身も心もズタボロになった俺が南の島でイケメン社長と幸せを掴みました

波木真帆

文字の大きさ
18 / 53

倉田さんのクセ

しおりを挟む
「う、ん……っ、いい、におい……」

夢の中まで香っていたシトラスの匂いに包まれて俺は目を覚ました。

いい匂いがする目の前のものに擦り寄ってスンスンと嗅ぎながら、
あれ? 俺の布団、こんなふかふかであったかい抱き枕とかあったっけ? 
寝ぼけた頭で一瞬考えて、ここが石垣の宿だということに気づいた。

目の前のほんのりと温かな温もりに眠気を誘われもう一度擦り寄ると、『――っ』と息を呑む音が微かに耳に入ってきた。

「……んっ?」

俺、何かに抱きしめられてる?
そんな気がして、ふと音の聞こえた方へ顔を上げると、そこには少し赤い顔をして俺を見つめる倉田さんの姿があった。

「おはよ」

「――なっ! えっ? ど――っ」

一瞬パニックになった俺をそっと抱きしめ、

「ほら、藤乃くん。落ち着いて……」

と背中を撫でられ俺は昨夜のことを思い出していた。

「あっ……」

「ふふっ。思い出した? 昨日途中で私と一緒にベッドに入っただろう?」

そうだ。
怖い夢見たって言ったら添い寝してくれるって言ってくれて、結局あれから一度も目を覚さなかった。
夢も見ていないくらい熟睡したなんていつぶりだろう……。

「倉田さんのおかげでぐっすり眠れました」

お礼を言おうと倉田さんを見上げると、ほんの少し疲れたような表情が見える。
もしかして俺のせいでよく寝れなかったのかもしれない。
途中で起こしちゃったしな……。

「あの……倉田さんはあんまり寝れなかったんじゃないですか? ごめんなさい……」

「そんなことないよ、大丈夫」

優しく頭をポンポンと叩かれ撫でられる。
その大きな手にホッとして微笑むと倉田さんも嬉しそうに笑ったけれど、すぐに表情を変えた。
どうしたんだろう……少し困ってる?

「それよりも……あの、藤乃くん。足は大丈夫?」

足? 
倉田さんにそう言われて自分の足の状況に気づいた。
怪我した方の足が倉田さんの足に絡みついて乗っかっていた。
そのせいで倉田さんに貸してもらったTシャツが捲れ上がっている。
それどころか、その……俺の、その俺の・・を倉田さんのお腹に擦りつけている状態で……。

「う、わぁーーっ! ご、ごめんなさい――っつ!」

慌てて倉田さんの身体から離そうとして、足首に思いっきり力を入れてしまった。
ズキッと痛みが走る。

「ああ、そんなに急いで動かしたらだめだ……って私のせいだな、悪い」

「い、いえ……そんな。俺が倉田さんにあんな格好で……その……」

「謝ることはない。むしろ役得――」

「えっ?」

「いや、なんでもない。抱き枕だと思っていいって言ったのは私の方だ。気にすることはない」

本当に優しいな、倉田さん……。

「でも……」

「んっ? どうした?」

「この抱き枕……ぴったりフィットで気持ち良すぎてもう他の抱き枕使えそうにないですね」

今日のすっきりとした寝起きは何ものにも変え難い。
倉田さんに添い寝してもらっただけで嫌な夢も見なかったし、最高の目覚めだった。
そんな正直な感想を倉田さんに言っただけだけど、

「――くそっ、これで煽ってないっていうんだからほんとタチ悪いよな……」

よく聞こえなかったけれど、小声で何やらボソボソ呟いてた。
今、なんて言ったんだろう?

「……倉田さん?」

「ああ、ごめん。こんな抱き枕でよかったらいつでも使ってよ」

寝起きだというのに爽やかでキラキラと輝くような笑顔を見せられ、俺はドキドキと胸が高鳴ってしまった。
はぁーーっ。やっぱ、倉田さんって格好良すぎるな……。

「そろそろ起きるか?」

「あ、はい。そうですね。今日は船が動いてたらいいんですけど」

「そうだな、後で離島ターミナルに連絡してみよう」

すっかり普通になってしまっているお姫さま抱っこでまずはトイレに連れて行ってもらい用を足して、洗面所で朝の身支度を整えてから自分の部屋へと連れて行ってもらった。
その間、倉田さんはずっと俺のそばについていてくれた。
あ、流石に用を足しているときは扉の外にいてくれたんだけど……。

『ちょっと待ってて』と言われベッドに座って待っていると、倉田さんが昨日着ていた服とスーツを持ってきてくれた。
どうやらクリーニングに出す時にあのスーツも一緒にクリーニングに出してくれていたみたいだ。
それを宿のスタッフさんから受け取ってきて渡してくれた。

「ありがとうございます」

お礼を言いながら受け取ると、『着替えを手伝おう』と言ってくれた。
そんなことまでと思ったけれど、先に下着を履いている間にワイシャツのボタンを外し準備をしてくれていてもうあとは流されるまま、あっという間に俺はスーツに着替えてしまっていた。

倉田さんって絶対前世は執事かなんかに違いない!
そう思ってしまうほどあまりの手際の良さに驚いてしまう。

「よしっ。準備万端だな」

ささっとネクタイの締め襟を綺麗にして満足そうに俺を見つめながら、今度はあの広縁の椅子へと連れて行ってくれた。

倉田さんが着替えている間、外の景色を見ていたけれど今日の石垣は雲ひとつない晴天だ。
ああ、今日は西表に行けるといいな。

「朝食は部屋とレストラン、どっちがいい?」

準備を終えた倉田さんがそう尋ねてきた。

えーっ、どっちも捨て難い……けど、昨日からずっと部屋にいるし、レストランも行ってみたいかも。
あ、でも捻挫してるから部屋の方が無難かな……。

「ふふっ。レストランに行きたそうだな。じゃあ、そっちにしようか」

「えっ? あの、なんでわかったんですか?」

「ははっ。藤乃くん、すぐ顔に出るから」

えーっ、そんな出てるかな?
俺は両手でほっぺたをモミモミと触っていると、

「こういうとこ……ほんと可愛すぎるな」

倉田さんが口元を押さえながら何か言っていた。

なんだろう?
倉田さん、時々何か呟いてるのはクセなのかな?

