アレクも来るなら、両親もダメとは言わないだろう。
「オッケー。分かった。それでいこう」
「じゃあ、明日の午後っすね」
「はーい。依頼主さんには、こちらから連絡を入れておくわ。地図はこれね。それと、この用紙も持って行って。依頼をきちんとこなしたら、依頼主さんにサインをもらってね」
チコルさんは、地図と用紙をミゲリオさんに渡す。
「依頼達成報告は、達成してから三日以内よ。その時に報酬を渡すことになっているから、忘れずにね」
「了解っす」
これで依頼を受ける時の手続きは終了か。そしたら今日は解散だな。
「明日ねー」
「おー。店で待ってるー」
ギルドを出て、それぞれに家に帰る。
明日、楽しみなんだが、若干不安なのはなんでだろうか。
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