51 / 55
番外編
もし、航と祐悟の年齢が逆だったら…… 2
<side祐悟>
経済学部の先輩でベルンシュトルフホールディングスの後継者の日下部さんから連絡が来たのは数日前。
経済学者の藤乃先生の講演会に代わりに行ってくれないかという打診だった。
藤乃先生の講演会といえば、発表と同時にすぐに席が埋まってしまうほどの人気っぷり。
俺自身、すぐに申し込みをしたがタッチの差で満席となりがっかりしていたところだった。
裏から手を回してなんとか席を確保できないかとまで考えていた矢先の日下部さんからの連絡で驚いた。
日下部さんも講演会を楽しみにしていたが、急遽L.Aへの出張が入り、空席にするくらいならと俺に声をかけてくれたようだ。もちろん俺に断る理由はない。
喜んで講演会に行かせてもらうことにし、楽しみにその日を待った。
当日、講演会は想像以上の盛り上がり。
なんせ、経済学オタクの集まりだ。
藤乃先生も想像していたよりも明るく饒舌な方で二時間の講演会はあっという間だった。
あまりにも興奮して熱も冷めやらぬまま、俺は藤乃先生の楽屋にお邪魔した。
日下部さんの代わりに礼を言うためだ。
同じように楽屋に挨拶をする行列が並んでいて、俺は最後に楽屋に入らせてもらった。
名前を告げると、藤乃先生はすぐに笑顔を向けてくれた。
「ああ、日下部くんから聞いているよ。わざわざ足を運んでくれてありがとう」
どうやら日下部さんとはすでに交流があるらしい。
「それより、君の卒論を見させてもらっていたよ。視点が面白くて実に興味深い論文だった」
「えっ、ありがとうございます」
藤乃先生が見てくれたら……なんて思っていたが、まさか本当に読んでくださっていたとは……
それが聞けただけで嬉しかった。
だが、俺の予想を遥かに超えるほどあの論文を気に入ってくださっていたようで、話がかなり盛り上がった。
その流れで「これから飲みに行かないか?」と誘われた。
もちろん行くの一択だ。
藤乃先生のおすすめの店にそれぞれの車で向かい、店で合流。
さすが藤乃先生の行きつけの店だけあって個室でゆっくりと話ができそうだ。
美味しい料理と日本酒が並び、乾杯をして楽しい時間が始まる。
最初は俺の書いた論文や、先生の論文。学生時代にどんな勉強をしていたかなどまさにオタクな経済学の話ばかりだった。けれどふとしたことで家族の話になり、うちの両親が医者だと話すと藤乃先生の息子さんが弁護士だと教えてくれた。
「経済学者としてはうちの息子も経済学に興味を持ってくれたら嬉しかったんだけどね、全く畑違いの仕事についたよ。でも本人が楽しそうに仕事をしているから親としては嬉しい限りだよ」
同じようなことを両親も言っていた。
やってほしい、ならせたい職業があってもやはり本人の意向が最優先される家庭がいい。
「ご子息は結婚なさってるんですか?」
「いや、今は仕事が楽しくてそんな気にならないみたいだな。そろそろ家庭に入って落ち着いてもらいたいんだが、息子自身そういうタイプでもないみたいだから当分はないだろうな」
「そうなんですか?」
先生の息子でしかも弁護士なら周りにいる女性たちが放っておかないだろう。
「そうだ! よかったら倉橋くん、一度でいいからうちの息子と会ってくれないか?」
「えっ? それって……」
「お見合いだよ。どうだろう?」
息子だと話していたのに、普通にお見合いを勧められて少し困る。
藤乃先生は酔っ払って話をしているだけなのか?
「可愛いよ、うちの息子は。言い方は悪いが、その辺にいる女性たちよりもずっと可愛い。まぁ親の贔屓目かもしれないが。今年三十七だが、見た目は大学生にも見られるくらいだ。ああ、心配しないでくれ。子どもっぽいと言うわけではないよ。私の妻もいつまで経っても若くてね。遺伝なのかもしれないな」
大学生に見える三十七歳……もしかしたら鳴宮教授や緑川教授のようなタイプなのか?
