墜落レッド ~戦隊レッドは魔王さまに愛でられる~

るなかふぇ

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第十一章 反撃

4 激高

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「私欲でないとすれば、なんなのだ?」

 《ホワイト》の声が冷ややかに響くのとは対照的に、サムイルはますます激高していくようだった。

「おのれのような青二才に、政治のなんたるかがわかるものかよ! 左様な甘い考えで国が成り立ってゆくものか。陛下がお隠れあそばされて以来、中央はおろか地方まで、民は不安と混乱に惑っているのだぞ。場所によっては犯罪が急増しており、民心は風前のともしびのごとくに揺らぎはじめておるッ。
 不安はそのまま経済のもろさにつながり、やがて国家の屋台骨をも揺るがす。臣民を不安のままに放置するは、為政者として失格だ。ゆえに、特に今の我が国には皆を率いてゆける、強きリーダーが必要なのだ!」
「それは理解できる。して、その『有能な為政者』とやらが自分だと?」
「無礼な口をきくな青二才! 左様な利己的な私利私欲、傲岸不遜で申しておるのではないっ。この場合、最も望ましいのは四天王・ダイダロスであることは論を待たぬ」
「ほう?」
「だがあの御仁は、彗星との戦いで深刻な負傷をした。今もとこからまともに起き上がれぬと聞いている。今の彼奴きやつには、土台無理な仕事なのだ」
「なるほど?」

 《ホワイト》は自分の顎に軽く手を掛ける恰好で首をかしげた。

「だが四天王にはもう一人いちにん、有能な方がおられたはずだが」
「トリーフォンのことか? あやつはあやつで、あれやこれやと言を左右にするばかりで一向に埒が明かぬ。おのれ自身がすべてを背負って立つ気概が足らぬのだ。それゆえ、臣らがやむなく我を頼ることになったのよ。決して己が私欲ごときで動いておるわけではないわッ」
「ふむ」

 サムイルが口角泡を飛ばしつつ長々と自論を展開するのを、《ホワイト》は相変わらず恬淡てんたんとした態度で見つめ返していた。

「言いたいことは了解した。ではそなたの思う『ふさわしき為政者』が現れるならば、そなたは特段、退くことになんの不満もないと申すのだな。すらりとその立場をその者に譲れる、と」
「くどいッ。左様なことは当然よ。すべては我が国、そして臣民のため。そこを履き違える俺ではないわっ。よいか。ゆめゆめ、俺を見くびるでないぞ、小僧!」
「ふはははっ。『小僧』か」

 《ホワイト》が声をたてて笑った。なんだかいやに楽しそうだ。
 彼は心から嬉しそうにしばらく笑い続けると、突然、態度をギラリと厳しいもの豹変させた。仮面の下の顔まではわからないが、明らかに全身から発する《気》が変わったのだ。

「では、退くがよい。直ちに、かつ速やかにな」
「ぬっ。なんだと?」
「どのみちそなたにその立場は向かぬ。わざわざそなたが出張らずとも、より優れた人物がいくらでもいる。引け、小童こわっぱ
「こっ、小童……だと?」

 一瞬だけ呆気にとられた顔になったサムイルだったが、次の瞬間には一転した。要するに、激怒した。ほとんど「瞬間湯沸かし器」だ、とリョウマは思った。
 遠くから見ていても「ゴオオオオ」と実際に音が聞こえるかと思うほどだ。サムイルが全身にまとう圧力が明らかに重くなり、押し寄せる殺気が一段と激しいものになった。

「いま何と申した? もう一度申してみよ。ことと次第によっては許さぬぞ、貴様ッ! そこへ直れいッ」
「うおっと。レッツ・フォーメーション!」

 待ち構えていた瞬間が来たと見切って、リョウマは両腕を交差させた。《レンジャー》たちが「おう! フォーメーション!」と叫ぶとともにリョウマと同じように腕を動かす。すると、それぞれの腕の前方に星型の光が出現した。
 怒り狂ったサムイルが、目を血走らせてこちらに突進してくる。そこから目を離さないまま、リョウマは技の名を叫んだ。

「《ファイブ・スター・ストライ──ック》!」

 叫ぶと同時に、五つの小さな星が合わさって巨大な輝く星型が出現する。それだけでも、サムイルの十倍の大きさはあった。それがそのまま、こちらへ飛んでくるサムイルめがけて発射される。

「ぐおわあああっ」

 衝突したエネルギーがサムイルの全身をき、まぶしく光り輝いて燃え上がらせた。
 が、それはわずかの間のことだった。サムイルが太い腕をぐいっと振るうと、星は一瞬にして霧散して消えてしまった。

「斯様なもので、俺が止められると思うてか! ええい、こざかしい真似をするッ。そこをどけ、六人まとめてケシズミにしてくれるわっ」
「そういうところよ、御同輩」
「ん、ぬあにいっ?」

 右上方の空間から朗々とした声が掛かり、サムイルがピクリと反応した。リョウマたちもそちらを見上げる。
 と、今度はそちら側から凄まじい圧力がサムイルめがけて突進してきた。

「ぐ、ぐわああっ?」

 炎熱と電撃の合わせ技らしき魔撃。
 それも、見たこともないほど巨大な代物だ。
 それがほとんど真横からサムイル将軍を襲ったのだった。
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