墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

文字の大きさ
79 / 227
第五章 和平会談

9 長老会議

しおりを挟む
「あ。えーと。この人、ダンパさんな。あっちで魔王の騎士団長をしてる。今回、わざわざ俺の護衛のために残ってくれたんだ」
「騎士団長……?」
「あんなにカワイイのに?」

 最後のは、この村のちいさな少女のセリフだった。
 リョウマはだいぶ見慣れてしまったのでほとんど感じなくなっているが、改めて見ると確かに可愛い。なにしろ彼の顔は愛くるしいパンダそのもの。目尻がさがったように見える目の周りの黒いふちどりも、黒くてふかふかした丸っこい耳も、ただただ「可愛い」と形容するしかないシロモノなのだ。いかに中身が超おカタいクソ真面目な騎士団長の武人だったとしても。

 当の本人は恐縮したように黙り込んだまま、両手を広げて周囲から迫る人々からリョウマをかばうように立っているだけである。
 小さな女の子からまで「カワイイ」なんぞと言われてこの男が内心どう思っているのかはわからない。ただ、リョウマは知っている。目の周りの黒い部分にひきずられずによくよく見れば、その目は非常に知的かつ鋭い武人のものであることを。
 その目がいまは意外な状況に明らかに困惑している。それを見てとって、リョウマは女の子に言った。

「おまえ、カンナ。大の男、しかも騎士団長様に『カワイイ~』とか言ってんじゃねえよ。失礼だぞ? この人、あっちじゃかなり偉い人なんだかんな」
「あっ。ご、ごめんなさい……」
「いえ。自分は構いませぬよ」
 ダンパは静かに言うと、少女に向かってこくりとうなずいて見せた。
「褒めていただき、ありがとう存じます。カンナ殿」
「……う、ううん……」

 女の子は急にイチゴのように真っ赤になって、ぴゅんっと飛び去り、母親のスカートの後ろに隠れてしまった。


 ◇


 そのまま、リョウマはひとまず長老たちが集まる天幕へ連れていかれた。もちろんダンパとサクヤも同行している。
 最初に言われた通り、そこは長老ムサシの住居だった。この村の天幕は、石と粘土で固めた基礎で固定した木の柱に、動物の皮や布を張って作られるものが基本である。下部だけは少し石積みにして、その上に天幕を作っている家もある。全体にお椀を伏せたような形のものが多い。
 長老たちが会合に使う天幕は村の中でもかなり大きなものになる。そうでないと全員が入れないからだ。

 靴を脱いで中にあがると、幅が十メートルほどある板敷きの客間のスペースにはすでにほかの長老たちが集まっていた。中央には四角く切った囲炉裏があり、火が燃やされている。周囲には藁で編んだ丸い座布団が置かれ、上座から古老らが座り、そこから長老たちが丸く囲炉裏を囲んで座っている。席順は、基本的に年齢順だ。
 リョウマとダンパ、そしてサクヤは最も下座に当たる場所を勧められ、そこに座った。
 開会の辞が簡単に述べられたあと、まずはムサシとゲンゴが今回の話し合いの概要について説明し、ほかの長老たちが耳を傾けた。時々「そうじゃな、リョウマ?」などと確認のために名を呼ばれ、リョウマもそのときだけは少し説明を加えたが、あとは基本的に黙って座っていることになった。
 長老たちは語られる話にかなりの驚きを禁じ得なかったようだ。それは、以前のリョウマやムサシ、ゲンゴと同様だった。

「では此度こたびはケントが人質になったということかの」
「人質っていうのとはちょっと違うかもですけど……まあ、そうです」
 隣でサクヤが意味深な目をしてニヤニヤしていたが、リョウマは敢えてガン無視した。
「心配しないでください。『ちゃんと丁重に扱う』って約束したら、あいつはちゃんと約束は守るんで」
「……ほう?」

 長老たちが意外そうな目でリョウマを見つめた。
 やがてこの中で最年長である古老が口を開いた。

「なにやらお前、『魔王の王配』とやらになったそうじゃが。それはまことなのか」
「え? いや、えーと……。俺は別に了承してるわけじゃねーけど。なんか勝手に、話がどんどんそういうことになっちまって……。あいつが勝手に、家来のみんなに『配殿下と呼べ~』とか言い出して──」
「なんかゾッコンらしいですよ~? 魔王、こいつに」
「うっ、うるせえっ! 黙ってろよサクヤ!」
「あ~ら。だってほんとのことじゃない? じゃなきゃ『子どものときからの許嫁だ』なんて言っちゃった《ブルー》のこと、あんな睨まないでしょうに。そのうえ、あんたと引き換えにあっちに連れてったりしないでしょうよ。一緒にいさせるのすらイヤだったってことでしょうが」
「え、ええっ……?」

 なんだ? つまりあれって、そういう意味だったのか。
 ほんとうに今更だ。今更なのに、またもや勝手に耳のあたりがかあっと熱くなって、リョウマはひとり、どぎまぎした。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

あなたの隣で初めての恋を知る

彩矢
BL
5歳のときバス事故で両親を失った四季。足に大怪我を負い車椅子での生活を余儀なくされる。しらさぎが丘養護施設で育ち、高校卒業後、施設を出て一人暮らしをはじめる。 その日暮らしの苦しい生活でも決して明るさを失わない四季。 そんなある日、突然の雷雨に身の危険を感じ、雨宿りするためにあるマンションの駐車場に避難する四季。そこで、運命の出会いをすることに。 一回りも年上の彼に一目惚れされ溺愛される四季。 初めての恋に戸惑いつつも四季は、やがて彼を愛するようになる。 表紙絵は絵師のkaworineさんに描いていただきました。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官、触手育成の神託を受ける

彩月野生
BL
神官ルネリクスはある時、神託を受け、密かに触手と交わり快楽を貪るようになるが、傭兵上がりの屈強な将軍アロルフに見つかり、弱味を握られてしまい、彼と肉体関係を持つようになり、苦悩と悦楽の日々を過ごすようになる。 (誤字脱字報告不要)

目が覚めたら宿敵の伴侶になっていた

木村木下
BL
日本の大学に通う俺はある日突然異世界で目覚め、思い出した。 自分が本来、この世界で生きていた妖精、フォランだということを。 しかし目覚めたフォランはなぜか自分の肉体ではなく、シルヴァ・サリオンという青年の体に入っていた。その上、シルヴァはフォランの宿敵である大英雄ユエ・オーレルの『望まれない伴侶』だった。 ユエ×フォラン (ムーンライトノベルズ/全年齢版をカクヨムでも投稿しています)

【創作BL】溺愛攻め短編集

めめもっち
BL
基本名無し。多くがクール受け。各章独立した世界観です。単発投稿まとめ。

処理中です...