身も心もズタボロになった俺が南の島でイケメン社長と幸せを掴みました

波木真帆

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みんなに祝福されたい

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「おふたりとも本当に幸せそうですね」

「ああ。蓮見は南條くんに初めて会った時からベタ惚れだったからな。
あいつには恋愛なんてできないと思ってたんだが、南條くんに会ってからはもう別人のようだったよ。
きっと南條くんに出逢うのを待ってたんだろうな」

「そういうの……素敵ですね」

きっと祐悟さんは彼らの5年もの真剣交際をずっとそばで見守ってきたんだろうな。
彼らの写真は祐悟さんが撮ったからこんなにも素敵な笑顔を引き出すことができたに違いない。
こんな友人関係って、ほんと憧れる。

「私も一緒だ」

「えっ?」

「私も航と出逢うまでは誰かを本気で好きになるなんてことあり得ないと思っていたんだ。
蓮見と南條くんのようにお互いを愛し愛される関係にまさか自分が出逢えるなんて思っても見なかった。
だから、航に出逢って蓮見が言ってたことがその時やっと理解できたんだ。
運命の相手は出逢った瞬間わかるんだって。
航に出逢って、絶対離さないってあの時もう決めてたんだ。
だから、今こうして航が傍にいてくれることが私にとって幸せ以外の何ものでもないよ」

「祐悟さん……」

本当に幸せそうな表情でギュッと抱きしめてくれる祐悟さんのその温もりが愛おしくて、俺は涙が出そうなほど嬉しかった。

「今日、蓮見と浅香に話してきたんだ。俺にも大切な人ができたって」

「えっ……ほ、ほんとに?」

「ああ。最初は浅香が大切な恋人ができからその人と一生を共にしたいって話をし出してね、だから私も航のこと自慢したくなって話したんだ。
2人とも驚いてたけど、近いうちに航に会わせてほしいって言ってたよ。だから、一緒に会ってくれるか?」

祐悟さんにとって彼らは共同経営者という関係だけでなく、喜びも悲しみも共有し合う仲間なんだろう。
そんな人たちに俺を紹介してくれる……断る理由なんてあるわけない。

「はい。ぜひ」

そう言うと、『そうか、会ってくれるか』と嬉しそうに呟いていた。

「会って驚く前に言っておくが、浅香の恋人もその……男なんだ。しかも、蓮見の兄貴だって」

「えっ? じゃ、じゃあ蓮見さんと浅香さんは義兄弟になるってことですか?」

「ああ。そうなるな。あの記事を読んでわかったと思うが、蓮見は相当独占欲がすごいんだ。
南條くんへの牽制は私たちにさえ凄かったからな。だけど、蓮見の兄貴の独占欲はそれを超えてるよ。
浅香のことストーカーみたいにずっと見張ってたからな」

「す、ストーカー、ですか?」

「ああ。蓮見と浅香と3人で事務所立ち上げた時、一度蓮見の兄貴を紹介されたことがあるんだが、その時私のことを根掘り葉掘り質問攻めにしてきてね、今思えば浅香の隣に置いていていい人間かどうか確かめてたんだろうな。
少しでも浅香に害を及ぼすと思われてたら多分事務所はできなかっただろう。
顔合わせの時も必ずついてくるだろうけど、航は安心していていいよ」

祐悟さんの話だとどんな感じの人なのか想像つかないけど、でもあの蓮見さんのお兄さんなら怖い人ではなさそうだよね。
うーっ、でも会う時ドキドキするなぁ。
俺が祐悟さんのそばにいてもいい人間なのかとか調べられたりしないかな?

俺はまだ見ぬ蓮見さんのお兄さんにドキドキしながら小さく『うん』と頷いた。

「多分6人で会うことになるだろうし、南條くんがいるから場所は多分蓮見たちの家か、私の家になるか……。
まぁ、決まったら教えるから」

「は、はい。楽しみにしてます」


その後、俺はこの3日間でまとめ上げたデータを祐悟さんにチェックしてもらった。

「ああ、よくできてるな。というか、グラフも添付資料もすごく見やすくなってる。これならすぐにでも使える!
よくやったな、及第点だ!!」

頭を撫でながら褒められて、俺はものすごく嬉しかった。
仕事で頑張ったことを認めてもらえるってこんなに嬉しいことだったんだな。
今までどんなに頑張っても手柄は全部部長たちのものだったし、できなければ怒鳴られて罰金取られて散々だった。
祐悟さんと仕事させてもらうたびにあの嫌だった日々が上書きされていく……そんな気がする。