それなら少し期待してしまう。
「倉橋くんは男性はダメか?」
「いえ。そんなことはありません。好きになるのに性別は関係ないと思っています」
これは本心だ。
ただまだ好きになる相手にはまだ出会ってないだけ。
「そう思ってくれるなら、うちの息子はきっと気にいると思うよ」
先生がそこまで言うのなら、一度会ってみたい。そんな気にさせられた。
「それじゃあぜひ。一度お会いしたいです」
これは本当に断りきれなかったわけじゃない。
純粋に会ってみたいと思えた。
その前に息子さんから断られたらそこで終わりだったが、彼も俺と会うことを了承してくれたようだ。
彼の気が変わる前に会ってみたくてすぐに日時を決めた。
銀座にあるイリゼホテルの企業内弁護士をされているという話だったからそこのロビーで待ち合わせをすることにした。
そこで少し話をしてから、出かければいい。
いくつかのパターンで予定を考えて当日を迎えた。
予定時間の五分前にホテルに到着し、ロビーに向かう。
彼の写真はあえて見せてもらわなかった。
ラウンジでお互いに名前を言えば席に案内されることになっていた。
ラウンジにいたスタッフに「待ち合わせをしている倉橋」と名乗ると、
「お連れさまがお待ちでございます。お席にご案内致します」
と言われて驚いた。
ドキドキしながら、案内について行くとスーツ姿の可愛らしい青年が優雅な仕草で紅茶を飲んでいた。
経済学部の先輩でベルンシュトルフホールディングスの後継者の日下部さんから連絡が来たのは数日前。
経済学者の藤乃先生の講演会に代わりに行ってくれないかという打診だった。
藤乃先生の講演会といえば、発表と同時にすぐに席が埋まってしまうほどの人気っぷり。
俺自身、すぐに申し込みをしたがタッチの差で満席となりがっかりしていたところだった。
裏から手を回してなんとか席を確保できないかとまで考えていた矢先の日下部さんからの連絡で驚いた。
日下部さんも講演会を楽しみにしていたが、急遽L.Aへの出張が入り、空席にするくらいならと俺に声をかけてくれたようだ。もちろん俺に断る理由はない。
喜んで講演会に行かせてもらうことにし、楽しみにその日を待った。
当日、講演会は想像以上の盛り上がり。
なんせ、経済学オタクの集まりだ。
藤乃先生も想像していたよりも明るく饒舌な方で二時間の講演会はあっという間だった。
あまりにも興奮して熱も冷めやらぬまま、俺は藤乃先生の楽屋にお邪魔した。
日下部さんの代わりに礼を言うためだ。
同じように楽屋に挨拶をする行列が並んでいて、俺は最後に楽屋に入らせてもらった。
名前を告げると、藤乃先生はすぐに笑顔を向けてくれた。
「ああ、日下部くんから聞いているよ。わざわざ足を運んでくれてありがとう」
どうやら日下部さんとはすでに交流があるらしい。
「それより、君の卒論を見させてもらっていたよ。視点が面白くて実に興味深い論文だった」
「えっ、ありがとうございます」
藤乃先生が見てくれたら……なんて思っていたが、まさか本当に読んでくださっていたとは……
それが聞けただけで嬉しかった。
だが、俺の予想を遥かに超えるほどあの論文を気に入ってくださっていたようで、話がかなり盛り上がった。
その流れで「これから飲みに行かないか?」と誘われた。
もちろん行くの一択だ。
藤乃先生のおすすめの店にそれぞれの車で向かい、店で合流。
さすが藤乃先生の行きつけの店だけあって個室でゆっくりと話ができそうだ。
美味しい料理と日本酒が並び、乾杯をして楽しい時間が始まる。
最初は俺の書いた論文や、先生の論文。学生時代にどんな勉強をしていたかなどまさにオタクな経済学の話ばかりだった。けれどふとしたことで家族の話になり、うちの両親が医者だと話すと藤乃先生の息子さんが弁護士だと教えてくれた。
「経済学者としてはうちの息子も経済学に興味を持ってくれたら嬉しかったんだけどね、全く畑違いの仕事についたよ。でも本人が楽しそうに仕事をしているから親としては嬉しい限りだよ」
同じようなことを両親も言っていた。
やってほしい、ならせたい職業があってもやはり本人の意向が最優先される家庭がいい。
「ご子息は結婚なさってるんですか?」
「いや、今は仕事が楽しくてそんな気にならないみたいだな。そろそろ家庭に入って落ち着いてもらいたいんだが、息子自身そういうタイプでもないみたいだから当分はないだろうな」
「そうなんですか?」
先生の息子でしかも弁護士なら周りにいる女性たちが放っておかないだろう。
「そうだ! よかったら倉橋くん、一度でいいからうちの息子と会ってくれないか?」
「えっ? それって……」
「お見合いだよ。どうだろう?」
息子だと話していたのに、普通にお見合いを勧められて少し困る。
藤乃先生は酔っ払って話をしているだけなのか?
「可愛いよ、うちの息子は。言い方は悪いが、その辺にいる女性たちよりもずっと可愛い。まぁ親の贔屓目かもしれないが。今年三十七だが、見た目は大学生にも見られるくらいだ。ああ、心配しないでくれ。子どもっぽいと言うわけではないよ。私の妻もいつまで経っても若くてね。遺伝なのかもしれないな」
大学生に見える三十七歳……もしかしたら鳴宮教授や緑川教授のようなタイプなのか?