しおりを挟む
感想 37

あなたにおすすめの小説

身代わりにされた少年は、冷徹騎士に溺愛される

秋津むぎ
BL
第13回BL大賞奨励賞頂きました! 最終17位でした!応援ありがとうございます! あらすじ 魔力がなく、義母達に疎まれながらも必死に生きる少年アシェ。 ある日、義兄が騎士団長ヴァルドの徽章を盗んだ罪をアシェに押し付け、身代わりにされてしまう。 死を覚悟した彼の姿を見て、冷徹な騎士ヴァルドは――? 傷ついた少年と騎士の、温かい溺愛物語。

運命の番は僕に振り向かない

ゆうに
BL
大好きだったアルファの恋人が旅先で運命の番と出会ってしまい、泣く泣く別れた経験があるオメガの千遥。 それ以来、ずっと自分の前にも運命の番があらわれることを切に願っていた。 オメガひとりの生活は苦しく、千遥は仕方なく身体を売って稼ぐことを決心する。 ネットで知り合った相手と待ち合わせ、雑踏の中を歩いている時、千遥は自分の運命の番を見つけた。 ところが視線が確かに合ったのに運命の番は千遥を避けるように去っていく。彼の隣には美しいオメガがいた。 ベータのような平凡な見た目のオメガが主人公です。 ふんわり現代、ふんわりオメガバース、設定がふんわりしてます。

幼馴染がいじめるのは俺だ!

むすめっすめ
BL
幼馴染が俺の事いじめてたのは、好きな子いじめちゃうやつだと思ってたのに... 「好きな奴に言われたんだ...幼馴染いじめるのとかガキみてーだって...」 「はっ...ぁ??」 好きな奴って俺じゃないの___!? ただのいじめっ子×勘違いいじめられっ子 ーーーーーー 主人公 いじめられっ子 小鳥遊洸人 タカナシ ヒロト 小学生の頃から幼馴染の神宮寺 千透星にいじめられている。 姉の助言(?)から千透星が自分のこといじめるのは小学生特有の“好きな子いじめちゃうヤツ“だと思い込むようになり、そんな千透星を、可愛いじゃん...?と思っていた。 高校で初めて千透星に好きな人が出来たことを知ったことから、 脳破壊。 千透星への恋心を自覚する。 幼馴染 いじめっ子 神宮寺 千透星 ジングウジ チトセ 小学生の頃から幼馴染の小鳥遊 洸人をいじめている。 美形であり、陰キャの洸人とは違い周りに人が集まりやすい。(洸人は千透星がわざと自分の周りに集まらないように牽制していると勘違いしている) 転校生の須藤千尋が初恋である

【完結 一気読み推奨】片想いの相手が「そろそろ恋愛したい」と言ったので、用済みの俺はニートになることにしました。

はぴねこ
BL
 高校生の頃、片想いの親友に告白した。  彼はノンケだったから玉砕して友人関係も終わるものだと思っていた。  もしかすると気持ち悪いと軽蔑される覚悟までしていたのに、彼は「今は恋愛をしている時間がないんだ」と自分の夢を語ってくれた。  彼は会社を興した祖父のことをとても尊敬していて、自分も起業したいと熱く語ってくれた。  そして、俺の手を握って「できれば親友のお前には俺の右腕になってほしい」と言われた。  同性愛者の俺のことを気持ち悪いと遠ざけることもせずに、親友のままでいてくれた彼に俺は感謝して、同じ大学に進学して、大学の頃に彼と一緒にゲームを作成する会社を起業した。  あれから二十年間、本当に二人三脚で駆け抜けてきた。  そして、昨年売り出したVRMMOが世界的に大ヒットし、ゲーム大賞を取ったことを祝うパーティーで親友が語った言葉に俺の覚悟も決まった。 「俺もそろそろ恋愛したい」  親友のその言葉に、俺は、長年の片想いを終わらせる覚悟をした。  不憫な拗らせアラフォーが”愛”へと踏み出すお話です。

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。

今日もBL営業カフェで働いています!?

卵丸
BL
ブラック企業の会社に嫌気がさして、退職した沢良宜 篤は給料が高い、男だけのカフェに面接を受けるが「腐男子ですか?」と聞かれて「腐男子ではない」と答えてしまい。改めて、説明文の「BLカフェ」と見てなかったので不採用と思っていたが次の日に採用通知が届き疑心暗鬼で初日バイトに向かうと、店長とBL営業をして腐女子のお客様を喜ばせて!?ノンケBL初心者のバイトと同性愛者の店長のノンケから始まるBLコメディ ※ 不定期更新です。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ユィリと皆の動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新 Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新 プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー! ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!

記憶を無くしたら家族に愛されました

レン
BL
リオンは第三王子で横暴で傲慢で侍女や執事が少しでも気に入らなかったら物を投げたり怒鳴ったりする。家族の前でも態度はあまり変わらない… 家族からも煩わしく思われたていて嫌われていた… そんなある日階段から落ちて意識をなくした…数日後目を覚ましたらリオンの様子がいつもと違くて…

処理中です...