「よし、明日は車椅子を返しに行きがてら親父に診察してもらおう。
捻挫が良くなっていれば、私についてきて秘書としての仕事を始めてもらおうと思ってる」

「はい! よろしくお願いします!」


翌日、西表に一旦帰るという砂川さんに俺が纏め終わったデータを渡し、祐悟さんのご両親がやっているという病院に連れて行ってもらった。
借りていた電動車椅子で病院に入るのかと思ったら、車で駐車場に着いた途端病院の職員さんがやってきて車に積み込んでいた電動車椅子をさっさと持って行ってしまった。

診察してもらうまでは歩かせるわけにはいかないと言われ、結局もはや定番になってしまった姫抱っこで病院へと連れて行かれた。
病院に入った瞬間から、待合室にいる人や病院スタッフさんたちの視線が痛いほど突き刺さってくる。

『えーっ、なに? イケメンが可愛い子ちゃんを姫抱っこしてる!』
『ここ、病院よね? こんなところでこんな尊いもの見られるなんて~!』
『ほんと、具合悪いのも飛んでいきそう』
『あれ? あの人、ここの院長の息子さんじゃない?』
『あっ、じゃあ抱っこされてるあの子俳優さんかも』
『そうかもね! いやぁ~、眼福眼福』

ボソボソ話されてる声は俺には全然聞こえないけど、あんなイケメンに抱っこさせて!! って恨まれてそう。

「祐悟さん……俺、下ります……」

「診察してもらうまでダメだって言ったろう?」

「でも……」

「大丈夫、周りは気にしなくていいよ。ほら、予約してるから診てもらおう」

そう言うと受付もそこそこにすぐに診察室へと入っていった。

シャーっと白いカーテンを開けると、ロマンスグレーで綺麗に整えた口髭を蓄えたお医者さんが俺たちの方をじっと見つめていた。

この先生が祐悟さんのお父さん? うわっ、祐悟さんによく似てる。

『かっこいい……』
ポツリと呟いた言葉に祐悟さんがピクリと反応したのがすぐにわかった。

「航、浮気か? しかも親父に」

「ち、ちがっ――! 祐悟さんにそっくりだから、それで……」

「ふふっ。冗談だよ。だが、私以外にかっこいいはあんまり使ってほしくないな」

「あっ、ごめんなさい……」

『ん゛っ、んっ』
「祐悟、お前は惚気に来たのか?」

突然聞こえた大きな咳払いと声に俺が身体をびくりと震わせると、祐悟さんが『大丈夫だ』と耳元で囁いて落ち着かせてくれた。

「悪い、悪い。彼の足を診察してくれ」

そう言うと祐悟さんは診察用の椅子に俺を抱いたまま腰をかけた。

「はぁーっ、お前は座らなくてもいいんだがな」

「いいだろう、別に。ほら、早く」

祐悟さんは俺のズボンの裾を捲り上げ足首を先生に診せた。

「ちょっと触るから、痛みがあったら言ってね」

先生はにこやかな表情でさっきまでの祐悟さんとの会話よりもっとずっと優しい声でそう言いながら、俺の足首に触れる。
その手の温もりが俺の身体を抱きしめてくれている祐悟さんのそれによく似ていてなんとなくホッとする。

「ああ、もう大丈夫だな。よし、今日から歩いても構わない。ただし、走ったり無理したりは禁物だよ」

「はい。ありがとうございます!」

やっと祐悟さんに迷惑をかけずに済むと思ったら嬉しくて、笑顔で先生にお礼を言うと
先生は『ぐぅっ――!』と苦しげな表情を浮かべた後で、

「ふーん、なるほどね」

と祐悟さんに向かってニヤリと笑った。

なるほど……ってどう言う意味だろう?
先生はふっと俺に目を向けて、

「航くん……だったかな。君みたいな息子ができるなんて私も嬉しいよ」

と言ってくれた。

「息子って……じゃあ、許してもらえるんですか? 俺、いや僕が、祐悟さんのそばにいてもいいんですか?」

「航っ! 許すもなにも私には航しかいないって言っただろう?」

「でも俺……南條さんたちみたいにみんなに祝福されたいんです。だから俺……」

「――っ! ああ、もうっ!」

祐悟さんは後ろから隙間のないほどにぎゅっと抱きしめた。
その力強さが心地いい。

「親父、航は俺の・・だからな」

「ふふっ。祐悟、よかったな。航くん、祐悟を頼むよ」

先生、ううん、祐悟さんのお父さんからの言葉が嬉しすぎて泣いてしまった俺は『はい』と頷くことしかできなかった。

その時、突然俺たちの後ろのカーテンがシャーっと開いたと思ったら、

「ねぇ、祐ちゃん来てるって?」

と白衣を着たものすごい美人が現れた。
えっ? この人、誰?
もしかして元カノとか?
いやいや、まさか……。

俺は涙を潤ませた目で彼女を見つめた。
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