それなら少し期待してしまう。
「倉橋くんは男性はダメか?」
「いえ。そんなことはありません。好きになるのに性別は関係ないと思っています」
これは本心だ。
ただまだ好きになる相手にはまだ出会ってないだけ。
「そう思ってくれるなら、うちの息子はきっと気にいると思うよ」
先生がそこまで言うのなら、一度会ってみたい。そんな気にさせられた。
「それじゃあぜひ。一度お会いしたいです」
これは本当に断りきれなかったわけじゃない。
純粋に会ってみたいと思えた。
その前に息子さんから断られたらそこで終わりだったが、彼も俺と会うことを了承してくれたようだ。
彼の気が変わる前に会ってみたくてすぐに日時を決めた。
銀座にあるイリゼホテルの企業内弁護士をされているという話だったからそこのロビーで待ち合わせをすることにした。
そこで少し話をしてから、出かければいい。
いくつかのパターンで予定を考えて当日を迎えた。
予定時間の五分前にホテルに到着し、ロビーに向かう。
彼の写真はあえて見せてもらわなかった。
ラウンジでお互いに名前を言えば席に案内されることになっていた。
ラウンジにいたスタッフに「待ち合わせをしている倉橋」と名乗ると、
「お連れさまがお待ちでございます。お席にご案内致します」
と言われて驚いた。
ドキドキしながら、案内について行くとスーツ姿の可愛らしい青年が優雅な仕草で紅茶を飲んでいた。
あなたにおすすめの小説
【完結】男の後輩に告白されたオレと、様子のおかしくなった幼なじみの話
須宮りんこ
BL
【あらすじ】
高校三年生の椿叶太には女子からモテまくりの幼なじみ・五十嵐青がいる。
二人は顔を合わせば絡む仲ではあるものの、叶太にとって青は生意気な幼なじみでしかない。
そんなある日、叶太は北村という一つ下の後輩・北村から告白される。
青いわく友達目線で見ても北村はいい奴らしい。しかも青とは違い、素直で礼儀正しい北村に叶太は好感を持つ。北村の希望もあって、まずは普通の先輩後輩として付き合いをはじめることに。
けれど叶太が北村に告白されたことを知った青の様子が、その日からおかしくなって――?
※本編完結済み。後日談連載中。
竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜
レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」
魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。
彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。
大学一軍イケメンにいちご狩りに誘われた陰キャの俺、なぜかいちごじゃなくて俺が喰われたんだが(?)
子犬一 はぁて
BL
大学一軍イケメン×大学九軍陰キャ
喰われるなんて聞いてないんだが(?)
俺はただ、
いちご狩りに誘われただけだが。
なのに──
誘ってきた大学一軍イケメンの海皇(21)に
なぜか俺が捕まって食われる展開に?
ちょっと待てい。
意味がわからないんだが!
いちご狩りから始まる
ケンカップルいちゃらぶBL
※大人描写のある話はタイトルに『※』あり
借金のカタに同居したら、毎日甘く溺愛されてます
なの
BL
父親の残した借金を背負い、掛け持ちバイトで食いつなぐ毎日。
そんな俺の前に現れたのは──御曹司の男。
「借金は俺が肩代わりする。その代わり、今日からお前は俺のものだ」
脅すように言ってきたくせに、実際はやたらと優しいし、甘すぎる……!
高級スイーツを買ってきたり、風邪をひけば看病してくれたり、これって本当に借金返済のはずだったよな!?
借金から始まる強制同居は、いつしか恋へと変わっていく──。
冷酷な御曹司 × 借金持ち庶民の同居生活は、溺愛だらけで逃げ場なし!?
短編小説です。サクッと読んでいただけると嬉しいです。
身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される
秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました!
最終17位でした!応援ありがとうございます!
あらすじ
魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。
ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。
死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――?
傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。
穏やかに生きたい(隠れ)夢魔の俺が、癖強イケメンたちに執着されてます。〜平穏な学園生活はどこにありますか?〜
春凪アラシ
BL
「平穏に生きたい」だけなのに、
癖強イケメンたちが俺を狙ってくるのは、なぜ!?
トラブルを避ける為、夢魔の血を隠して学園生活を送るフレン(2年)。
彼は見た目は天使、でも本人はごく平凡に過ごしたい穏健派。
なのに、登校初日から出会ったのは最凶の邪竜後輩(1年)!?
他にも幼馴染で完璧すぎる優等生騎士(3年)に、不良だけど面倒見のいい悪友ワーウルフ(同級生)まで……なぜか異種族イケメンたちが次々と接近してきて――
運命の2人を繋ぐ「刻印制度」なんて知らない!
恋愛感情もまだわからない!
それでも、騒がしい日々の中で、少しずつ何かが変わっていく。
個性バラバラな異種族イケメンたちに囲まれて、フレンの学園生活は今日も波乱の予感!?
甘くて可笑しい、そして時々執着も見え隠れする
愛され体質な主人公の青春ファンタジー学園BLラブコメディ!
月、水、金、日曜日更新予定!(番外編は更新とは別枠で不定期更新)
基本的にフレン視点、他キャラ視点の話はside〇〇って表記にしてます!
人気アイドルの俺、なぜかメンバー全員に好かれてます
七瀬
BL
デビュー4年目の人気アイドルグループ「ECLIPSE(エクリプス)」に所属する芹沢 美澄(せりざわみすみ)は、昔からどこか抜けていてマイペースな性格。
歌もダンスも決して一番ではないはずなのに、なぜかファンからもメンバーからも目を離されない存在だった。
世話焼きな幼なじみ、明るく距離の近い同い年、しっかり者で面倒見のいい年上、掴みどころのない自由人、そして無言で隣にいるリーダー——。
気づけば、美澄の周りにはいつも誰かがいて、当たり前のように甘やかされていく。
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加